生産研究
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巻頭言
特集 乱流シミュレーションと流れの設計
特集に際して
研究速報
  • 半場 藤弘
    原稿種別: 研究速報
    2024 年 76 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    最近提案した非局所渦拡散率モデルではエネルギースペクトルが用いられ,そのモデルが非一様乱流に適用できるか不明である.そこで本研究ではエネルギースペクトルの代わりにスケール空間のエネルギー密度を用いて非局所モデルを改良した.スケール空間のエネルギー密度と2点速度相関を一様等方乱流の直接数値計算(DNS)のデータを使って解析し,新しい非局所渦拡散率モデルを提案し,DNSデータを用いて検証した.特に,従来のモデルと比べて3次元非局所渦拡散率の時間差依存性の分布が改善された.

  • 中村 元紀, 半場 藤弘
    原稿種別: 研究速報
    2024 年 76 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    勾配拡散近似は乱流予混合燃焼場で発生する乱流スカラーフラックスの逆勾配拡散を説明できない. 逆勾配拡散の原因には乱流と化学反応の相互作用に起因する様々な要因が考えられる. 本研究では発熱の乱流に与える影響に注目し, これについて議論するためにレイリー流れに一様等方乱流を流し込むことで生成される乱流レイリー流れ(Turbulent Rayleigh Flow, TRF)の直接数値計算を行う. 計算の結果TRFにおいて乱流熱フラックスの逆勾配拡散が確認され, これのメカニズムを乱流統計量の輸送方程式に基づいて議論した.発熱は密度-内部エネルギー相関の値を増幅し, 圧力勾配の効果を卓越させることによって逆勾配拡散がもたらされていることが示された.

  • 董 書闖, 白 申逸, 周 金鑫, 北澤 大輔
    原稿種別: 研究速報
    2024 年 76 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    近年,沿岸の静穏な海域で半閉鎖循環式の海面養殖が注目を集めている.本研究では,閉鎖剛体生簀タンクに生じるスロッシングを粒子法で解析し,同時にスロッシングが内部自由水の液面形状と流れ場に与える影響を調査した.その結果,加振周期がスロッシングの1次モードおよび2次モード付近では,自由水面形状に強い非線形性が現れ,内部水粒子の流速が全体的に増大していることが示された.生簀内部の水粒子が溢れ出たことにより,溯上高さの共振点が1次モードで現れず,より長周期側に遷移していたことが明らかになった.さらに,生簀タンク内のスロッシングによる波と生簀壁の変位との位相差が確認された. 今後は,柔軟体の生簀の運動解析に適用できるような粒子法と有限要素法を組み合わせたモデルを構築していく予定である.

  • 周 金鑫, 吉田 毅郎, 向後 香澄, 董 書闖, 北澤 大輔
    原稿種別: 研究速報
    2024 年 76 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    久慈湾では,津波対策として湾口防波堤が整備され,同時に湾内の静穏域での生簀養殖が発展してきた.そのため,流れ場と養殖有機物の変化を調査する必要があり,この研究では流れ場・生態系結合数値モデルを使用して数値シミュレーションを行った.結果として,防波堤整備後で,湾内の循環流や養殖場近傍の流れは大きく変化しないとわかった.一方,異なる沈降速度のトレーサーとして排泄物と残餌の拡散を計算した.残餌は海底により集中的に堆積したが,湾内物質の滞留時間が増加したため,排泄物は海底までの沈降時間が増加したとわかった.

研究解説
研究速報
  • 小山 省司
    原稿種別: 研究速報
    2024 年 76 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    乱流ヘリシティがエクマン境界層に与える効果の一つとして,エクマンスパイラルのワインド(曲がり)を強める効果がある.横井とブランデンブルグ(2017)の解析手法を用いて具体的に速度の変化分を算出し,レイノルズ応力のどの項が効くのか考察した.その結果,必ずしも乱流ヘリシティ項が直接速度場の変化をもたらすのではなく,粘性応力項が引き起こすことが分かった.

  • 横井 喜充, クリストフ ミゼルスキ, アクセル ブランデンブルグ
    原稿種別: 研究速報
    2024 年 76 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    宇宙物理学,地球物理学,プラズマ物理学,その他の理工学に現れる乱流は平衡ではない.ゆらぎのエネルギーやヘリシティなどの乱流量は,空間的に均一ではなく,時間的にも定常ではない.非平衡な電磁流体(magnetohydrodynamic:MHD)乱流が磁場生成機構(ダイナモ)に与える効果を研究する.多重スケールの直接相互作用近似(multiple-scale direct-interaction approximation)の方法では,応答函数と乱流統計量のスペクトルによって,乱流輸送係数の解析的表現を与える.特に,磁場摂動への速度ゆらぎの応答と速度摂動への磁場ゆらぎの応答からなるクロス相互作用応答(cross-interaction response)のダイナモ輸送係数への効果を考える.乱流運動ヘリシティ(ゆらぎ速度-渦度相関)と乱流クロスヘリシティ(ゆらぎ速度-磁場相関)が共存するような系では,非平衡効果でダイナモ効果が増強する可能性があることが理論的に示唆され,直接数値計算によって確かめられる.

特集 新たなモビリティサービスの実現に向けて
特集に際して
研究解説
  • 横溝 英明, 霜野 慧亮, 平岡 敏洋, 須田 義大
    原稿種別: 研究解説
    2024 年 76 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    日本におけるシェアモビリティとして,都市部で拡大しているカーシェアと地方部で導入が進むオンデマンド交通がある.この二つを組み合わせて提供することで,地方部においても自家用車だけに依存することなく移動できるサービスが実現可能なのではないかということが本稿で提案するRural MaaSの仮説である.本稿では,先行事例や先行研究に基づいて,Rural MaaSを検討する分析枠組みを構築し,本仮説の可能性を考察する.

  • 鈴木 彰一, 長谷川 悠, 大口 敬
    原稿種別: 研究解説
    2024 年 76 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    自動運転をはじめとする自動化モビリティの社会実装に向けては,技術面や法制度面の課題に加え,受容性向上が課題として指摘されている.本研究では,自動化モビリティサービスをテーマとする学生コンテスト参加者に,社会実装に対する期待や課題認識等を問うアンケート調査をコンテスト前後で実施し,回答の変化を分析した.その結果,コンテストにおける学習,議論の経験を経て回答に変化が確認されること,限定的な空間・環境からの社会実装を望む変化がみられること,政府による研究開発・インフラ投資の必要性についてより高く評価するようになる傾向があること等を明らかにした.

  • 石井 響弥, 霜野 慧亮, 須田 義大, 安藤 孝幸, 椋本 博学
    原稿種別: 研究解説
    2024 年 76 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    本研究は新しい自己位置推定手法として環境磁場を用いる方法を提案する.環境磁場とは,地磁気と人工物による磁場が合わさったものを指す.環境磁場の局地的な変動と座標位置を対応させることができ,実用範囲内で時間的に不変であるという特徴から自己位置推定手法としての有用性がある.本稿では,実験車両から収集した磁場データを教師データとしたガウス過程回帰により環境磁場地図を生成し,シミュレーション上でモンテカルロ法を用いた自己位置推定アルゴリズムの検証を行った.その結果,実際の磁場を模擬した環境磁場地図を再現でき,提案アルゴリズムでの自己位置推定の可能性,磁気マーカのよる自己位置推定精度向上の効果を確認した.

  • 岡田 直純, 梅田 学, 霜野 慧亮, 鈴木 彰一, 須田 義大
    原稿種別: 研究解説
    2024 年 76 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    本研究は,協調型システムによる自動バレーパーキングシステム(AVPS)の社会実装を目的とする.AVPSはこれまでに,企業や国家プロジェクトによる実証実験が行われてきたが,社会実装には至っていない.その主な理由として,社会実装シナリオが整理されておらず,自動車メーカ,駐車場オーナ,サービスプロバイダの役割が明確でないことが考えられる.さらに,自動運転に適した駐車場レイアウトの変更について考える必要がある.本稿では,特に駐車場レイアウトの変更に焦点を当て,レイアウト変更による駐車スペースの効率化や駐車完了時間の短縮などといった,時間効率と空間効率を分析対象として,仮想シミュレーション実験を行った結果を示す.

  • 羅 敏杰, 楊 波, 中野 公彦
    原稿種別: 研究解説
    2024 年 76 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    本論文では,カメラとLi-DARのセンサーフュージョンに基づく,2Dおよび3D物体検出のための新しい知覚フレームワークを紹介する.カメラ画像は豊富な環境特徴を提供するが,奥行き情報が不足している.逆に,Li-DARの点群は正確な奥行き情報を提供するが,その性質は疎である.それぞれのセンサーの長所と短所の補完的な性質を認識し,教師なし深度補完ネットワークを使用して,両方のセンサーからの情報を強化する.この強化されたデータは,最先端の検出ネットワークを用いて2Dと3Dの物体検出タスクを実行するために利用される.我々はKITTIデータセットで我々のフレームワークを検証し,実験結果はベースラインの結果と比較して,2Dと3Dの両方のタスクで顕著な改善を実証した.

  • 朱 国豪, 楊 波, 中野 公彦
    原稿種別: 研究解説
    2024 年 76 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,単眼3Dオブジェクトの検出と追跡のための新しい二段階のアプローチを紹介する.この手法においては,詳細な空間情報を豊富に備えた高品質の深度マップを生成する先進的な深度推定技術に焦点を当てる.これらの深度マップは,画像データと組み合わせることで,複数のCenterNetヘッドを組み込んだ独特の検出ネットワークの入力として機能する.さらに,変形可能な畳み込みネットワークが中枢に統合され,ネットワークの有効性を高めている.結果は,単眼オブジェクト検出における方法が熟練されていることを示した.堅牢な検出結果を基に,オブジェクト追跡への応用を拡大し,この分野での優れたパフォーマンスを示す.

  • 鳥海 梓, 柳田 温哉, 大口 敬
    原稿種別: 研究解説
    2024 年 76 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    無信号交差点では利用者が優先権に従うことで安全が保持されるが,歩行者と自動車の関係においては,歩行者優先が遵守されないことが課題とされている.特にまちなかの街路においては,交差点の周囲で路上駐停車や沿道出入が発生することもあり,歩車の錯綜状況はかなり複雑である.本稿では,近年発展が続く画像処理の物体追跡技術を活用して歩車の錯綜状況を分析することを試みる.YOLOv8を用いた物体追跡により定点ビデオ画像から得られる歩車の通過数や軌跡の精度を確認し,課題を整理すると共に,自動車通過状況別の歩行速度や自動車の横断歩道通過速度の分析を試行する.

  • 中川 北勝, 太田 恒平, 伊藤 昌毅, 大口 敬
    原稿種別: 研究解説
    2024 年 76 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    道路渋滞に対する軽減策の一つに,信号制御パラメータの変更が挙げられる.本研究では,熊本県菊池郡菊陽町における交差点に対して,青時間スプリットを変更した際の効果を,ミクロ交通シミュレータを用いてシミュレーションを行ったのちに,県警に協力頂いてスプリット変更を実施して頂いた.シミュレーションによる事前予測結果と,実際に青時間スプリットを変更させた際の観測値について比較を行う.その後,Google Maps APIより得られるリンク旅行時間データを用いて,5通りのシナリオについてリンク旅行速度データを比較することでスプリット変更の効果について分析を行う.

  • 劉 浩然, 長谷川 悠, 鳥海 梓, 小山 拓哉, 長田 絢子, 大口 敬
    原稿種別: 研究解説
    2024 年 76 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    高速道路において,特に車速が高い時の事故は重大事故になりやすく,その予防は非常に重要である.車速が高い状況での事故発生要因について,既往研究では事故多発区間のデータを使用した分析が多いため,事故が未然に防がれている区間の特徴が十分に捉えられていないと考えられる.そこで本研究では,線形条件が類似していながら事故発生リスクが異なる複数の区間を比較分析する.様々な線形条件のある首都高速道路を対象に,事故・線形・車両感知器のデータを統合して分析することで,事故が未然に防止されている区間の特徴を考察する.

  • 田頭 尚大, 平岡 敏洋, 霜野 慧亮, 郭 鐘聲, 須田 義大
    原稿種別: 研究解説
    2024 年 76 巻 1 号 p. 107-112
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    踏切に対する歩行者行動の安全性向上を図るには,踏切への警報後進入を歩行者の意識的かつ自主的な判断により抑止する必要がある.本研究では,踏切の警報鳴動を予告する情報を提示して踏切道の環境を操作することで,歩行者の行動変容を促す視覚情報提示を検討し,本稿にて,踏切に設置する新たなインタフェースを提案する.歩行者の行動分析に基づいたインタフェースの効果検証を行うため,仮想環境を用いたVR歩行実験を実施し,インタフェースによる視覚情報提示が踏切に対する進入/停止の判断を早めることで,警報後進入が抑止される傾向を確認した.

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