日本画像学会誌
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62 巻, 4 号
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論文
  • 齊藤 衛, 高野 健, 山田 忠知, 田久 真也, 宮﨑 淳志, 横田 涼子, 古山 善将, 石井 遼太郎, 杉本 雅明
    2023 年 62 巻 4 号 p. 282-288
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル フリー

    インクジェットは非接触の印刷方式であるため,飛翔する液滴は気流などの影響を受け,着弾までに揺らぐことが一つの特徴である.その揺らぎのランダム性を適度に調整することで,印刷状態に観察しやすい個別性を付与できる点に着目した.これは,文字の可読性を維持したままに,十分な個別性のある印刷を意図的に作成することが可能であると言える.本研究では,同じ印刷データを用いても同じ印刷にならないように調整することが可能であり,その異なる印刷物を撮影した画像データにより異なる印刷として判別できることを検証した.本印刷技術を半導体裏面保護テープに施した検証において,市場流通を想定した信頼性試験前後の印刷状態に大きな変化が現れないことと,正しく判別できることを確認した.本方法を発展させることで,電子部品の真贋判定およびトレーサビリティが実現できる可能性が示された.

Imaging Today
  • 川口 博文, 大平 忠
    2023 年 62 巻 4 号 p. 290-294
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    我々画像機器業界各社は,提供する製品の環境性能を顧客価値として提供するために各国の環境ラベルを取得し,販売を行っている.環境ラベルは販売する各国で制定されているが,その中で最も代表的な環境ラベルとして認識されているものにドイツの環境ラベルである「ブルーエンジェル」がある.そのため,このブルーエンジェルを参考にして各国は環境ラベルを制定している.本稿ではブルーエンジェルの概要と画像機器に関する規制内容などを説明し,併せて画像機器カテゴリーにおける日本エコマークと米国電子製品環境評価ツール (electronic product environmental assessment tool, EPEAT) との関係性や,今後の規制の動向について述べる.

  • 山﨑 弘
    2023 年 62 巻 4 号 p. 295-307
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    デジタル印刷はネットワークの進化やCOVID-19の感染拡大でのリモートワークの推進等を受け,より広く使用されるようになってきている.その印刷に使用される材料は,トナーやインクジェットインクである.これらは各種化学物質から構成されている.トナーやインクが人体に影響を与えない,また,廃棄物処理の際の安全性等に配慮する設計としなくてはならない.化学物質などの健康影響についてはいろいろな機関で検討されており,その結果如何でトナーやインクに対する規制が強化されることになる.一方,消費者への情報提供も必要であり,いわゆる環境ラベルという形で消費者へ情報提供がなされている.

    ここでは環境ラベルというものにつき,その位置づけと代表的な環境ラベルの概要について解説する.また,化学物資の規制の面から酸化チタンやPFAS (per-and polyfluoroalkyl substances) の話題についても解説するとともに,今後の流れについて簡単に触れていく.

    最後に,あまり理解されていない中国独自の国家標準というものについて,国家標準の位置づけと画像に関連する標準について,解説していく.

  • 西 秀樹
    2023 年 62 巻 4 号 p. 308-315
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    日本は,食品包装の法規制において,漸くポジティブリスト (positive list, PL) 制度導入により国際的整合化に向けて歩み出したが,国の歩みは遅く,多くの課題を抱えている.欧米は,基本的コンセプトは同じであるが,特に米国は独自路線で進みそうである.世界の大勢としては,EUが国際標準的存在に定着したと言える.

  • 山﨑 弘
    2023 年 62 巻 4 号 p. 316-325
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    顔料・染料はトナーやインクジェットの印字には必須の材料である.顔料・染料の歴史は古く,紀元前数万年前のネアンデルタール人までさかのぼることができる.しかし,いわゆる合成顔料・染料の歴史はまだ200年に満たない.合成顔料・染料はヘキスト等のドイツの化学メーカーを中心に発展してきた.この化学メーカーも時代が経つにつれ,合併や顔料部門等の切り離し等の大きな変遷がなされている.中国やインドは原料供給国の位置づけであったが,粗合成顔料・染料の生産国へ成長し,さらには合成顔料・染料の生産国として成長している.ここでは合成顔料・染料の生産国の変遷を俯瞰し,中国の合成顔料・染料の状況及びその課題等について解説するとともに代表的なメーカーを簡単に紹介していく.

  • 杉田 裕紀, 藤谷 慶一, 住谷 梓
    2023 年 62 巻 4 号 p. 326-333
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    日本で初めて段ボールの事業化に着手した当社は,早くから製紙事業にも参入し,現在では製紙,段ボール,紙器,軟包装,重包装事業を国内だけでなく,海外にも展開し,全事業を挙げてSDGs (Sustainable Development Goals) を意識した取組みを行っている.段ボールの需要が急増した高度経済成長期以降,製品を保護する緩衝材として発泡スチロールが多用されてきたが,リサイクルの観点からさまざまな紙製緩衝材が開発され,当社でも積極的に開発を行ってきた.近年,通信販売市場の急速な拡大にともない,宅配で届く包装が一般消費者の目に触れることも多くなり,包装資材に対する社会的関心が非常に高まっている.当社では,脱プラの観点から紙製包装資材の開発に注力するとともに,包装資材自体の使用量削減にも取り組んでいる.内容品に合わせて段ボール箱の寸法を変えられる自動梱包システムや,高いバイオマス度と生分解性を持つ木材パルプ原料のセロファンをベースにした循環型パッケージなどを開発してきた.今後も環境負荷低減の研究開発を継続し,持続可能な社会づくりに貢献していく.

  • 中村 公亮, 小嶋 健
    2023 年 62 巻 4 号 p. 334-342
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    近年,二酸化炭素排出量削減やサーキュラーエコノミー実現のためプラスチックのリサイクルが注目されている.日本における産業別の取り組みとしては,PET (polyethylene terephthalate) ボトル,容器包装,家電がリサイクルされている.事務機器業界では市中から回収した廃プラスチックを用いて,より高機能なプラスチックにマテリアルリサイクルし,複写機の外装に用いている.外装に利用するためには,機械的特性に加え難燃性や流動性の改善が必要である.そのため,高い耐衝撃性と難燃性を持つPC (polycarbonate) に流動性の高いPETをブレンドした.両者をブレンドしただけでは,所望の性能は得られないため,SAN-GMA (styrene-acrylonitrile-glycidyl methacrylate copolymer) により相溶状態,PETG (glycol-modified polyethylene terephthalate) により結晶状態を制御し,リン系難燃剤による難燃性の制御を行なった.高機能なプラスチックにリサイクルすることで適用範囲を拡大することができ,より大きな環境貢献につなげることができた.

  • 若原 章博
    2023 年 62 巻 4 号 p. 343-351
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    各物質の生体系への影響の調査・評価や,地球環境への人類の活動の影響予測から,循環経済やSDGsの取り組みが進められている.一方で,ロシアによるウクライナ侵攻のような大規模な破壊,コロナ禍や自然災害とともなって発生する生産と物流の混乱は,原料調達と供給に直接的な影響を与えた.そうしたなか添加剤分野においても,化学物質の規制への対応のみならず,積極的に再生産可能原料の使用や,カーボンニュートラルなど環境負荷低減の取り組みが求められている.ここでは添加剤の機能別に,異なる化学物質による機能代替の可能性,環境への負荷の高い物質を含まない添加剤,バイオ技術をもちいた添加剤,再生産可能並びに生分解性を有する添加剤の開発について,BYKの取り組みを紹介する.

Imaging Highlight
  • 水野 恒雄
    2023 年 62 巻 4 号 p. 352-360
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/08/10
    ジャーナル 認証あり

    植物発電は,植物を利用した環境に優しい自然エネルギーである.空気中のCO2を植物の光合成によって取り入れ,植物を成長させる糖類を生成する.余った糖類は,根から排出され,土壌中で流発生菌により分解されている.この時に発生する電子を取り出して電力を得ている.自然の循環サイクルに適合した動作原理となっており,植物に悪影響を与えることは無い.植物の生育している自然環境の他,川,池や海からのエネルギー取得も可能である.従来,土壌から電気エネルギー取得する技術としては,微生物燃料電池があるが,原理的に取得電力が少なく,イオン化傾向の差を利用して電極間に電圧を発生させて大幅な性能の改善を図っている.本技術は,イルミネーションや農業用センサ等に適用されて実用化が進んでいる.

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