日本画像学会誌
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最新号
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論文
  • 小澤 竜輝, 仲谷 洋輝, 中村 一希, 小林 範久
    2024 年 63 巻 2 号 p. 148-155
    発行日: 2024/04/10
    公開日: 2024/04/10
    ジャーナル フリー

    電気化学発光 (electrochemiluminescence;ECL) は電気エネルギーによって生成した材料の励起状態から得られる発光現象である.このECLを素子に展開した場合,構造がシンプルなため軽量かつフレキシブルな発光デバイスへの応用が期待できる.しかし,応答速度の遅さやデバイスとしての寿命の短さが課題となっており,未だECLの発光デバイスへの応用は実現されていない.我々はこれまでに,橙色発光を示すRu(bpy)32+をDNAとの静電的相互作用を利用して電極上に固定化したDNA/Ru(bpy)32+複合膜電極を用いることで,高速応答を示す交流駆動型ECL素子を実現した.本研究では,このDNA/Ru(bpy)32+複合膜を用いたECL素子の電解液にRu(bpy)32+を導入することで,超高速応答ECLのさらなる特性向上を目指した.その結果,複合膜上に形成される凝集部のRu(bpy)32+の電解液への溶解抑制に起因してECL寿命が大幅に向上するとともに,凝集部における反応電荷量の増加によりECL強度も大幅に向上することが明らかとなった.

Advanced Technology
  • 中村 雅一
    2024 年 63 巻 2 号 p. 157-167
    発行日: 2024/04/10
    公開日: 2024/04/10
    ジャーナル 認証あり

    孤立小型電子機器やセンサーネットワークの電源としてエナジーハーベスティング技術の必要性が高まっている.人体や人間の活動に伴って放出される熱は有望なエネルギー源の一つであり,熱電変換技術が注目を集めている.このとき,設置の容易さや使用者が冷たさ,硬さなどの違和感を覚えないという「使い勝手」を重視し,常在する熱流を増減させることなく,必要な電力を許されるコストで生み出せるかどうかという尺度が重要となる.本稿では,このような背景において著者らが首尾一貫したポリシーで研究を続けてきた布状熱電変換素子に関するこれまでの進歩を概観することにより,ウェアラブル熱電変換素子があるべき方向性の一つを提案し,また,類似の研究を行っている方々のヒントとなることを目的とする.

  • 中嶋 宇史
    2024 年 63 巻 2 号 p. 168-175
    発行日: 2024/04/10
    公開日: 2024/04/10
    ジャーナル 認証あり

    身の回りに存在する振動エネルギーから,比較的小さな電気エネルギーを獲得する“振動エネルギーハーベスティング”への関心が高まっている.この技術の最大の特徴は,環境エネルギーが存在している限り永久的に電力を供給することができる点にあり,電池交換や電気配線を必要としないデバイスへの応用が期待されている.このような技術は今後,IoT (internet of things) やCPS (cyber physical system) に象徴される多量の分散型センサーシステムへの電源用途として活用されることが想定される.圧電性高分子は柔らかさを特徴とする機能性材料であるが,その加工性や大面積性にも注目した振動発電応用が期待される.本稿では,圧電性高分子の特徴と振動発電における定量的扱いについて紹介するとともに,バッテリーレスで動作する新たな応用展開の可能性について概説したい.

  • 田中 有弥, 栗原 啓輔, 阿部 直矢, 神宮 彩人, 村上 晃一, 森下 浩多, 鈴木 孝明, 山根 大輔, 石井 久夫
    2024 年 63 巻 2 号 p. 176-184
    発行日: 2024/04/10
    公開日: 2024/04/10
    ジャーナル 認証あり

    近年,エレクトレット型振動発電素子 (Electret-based vibrational energy harvesters (E-VEHs) ) がセンサをはじめとする低消費電力デバイスの自立電源として注目を集めている.エレクトレットは半永久的に電荷,もしくは電気分極を有する絶縁体であり,E-VEHに必須の材料である.しかしながらその作製にはコロナ放電等を用いた絶縁体への荷電が必要であり,E-VEHの生産性を下げる一つの要因になっていた.この課題を解決するために,我々は自発配向現象 (Spontaneous orientation polarization (SOP) ) を利用したE-VEHに関する研究をすすめている.SOPが生じるtris- (8-hydroxyquinolinato) aluminiumや1,3,5-tris (1-phenyl-1H-benzimidazole-2-yl) benzeneの蒸着膜においては,永久双極子が自然と基板垂直方向に平均的に配向し,100nmの薄膜で数Vもの表面電位が発生する.我々はこれら極性有機分子をエレクトレットとして利用することで,荷電処理を一切必要としないE-VEHを開発した.本稿ではSOPを利用したE-VEHの動作機構を紹介するとともに,数値シミュレーションを用いて高性能化の設計指針について議論する.

  • 石原 誠之, 野々口 斐之
    2024 年 63 巻 2 号 p. 185-193
    発行日: 2024/04/10
    公開日: 2024/04/10
    ジャーナル 認証あり

    本稿では熱電変換材料としての単層カーボンナノチューブ膜の特徴や性能の引き出し方を解説する.最近環境発電 (Energy harvesting) への応用を目指したカーボンナノチューブの利用が検討されている.カーボンナノチューブを用いると良くも悪くもそれなりの発電性能が得られるため,学理面よりも応用志向の報告が多い.また材料の複雑性に起因して,主導原理の抽出が容易ではなく,研究の見通しが難しい.本稿ではまず基本に立ち返り,単層カーボンナノチューブの熱電物性にみられる構造物性相関の解明に向けた取り組みを紹介する.その後,化学ドーピングに焦点を当て,その高度化に求められる主導原理を提案し,これを利用した筆者らの最近の研究事例を紹介する.

  • 駒﨑 友亮
    2024 年 63 巻 2 号 p. 194-199
    発行日: 2024/04/10
    公開日: 2024/04/10
    ジャーナル 認証あり

    海洋から蒸発した水分が雨となって地上に降り注ぎ,河川を通って海洋に戻るサイクルは水の大循環と呼ばれ,水力発電はこのサイクルを利用して発電を行っている.河川は地上に局所的にしか存在しないが,空気中の水蒸気は地球上の大部分の環境でアクセス可能な資源であると言える.近年,この空気中の水蒸気 (湿度) を使った発電技術が登場し始めている.湿度を利用した発電は暗所などでも場所を選ばずに発電が可能であるという利点があり,IoT (Internet of Things) デバイスの電源を賄うための利便性の高い環境発電素子になり得るとして注目を集めている.本稿では,これらの湿度に関連する発電技術の基本的な考え方や各種の発電方式に加え,著者らが開発を進めている湿度変動電池の研究開発について概説する.

  • 坂本 雅典
    2024 年 63 巻 2 号 p. 200-205
    発行日: 2024/04/10
    公開日: 2024/04/10
    ジャーナル 認証あり

    人類,動植物など地球上に生きる生命の全てが太陽から降り注ぐエネルギーの恩恵を受けている.しかしながら,太陽光のうち赤外域の光を捕集し,有用なエネルギーに変換することは12億年以上の光利用の歴史をもつ植物でさえ成し遂げていない難題であった.

    著者らは赤外光を吸収する局在表面プラズモン共鳴 (LSPR, localized surface plasmon resonance) を示すヘビードープ半導体ナノ粒子を利用する事により,現在までに報告されている赤外応答光触媒を上回る効率で熱線を化学エネルギーに変換することに成功した.

    赤外線のエネルギー変換には,太陽光のエネルギー利用以外にも利点がある.人間の目には無色透明である赤外線を選択的に吸収する赤外捕集材を用いる事で窓ガラスのような無色透明の太陽電池や目に見えない不可視の赤外センサーといったSF小説に出てくるようなデバイスの開発が可能である.本解説では,熱線をエネルギーに変える機構とそれを応用したデバイス開発例の紹介を行う.

Imaging Highlight
  • 桑折 道済
    2024 年 63 巻 2 号 p. 206-211
    発行日: 2024/04/10
    公開日: 2024/04/10
    ジャーナル 認証あり

    ランタノイド元素は,ランタン (原子番号:57) からルテチウム (原子番号:71) までの元素で,4f軌道電子に由来する優れた発光特性と磁気特性を示す.我々は,ランタノイドの中でも高い磁気モーメントを持つホルミウム (Ho) やテルビウム (Tb) を高分子担体にドープすることにより,磁性ソフトマテリアルの作製を行っている.本解説では,筆者らが研究を進めている,ランタノイド元素複合高分子を利用する無着色磁性粒子の開発についてまとめる.無着色な特徴を生かした,フルカラー磁性粒子,蛍光磁性粒子,吸着特性を有する磁性MOF (metal organic frameworks) 粒子の作製など,応用展開についても合わせて紹介する.

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