Skin Cancer
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第39回日本皮膚悪性腫瘍学会
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シンポジウム
ワークショップ
一般演題
  • 内堀 貴文, 岩下 宣彦, 石黒 暁寛, 山本 泰煕, 竹尾 友宏, 玉田 康彦, 高間 弘道, 渡辺 大輔
    2023 年 38 巻 3 号 p. 178-183
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

    本症例は,15年間にわたり植皮部とその隣接部位に表皮内悪性黒色腫の再発を繰り返している。初発時および再発の度に,5 mmのマージンを付けた根治的切除術および植皮術や軟膏加療による創閉鎖がされており,深部への浸潤や所属リンパ節転移,遠隔転移はみられず経過していた。また,各切除時に病理組織学的診断がされ,その度に表皮内悪性黒色腫,側方および深部の断端陰性を確認していた。今回は,表皮内悪性黒色腫から5 mmのマージンを付けた根治的切除術と残存植皮部位の切除を施行し,全層植皮術による創閉鎖を行った。本症例の経過を通じ,表皮内悪性黒色腫の植皮部内での再発様式について,汗管やリンパ管での異型メラノサイトの潜在や断端陰性部位の遺伝子異常メラノサイトの存在,新規での腫瘍発生の可能性について検討し,表皮内悪性黒色腫の発生と深部浸潤や遠隔転移への遺伝子異常について考察した。

  • 横山 恵美, 須山 孝雪, 松木 康譲, 西村 季紘, 片桐 一元
    2023 年 38 巻 3 号 p. 184-188
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

    36歳,男性。20歳から右下腿に黒色斑を自覚し,1年前から増大した。右下腿後面に径25×25×10mmの角化を伴う黒色結節がみられた。悪性黒色腫と考え2cmマージンで切除し,右鼠径センチネルリンパ節生検を施行した。結節は表皮と連続して類円型の腫瘍細胞が胞巣を形成し,N/C比が高く,粗大なメラニン顆粒を有していた。リンパ節転移があり,右鼠径・腸骨リンパ節郭清も行った。悪性黒色腫pT4bN3aM0 Stage IIIDと診断した。術後6ヵ月で多発骨転移,筋肉内転移が生じた。ペムブロリズマブで完全奏効したが,下垂体,甲状腺機能低下を生じ,投与を中断した。その14ヵ月後に脳転移が生じた。無症候性であり,ガンマナイフ照射とペムブロリズマブの再投与で,再度完全奏効を得た。悪性黒色腫の脳転移は予後不良であるが,定位放射線照射と抗PD-1抗体との併用が有効であることが報告されてきており,自験例も良好な経過を得た。

  • 福井 玲矛, 大西 正純, 佐々木 夢希, 宍戸 明衣, 浅野 和奏, 佐藤 友利, 井上 剛, 中川 倫代, 天野 博雄
    2023 年 38 巻 3 号 p. 189-194
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

    68歳,男性。38歳時に慢性腎不全に対して腎移植を行い,アザチオプリン,シクロスポリン,プレドニゾロン等の免疫抑制剤を30年近く内服していた。露光部に多形皮膚萎縮がみられ,手背や前胸部の角化性紅斑・紅色結節を切除したところ,異型性をもつ角化細胞と弾性線維の変性があり,日光角化症,有棘細胞癌,ケラトアカントーマと診断した。手術後,アザチオプリンの内服中止を患者が希望したため泌尿器科主治医と相談の上,中止した。現在,遮光指導を行い経過観察中である。臓器移植患者における皮膚悪性腫瘍発症リスクを提示するとともに,リスク増大に関与する因子の中から,紫外線曝露,免疫抑制,ウイルスなどについて考察した。

  • 瀧脇 道弘, 山本 有紀, 岩橋 吉史, 村田 晋一, 福本 隆也, 神人 正寿
    2023 年 38 巻 3 号 p. 195-198
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

    77歳,女性。初診1年前より左腰部に弾性軟で圧痛を伴う皮下腫瘤を自覚し,前医の外科で粉瘤を疑われ,全切除術を受けた。病理結果がspindle cell tumorで悪性の可能性が否定できないため,精査加療目的で当院へ紹介となった。病理組織では真皮~脂肪層にかけて異型性のある紡錘形細胞の増殖と豊富な膠原線維の増生を認めた。S100は陽性,Melan A,HMB-45,CD34は陰性であるためdesmoplastic melanomaが鑑別に上がったが,Ki-67陽性の細胞も少ないためneurofibromaも考えられた。術後5ヵ月後で再発は認めていない。

  • 島村 明里, 須山 孝雪, 横山 恵美, 西村 季紘, 松嶋 惇, 片桐 一元
    2023 年 38 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

    80歳,女性。初診2年前より右下腹部に紅斑が出現し,徐々に拡大した。右下腹部から右鼠径部にかけて15×15 cmの紅斑があり,その紅斑上に6×4 cmの紅色腫瘤と3×2 cm,2.2×2 cmの紅褐色結節があった。生検で乳房外パジェット病と診断された。腋窩や外陰部,肛囲に紅斑・脱色素斑はなく,CTで遠隔転移はなかった。腫瘍辺縁から1 cm離して切除し,左右鼠径センチネルリンパ節生検を行った。病理組織学的に,表皮内と一部真皮内に淡明な胞体と核小体の目立つ円形の核を有する異型上皮細胞が胞巣状に増殖し,異所性乳房外パジェット病と診断した。術後1年で再発はない。異所性乳房外パジェット病の発生起源は,異所性アポクリン腺由来,副乳腺由来など諸説あるが,現在では表皮細胞由来とする説が主流である。しかし,これまでの報告では自験例のようにmilk line上に一致した胸腹部発生例が多く,副乳腺由来を否定できないと考えた。

  • 増田 百音, 勝家 志歩, 佐竹 宏介, 面高 俊和, 小川 英作, 山田 靖, 柳澤 大輔, 木庭 幸子, 奥山 隆平
    2023 年 38 巻 3 号 p. 204-210
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

    症例1:50代女性。症例2:40代女性。症例3:60代女性。初診の2~5年前から陰部に痒みやびらんの自覚があり,小陰唇または大陰唇に2~4 cm大の結節を生じた。いずれも周囲の外陰部粘膜に白色硬化性の変化を伴っていた。生検で結節部は有棘細胞癌(SCC)の所見であったため,全摘を実施した。腫瘍周囲の皮膚には表皮の萎縮,表皮真皮境界部の液状変性,真皮浅層のリンパ球浸潤,膠原線維の膨化・増生などを認めたことから,硬化性萎縮性苔癬(LSA)に生じたSCCと診断した。外陰部のLSAはSCCの発生母地になり得る。本邦からの報告をまとめたところ,LSAを発症してからSCCと診断されるまでの年数は1~30年と幅があった。また,残存LSAからのSCCの再発の報告も存在した。SCCの再発防止およびLSAの症状緩和目的に,QOLを保つ範囲でLSAも可能な限り同時に切除するのが望ましいと考えた。またLSAを完全切除した場合も,長期的な経過観察が必要である。

  • 大幡 万里恵, 後藤 彩, 新川 衣里子, 藤原 進, 小野 竜輔, 吉岡 愛育, 神保 直江, 久保 亮治, 福本 毅
    2023 年 38 巻 3 号 p. 211-217
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

    症例は94歳,女性。初診の約3年前から左側頭部に病変が出現し増大した。前医での皮膚生検で基底細胞癌が疑われ当院紹介となった。当院初診時には,左側頭部に周囲と境界明瞭で36×22×8mmに隆起し,表面にびらんや痂皮を付着する黄色調の腫瘤を認めた。全摘出後の病理組織学的検査では2種類の腫瘍が隣接していた。大きな腫瘍の近傍に,基底細胞様細胞が表皮と連続して真皮内に胞巣を形成しており,Ber-EP4染色が陽性で基底細胞癌と診断した。一方,大きな腫瘍は基底細胞様細胞からなり,Ber-EP4染色は陰性で,一部に脂腺様の細胞とその近傍に管腔構造を認めた。脂腺様細胞と管腔構造以外でEMA,perilipinは陰性で未分化な脂腺腫と診断した。脂腺腫と基底細胞癌が隣接して発生した機序として,1.脂腺腫の細胞から基底細胞癌が生じた,2.それぞれが偶発的に生じた,3.共通の発生母地から生じたなどの可能性があるが,本例は発生母地として脂腺母斑があった可能性が考えられた。

  • 庄司 真美, 赤石 諭史, 小川 令, 桑原 大彰
    2023 年 38 巻 3 号 p. 218-222
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

    患者は左大腿の腫瘤を自覚していたが,20年以上未治療であった。食欲不振を主訴に受診した際,巨大腫瘤と左下肢全体の発赤,腫脹,熱感を指摘された。CTで大腿伸筋群内に腫瘍と皮下脂肪織の混濁を認め,腫瘍の圧迫によるコンパートメント症候群,腫瘤の感染あるいは出血の可能性を考え同日試験切開を行った。皮膚直下に淡黄色の腫瘍が確認されたが,膿瘍や出血は認めなかった。その後の造影MRIで筋層内の病変は肉腫化が疑われ,針生検を施行したところ,脱分化型脂肪肉腫の診断であった。下肢の感染兆候は抗菌薬投与と安静により速やかに軽快した。腫瘤は巨大であっても日常生活に支障が生じるまで放置されることがあるが,渉猟し得た限り蜂窩織炎が脂肪肉腫の受診契機になった報告はなく,発症機序を考察するとともに報告する。

  • 長谷川 道子, 高山 佳泰, 村田 祐子, 田村 敦志
    2023 年 38 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル 認証あり

    64歳,女性。初診の3年前に左大腿の皮下腫瘤に気づいた。初診時,左大腿内側に13×10 cmの弾性軟の皮下腫瘤を触知した。MRIではT1,T2強調画像で脂肪織と同様のほぼ均一な高信号を呈し,内部に結節構造や厚い隔壁構造はなく,脂肪抑制画像でも腫瘍全体が抑制され,腫瘍内に高信号域は認めなかった。臨床および画像所見より脂肪腫と診断し摘出したが,切除標本では腫瘍内の一部に異型間質細胞や異型脂肪芽細胞が少数みられ,atypical lipomatous tumor/well-differentiated liposarcoma(ALT/WDLPS)と診断した。辺縁切除であったが,追加切除はせずに経過観察しており,術後1年7ヵ月現在で再発はない。ALT/WDLPは術前に脂肪腫と区別するのが最も困難な悪性腫瘍である。表在性のALT/WDLPの予後は良いため,近年では辺縁切除がなされていれば,急いで追加切除をせず,経過観察することも選択肢の一つである。

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