日本画像学会誌
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58 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
依頼論文
  • 今泉 大作, 高島 真彦, 松岡 輝彦
    2019 年 58 巻 5 号 p. 494-500
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    近年,オフィスにおいては,クラウドやRPA (Robotics Process Automation) の活用・連携のため,紙文書ではなく,電子化文書にて管理・運用する必要性が増大しており,膨大な紙文書を簡単にかつ最適に電子化できる機能の重要性が高まっている.一方,紙文書の電子化においては,画質とサイズの最適化が難しく,画質を優先して,グレースケールでスキャンすると,ファイルサイズが大きくなってしまう.また,サイズを優先して,グレースケールではなく,白黒2値スキャンすると,文字と下地との区別が不明瞭となり,文字として視認できなくなる問題も発生している.そこで今回,白黒2値またはグレースケールの何れの階調再現方法が適切であるかを,原稿毎に自動判定する技術を新たに開発した.本稿では,同技術の概要について報告する.

  • 鎰谷 賢治, 内川 惠二
    2019 年 58 巻 5 号 p. 501-511
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    写真内のオブジェクト表面の見えを客観的な量を用いて予測する技術は,画像再現システムの画質に関わる性能の定量評価を可能とする有効な技術である.実物体の外観は,色,光沢,テクスチャなど様々な質感要素が統合されて一つの質感 (統合質感) を形成しており,単独の質感要素については,その定量化の研究が進みつつあるが,統合質感に関してはこのような研究はあまり進められていない.

    筆者らは.色と光沢が異なる統合質感の特性を明らかにするために,2種の視覚刺激を観察する際に知覚される統合質感の差に着目し,刺激として人物の顔肌の画像を使用して,色と光沢が同時に異なる場合に知覚される統合質感差の評価実験とその定量化を行った.その結果,知覚される統合質感の差は画像統計量の線形和によって高い精度で予測できることを確認した.また,画素の並べ替えによって抽象化された顔肌画像を用いた同様の実験によって,この形式の統合質感の差の予測が一般性を有することが示唆された.さらにこの定量化手法と抽象化画像を用いた画像工学に対する新たな実用的な応用を提案する.

Imaging Today
  • 細萱 敦
    2019 年 58 巻 5 号 p. 513-522
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    現代日本のビジュアルエンターテイメントの中心に位置しているマンガ.国際的にも大きな影響力を及ぼしているが,ここに至るまでに,わが国には絵と文字の組み合わせによる“物語コンテンツ”追究の長い歴史があった.平安時代に宮中で作られた絵巻物に始まり,江戸時代の木版印刷の発達によって浮世絵とともに大衆文化として花開く絵草紙 (本).葛飾北斎による“漫画”の語の使用の開始を経て,明治時代の文明開化以降,昭和戦前にかけと定着していったマンガ文化について変遷を概観する.内的外的にどんな要素が,マンガをマンガたらしめていったのか?

  • 坪田 亘記, 相澤 清晴
    2019 年 58 巻 5 号 p. 523-527
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    漫画での顔認識は,コンテンツに基づく漫画での画像処理に重要であるが,漫画の画風は著者によって大きく異なるため難しい課題である.本稿では,個別の漫画に現れる顔画像を高い精度でクラスタリングするために,個別の漫画に顔特徴量を適応する手法を提案する.まず,漫画における顔認識のための汎用な特徴量を学習する.その後,その特徴量を対象の個別漫画に対して,ページやコマの情報を考慮して擬似的に作成した正ペア・負ペアに基づき深層距離学習を行うことで適応する.104冊の漫画データを用いて実験を行い,我々の特徴量の適応手法を用いることで,漫画での顔のクラスタリング性能は大きく向上し,NMI (Normalized Mutual Information) では0.08,精度では0.16上昇することを示した.

  • 朴 炳宣, 松下 光範
    2019 年 58 巻 5 号 p. 528-537
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    コミック画像を対象とした情報抽出は,対象となる画像が白黒の線画で表現されていることや,描画内容に誇張や簡略化などコミック特有の技法が用いられていることなどの理由により,写真などの自然画像に比べて難しく,SIFTやHOGなど従来画像処理で用いられてきた特徴量を用いるだけでは十分な精度が得られなかった.しかし近年,コミックに対して深層学習を応用した手法が提案され,大きな精度向上が図られるようになってきている.それに伴い,コミック画像中の物体認識や抽出だけでなく,ストーリーの解釈や推測となどのより内容に踏み込んだ応用が行われている.本稿では,こうしたコミックの内容推定における深層学習の研究動向について紹介する.

  • 三原 鉄也
    2019 年 58 巻 5 号 p. 538-544
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    90年代以降,情報処理分野でもマンガを対象にした研究が進められている.特に昨今は人工知能技術の進展によって,マンガの意味内容を扱う,より高度なマンガ画像の処理の実現が期待されている.マンガの内容を扱うに際してはそれらをマンガのコンテンツ画像のメタデータとして記述し利用する方法が有用である.本稿では筆者らが取り組んでいるマンガの内容や構造を利用するためのメタデータに関する研究について解説する.画像とそのアノテーションをWeb上で共有するための国際的なメタデータ標準International Image Interoperability Framework (IIIF) を利用したマンガ画像とメタデータの統合的提供システムを取り上げる.

  • 上野 未貴
    2019 年 58 巻 5 号 p. 545-551
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    画像工学の研究分野においてまんがコンテンツの中でも4コマ漫画が複数の問題を包含する魅力的な題材であることを本稿では紹介する.特に,4コマ漫画は画像と言語からなるマルチモーダルなコンテンツであり,長さと形状に制約があり,一定の型を持ちつつも描けるストーリーの自由度が高く,一方で短いコマ数で話をまとめるという必要性がある.そのため,日常の感情や背景知識を複合的なオブジェクトの取捨選択により描いており,ストーリーの理解には領域横断の技術が必要となると同時に,新たな技術を発展させる好題材である.具体的には,筆者のJST ACT-I平成29年度採択課題である「深層学習による4コマ漫画のストーリー解析用データセット及びフレームワークの開発」の事例とその過程で得た知見をもとに論じる.

  • 中矢 誠, 野口 克洋, 山西 良典, 西原 陽子
    2019 年 58 巻 5 号 p. 552-561
    発行日: 2019/10/10
    公開日: 2019/10/10
    ジャーナル フリー

    本稿では,漫画に関する研究を俯瞰した後に,漫画のプロット制作を支援するシステム「ズガーン」の開発について述べる.漫画には様々なコンテンツが存在しており,文化の一翼を担っている.近年では,ソーシャルメディアの普及により,コミュニケーションツールとしての利用も観測されるようになった.提案システムでは,漫画の制作,研究の2つの側面からの支援を目指す.提案システムは,描画が苦手な人でも容易にプロットを制作できるように,漫画家が描画する際に考えるポイントを直感的なインタフェースで支援する.また,どのような漫画が効果的に意図を伝えられるのかについては,プロの漫画家であっても試行錯誤に困難を要する.解決の糸口を見つけるため,これまでに公開されてきた膨大な漫画について,その傾向や特徴を分析する研究は活発に行われているが,漫画は画像のため,機械的な分析を行う上で,画像解析の技術に大きく左右されてきた.提案システムは,漫画研究を支援するため,メタデータによって漫画を構成する.

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