キヤノンはカールソン方式とは異なる電子写真プロセス (NP方式) を1965年に開発した.NP方式は作像工程において,一様に感光体を帯電した後に,画像露光と同時に除電を行うこと,そのことがカールソン方式と異なる.その後,NP方式を採用した多くの製品を世に送りだした.製品の開発過程では付属する多くの課題を解決し,多くの周辺技術を権利化した.
光導電材としては硫化カドミウム (CdS) を採用し,高感度の感光体を開発した.感光体の層構成は3層よりなっており,導電性の基盤,光導電層,表層を被覆する絶縁層である.この感光体は,可視領域から近赤外に渡って高い感度をもっているために,早期にレーザプリンタやカラー複写機を開発することができた.また,感光体が硬い絶縁層で覆われていることで,ブレードクリーニング方式の技術を採用することができ,この技術はその後NP方式以外の複写方式にも用いられ,現在も多数の機種に使われる息の長い技術となった.
また,静電潜像は絶縁層間の電荷により形成されるため減衰することがない.この特長を生かし我々はスクリーンプロセス技術を開発し当時世界最高速の白黒高速複写機に応用して製品化した.
さらに環境変動に対してNP方式の潜像電位が変動するという課題解決として,感光体上の電位を検知するセンサの開発をおこなった.この電位制御技術はわずかな色の変化も許されないカラー複写機において大きな成果を生んだ.
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