日本古生物学會報告・紀事 新編
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1992 巻, 168 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 上野 勝美
    1992 年 1992 巻 168 号 p. 1265-1295
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    阿武隈山地南部, 高倉山層群元村層下部の含石灰岩レキ岩から74タクサの有孔虫類を識別した。このレキ岩層中に見られる石灰岩レキはその岩相と含まれる有孔虫類によってタイプIa, Ib, Ic, IIa, IIbの5種類に分けられる。タイプIに属する石灰岩レキは砕屑物質を含まないpure limestoneで, Chalaroschwagerina vulgaris (Schellwien), Pseudofusulina fusiformis (Schellwien), Toriyamaia laxiseptata Kanmera, Minojapanella (M.) elongata Fujimoto and Kanuma, Misellina (Brevaxia) sp.等の前期ペルム紀のYakhtashianから前期Bolorianを示すフズリナ類が含まれている。一方, タイプIIの石灰岩レキは少量の火山砕屑物を含むimpure limestoneで, タイプIIaからはYangchenia cf. iniqua Lee, Pseudodoliolina cf. ozawai Yabe and Hanzawa, P. aff. pseudolepida (Deprat)が, タイプIIbからはWutuella cf. wutuensis (Kuo), Minojapanella (M.) parva Sheng, Lantschichites? sp.が識別された。これらタイプIIa, タイプIIbの示す時代はそれぞれ前期Murgabian, 後期Murgabianと考えられる。さらに, このレキ岩の基質中からは後期Murgabianを示すColania sp.が発見された。高倉山層群はこれまで主に柏平層から産出する頭足類によって中期ペルム紀の前期Guadalupianとされていた。今回, 元村層レキ岩中のタイプIIbおよび基質中より後期Murgabian(後期Guadalupian)を示すフズリナ類が発見されたことにより, 高倉山層群の時代も中期ペルム紀後期(後期Murgabian)と考えることができる。本論ではこれら有孔虫類のうち1新属(Quasireichelina), 4新種(Codonofusiella abukumaensis, Dunbarula planata, Quasireichelina expansa, Neodiscus mirabilis)を含む19種(フズリナ類18種, 小型有孔虫類1種)を記載する。
  • 指田 勝男, 猪郷 久義
    1992 年 1992 巻 168 号 p. 1296-1310
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    タイ国南部パッタルング付近のカオ・チアックに分布する層状石灰岩は保存良好な三畳紀放散虫を産する。この放散虫化石動物群は"古生代型"Entactiniidae, Actinommidae, 針状骨格型Palaeosceniidae及びacanthodesmid Nassellariaから成り, 後期スパシアン~前期アニシアンを示すコノドント化石と共存する。本研究では1新属, Thaisphaera及び4新種, Entactinia nikorni, Entactinosphaera chiakensis, Polyentactinia? phatthalungensis及びThaisphaera minutaを記載・報告する。Entactinia属及びPolyentactinia属の三畳紀からの産出は最初の報告である。
  • 野田 雅之
    1992 年 1992 巻 168 号 p. 1311-1328
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    本論では北海道北西部小平地域の白亜系コニアシアン階から産したInoceramusの1新種について記載し, あわせて個体群の立場からいくつかの形質について測定学的検討を試みる。また, 本種をかいしてI. (Inceramus)とI. (Platyceramus)との系統的関係を考察する。ここに新種として提唱するInoceramus (Platyceramus) troegeri Nodaは輪郭や表面装飾の変異が大きく, その極端なものでは日本のチュロニアン階上部のI. (I.) teshioensis Nagao and Matsumotoに似た特徴を示す個体もあるが, 他方, 日本のコニアシアン階上部からサントニアン階にかけて産するI. (P.) mantelli de Merceyに近い特徴を示す個体もある。しかし, 両型はいろいろな程度の中間型で繋がれ, 個体群の立場からは同一種に属すると考えざるを得ない。このことはI. (Platyceramus)のいくつかの種がチュロニアン-コニアシアンの境界期か, または, それに近いコニアシアンの早い時期にI. (I.) teshioensisから分化したことを示唆している。したがって, 本種は後に続くI. (Platyceramus)の主流, 傍系をふくめていろいろな種の, 共通のあるいは究極の先祖と考えられる。
  • 冨田 進
    1992 年 1992 巻 168 号 p. 1329-1338
    発行日: 1992/12/30
    公開日: 2010/05/25
    ジャーナル フリー
    岐阜県瑞浪市明世町月吉の中新統瑞浪層群月吉層からSpirulirostraが採集された。これは, 房錐断面が楕円形を呈し, 鞘はやや大きく, 側翼が前後に長いこと, などで, ヨーロッパの中新統のSpirulirostra bellardiiやS. baetensi, およびSpirulirostrina lovisatoiと区別できる。1981年筆者らが瑞浪市桜堂の名滝層から記載したSpirula mizunamiensisは房錐の標本に基くが, 月吉標本と房錐の特徴が一致し, 同種と判断され, Spirulirostra mizunamiensis (Tomida and Itoigawa)と結論する。楕円形の房錐断面をもつ月吉・桜堂標本とヨーロッパの近縁の種との比較により, 長楕円形の螺環断面をもつSpirulirostrinaを, 科としてよりは属として分けることが支持される。月吉標本は, 凝灰質の砂質泥岩から現地性のCyclina-Vicarya群集に伴って産出し, 堆積環境は内湾の潮間帯泥底と推定されるので, 暖海の外洋から死後漂着したものと思われる。
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