日本画像学会誌
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51 巻, 1 号
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原著論文
  • 情野 國城, 飯野 修司, 平原 秀昭, 小沼 崇明, 吉田 一郎, 海江田 省三
    2012 年 51 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    通常の有機単層感光体 (OPC) において,デプリーション帯電と表面電荷注入は,電子写真プロセスにおける重要課題である.帯電プロセスの初期段階において,有限個数の自由電荷や浅いトラップから放出された電荷は,感光層のバルクから一掃される.また,コロナイオンからの表面電荷は,コロナによって生成された自由表面上の化学物質の吸着に起因して感光層に注入される.デプリーション帯電と表面電荷注入は,電荷受容性を低下させる.しかしながら,高ガンマ感光体は,多量のデプリータブル電荷や過度の表面電荷注入があったとしても,電荷受容性はほとんど低下しない.その高ガンマ感光体の光減衰 · 暗減衰特性は,デプリーションと表面電荷注入とを考慮した数学的構造トラップモデルによって良く説明することができた.
  • 滝口 真也, 天谷 賢治, 小森 智裕, 辺見 茂, 川原 仁志
    2012 年 51 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    電子写真は,現像剤粒子を高速かつ高精度に制御する技術であり,高画質,高速,カラー化等の高度で多様な要請に応えるために離散要素法 (DEM) による数値シミュレーションの設計援用が有効である.一方,DEMは全粒子間の電磁的,機械的相互作用を計算し,個々の運動方程式を時間ステップ毎に積分するため,計算量が膨大となってしまう.近年,グラフィックスプロセッサ (GPU) は,低消費電力で比較的安価な計算能力の高い共有メモリ型並列プロセッサとして高性能計算 (HPC) の分野をはじめ,広く注目を集めている.このGPUを用いた数値計算はすでに様々な科学技術計算で行われており,非常に高い演算性能が達成されている.そこで,本研究では,DEMによる現像剤挙動解析シミュレーションにGPUやツリー法といったHPCの分野で一般的に用いられている高速化手法を適用した.また,TSUBAME 2.0のThinノード,1ノードに提案するシミュレーション手法を実装し,有効性を検証した.
  • 高橋 良輔, 伊藤 朋之, 細井 清, 荻野 孝
    2012 年 51 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    用紙カールは複写機における重要な品質課題の一つである.用紙カールを抑える施策としてデカーラ装置がある.デカーラ装置では,主に用紙に対して大きな曲率を与えることで用紙を矯正する.デカーラにおけるカール矯正量は,デカーラローラの径,押し込み荷重,搬送速度など様々な要因で変化する.さらに矯正するべきカール量は用紙種によって異なるため,デカーラのパラメータ設計には莫大な工数を要する.そこで本研究では,用紙を粘弾塑性体として物理モデル化し,デカーラにおけるカール矯正効果を予測するためのシミュレーション技術の構築を行った.それにより,高い精度でカール矯正量を予測できるシミュレーション技術を確立し,デカーラのパラメータ設計工数を大幅に削減することができた.
Imaging Today
  • 北村 孝司, 西 眞一, 中島 一浩, 五十嵐 明, 木村 正利
    2012 年 51 巻 1 号 p. 30-41
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    過去30~40年間における記録技術を取り巻く社会環境の変化およびユーザの画像に対する要求の変化に対して,画像技術がどのような歩みを辿ったかを俯瞰した.その中で,開発された各種の画像技術の記録原理と特徴および用途を整理した.その結果,今日まで生き残った3つの記録技術 (電子写真,インクジェット,サーマル記録),と役目を終えた或いは廃れた記録技術との差異の本質について整理ができ,生き残った各々の記録技術は,他の記録技術にはない特徴を生かした用途がある技術か,用途に合わせて開発された技術であることを見出した.また,10年先のプリンテイング技術に求められるものは,人間の感性に訴えることができる付加価値の高い印刷技術であり,一例として3D印刷技術についても触れている.
    本稿は,日本画像学会年次大会ICJ2010の基調講演 「未来を創るノーベルプリンティング技術」 の内容を基に原稿を起こしたものである.
  • 石井 重徳, 池嶋 昭一
    2012 年 51 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    孔版印刷は,版の形態によりスクリーン印刷と謄写印刷に大別される.謄写印刷は,1874年のズッカートの発明以来,多くの技術開発が行われてきた.特に1980年以降,製版と印刷の全工程を自動化した製版印刷一体型機が実現したことと,デジタル信号を扱える感熱製版法を確立したことにより,用途が急拡大した.現在では,簡便に,早く,多枚数の印刷物を得ることができる作像技術という特徴を活かして,感熱孔版印刷機は,世界の多くの国々で事務用途や軽印刷の分野で用いられている.本稿では,それらの技術開発の歴史を振り返るとともに,感熱孔版印刷の作像技術の要点について,製版 · 印刷 · プロセス設計の観点で解説する.
  • 渡辺 毅, 村澤 芳博, 角野 文男, 雨宮 幸司
    2012 年 51 巻 1 号 p. 49-58
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    キヤノンはカールソン方式とは異なる電子写真プロセス (NP方式) を1965年に開発した.NP方式は作像工程において,一様に感光体を帯電した後に,画像露光と同時に除電を行うこと,そのことがカールソン方式と異なる.その後,NP方式を採用した多くの製品を世に送りだした.製品の開発過程では付属する多くの課題を解決し,多くの周辺技術を権利化した.
    光導電材としては硫化カドミウム (CdS) を採用し,高感度の感光体を開発した.感光体の層構成は3層よりなっており,導電性の基盤,光導電層,表層を被覆する絶縁層である.この感光体は,可視領域から近赤外に渡って高い感度をもっているために,早期にレーザプリンタやカラー複写機を開発することができた.また,感光体が硬い絶縁層で覆われていることで,ブレードクリーニング方式の技術を採用することができ,この技術はその後NP方式以外の複写方式にも用いられ,現在も多数の機種に使われる息の長い技術となった.
    また,静電潜像は絶縁層間の電荷により形成されるため減衰することがない.この特長を生かし我々はスクリーンプロセス技術を開発し当時世界最高速の白黒高速複写機に応用して製品化した.
    さらに環境変動に対してNP方式の潜像電位が変動するという課題解決として,感光体上の電位を検知するセンサの開発をおこなった.この電位制御技術はわずかな色の変化も許されないカラー複写機において大きな成果を生んだ.
  • 星野 坦之
    2012 年 51 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    静電記録はノンインパクトプリンティングの中では,ピン電極による放電で静電潜像を形成,現像する記録方式と分類されている.静電記録技術は,記録機構がシンプルであるという特徴があり,ファクシミリ,広幅カラープロッタに応用された.普通紙化に対応するため,普通紙記録プロセスが開発された.本報告では,静電記録と電子写真記録の比較もなされている.
  • 面谷 信
    2012 年 51 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    イオン流を誘電体表面に照射することにより潜像を形成する記録技術として,画素個別にAC放電イオン源を使用し強靱な誘電体ドラム媒体を活用した圧力転写 · 定着プロセスによる高速多枚数プリントを特長とするイオノグラフィ方式,DCコロナ放電イオン源を使用して画素単位の階調表現能力を特長とするイオンフロー方式,感光体スクリーン上への画像メモリ効果を利用して同一原稿に対する多枚数高速複写を特長とするリテンション方式について,開発経緯と到達点を概説するとともに,各々普及に至らなかった理由等について見解を述べる.普及に至らなかった理由のひとつとしてはアナログプリント技術が画像メモリの大容量化や誤差拡散法等を駆使した疑似階調表現技術の進展を生かしたデジタルプリント技術に凌駕されたことが挙げられる.
  • 山崎 弘
    2012 年 51 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    Elcographyは電気化学的な反応を利用し,インクを硬化 (凝固) させ,硬化インクを転写する印刷方式である.反応速度も早く,高速印字が可能.針電極にて画像を形成するため,バリアブルプリントが可能である.硬化反応は陽極表面のインク層を電界により生じる金属イオンでイオン架橋させる方式である.
  • 前田 秀一
    2012 年 51 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    サイカラーは,カラーコピー機などへの応用を目的とした,マイクロカプセル技術と光重合反応を利用するユニークな作像技術である.この技術は,露光によって光重合開始剤から発生したラジカルによって,マイクロカプセルに内包されたアクリルモノマーが硬化する現象に基づいている.本稿では,サイカラーの基本原理と,潜像形成から実像形成までの工程について,光化学的な観点から解説する.当初,サイカラーの長所は,高画質,高速性,フルカラー,階調再現性などにあると言われていた.一方,サイカラーの短所は,可逆的な化学反応由来の画像保存性にあると思われる.技術的な観点からは,サイカラーが今日まで生き延びることができなかった理由の一つは,この低い保存性にあったと考える.
  • 日下田 茂
    2012 年 51 巻 1 号 p. 81-91
    発行日: 2012/02/10
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
    最近,日常生活では青焼きのコピーを見る機会がなくなってしまった.青焼きはジアゾコピーの俗称であるが,ジアゾ複写プロセスでコピーされた画像の主流が青色画像であったため,このように呼ばれていた.ジアゾ感光紙と複写機は1955年から1975年にかけてわが国において広く普及した複写プロセスである.その画像形成プロセスは,感光紙に塗布されたジアゾニウム塩の2つの特性から成り立っている.特性の1つ目は,ジアゾニウム塩は光照射によって分解されて,無色の化合物になる.特性の2つ目は,分解されなかったジアゾニウム塩はカップラーと反応して有色のアゾ染料を生成する.このジアゾニウム塩の特性を利用して,露光工程と現像工程を経由することにより,ポジ-ポジの複写画像が得られる.ジアゾ複写プロセスはコピー単価が安くしかも操作が簡単という長所により,様々な産業分野において設計図面等の大量の複写用途に利用されてきた.本稿では,ジアゾ作像技術の1つであるジアゾ複写プロセスの変遷について紹介する.
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