日本画像学会誌
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42 巻, 3 号
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論文
  • 掛下 智美, 柳原 弘和, 小門 宏, 北村 孝司, 星野 勝義
    2003 年 42 巻 3 号 p. 196-205
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    Ba1-xPbxTiO3強誘電体を合成し,その強誘電イメージングへの応用について検討を行った.まず,Ba1-xPbxTiO3固溶体ペレットを形成し,上記イメージング材料に必要とされる物性条件について検討を行った.その結果,ポーリング処理が十分行え,かつ焦電性が十分発現するためには,より小さな比誘電率とより大きな抵抗率を有する強誘電体を選択する必要があることがわかった.本材料系の場合,最適材料は比誘電率420,抵抗率8.0×1013Ωcmを示すBa0.75Pb0.25TiO3であり(x = 0.25),発現する焦電電位は正コロナポーリング処理の場合-0.23V/μm,負コロナポーリングの場合+0.25V/μm(従ってコントラスト電位 = 0.48V/μm)であった.
     次に,より実用に近い形態としてBa0.75Pb0.25TiO3/ポリビニルブチラール複合膜(膜厚約80μm)の強誘電イメージングについて検討を行った.その結果,複合形態はポーリング挙動及び焦電性の観点から,固溶体よりも望ましい形態であり,より大きな焦電電位の発現が可能であった.正及び負コロナポーリングの場合,その値はそれぞれ-1.2V/μm及び+1.6V/μmであるので,コントラスト電位は2.8V/μmであった.なお,その最大の焦電電位を発現させるためには,Ba0.75Pb0.25TiO3粉体の合成において,仮焼回数(1000°C,3時間)を2あるいは3回とし,読み出し加熱温度を140°Cとすればよいことがわかった.また,トナー現像を行った結果,焦電電位分布に応じた画像形成が可能であることがわかった.
  • 林 宏憲, 山崎 裕介, 森 愼平, 星野 坦之
    2003 年 42 巻 3 号 p. 206-208
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    JPEGを改良した次期画像符号化方式としてJPEG2000が標準化され,各種応用が検討されている.JPEG2000をベースとした動画符号化法であるMotion-JPEG2000の画質劣化の分析を行い,エッジ付近にモスキートノイズが生じることに加えて,濃度変化の少ない領域に濃度が時間的に波打つような変動が気になることが分かった.これらの劣化を改善するため,平均化とメディアンフィルタを検討した.閾値を有するメディアンフィルタで,画質が改善されることが得られた.
  • —電子写真のための基礎研究—
    大熊 康典, 本間 弓子, 高橋 雄造
    2003 年 42 巻 3 号 p. 209-214
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    帯電ムラを研究するために,直流電圧を印加した金属ローラでポリエチレンテレフタレート・シートを帯電し,ローラとシートとの間のくさび状空気ギャップに生じる放電を観測した.帯電後に有色粉をふりかけると,シート上に帯電パターンが可視化できる.帯電ムラのパターンはローラ印加電圧があるしきい値を越えると現れ,このしきい値は,放電パルスが現れるしきい値とも一致する.このしきい値は印加電圧の極性に依存しない.帯電ムラのパターンは,印加電圧が正の場合では星形模様,負の場合では円形模様である.観測された放電光の長さは,帯電ムラパターンのくり返し距離とほぼ一致する.従って,観測された帯電ムラは,シートがローラに巻き込まれるときに起きる放電によるものである.部分容量とPaschen則を使うモデルによって,空気ギャップにかかる電圧を計算し,帯電ムラの起きるしきい値を求めることができる.
  • 小寺 宏曄
    2003 年 42 巻 3 号 p. 215-223
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    本論文では,分光パレットを媒介してRGB画像から擬似的な分光画像への変換方法を提案し,分光データの圧縮について論じる.3原色画像の各画素を,色票の分光分布データが蓄積された分光パレットを参照して,近似色票に置換することによりパレットの色材と等価な分光画像に変換できる.生成された分光画像は,インクと紙のセットに対する異なる照明光の下での色再現性や色の見えを実際の画像で事前に評価に供することができ,新しい色材の開発に有効である.分光画像のデータ量は膨大となるので,ここではSVD(特異値分解)による圧縮を試みた.36画素×36波長のブロックに分割してSVDを施すことにより,少数の特異値のみで分光分布を高精度で近似でき,画素の空間的相関および分光波長成分の相関を効果的に利用した圧縮が可能であった.変換された分光画像は,実世界とは異なるパレットの分光分布をもつが,膨大な分光画像データの圧縮の可能性を推定でき,あるインクと紙の組からなる記録メディアに対して,異なる照明光源下での再現画像の色の見えについてのシミュレーションを可能とする.SVD圧縮による色再現精度について論じ,4種の蛍光灯の下でのインクジェットプリントの再現色の見えについての実験結果を紹介する.
  • —相変化光ディスクの寿命評価の検討—
    入江 満, 沖野 芳弘, 久保 高啓
    2003 年 42 巻 3 号 p. 224-229
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,電子画像記録の記録媒体として普及している高密度書換え形光ディスクの信頼性寿命を評価し,環境信頼性に対する標準測定手法を確立することを目的としている.本論文は,相変化光ディスクを用い,高温高湿加速試験(80°C,85%RH)を施した後,一般室内環境下で保管試験を実施し,信頼性寿命の推定及び寿命に影響を与える要因について検討したものである.寿命評価には,指標として光ディスク再生信号のバイトエラー率(BER: Byte Error Rate)を用い,光ディスクの任意領域のBER評価が可能な専用測定系を構築した.実験結果より,相変化光ディスクの信頼性寿命は,推定50∼100年という長期間であることを確認すると共に,信頼性寿命には,相変化膜の初期化状態やデータ記録時の記録速度が影響を与えることを明らかにした.
  • 高宮 英秋, 面谷 信, 高橋 恭介
    2003 年 42 巻 3 号 p. 230-236
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    網膜上の錐体細胞の分配を考慮すると,人間の視野内の解像度は一定ではありえない.しかしながら,解像度分布の詳細はまだ明確にされておらず,脳内の仮想スクリーン上にどのような画像が得られているかは不明瞭なままである.本研究は,脳内の仮想スクリーン上で形成される画像を明確にしようとするものであり,この研究から,劣化を感じさせない画像の最低セットを明らかにすることにつながるものである.まず視野内の解像度分布の測定実験として,スクリーンに投影されたパターンの配列の中から目標パターンを探索するタスクを与えたときの視線の動きを記録した.解像度分布はこれらの視線の計測結果を使用して得た.また彩度に関する視野内の感度分布を測定する実験として,周辺視野領域において彩度を低下させた画像を見たときの主観評価を行なった.被験者には,画像の彩度低下に関する印象を5段階で答えさせた.彩度の感度分布および解像度分布の測定結果は,網膜上の錐体細胞の分布と類似した曲線を示した.測定により得られた分布曲線に従って,周辺部の解像度,彩度のいずれかまたは両方を連続的に低下させた風景画像に対して,画像中心に視点を固定した状態において,“元画像との差が気にならない”レベルの主観評価結果を確認した.
Imaging Today
『マイクロパターニング・マイクロ加工技術の最前線』
  • 畑田 賢造
    2003 年 42 巻 3 号 p. 238-244
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    金属ナノ粒子(Metal Nano-Particles)とエレクトロニクス産業で培われてきた印刷技術とが融合し,これまでの実装分野における製造方法を一新する技術が誕生した.金属ナノ粒子をインクとし,プリンター,スクリーン印刷法で回路板,フレキシブル基板そして半導体のパッケージを形成できるようになりつつある.将来的には,回路板に金属配線ばかりでなく受動部品もプリンター感覚で形成できるようになる可能性が出てきた.これらの技術は,環境負荷や納期が著しく小さい生産方式をもたらすばかりでなく,金属ナノ粒子特有の性質が,新しい可能性も生み出す.
  • 長山 智男, 櫻井 芳昭, 横山 正明
    2003 年 42 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
  • Ming Li, Xinbing Liu
    2003 年 42 巻 3 号 p. 251-260
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    We review recent advances in ultrafast laser technology as applied to the field of ultra-fine materials processing. Ultrafast lasers are a class of lasers that produce pulse widths of from picoseconds to femtoseconds. The most important characteristics of ultrafast laser-matter interaction include precise ablation threshold and absence of heat diffusion into the material during laser irradiation, both of which are due to the short temporal duration of the laser pulse. As the laser pulse width decreases from milliseconds through microseconds to nanoseconds and picoseconds, the material removal mechanism transitions from melt expulsion to direct ablative removal. This process is similar in many different solid materials, regardless of the material composition. In this paper, a number of ultrafast laser machining examples in a variety of materials are reviewed to illustrate this point. Precise ablation threshold, combined with narrow heat-affected zone, result in high quality materials processing
  • 浅川 潔, 杉本 喜正, 池田 直樹
    2003 年 42 巻 3 号 p. 261-268
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    2次元の円孔配列からなるフォトニック結晶(2DPC)の導波路作製に必要な,精密な電子ビーム(EB)露光およびドライエッチング技術について述べる.2DPCでは,周期的円孔配列の中に欠陥と呼ばれる非周期的な導波路パターンが存在するため,EB露光では近接効果の抑制のため,特に境界領域でEBドースの精密な補正が必要である.またドライエッチングでは,円孔配列の断面形状を高度に垂直に保つために,プラズマ条件のほか基板温度など,エッチング・パラメターの精密制御が必要である.このような精密制御により得られるエッチング後の円孔直径の揺らぎは2∼4%に抑制できる.この揺らぎは,2DPCを1.3∼1.55μm帯の波長の光で使用する場合,7∼8nm(円孔直径:360∼400nm)に相当する.こうして得られた2DPC導波路の透過スペクトルは,測定値と計算値が良い一致を示す.
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