Skin Cancer
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24 巻, 3 号
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第25回日本皮膚悪性腫瘍学会
シンポジウム 血管肉腫治療ガイドライン作成に向けて
  • 水上 晶子, 田口 理史, 鈴木 正, 土田 哲也
    2009 年 24 巻 3 号 p. 350-362
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    血管肉腫は高齢者の頭部・顔面に好発する予後不良な悪性腫瘍である。一般的に,外科治療・化学療法・放射線療法・免疫療法を組み合わせて治療するが,局所再発や肺転移を起こすことが多く,治療に難渋する。方法:今回我々は,日本皮膚外科学会で行っている頭部・顔面に発症した血管肉腫患者260例のアンケート結果を分析し,予後因子・治療について検討を行った。結果:全体の5年生存率は9%であった。年齢が70歳以下,潰瘍形成のない症例で生存率が高く,治療では,組織学的に腫瘍の残存がない手術施行群および化学療法施行群が生存率を改善する可能性が示唆された。
  • 和田 誠, 浅井 純, 竹中 秀也
    2009 年 24 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
     1988年1月から2008年12月までの21年間に当科で経験した頭部血管肉腫20例をまとめ,治療の変遷を検討した。年齢は34歳~90歳(平均70.8歳),男14例,女6例であった。詳細の明らかな17例の平均生存期間は21.4ヵ月であった。経過中に遠隔転移を来したのは14例であり,肺転移が10例で最も多く,頸部リンパ節転移は6例であった。外科的切除は11例に施行し,16例に放射線を照射,16例に免疫療法(IL-2)を施行した。化学療法は9例に施行したが,現在ではタキサン系抗癌剤を術後補助化学療法として使用している。我々の検討では局所再発が生存期間に関連しないことが示唆され,遠隔転移の制御にタキサン系抗癌剤が有効であると考えられた。
  • 浅越 健治, 大塚 正樹, 濱田 利久, 山崎 修, 岩月 啓氏
    2009 年 24 巻 3 号 p. 369-376
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    過去15年に治療した18例の脈管肉腫(頭部血管肉腫:ASS:16例,Stewart-Treves症候群:STS:1例,その他:1例)について検討した。原発巣に対する初期治療として,最初の4例には手術を主体とする治療を行ったが,術後の創傷治癒過程が再発や転移にかかわったと思われる症例を経験し,それ以降は放射線中心の治療を行った。多くの症例でIL-2,近年ではタキサン系抗腫瘍剤を併用した。3年以上生存した例は4例(ASS:3例,STS:1例)で,いずれも放射線中心の治療を行った症例であった。長期生存例は放射線感受性がよい印象があったが,症例数が少なく治療時期も異なることから,手術中心の治療を行った症例と一概に比較できず,多施設での検討が望まれる。
     今後の課題として,原発巣に対する初期治療の選択(手術か放射線か)に加え,有効な放射線照射法と抗腫瘍剤の投与法の標準化が必要と思われた。また,ASSの転移病変の評価にはPET/CTが有用であった。
  • 増澤 幹男
    2009 年 24 巻 3 号 p. 377-384
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    1987年より2008年までの21年間に当科で治療した脈管肉腫は71例で,頭部例は60例あった。頭部例でフォローアップし得た55例の治療方針と治療結果について報告する。2000年までの19例については免疫療法で,2001年以降の36例は当科の病期別治療指針で治療した。治療指針の基本方針は十分な電子線照射と再発予防のためのタキソイド系抗腫瘍剤による継続全身化学療法の併用である。電子線は症例ごとの適性出力で広範囲内に,1回2.5Gy,総量70Gy以上照射した。タキソイド系抗腫瘍剤はドセタキセル40mg,またはパクリタキセル80mgのweekly療法を基本とし,最低6ヵ月間継続した。治療成績をKaplan-Meier法による3年生存率で比較すると,免疫療法中心の19例が16%であったのに対して,病期別治療指針による36例は42%と顕著に改善した。現在,予後の改善のために,最多死因である肺転移病巣に対して胸腔内化学療法を試みている。
  • 山崎 直也
    2009 年 24 巻 3 号 p. 385-391
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    血管肉腫の頻度は我が国の皮膚悪性腫瘍のなかの約1%程度で稀な腫瘍であるが,生物学的悪性度は非常に高く予後は悪い。今までにみられる報告も,また我々の施設の治療成績においても5年生存率はおおむね10%台である。それにもかかわらず,血管肉腫に対する診療体系は整っておらず,診療ガイドラインも存在しない。一般に固形がんの治療原則は十分な手術であり,血管肉腫の場合も局所制御のためには外科的完全切除と放射線治療が有効であると考えられる。遠隔転移に対しては全身化学療法が治療の主体となり,抗がん剤単剤ではpaclitaxel,docetaxelが,多剤併用療法ではMAID(Mesna+Doxorubicin+Ifosfamide+Dacarbazine)療法が高い奏効率を示す。今後は血管肉腫に対するquality of lifeや予後の改善を目的とした治療方法の開発が望まれる。
ワークショップ 皮弁術と植皮術~私の使い分け~
  • 黒川 正人, 佐藤 誠, 八杉 悠
    2009 年 24 巻 3 号 p. 392-396
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
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    皮膚悪性腫瘍切除後に植皮や皮弁移植を用いて再建を行った後に,拡大切除が必要となると,植皮や皮弁が犠牲となる。そのため一期的再建は行わず,人工真皮を貼付して,確定診断が付いてから再建を行う場合がある。本法の適応は①乳房外Paget病などで辺縁が明瞭でない腫瘍,②悪性黒色腫などで腫瘍の深さや浸潤が術中迅速診断では確定できない場合,③血管系腫瘍などで腫瘍の悪性度の判定が付きにくい場合である。また,④腫瘍切除後の皮膚軟部組織欠損が深い場合も人工真皮の適応となる。また,本法においては,確実な病理診断がついてから,再建方法について患者や家族と充分に相談できる時間があり,インフォームド・コンセントを得るためにも有効である。ただし,本法では最低2回の手術が必要であり,治療期間は長くなることが欠点である。
  • 吉川 周佐, 中浦 淳, 福田 桂太郎, 緒方 大, 片岡 照貴, 清原 祥夫
    2009 年 24 巻 3 号 p. 397-402
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
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    皮膚悪性腫瘍の手術療法については根治性を目指した手術が必要である。しかし部位や癌種,患者の背景により術後の審美面,機能面などに配慮した再建法である局所皮弁術が必要になることも多い。しかし悪性黒色腫においては①局所再発の発見の問題②原発巣からのリンパ流に対する問題③intransit転移に対する問題,などから我々はその再建において植皮術を選択している。①に対しては局所再発の早期発見を促す意味合いであえて薄い植皮を用いており,この場合もドナーを決してリンパ流域内にとらないことに気を付けている。②を考えると局所皮弁の作成条件にどうしても限界が生まれてくるのが実際であるし,皮弁を作成した場合に術後の後療法に影響が出てくる可能性もある。③においても局所皮弁は早期発見やその治療法の一つであるsubtotal integumentectomyには適さないなどが理由である。
  • 元村 尚嗣, 羽多野 隆治, 坂本 道治, 丸山 陽子, 原田 輝一, 石井 正光
    2009 年 24 巻 3 号 p. 403-408
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
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    悪性腫瘍切除後再建では,human factorとtumor factorの総合的判断において治療法を決定する。しかし,皮膚欠損部における原則は,“The best tissue is the same tissue”であり,隣接する組織で被覆することがbestである。特に頭部は,露出部であり他に有毛部を求めることが不可能であるので,この原則の最たる部位である。腫瘍の制御が十分であり,患者の意欲がある場合には,この原則に従って頭部悪性腫瘍切除後に積極的に頭皮皮弁を用いた再建を行っている。
     我々の方法は,浅側頭動脈(STA)・後耳介動脈(PA)・後頭動脈(OA)のネットワークを利用したscalping V-Y advancement flapである。本法は頭部全域で広範囲頭皮欠損に対して用いることが可能であり,頭部再建において最適な方法であると考える。
  • 吉龍 澄子, 高木 正
    2009 年 24 巻 3 号 p. 409-415
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    皮膚癌の手術ではoncology,function,aestheticの三つを満足させる必要がある。主に眼瞼部の悪性腫瘍について,これらの3要素を考慮して,皮弁の使い分けを腫瘍の種類や,部位で検討する。リンパの流れを考慮する必要のない腫瘍では,lateral orbital flapなどの近傍からの局所皮弁が,皮膚の質感や色調も近いため整容上よい適応になると考える。一方,メルケル細胞癌などではoncologyの面から,リンパの流れを考慮した皮弁の選択が重要である。また術後照射などの補助療法が必要な腫瘍は,皮弁の切り離しや修正の不要な一期再建できる術式を選択する。機能上,上眼瞼縁にはfunctionalな眼輪筋を含む皮弁を移植することは理にかなっていると考える。メルケル細胞癌およびそれ以外の眼瞼癌について皮弁の使い分けや術式の工夫を提示する。
  • 木村 中, 櫻井 圭祐, 大芦 孝平, 杉野 まり子
    2009 年 24 巻 3 号 p. 416-422
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
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    我々の施設で過去5年間に,外鼻に発生した皮膚悪性腫瘍に対して手術治療を行った症例を検討した。局所皮弁術または遊離植皮術で再建されていたBCCの23例を検討したところ,局所皮弁術での再建17例に対して遊離植皮術での再建は6例であり,局所皮弁術での再建が多かった。また,再建方法別に腫瘍の大きさを検討すると,局所皮弁術で再建されていた腫瘍の長径の平均が径7.8mmであったのに対し,遊離植皮術で再建されていたものの平均が径12.6mmと,大きな腫瘍に対しては遊離植皮術を用いる傾向が多かったが統計学的な有意差はなかった。さらに手術時の年齢を検討したところ,局所皮弁術で再建されていたものの平均年齢が67.4歳であり,遊離植皮術で再建されていたものの平均年齢は77.0歳であり,比較的高齢者では遊離植皮術での再建が多い傾向にあったが,こちらも統計学的な有意差はなかった。
  • 橋本 一郎, 中西 秀樹
    2009 年 24 巻 3 号 p. 423-426
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    1998年から2008年までに徳島大学病院形成外科で施行された外陰部・会陰部・肛門部の悪性腫瘍切除後再建手術55例について,男女比,原疾患,再建方法に関する分析を行った。男性19例,女性36例であり,扁平上皮癌18例,乳房外パジェット病25例,悪性黒色腫2例,基底細胞癌1例,その他の腫瘍9例であった。再建方法を分類すると,分層植皮術12例,皮弁移植術43例であり,皮弁の内容は,gluteal fold flap(internal pudendal artery perforator flap)31例,腹直筋皮弁6例,大殿筋(穿通枝)皮弁3例,陰嚢皮弁3例であった。腫瘍の局所再発は2例でみられ,皮弁の脂肪除去を行ったのは1例のみであった。外尿道口狭窄はみられなかったが,陰嚢皮弁を用いた症例2例で肛門狭窄がみられた。当科では皮下脂肪層が残り,外尿道口や肛門などの自由縁に欠損が接しない場合には植皮術を行うが,筋膜が露出する症例や欠損が自由縁に接する場合には皮弁移植術を行う方針であり,そのため術後長期の合併症が少ないと考えられた。
  • 永松 将吾, 中川 雅裕, 清原 祥夫, 吉川 周佐
    2009 年 24 巻 3 号 p. 427-434
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    皮膚悪性腫瘍は全身あらゆる部位に発生し,一旦進行性となればその治療は困難であり,部位毎に特殊な配慮が必要となる。このような治療困難例に対し,当院で行った多職種チーム医療の効果につき述べる。当院で開院以来6年9ヵ月間に経験した,遊離組織移植による再建を要した皮膚悪性腫瘍は8例であった。部位別では,頭部3例,顔面3例,四肢2例であった。疾患別では,SCC 5例,DFSP 2例,MFH 1例であった。いずれも皮膚科・形成外科を中心に切除・再建手術が行われたが,その際に他科が手術に加わることにより,より広範囲に,深部も理想に近い切除を行い,再建することが可能であった。手術後も多職種の介入により患者毎に多様な要求に対処し,それぞれについて最良と思われる治療を行うことができた。多職種チーム医療では,各診療科・職種が主体性をもって積極的に患者に向き合うことが求められる。そのため,各職種の力が最大限引き出される長所をもつ。
ワークショップ 光線力学療法(PDT)
  • 中野 章希, 玉田 康彦, 秋田 洋一, 渡辺 大輔, 松本 義也
    2009 年 24 巻 3 号 p. 435-438
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    以前我々は,当科を受診した単発の日光角化症(AK)30例30病変に対し光線力学的療法(PDT)を施行し,その治療成績を報告している。今回10症例を追加し,その結果を発表する。PDTは20%ALA軟膏を4時間塗布し,波長630nmエキシマダイレーザーで1回50J/cm2を1週間毎に計3回,150J/cm2照射した。治療1週間後の病理組織所見で治療効果を判定し,4例で異型細胞の残存がみられた。その後12ヵ月間の経過観察を行い3例に再発を認めた。さらにAKを病変の大きさ(1cm)で2群に分け,組織学的にはRöwertらの組織分類(mild:異型細胞が表皮の下1/3以下,moderate:表皮の下2/3まで,severe:表皮の下2/3から表皮全層性)を参考に,group A (mild & moderate)とgroup B(severe)に分類し,各群での治療成績を比較検討した。
  • 長野 徹, 加茂 統良, 池田 哲哉, 錦織 千佳子
    2009 年 24 巻 3 号 p. 439-441
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    日光角化症(AK)の治療法の一つとして当科では2003年以降光線力学療法(PDT)を行っている。2003年から2008年末までの期間に当科を受診しPDTを施行した日光角化症38例(男性17例(白人男性3例),女性21例(平均75.7歳))につき検討を加えた。日本人35例に対し初期は50J-80J/cm2,2005年以降は80J-100J/cm2のdose,2008年後半から50J/cm2×3回連続照射のプロトコルで照射を行ったところCR14例,PR19例,NC2例でありAKに対するPDTの有効性が確認された。ただし35例中9例には明らかな残存,再発があり,患者と相談のうえ手術療法を選択した(組織学的にCRと診断した2例(施術後2年および2年6ヵ月経過後に再発)を含む)。本療法の有用性は明らかであるが,初期照射量,回数,照射間隔の設定,経過観察期間など考慮すべき点も多く,さらに検討する必要があると考えた。
  • 何川 宇啓, 福田 知雄
    2009 年 24 巻 3 号 p. 442-449
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    ALAを用いたPDTは表在型の皮膚悪性腫瘍に対して有効な治療であるだけでなく,侵襲が少なく,安全かつ,美容的にも優れている。日本人のBCCの多くは色素性であるが,PDTは非色素性病変に有効とされており,欧米人のものと比較して有効性が劣るのではないかと考えられている。2008年4月から2009年3月までの間に杏林大学皮膚科でLEDを用いたPDTを施行したBCCについて検討した。対象は3例の背部にできた表在型,2例の顔面に生じた結節型である。それぞれプロトコールは異なるが,3~8回のPDTを施行し,結果はすべての症例がCRとなった。PDTは色素性病変や皮膚深部の病変にはその効果は期待しにくいと思われていたが,自験例においては表在型BCCだけでなく結節型のBCCにも有効であった。
  • 濱田 利久, 浅越 健治, 大塚 正樹, 藤井 一恭, 白藤 宜紀, 加持 達弥, 岩月 啓氏
    2009 年 24 巻 3 号 p. 450-454
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    PDD(Photodynamic diagnosis)はPDT(Photodynamic therapy)の原理を利用して腫瘍の局在やその範囲を可視化する方法で,皮膚科分野ではPDT同様に5-ALA(5-aminolev-ulinic acid)外用によるPDDが施行される。日光角化症やボーエン病・基底細胞癌といった前癌状態または悪性の皮膚腫瘍においてはPDTの効果判定にも利用できる他,多発性の日光角化症のように個々の病変を把握しづらいときに,一度で評価できるところにも大きな利点がある。しかし,外陰部や耳介など部位によってはその判定がかえって困難になる症例も経験した。本稿ではPDDが有用であった症例と無効であった症例をあげ,PDDの有用性と問題点について検討した。
  • 福田 知雄
    2009 年 24 巻 3 号 p. 455-462
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    皮膚癌治療の基本が外科的切除であることは現在なお変わりないが,高齢者や合併症のある患者が増えるにしたがい,手術適応に悩む症例が増えているのも事実である。乳房外パジェット病は,高齢者に好発し,自覚症状なく進行するため,病変に気付いて受診した時には既に大型の病巣になっていることの多い皮膚癌である。我々は,本症の患者で,手術の適応のない,あるいは手術を望まなかった延べ21人に,5-aminolevulinic acidを用いた外用光線力学療法あるいはイミキモドクリームの外用療法を施行した。光線力学療法ではこれまでに13症例を治療,3例がCR,残り10例でも病変の縮小効果が得られている。イミキモド外用療法はこれまで8例に施行中であるが,既に2例でCRが得られている。2法とも,適応症例の選択に注意する必要はあるが,乳房外パジェット病治療の有用な選択肢になり得る治療法であると考える。
教育コースⅠ-画像を読む①ダーモスコピー,エコー
  • 小川 純己
    2009 年 24 巻 3 号 p. 463-471
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    ダーモスコピー診断用紙は,スクリーニングに優れた3-point checklist法と,診断根拠をたどるのが容易なパターン分析による二段階診断法を組み合わせ,所見をチェックすることに特化した用紙である。ダーモスコピー診断用紙を使うと,悪性色素性病変のスクリーニングが可能となり,診断所見を記載する手間が省け,診断アルゴリズムを具体的にたどることができる。3-point checklist法は初心者でも約90%の感度を誇り,悪性黒色腫,基底細胞癌のスクリーニングに有用である。2段階診断法は第1段階でメラノサイト病変か,あるいは脂漏性角化症,基底細胞癌,血管病変などの非メラノサイト病変かを区別し,第2段階でメラノサイト病変なら良性か悪性かを区別する。ダーモスコピー診断用紙で良悪の診断根拠が明確になれば,その後の治療方針を立てやすい。色素性病変を具体的に提示し,その診断プロセスを演習する。
  • 大畑 恵之
    2009 年 24 巻 3 号 p. 472-480
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    皮膚の腫瘍性疾患を診た場合,特に皮下腫瘍の場合は,理学的所見だけで確定診断を下すことは難しい。手術・生検などの侵襲を伴う検査を行う前になんらかの画像診断を行う必要は昨今の医療情勢からは必須と考える。皮膚科で行う可能性のある画像診断には単純X線,超音波,CT,MRIなどがあるが,超音波はその非侵襲性,利便性などからもっとも有用と考える。高周波プローブを用いた皮膚超音波検査について,その原理について述べるとともに,基底細胞癌,有棘細胞癌,悪性黒色腫などの表皮性腫瘍性疾患と,粉瘤,脂肪腫をはじめとする,皮下の腫瘍性疾患の超音波所見についてまとめ,その臨床的な有用性を示した。
教育コースⅠ-画像を読む②MRI,PET
  • 小林 憲, 田中 勝
    2009 年 24 巻 3 号 p. 481-488
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    核磁気共鳴画像(MRI)は,磁気共鳴現象を利用した画像診断法である。表面マイクロコイルを用いたMR microscopyは,高分解能,高コントラストで,皮内から皮下の小型病変を評価できる。MRIの信号は,組織の生化学的性状で決まり,基本的信号強度はプロトン(水素イオン)密度によるが,メラニンなどの常磁性体や組織の粘稠度の影響を受け,さらにT1,T2といった構成要素の強調画像(WI)を得ることで,組織間コントラストを強調できる。MRIの基本的パターンは,水や良性腫瘍ではT1WIが低信号,T2WIが高信号となり,脂肪や粘液はともに高信号である。メラニンなどの常磁性体があると,T1WIが高信号,T2WIが低信号となる。ともに低信号の場合,水分の少ない線維化や慢性炎症,悪性腫瘍などを考える。さらに,境界が明瞭か,造影効果があるか,などを考慮して総合的に評価することが大切である。
  • 浅越 健治
    2009 年 24 巻 3 号 p. 489-496
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    皮膚リンパ腫の病期決定上,リンパ節の評価は皮膚病変についで重要である。リンパ節生検を行う際には最も診断価値の高いリンパ節を採取する必要があり,理学所見とともに画像検査で評価して生検するリンパ節を選択する。PET/CTでは全身スクリーニング,空間的評価,質的評価を同時に行える。視覚的情報に加えFDGの取り込みを客観的数値(SUV:standardized uptake value)として表わせるのも利点である。SUV値はリンパ節病変の組織学的変化とほぼ相関する傾向にある。超音波検査も質的診断に有用で,簡便かつ非侵襲的なことが利点である。リンパ腫病変を疑わせる所見として,円形~卵円形の形状,びまん性に低エコーの皮質,リンパ門部の消失/狭小化,後方辺縁エコー/後方エコーの増強,不規則な血流の増加,などがあげられる。これらの検査は治療後の評価にも有用である。画像評価法を確立して病理組織学的変化をある程度推定できれば,リンパ節生検の代替的役割を担える可能性がある。
教育コースⅡ-化学療法を知る①メラノーマ,上皮系
  • 並川 健二郎, 山崎 直也
    2009 年 24 巻 3 号 p. 497-503
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    悪性黒色腫は遠隔転移を来すとほぼ治癒は望めず,進行期悪性黒色腫に対する有効な治療法がないのが現状である。これまで複数の抗がん剤が単剤もしくは多剤併用で試みられてきたが,いまだに本症の予後を著明に改善するような有効な薬剤は存在しない。現在本邦で進行期悪性黒色腫に対して行われている抗がん剤治療はDTIC単独療法もしくはDAC-Tam療法であり,後者が奏効率では優れるものの,いずれも生命予後に寄与しない点では同様である。世界的な標準治療はDTIC単独療法であるものの,他の治療法に比べて優れているからではなく,DTIC単独療法を凌ぐ他のよい治療法がないからという消極的な第一選択と言える。本稿では,細胞障害性抗がん剤を実施するうえで必要な効果と安全性評価の基本や,新規薬剤を検討する際の基準となるDTIC単独療法について,その実際と当院例について概説した。
  • 高橋 聡
    2009 年 24 巻 3 号 p. 504-509
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    皮膚悪性腫瘍における確立された化学療法は少なく,特に悪性黒色腫以外の皮膚がんでは臨床試験さえ十分にあるいは全く行われていない状況である。有棘細胞癌や乳房外Paget病に対する化学療法は,単独の施設による少数例の集積研究や1例報告が散見されるのみでエビデンスレベルは低いものと言わざるを得ない。現在までの報告をまとめていくと,有棘細胞癌に対する化学療法は遠隔転移巣あるいは術前補助療法として実施され,シスプラチンとドキソルビシンを用いるCA療法がfirst lineとして用いられることが多い。またCPT-11はsecond lineとして位置付けられている。進行期乳房外Paget病に対する化学療法は,5-FUとcisplatinやcarboplatinといったプラチナ化合物を中心とした多剤併用療法とdocetaxelの単剤投与が大きな柱となるようである。今後,多施設共同研究によるnon-melanoma skin cancerに対する化学療法の確立と新規抗癌剤の開発が望まれる。
教育コースⅡ-化学療法を知る②血液,造血系と支持療法
  • 米倉 健太郎
    2009 年 24 巻 3 号 p. 510-515
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    皮膚悪性リンパ腫に対しては,病型,病期に応じて内服化学療法や,主としてCHOP療法などの多剤併用化学療法が用いられ,特に予後が不良な成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)にはmodified LSG-15プロトコールによる治療も行われる。
     進行期菌状息肉症/Sezary症候群やATLに対しては近年同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)が試みられている。Allo-HSCTでは同種免疫が働き,graft-versus-lymphoma効果により抗腫瘍効果および長期の寛解維持が得られると考えられる。骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植(RIST)は65歳程度までの比較的高齢な患者に対しても施行可能であり,allo-HSCTは再発・治療抵抗性のリンパ腫に対して治癒を目指せる有効な治療と考えられる。しかし,感染症やGVHDをはじめとする移植関連合併症などの問題点もある。
  • 小田 慈
    2009 年 24 巻 3 号 p. 516-522
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル 認証あり
    我が国においては毎年2000~3000名の小児が小児がんを発症している。白血病はもっとも頻度の高い小児がんであり,小児がんの約40%,1000名前後が毎年発症すると推計されている。今日,小児の白血病は不治の病ではなくCurable disease(治癒可能な疾患)としてとらえられている。この治癒率の向上は多くは1960年代以降に導入されたTotal therapy(集学的治療)の概念に基づく多施設共同研究による,エビデンスの積み重ねが大きな推進力となった。抗がん剤などの,白血病そのものに対する治療に加え,抗生物質などの支持療法の進歩,無菌環境の整備といった環境要因,造血幹細胞移植などの新しい治療法の導入などが,その背景にある。
     現在,我が国においては,小児の白血病の治療は殆どの場合,全国的な多施設共同研究組織に属する白血病治療施設において前方視的な臨床研究として実施されている。本稿では小児白血病治療の進歩と現状について概説する。
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