81歳,男性。初診2ヵ月前より右頬部に4 cm大の境界やや不明瞭な淡紅褐色の浮腫状浸潤性紅斑が出現した。前医受診し,肉芽腫性疾患や深在性真菌症が疑われ,真菌培養と皮膚生検が施行された。真菌培養は陰性であった。
病理組織学的には血管内皮細胞がスリット状の脈管構造を形成し増殖していた。脈管内外に認められる赤血球は少数で,免疫染色でpodoplanin陽性を呈したため,リンパ管系分化を有する脈管肉腫と診断した。化学放射線療法で皮疹は平坦化し消褪傾向となった。
脈管肉腫はそれぞれの臨床所見や組織学的所見からhemangiosarcoma(狭義の血管肉腫)およびlymphangiosarcoma(リンパ管肉腫)に分類されることがある。特に慢性リンパ浮腫を伴わないlymphangiosarcomaは,hemangiosarcomaと比較して易出血性は乏しく,結節性病変を認めないことから非典型的な臨床像を取りやすい。そのため診断が難しく,悪性度が高くないように見受けられることが多いが,hemangiosarcomaと同様に予後の悪い疾患であり,慎重な対応が求められる。
抄録全体を表示