日本画像学会誌
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48 巻, 1 号
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原著論文
  • 安部 誠祐, 軽部 宏明, 面谷 信
    2009 年48 巻1 号 p. 3-8
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    電子写真用の液体トナーや電気泳動表示方式等に用いられている非水系液体中の電気泳動現象に関し,粒子周囲に形成される電気二重層の挙動について実験により検証した.平行電極を用いた各種溶液への電界印加による電極電位の計測結果より,無極性溶媒に金属石鹸と粒子を加えた溶液では,両電極ともに電極印加電圧とほぼ同じ絶対値の電位までの急速な電位変化が見られるのに対して,無極性溶媒のみ,または無極性溶媒と微粒子,または無極性溶媒と金属石鹸の各溶液ではそのような結果は得られなかったことから,本実験系において粒子の駆動力源となる粒子電荷は,主に金属石鹸によるイオンから供給されると考えられる.また,無極性溶液のみでの電極電位変化は,ほとんど見られないことから無極性溶液に自然混入する微量水分由来のイオンが粒子電荷として寄与する部分はほとんどないと考えられる.また,無極性溶媒に金属石鹸と粒子を加えた溶液で両電極ともに同様の電位変化が見られることから,粒子の周囲に形成された電気二重層は粒子の駆動力源となる正イオン群と電気二重層から脱離して粒子と反対方向へ泳動する負イオン群に分離したと考えられる.
  • 三尾 浩, 樋口 亮平, 石丸 和花奈, 下坂 厚子, 白川 善幸, 日高 重助
    2009 年48 巻1 号 p. 9-14
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    本研究では並列化DEMを用い,2成分電子写真システム現像槽内の粒子挙動の解析を行い,トナー付着力,および,静電気力が攪拌挙動に及ぼす影響を検討した.計算粒子数は約33万個(トナー濃度:1.0wt%),総計算ステップ数は7500万ステップである.粒子間付着力や静電気力を考慮しないとき,トナーは攪拌時間の増加に伴い,外壁近傍に偏析した.しかし,付着力,静電気力を考慮した場合は,トナーはキャリア粒子間に存在し,多くの接触点が確認された.しかし,キャリア,トナー間の新たな接触は,帯電量を考慮しているもの方が小さく,さらに,攪拌時間の増加とともに減少した.このことより,帯電したトナーはキャリア粒子表面に付着したまま運動しており,時間の増加に伴い,トナー・キャリア間の電荷移動は減ると考えられる.このことが,実験において帯電量が飽和する原因と考えられる.
  • 岡田 久雄, 竹内 学
    2009 年48 巻1 号 p. 15-22
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    2成分現像剤のトナーの比電荷を解析する速度論的帯電理論を再検討した.従来の二つの理論,(1)比電荷が撹拌時間無限大でゼロになる結果を示す比電荷の時間変化理論と,(2)比電荷が混合比に全く依存しない関係式が導かれる理論において,方程式の組み立てと導出過程における数学的処理を補足した.
    その結果,速度論的理論から導かれる比電荷と混合比の関係式は,表面状態理論から導かれた結果に整合することを示した.
    したがって,比電荷と混合比の関係を解析した3つの理論,表面状態理論,修正された接触電場理論と速度論的理論は整合することがわかった.
  • 三尾 浩, 河村 順平, 下坂 厚子, 白川 善幸, 日高 重助
    2009 年48 巻1 号 p. 23-29
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    本研究では,DEM(離散要素法,Discrete Element Method)を用い,2成分電子写真システム現像部における磁気ブラシ挙動解析シミュレータの開発を行った.開発現場での活用を目指し,GUI(Graphical User Interface)による初期条件の設定や,一般的に普及していると考えられるJ-MAG Studioによる磁場データをインポートできるようにした.本シミュレーションにおいて,ユーザが変更可能なパラメータは,感光体径・回転速度,現像ロール径・回転速度,および,両者の現像ニップ部での回転方向,キャリア粒子径とその分布,現像ギャップ,磁場強度,摩擦係数,付着力等であり,十分な検討が可能であると考えられる.計算後,ニップ周りのブラシ挙動の可視化,および,感光体表面に与える接触力を得ることができる.本シミュレータの計算時間は,計算粒子数に比例するが,粒子数15000個程度であれば,約半日で終了するため,一晩で検討できる.そのため,十分開発現場で活用できるシミュレータであると考えられる.
Imaging Today
  • 川田 亨, 山本 隆治
    2009 年48 巻1 号 p. 31-36
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    近年注目されているインクジェット技術は,印刷分野はじめ電子デバイス分野や医療分野でも実用化が進んでいます.drupa2008は,印刷分野におけるインクジェット技術を利用したデジタル印刷機が数多く出展された「Inkjet drupa」として世界中が注目した展示会でした.
    デジタル印刷機の動向を各社装置ベンダーの製品開発から観察し,そして,大日本スクリーン製造株式会社の取り組みと製品紹介を行い,デジタル印刷機におけるインクジェット技術の応用例を考察しました.
  • Kathleen M. VAETH
    2009 年48 巻1 号 p. 37-41
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
  • 中野 暢彦
    2009 年48 巻1 号 p. 42-50
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    昨今,電子写真方式を用いたデジタル複合機の印刷分野への進出が進んでいる.これは,元々Print on Demand(POD)に適している電子写真方式の性能が印刷レベルに近づいてきたことを物語っている.この様な中,SHARPも2007年にフラッグシップモデルとしてデジタル複合機MX-M1100/M950/M860を発売し,POD市場参入の第一歩を踏み出した.
    該機はPOD市場に最も求められる「生産性」・「安定性」・「信頼性」・「耐久性」といった基本性能を高い次元で達成することを目指して開発されており,本報告はその開発技術の中から電子写真のコアとなる感光体について,(1)高速化に求められる高応答性を実現する為のシミュレーションを駆使した「ホール輸送材料の分子設計」,及び(2)ライフ1000K枚を達成させるための耐摩耗性並びに耐キズ性に対応した「ロングライフ設計」について報告する.又,高速プロセスにおける1200dpi高解像度化に求められる各種プロセス設計,更には各種制御技術を導入し画像の安定化を図っていることについても触れておく.
  • 杉山 敏弘, 藤沼 善隆, 中山 政義, 北嶋 良一, 佐藤 敏哉, 岡本 政巳
    2009 年48 巻1 号 p. 51-57
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    RICOH Pro C900は,プロダクション市場向けプリンターの新ブランド「RICOH Proシリーズ」の第一弾として,POD(プリントオンデマンド)ニーズに対応したデジタルフルカラープリンターである.主な特徴は,以下の通りである.
    1) クラス最速のカラー/モノクロともに毎分90枚の高速出力(A4横送り,60~300g/m2
    2) 安定した高画質出力(リアル1200dpi,従来比3~5倍の長寿命感光体,用紙の高精度スキュー補正や位置(レジスト)合わせ)
    3) 汎用性の高い高機能Fieryコントローラを標準搭載
    4) 本体の大幅なダウンサイジング・軽量化を実現(本体サイズ1,250×1,100×1,440mm,700kg)
  • 有賀 誠
    2009 年48 巻1 号 p. 58-62
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    短納期・ショーロット・バリアブル印刷の市場要求の高まりと共にデジタル印刷が本格的に市場に浸透してきたが,生産性・品質・ランニングコストの総合的なバランスとして電子写真技術を用いた機種が市場をリードしている.その中でも高品質で群を抜くIndigo press(インディゴプレス)の構造と液体トナーを使ったイメージングプロセスを解説し,さらに2008年に上梓した高速モデル(プレス7000)の新機構を紹介する.
  • 西海 秀文, 増子 和久, 鈴木 千秋, 風間 敏之, 大泉 政浩
    2009 年48 巻1 号 p. 63-67
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    700 Digital Color Pressは新開発のEA-Ecoトナーを採用し,Print On Demand向けであるが,オフィス複合機と同等の機械サイズで,フルカラー毎分71枚(64~176g/m2,A4ヨコ片面出力時)という高い生産性を達成した商品である.通常のオフィスカラー複合機には無い表裏レジストレーション調整機能,はがきサイズから330×488mmまでの用紙サイズ自動両面機能,300g/m2用紙まので厚紙走行,紙種に合わせたカール補正や転写レベル調整機能など,用紙適応性を向上させた.本解説では,700 Digital Color Pressの位置づけと仕様,EA-Ecoトナーの特徴,用紙搬送やレジストレーション技術などについて述べる.
教育講座
  • 日本画像学会編集委員会
    2009 年48 巻1 号 p. 68-70
    発行日: 2009/02/10
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル 認証あり
    日本画像学会では画像形成技術に関わる若手技術者の方々を対象として2005年より「教育講座」と銘打ち,2008年までに5講座を掲載して参りました.
    当学会が対象としている技術分野はインクジェット,電子写真,ダイレクトマーキング,電子ペーパー,エレクトロニック・イメージング,デジタルファブリケーション,画像入力(イメージスキャナー,デジタルカメラ),画像評価,感性画像,画像技術関連環境保全,画像工学という多岐にわたっております.
    本講座はこれらの技術を今後も発展させていく為に,これらの技術を形成している基本的科学技術を紙面展開し,若手技術者の方々や技術分野を広げていきたいと考えている中堅技術者の方々への一助になればと考え,開始したものです.
    176号までの5講座の概要を紹介しますと,第1回講座では「物質の色と構造について」において物質の発色原理を全3回にわたり横浜国立大学の水口先生に執筆していただき,第2回講座では全4回にわたり茨城大学の竹内先生に「電磁気学・静電気学入門」について執筆していただき,基礎だけでなく応用分野としての粉体の帯電についても言及していただきました.第3回は早稲田大学の川本先生に日本画像学会講習会において多数の聴講者を集めるシミュレーション技術について「電子写真技術のシミュレーション入門」と題して全4回にわたって執筆していただきました.第4回は画像の入出力には欠かせない光学技術について全6回を東海大学の室谷先生に「光学入門」と題して執筆していただき光学において用いられる作図法の紹介も含めていただきました.さらに,教育講座シリーズIの最後として京都大学の増田先生に「粉体工学入門」という題名で電子写真用トナーを理解する上で重要な粉体についての基礎的な講座を全3回にわたって展開していただきました.
    以下にシリーズIの全講座について,第1回から最終回までの目次と掲載巻号を記載します.再度各巻をお手にとっていただき必要に応じて内容をご参考いただければと思います.
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