写真内のオブジェクト表面の見えを客観的な量を用いて予測する技術は,画像再現システムの画質に関わる性能の定量評価を可能とする有効な技術である.実物体の外観は,色,光沢,テクスチャなど様々な質感要素が統合されて一つの質感 (統合質感) を形成しており,単独の質感要素については,その定量化の研究が進みつつあるが,統合質感に関してはこのような研究はあまり進められていない.
筆者らは.色と光沢が異なる統合質感の特性を明らかにするために,2種の視覚刺激を観察する際に知覚される統合質感の差に着目し,刺激として人物の顔肌の画像を使用して,色と光沢が同時に異なる場合に知覚される統合質感差の評価実験とその定量化を行った.その結果,知覚される統合質感の差は画像統計量の線形和によって高い精度で予測できることを確認した.また,画素の並べ替えによって抽象化された顔肌画像を用いた同様の実験によって,この形式の統合質感の差の予測が一般性を有することが示唆された.さらにこの定量化手法と抽象化画像を用いた画像工学に対する新たな実用的な応用を提案する.
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