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神谷 秀喜, 北島 康雄
2015 年 30 巻 3 号 p.
163-167
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
66歳,男性。初診の7年前より右前胸部の瘙痒を伴う紅色局面に気付いていた。ステロイド外用薬を塗布したが,次第に全身へ拡大した。体幹から両下腿にかけて,浸潤を触れる地図状の紅色局面と紫斑・色素沈着を認める。組織学的には,病変の主体が表皮直下から真皮中層である。Grenz zoneを挟んで濾胞様構造がみられ,稠密な小型リンパ球主体の細胞浸潤と,胚中心には中~大型の軽度異型性のある棍棒状の核を持つ細胞も混在する。浸潤細胞の多くはCD20+B細胞で,BCL−2(+)である。その他の免疫染色はCD3+,CD4+,CD5+,CD8−,CD10−,CD30−,MUM1−。遺伝子検査でIGH遺伝子の再構成認め(DH7/JH+),TRB遺伝子再構成は認めない。Light chain restriction (in situ hybridization)
λ,
κいずれも陰性。Pseudolymphomaとの鑑別に苦慮したprimary cutaneous marginal zone lymphomaとして慎重に経過観察をしている。
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岩田 洋平, 宮川 紅, 有馬 豪, 渡邊 総一郎, 矢上 晶子, 黒田 誠, 松永 佳世子
2015 年 30 巻 3 号 p.
168-173
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
46歳,男性。右母指外側の爪変形を認め,近医を受診しglomus tumor疑いで当科受診した。初診時,右母指外側の爪甲は縦裂しており下部に紅色腫瘍を認めた。病変内や周囲に色素斑は認められなかった。エコーでは,homogeneous,hypoechoic lesionで,豊富な血流も伴っていた。病理所見では,核小体が明瞭な異型腫瘍細胞が胞巣状に真皮に浸潤し,S−100,HMB−45,Melan−Aに陽性であった。悪性黒色腫と診断し,拡大切除と右腋窩センチネルリンパ節生検を行った。術後4ヵ月から右母指内側に爪が再生し切除標本で局所再発と判明した。さらに拡大切除を行い,1年10ヵ月経過し再発・転移はない。無色素性爪下黒色腫は,臨床・画像診断が困難であり,診断の遅れに注意が必要である。また,病変の範囲の把握が困難であり,爪全体に病変が広がっている可能性を念頭において慎重な切除範囲の設定と経過観察をしていくことが大切と考え報告した。
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嶋 智子, 山本 有紀, 池田 高治, 古川 福実
2015 年 30 巻 3 号 p.
174-178
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
現在,5-S-cysteinyldopa(以下5-S-CD)の血清濃度が悪性黒色腫の病態を最も鋭敏に反応する腫瘍マーカーとされている。過去の我々の検討では,血清5-S-CD値と,病型やtumor thicknessとの相関はみられなかった。今回我々は,2010年以降に当科で血清5-S-CD値を測定した悪性黒色腫患者92例のうち,経過中に経時的に5-S-CD値の上昇を認めた症例に焦点をあてた結果,転移巣の数や総断面積・転移臓器の種類が増えるごとに血清5-S-CD値が上昇し,転移巣総断面積と5-S-CDには関連性があることが分かった。統計学的考察を含めて報告する。
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宿輪 哲生, 石川 博士
2015 年 30 巻 3 号 p.
179-184
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
2012年1月から2014年12月までの長崎医療センター皮膚科手術症例543例について抗血栓療法の有無,抗血栓剤投与群と非投与群におけるPT-INR値,出血性合併症の発生頻度について統計学的に比較検討した。50歳未満で抗血栓剤投与例はなく,50歳以上で17.7%が抗血栓剤を内服し,基礎疾患は高血圧性心疾患,抗血栓剤はアスピリン単独投与例が最も多かった。抗血栓剤投与群では,50歳以上70歳未満より70歳以上の症例群でPT-INRが有意に増加していた(P<0.05)。50歳以上の症例における出血性合併症の頻度は,抗血栓剤非投与群1.6%に対し,単剤継続投与群1.8%,2剤継続投与群では30.0%に上昇していた。
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川平 尚生, 青木 恵美, 地村 望, 有村 亜希子, 多田 浩一, 下川 充芳, 松下 茂人, 藤井 一恭, 東 裕子, 金蔵 拓郎
2015 年 30 巻 3 号 p.
185-188
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
66歳,女性。初診の3ヵ月前に左下肢の浮腫を自覚した。近医で左鼠径から腹腔内リンパ節腫大を指摘され,鼠径リンパ節生検で転移性上皮系腫瘍を疑われたため当科を紹介された。初診時,腰部に1 cm大の紅色結節,左外顆に紅色局面を認めた。病理組織からエクリン汗孔癌と診断し,ドセタキセルによる化学療法と鼠径から傍大動脈リンパ節領域の放射線治療を行った。リンパ節は縮小したが,左下肢に新たに皮膚転移が出現したため,放射線治療を追加した。病変は縮小したが,新たな皮膚転移の出現を繰り返した。初診から11ヵ月後に呼吸不全のために永眠した。
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清水 智子, 深井 達夫, 塚本 裕子, 越智 啓乃, 荒川 敦, 日野 眞子, 池田 志斈
2015 年 30 巻 3 号 p.
189-192
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
82歳,女性。既往歴に右乳癌(平成13年),に胃腺癌(平成23年)がある。約2年前より自覚した,左腋窩の徐々に増大する腫瘤を主訴に受診。初診時,15 mm大の表面紅色な,圧痛を伴わない,下床との連続性のない皮下腫瘍を認めた。全切除したところ,真皮から皮下組織にかけて好酸性の細胞質と核小体が明瞭な核を有し,腺管を構成し増殖する腫瘍細胞を認め,断頭分泌を伴っていた。腫瘍細胞はPAS陽性,GCDFP-15陽性,マンマグロビン陰性,エストロゲン・プロゲステロン受容体陰性,HER2は1+でKi67は40%であった。全身検索したが,左乳房や左腋窩を含めて明らかな腫瘍病変はなかった。以上から,左腋窩原発のアポクリン腺癌と診断した。現在のところ再発や転移は認めていない。
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山口 由佳, 飯野 志郎, 馬場 夏希, 知野 剛直, 徳力 篤, 長谷川 稔
2015 年 30 巻 3 号 p.
193-197
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
症例1:88歳,女性。初診の1年半前に左上眼瞼に腫瘤が出現し,徐々に増大して出血をきたすようになった。部分生検を施行し,脂腺癌と診断した。画像検索の結果,転移はなく電子線70 Gyを照射した。症例2:87歳,男性。初診の2ヵ月前に左下眼瞼の瞼板に小結節が出現し,増大してきた。楔型に部分生検を施行し,脂腺癌と診断した。画像検索上転移はなく,電子線70 Gyを照射した。放射線治療後,2症例ともに,腫瘍は肉眼的に完全に消失した。現時点まで再発・転移はなく,放射線照射に伴う重篤な有害事象もない。脂腺癌に対しては手術治療が一般的ではあるが,手術治療が困難な高齢者の眼瞼脂腺癌に対する治療として,放射線治療も有力な選択肢の一つになり得ると考えた。
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松山 かなこ, 徳住 正隆, 加藤 元一, 周 円, 加納 宏行, 村上 一晃, 宮崎 龍彦, 清島 真理子
2015 年 30 巻 3 号 p.
198-202
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
58歳,男性。約6ヵ月前から頭頂部左側に2cm大の紅色結節が生じた。MRIで骨膜への浸潤が疑われ,辺縁より1cm離して,骨膜も含めて切除した。病理組織像は中分化型有棘細胞癌(SCC)。水平,深部断端ともに陰性。画像検索でリンパ節,遠隔転移を認めず,T2 N0 M0 stage II。病理で断端の腫瘍細胞の陰性を確認し,摘出術4週間後に皮弁術施行。皮弁術3週間経過後から頭頂部に紅色結節が出現し,その後6ヵ月間に,頭部原発部と頸部の間の皮下に合計3ヵ所の孤立性結節を生じ,さらに左頸部リンパ節転移を来した。結節はそれぞれ1cmマージンで摘出し,頸部リンパ節廓清施行。病理組織像は,いずれも中分化~低分化なSCCの像であり,皮下結節をin-transit metastasisと考えた。頸部に放射線50Gy照射したが,その後肺に転移した。現在シスプラチン,ドキソルビシン投与中である。
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原 真理子, 国本 佳代, 米井 希, 古川 福実, 山本 有紀
2015 年 30 巻 3 号 p.
203-207
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
60歳,女性。約12年前に左踵部に低温熱傷を受傷し,難治性潰瘍となっていた。踵全体に拡大傾向となり,乳頭腫状に盛り上がってきたため当科紹介となった。当科初診時,左踵に堤防状に周囲が隆起した乳頭腫状に増殖する直径約13×8cmの腫瘍を認めた。病理組織学的には表皮の肥厚,過角化・錯角化,角化真珠があり,増生上皮細胞の軽度の核腫大,大小不同がみられ,verrucous carcinomaと診断した。エトレチナート50mg/日の内服を開始し,20mg/日で維持した。エトレチナート内服2.5ヵ月後,乳頭腫状の隆起は平坦化し,中央に黄色の壊死を伴う紅色びらん局面となり,切除術を施行した。平坦化した腫瘍辺縁部では腫瘍細胞は消失し,表皮は平坦化,Ki-67陽性細胞は明らかに減少していた。
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阿南 隆, 福本 隆也, 古田 淳
2015 年 30 巻 3 号 p.
208-213
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
39歳,女性。初診の約1年前からある左大腿屈側の硬結を近医にて切除された。病理組織像では真皮深層から皮下脂肪組織浅層にかけて周囲との境界がやや不明瞭な限局性の結節があり,束状となって交差する単調な紡錘形細胞や,緩やかな束状やシート状に分布する硝子様や顆粒状,黄色腫様の胞体をもつ腫瘍細胞で構成されていた。腫瘍細胞の核は大型で多形性があり,核内偽封入体や大型の核小体,核分裂像も散見された(15個/50高倍率視野)。免疫組織化学的染色では,腫瘍細胞は,CD34がびまん性に強陽性,AE1/AE3,S-100 protein,
α-SMA,Desmin,CD68,Factor XIIIaは陰性であった。Ki-67の陽性率は<5%であった。中年の浅い軟部組織に限局する小型の病変で,CD34にびまん性に強陽性を示す多形性の目立つ腫瘍細胞で構成されており,核分裂像が目立たず,Ki67の陽性率が低い特徴などからsuperficial CD34-positive fibroblastic tumorと診断した。本症は稀な低悪性度の軟部腫瘍である。他疾患との鑑別点について解説した。
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渡会 晃, 天羽 康之, 檀原 幹生
2015 年 30 巻 3 号 p.
214-217
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
75歳,男性。汎血球減少にて精査中に末梢血白血球の4%に芽球を認めた。骨髄検査で3系統に異型性と全骨髄有核細胞中の6.8%に芽球を認め骨髄異形成症候群(MDS)の芽球増加型不応性貧血(RAEB-1)と診断後,末梢血白血球中の芽球数が50%に達し,急性骨髄性白血病(AML)への移行と診断した。寛解導入療法で寛解に至った2ヵ月後に左前腕に結節が出現した。左前腕に母指頭大の紅色結節を認め,病理組織像で真皮から皮下にリンパ球様細胞の稠密な集塊がみられ,CD45,CD31,CD15陽性,CD34,MPO陰性であった。血液検査でAMLの再燃所見を認めずmyeloid sarcomaと診断した。結節は約1ヵ月後に消退したが,その1ヵ月後にAMLが再び急性増悪した。再寛解導入療法で寛解に至ったが,間もなく略全身に多数の大豆大の紅色結節が出現した。末梢血に異常はなかったが,病理組織学的に前回同様の結果が得られ,myeloid sarcomaと診断した。数日後にAMLは再度急性増悪し約2ヵ月後に永眠した。
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山崎 菜央, 伊藤 算昭, 小林 圭介, 佐藤 仁美, 志村 智恵子, 片桐 一元, 佐野 和史, 森田 公夫, 伊豆津 宏二, 竹内 賢吾
2015 年 30 巻 3 号 p.
218-222
発行日: 2015年
公開日: 2016/03/02
ジャーナル
認証あり
36歳,女性。左背部に1ヵ月前から急速に増大する腫瘤あり。緊急的に切除し,直後に判明した左腋窩リンパ節腫大部と切除部に放射線照射を実施。2ヵ月後に脊椎に浸潤し骨折,項部に新生結節があり切除。以後,CHOP療法を6クール施行し,その後,自家末梢血幹細胞移植を実施。病理組織所見ではCD30陽性,ALK陰性であり,当初は皮膚原発未分化大細胞リンパ腫(pcALCL)と診断。その後の経過および追加検査でのEMA陽性,DUSP22陰性により全身型ALCLと診断を修正した。ALCLが皮膚に単発腫瘤として出現する場合は予後良好のpcALCLであることが多いが,全身型ALCLの初期症状である可能性もある。EMA陽性所見は完全ではないが全身型であることを示す良い指標とされている。pcALCLで予後不良であった本邦報告13例の中にはEMA陽性例も含まれ,全身型ALCLが多く混在していた可能性がある。さらに本症例では全身型ALCLのあたらしい予後予測因子としてDUSP22を測定した。
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