症例は55歳の男性。菌状息肉症Stage IIB(T3,N0,M0)の診断で紫外線療法を開始したが,寛解,増悪を繰り返していた。徐々に難治となり略全身に電子線照射(20Gy)を行い,再び寛解が得られた。その後,再度増悪してきたため,エトポシド(ラステットⓇ)50mg/日の内服を開始した。一旦,partial responseが得られたが,右上肢を含め数ヵ所に深い潰瘍形成がみられ拡大した。ベキサロテン(タルグレチンⓇ,300 mg/m2/日)に変更したところ,潰瘍は徐々に縮小した。自験例より菌状息肉症においてベキサロテンは,エトポシド抵抗性の潰瘍病変においても治療効果が期待できる薬剤であることが示唆された。
セツキシマブ併用放射線療法は頭頸部扁平上皮癌において有効性が示されており,有棘細胞癌に対する効果も報告されている。今回我々は手術治療に同意が得られなかった3例の有棘細胞癌に対してセツキシマブ併用放射線療法を行った。セツキシマブは初回400 mg/m2,2回目以降250 mg/m2を週1回,計6~8回投与した。その間,放射線治療を併用した。治療により3例中1例で完全奏効,2例で部分奏効の結果を得た。Grade 3以上の有害事象は生じなかった。セツキシマブ併用放射線療法は有棘細胞癌においても治療の選択肢の一つになり得ると考える。
43歳,男性。後頭部皮下腫瘤を主訴に近医で穿刺,前医で摘出を試みられたが,出血などがあり一部切除のまま当科に紹介された。前医切除片の病理検査で悪性黒色腫などが疑われていた。当科で局所麻酔下に全切除生検を施行したところ頭蓋骨皮質にも黒色部位認めたため,改めて全身麻酔下に頭部皮膚の追加切除,センチネルリンパ節生検,後頭部黒色斑を中心に1.5 cmマージンでの頭蓋骨切除を行った。追加切除皮膚とセンチネルリンパ節は陰性であったが,頭蓋骨縫合線に腫瘍細胞が胞巣を形成して浸潤性に増殖しており,深部断端は陽性であった。硬膜浸潤も疑われるため,後日さらに頭蓋骨と硬膜を追加で摘出し,また脳皮質の表面も生検したが陰性であった。その後肝転移を認め,化学療法も効果なく1年9ヵ月後永眠された。熱傷瘢痕癌で頭蓋骨縫合線より硬膜浸潤した例の報告はあるが,悪性黒色腫の頭蓋骨縫合線を通じた頭蓋内への浸潤の報告例はなかった。
32歳,女性。2年前に自覚し,妊娠中に増大した右大陰唇の淡紅色結節。3×2cm大で弾性軟。ダーモスコピーで部分的に青白色調を呈し,多発性青灰色小球がみられた。樹枝状血管が目立つ。病理所見:結節の大部分が巨大な囊腫で形成されている。囊腫壁の細胞は,毛芽細胞様で,内部に壊死した腫瘍細胞とムチンの存在が推測された。周囲に小型の充実性胞巣あり,柵状配列を伴う。周囲には裂隙とコロイド鉄,アルシアンブルー陽性のムチン沈着あり。免疫染色でBerEP4とBcl-2が陽性でありCK20陽性細胞がみられなかったことから囊腫型基底細胞癌と診断した。妊娠中に増大する腫瘍は間葉系のものが多く,基底細胞癌などの上皮系腫瘍は稀である。ホルモン受容体の発現はみられず,妊娠時に増大した理由は不明である。
75歳,女性。10年前から後頭部の皮下腫瘤を自覚していた。生検では,腫瘍は真皮から皮下脂肪織にかけてびまん性に浸潤し,線維化を伴っていた。毛包と汗器官への分化を示しており,病理組織学的にmicrocystic adnexal carcinomaと診断し手術を施行した。水平方向の安全域は文献的考察から20 mmとし,深部方向の安全域は腫瘍細胞が存在する層より一層深い層で切除する原則に則り,僧帽筋の一部と骨膜をつけて切除した。術後,永久標本で切除断端陰性であることを確認し,遊離前外側大腿皮弁を用いて再建した。術後半年が経過し,腫瘍の再発は認めていない。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら