北海道三笠地域の奔別五ノ沢(滝吉沢)に露出する上部白亜系の限定された部分から, 従来本邦からは未知のイノセラムス標本を多数採集した。これはドイツその他から産するInoceranus rotundatus Fiegeに同定できる。保存のよい25個体については計測し, 統計的に性状や変異を調べて記載した。ドイツ産の典型的のものに比較すると肋の弱いものが多いが, 後模式標本なみのもある。I. rotundatusとI. waltersdorfensis hannovrensis Heinzとの密接な関係は海外でも認められているが, 北海道のものはいくらか中間的の性状を示しながらも1つの種を代表し, それはI. rotundatusに同定するのが妥当である。本種はこの沢沿いの層序においてコニアシアンを3分した下部に特徴的で, 伴うアンモナイトも同階下部を示す。三笠地区では1亜帯の示準化石であり, 国際対比上も重要な種である。
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