中枢神経疾患の病態形成メカニズム解明のために,神経細胞とその周辺の細胞との細胞間相互作用の理解を目指す研究が進められている.マイクロ流体デバイスは,基板の設計によって培養環境を制御することが可能なシステムであり,中枢神経機能に関わる異種細胞間の相互作用を評価するために有用なin vitro 評価系である.本稿では中枢神経疾患研究において開発されたマイクロ流体デバイスについて紹介し,本分野の今後の展望について述べる.
インターフェロン(IFN)α2 は165 残基からなるタンパク質で,アミノ酸配列の23 番目のみが野生株(IFN α2a)と異なる(Lys23Arg)遺伝子組み換えのIFN α2b が存在する.また,IFN α2a はインターフェロン受容体(IFNAR2)に結合する.23 番目のアミノ酸はIFNAR2 と直に接しないが,IFN α2b の方がより活性が高いことが知られている.本研究ではこの原因を探るために正準分子軌道計算を行い,変異に伴う電子状態の差異を調べた.静電ポテンシャルやMulliken 電荷の結果から,Lys23Arg の差異によってクーロン力に利得が生まれる可能性が示唆された.
ポリエチレンテレフタラート(PET)を分解できる酵素の一つとして,PETase が知られている.本研究では,PETase の基質特異性とPET 分解反応機構を解明するために,正準分子軌道計算によるPETase の電子構造計算を試みた.その結果,PETase の触媒三残基が形成する電子構造を維持し,Serine のヒドロキシル酸素はその求核性を示した.周辺アミノ酸残基は触媒三残基の特徴的な立体構造と電子構造を保護している可能性が示唆された.
個々の住宅の性能の元,運用で住宅の温熱環境の快適性を確保するために,Building Element(以下,B.E.)の意味構造にそって,B.E. の振る舞いの情報蓄積が有効と考える.
そこで本論文では,3 階建て木造戸建住宅1 棟の空間とB.E(建具.・空調機器)の「意味構造」「状態」「振る舞い」に関する情報をセマンティックデータモデルを用いて記述した.
そして,その情報をもとに分析を行い,影響の大きい階段室周辺のB.E. を操作することで空気対流を制御し,複数の部屋に部分暖房の熱を融通し,快適性を確保できる可能性を検討した.
IoT は個別のシステムを相互に接続することにより極めて多様な価値を生み出す可能があると期待されている.しかしながら,通信プロトコルの整合性や障害発生時の対応方策,更にはビジネス上の懸念点などがあり,自在な相互接続を実現するにはこれらの問題点を解決する必要があった.筆者らは産学連携活動によって開発したIoT-HUB と呼ぶ相互接続インフラを基盤にこれらの解決策を考案し,その活用方策について検討したので,考案内容,検討内容について報告する.