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夏原 由博, 神原 恵
2000 年64 巻5 号 p.
617-620
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
大阪府南部の国土地理情報2次メッシュ「富田林」「岩湧山」の範囲で, 250m方形区単位でのニホンアカガエルの生育環境適合性を卵塊の有無を指標として推定した。現地調査は2000年2月から4月に175方形区で行った。このうち。本種の卵塊が分布していたのは15個であった。地理情報システムによって, 方形区ごとの平均標高, 平均傾斜角度土地利用面積率, 谷の有無を取得し.これらを2カテゴリー化した値を説明変数として, 数量化2類 (ダミー変数による判別分析) によって本種卵塊の有無を判別するモデルを推定した。その結果, 地形要素が判別に高く寄与し, 標高は160m以下, 傾斜は10度以下, 樹林面積率20%以上で谷の存在する方形区に卵塊が分布すると予測された。対象地2874個のうち, 208個で本種が生育可能であると推定された。これらのうち, 連続した生育適地の面積が広いほど実際の卵塊出現率が高く, 孤立化が局所絶滅からの回復を阻害しているものと考えられた。ロジスティック回帰により方形区5個 (31.25ha) 以上が連続している場合に, 期待出現率1が得られた。
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上甫木 昭春, 梶原 優美
2000 年64 巻5 号 p.
621-626
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究では, 学校周辺地域のランドスケープの多様性と学校ビオトープの多様性に着目して, トンボとチョウの出現からみた学校ビオトープのランドスケープデザインのあり方を探ることを目的とした。その結果, 両多様性が高くなるに伴って, トンボ及びチョウの出現度は多くなる傾向にあること, さらにこの2軸に加えて学校ビオトープの隣接要因も影響していることが明らかとなった。したがって, 学校ビオトープのランドスケープデザインにおいては, 学校ビオトープそのものの整備内容の検討だけでなく, 学校周辺地域の土地利用特性や学校敷地内の建物や諸施設の配置等の空間特性との関係に配慮することの必要性が示唆された。
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増田 与志子, 加藤 和弘, 村上 暁信, 渡辺 達三
2000 年64 巻5 号 p.
627-630
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
千葉市とその周辺の, 環境教育に関心のあるとみられる小・中・高等学校の教員を対象に, 環境教育における都市緑地の利用に関するアンケートを行った。その結果, 都市緑地は, 環境教育の場として小~中規模の公園等を中心に利用されているが, できればより大きな公園や植物園・都市林等の多様な生物が見られる緑地を利用したいと考えられていること, 緑地の備えるべき条件として, 生物の豊富さ, 学校や家からの行きやすさ, 安全性が求められていることがわかった。また, 都市緑地が環境教育上果たすべき役割として, 児童・生徒が自然とふれあう場となることが最重要視されているということが明らかになった。
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森 清和, 島村 雅英
2000 年64 巻5 号 p.
631-634
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
自然共生都市の重要な生態的拠点となる谷戸に関する基礎研究として, 横浜市域における谷戸生態系の成立過程, 谷戸地形の分布と特徴及びその現況について検討した。
横浜市域の谷戸地形は, 縄文海進期に概成される。谷戸の農業開発による二次自然としての谷戸生態系の成立は中世以降である。○○谷戸と呼ばれる小字地名も数多く残されている。1次谷戸数は3751か所で全市に分布する。横浜は「谷戸の発達した都市」といってもよい。
近年住宅開発等によって谷戸地形そのものや土地利用に大きな変化が見られる。現在の1次谷戸は, 2467ケ所である。そのうち, 自然的土地利用の多い谷戸は944ケ所となっている。
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陳 盛雄, 栗田 和弥, 麻生 恵
2000 年64 巻5 号 p.
635-640
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
1950年代以降台北の郊外で生まれた台湾のキャンプ場は, 今日では様々なタイブのキャンプ場へと発展したが, そのプロセスは明らかにされていない。そこで, 中華民国露営協会にこれまで登録された台湾全土146箇所のキャンプ場を対象に, その目的, 規模, 運営主体などをもとに実態の把握を行い, それが台湾全土の空間にどのように発展し今日に至ったかを, 台湾の立地環境と, 経済や産業交通手段等の発展との関係で分析した。
その結果, 農園型, 校庭型など台湾独自のキャンプ場の形式, 4区分された各時代ごとのキャンプ場の特徴, キャンプ場ゾーンの形成, 地形や周辺土地利用といった立地環境との関係などが明らかになった。
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金 永敏, 澤木 昌典
2000 年64 巻5 号 p.
641-646
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究では, 韓国ソウル周辺のニュータウンである一山新都市の公園について, その空間構成に対する利用者の評価や自然に対する要求などを聞き取り調査によって明らかにし, 公園内の自然林の保存や創出のあり方を考察した。調査結果から.居住者には総じて自然林が大きな魅力となっており, 自然林を増大することへの要求が強いこと, さらに自然林には景観林としての効果や散策・休憩空間としての緑陰などの効果が求められていること, 空間的には土の道による散策路の整備や林内活動が可能な疎林の整備が求められていること, その他, 自然林以外では親水空間の整備や動植物を観察できる場の充実への要求も高いことなどが明らかになった。
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章 俊華
2000 年64 巻5 号 p.
647-650
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究では中国の皇家園林の中で最も規模が大きく, 極めて良い状態で保存され, 歴史的遺跡の多い頤和園を事例として, 月別入園者数のヒストグラム, データ間の距離と類似性の観点からはじめ, 入園者数の年間変動をグループ毎に検討した。その結果, 頤和園の入園者数の年間変動は増減変動期平衡期高増加期の3グループに分けられ, それぞれ特性を持つ頻度分布となっていることが明らかになった。最後に入園者数の変動に最も影響する要因である曜日, 天気, 気温風速により, 相関分析を適用し, その影響要因を調べた結果から考察を進めた。
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長岡 希, 下村 孝
2000 年64 巻5 号 p.
651-654
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
京都府立植物園の来園者を対象にアンケート調査を行い, 利用実態を明らかにした。調査年に2回以上訪れた回答者は約7割であり, 春夏秋冬いずれの季節にも来園した回答者は半数以上であった。また, 回答者は, 散歩に次いで休養・リフレッシュを大きな目的としており, 目的を大いに果たせたという達成度, 満足度は, 休養・リフレッシュが運動に次いで高かった。次に, 各施設に対する来園者の評価から, やすらぎと緑の特性との関わりを探ったところ, 見通しの効く緑の空間である大芝生地がその他の施設に比べて有意に高い評価を得た。
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田中 美穂, 包清 博之, 杉本 正美
2000 年64 巻5 号 p.
655-658
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
街区公園などの人々に身近な公園に対する評価には, 公園そのものの質以外にも, 周辺市街地の状況に応じて存在するオープンスペースなどの環境要素や公園を利用する人々の行動が関係していると考えられる。そこで本研究では, 周辺市街地の状況の違いと公園利用行動からみた公園に対する評価との関係を捉えることを目的とした。具体的には, 市街地状況の異なる3地区をスタディエリアとし, 公園に対する評価や利用行動に関するアンケート調査を行った。その結果, 多様な周辺環境要素が存在すること, 周辺環境要素が人々から「お気に入りの場所」として認識されること, 立ち寄り行動などにより公園と関係づけられることの重要性を考察した。
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野中 太郎, 佐々田 道雄, 畔柳 昭雄
2000 年64 巻5 号 p.
659-664
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究では, 年齢層と海浜公園で行われる活動内容及び動線の関係を明らかにすることを目的とし, お台場海浜公園の利用者を対象にアンケート調査を実施した。その結果より, 海浜公園利用者の属性, 利用形態の全般的傾向をつかみ, また.活動内容は親水性と目的性によって4つに分類され, 年齢層や活動類型は活動場所の選択及び園路との関連性に影響があることが分かった。今後は, 利用者の活動特性及び園路との関連づけを認識し, 水辺の計画において親水性を得るためにオープンスペースを水際近傍に集めるだけでなく, 利用者の多様な活動を許容する施設整備及び配置計画を行うことが重要であると考える。
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金 宣希, 油井 正昭
2000 年64 巻5 号 p.
665-670
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究は, 国立公園におけるボランティア制度の発展過程及びその特徴を明らかにし, ボランティア活動の方向性を検討するために行った。国立公園の利用者の増加により引き起こされた様々な問題から最初のボランティアである自然公園指導員が1957年に委嘱され, 1985年にはPVが発足し, ボランティア活動が発展して来た。PV活動は, 国立公園の管理官により活動の有効性が認められており, 満足度には活動の活発さ, 専用施設の整備, 研究会, 交流会, 管理官との意見交換などの影響を受けることが明らかになった。
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岩村 高治, 横張 真
2000 年64 巻5 号 p.
671-674
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
地域住民による公園管理活動の支援方策に関する計画的知見を得ることを目的に, 神戸市における公園管理会を調査対象として, 地域住民による公園管理の活動実態と問題の所在の把握を行った。アンケート調査により67団体から有効回答を得た。その結果, 公園管理団体の活動には維持管理 (委託作業), 維持管理 (自主的作業), 運営管理の順に発展的な段階があること, 公園における花壇の存在は公園管理団体の活動を活性化し, 地域住民を公園管理活動にひきつける働きがあることなどが明らかになった。これらの結果より, 公園管理団体の活動支援策としては, 特に「花壇の設置」が有効であると考えられた。
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熊野 稔, 亀野 辰三, 湯沢 昭, 岩立 忠夫
2000 年64 巻5 号 p.
675-678
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
1980年代から, 日本では, ポケットパークに関連した計画が全国的に普及し始めた。しかし, それらのポケットパークがどのように利用され, 行政がどのように管理しているかという運営上の問題点や課題はいまだ把握できていない状況である。そこで本研究では, ポケットパ-クを有するさまざまな自治体に向けアンケート調査を行い, それらのポケットパークの利用状況と管理のされ方を調査し, 分析と考察を行った。その結果, 常時利用の少なさ.休憩利用が最も多く, ゴミの投げ捨てが最大の問題で清掃費が最も高く, 住民参加が求められているなどのポケットパークの利活用と管理の現状が明らかになった。
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太田 晃子, 蓑茂 寿太郎
2000 年64 巻5 号 p.
679-684
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
今日, 公共事業における費用対効果の問題が頻繁に議論されているが, 公園事業もその例外でない。公園は, 一般的にその導入を歓迎する施設であり, かつ機能の計量化が困難であるため, コスト意識が希薄な傾向にある。本研究は, 各種公園の中でも特に整備が遅れているとされる近隣公園を対象に。CVM (Contlngent Valuation Method) により住民が公園の維持管理に用する費用を負担する意思の把握を通じて, 公園の経済的価値評価を試みた。その結果, 公園が近隣住民にもたらす利益を具体的な金額で示すことができ, その値は, 高齢者の利用, 住民参加型の公園で高い評価となる知見を得た。
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庄子 康
2000 年64 巻5 号 p.
685-690
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
近年, 自然公園の様々な問題を考える上で, 環境の持つ価値を経済的に評価する環境価値評価が利用され始めている。これら手法にはトラベルコスト法 (TCM) や仮想評価法 (CVM) 等があるが, 信頼性の点からTCMとCVMの評価額を比較することは有用である。本研究で北海道雨竜沼湿原における野外レクリエ-ションの価値をゾーントラベルコスト法 (ZTCM), 個人トラベルコスト法 (ITCM), CVMによって評価を行った。ZTCMの評価額は訪問あたりの平均値で1214.9円, ITCMの評価額は1552.6円, 同じくCVMの評価額は1687.7円と推定された。これらの推定値を直接比較することはできないが, 真の評価額はこれらの値と近い値であると推測できる。
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永松 義博, 阿部 香織, 岩渕 由生子
2000 年64 巻5 号 p.
691-696
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
盲学校に近接した公園を視覚障害者がどう利用するかについて, 盲学校に依頼したアンケートによる調査を行った。アンケ図トの集約から, 多くの盲学校が公園利用を望んでいることが明らかになった。公園を利用するためには盲学校の近くに公園があること, そして公園までの経路の安全性などが重要な条件であった。盲学校の生徒に利用される公園の特徴は, 公園の広い空間, 公園の位置がわかりやすいこと, そして公園に多くの植物があることなどである。さらに, 盲学校の生徒にとって利用しやすい公園までの距離は約500mであることが明らかになった。
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木下 剛, 宮城 俊作, 吉江 達也
2000 年64 巻5 号 p.
697-702
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究は, 昭和40年代に日本住宅公団によって開発された市街地系の高層高密度団地, いわゆる面開発市街地住宅を対象として, 屋外空間の計画の特徴とその後の変容について明らかにすることを目的に実施した。その結果, 団地の空間構成にはいくつかのタイプが確認され, それらのタイプとその後の空間変容とのあいだには密接な関係がみられることが明らかとなった。具体的には, オープンスペースや緑地が残存する可能性の高い空間構成やその後の空間変容に対応しやすい空間条件等, 今後の市街地団地の屋外空間の計画設計に資するいくつかの知見を得た。
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宮城 俊作, 木下 剛, 霜田 亮祐
2000 年64 巻5 号 p.
703-708
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
1950年代後半から60年代にかけての約10年間に日本住宅公団によって開発された初期の住宅団地では, プレイロットの配置と施設設計が造園に関わる業務の中心的な課題のひとつであった。これらの業務を遂行する過程において試行され検証された設計理論の構造を明らかにするとともに, この時期に首都圏において建設された10件の住宅団地を対象とした調査と分析を通じて実証的な検討を行った。初期の公団住宅におけるプレイロットの設計思想は, 戦後日本における造園モダニズムの基点のひとつを形成するものであり, 同時に民間プロパーにおける造園職能の確立を促すものであったことが確認された。
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塚本 俊介, 下村 彰男, 小野 良平, 熊谷 洋一
2000 年64 巻5 号 p.
709-712
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
自己形成期に体験した心象風景 (現在でも印象深く思い出す風景) と, 居住空間の景観評価との関連性を探った。東京近郊在住者を対象としたアンケート調査によって, 自己形成期における心象風景を抽出した。被験者の風景想起当時の居住地によって心象風景を都市・郊外 (都市寄り)・郊外 (農村寄り)・農村の4タイプに分類し, 風景の記述を分析することでそれぞれの心象風景タイプの特徴を把握した。心象風景タイプごとに写真群を用いた景観評価実験を行った結果.1) 自己形成期の心象風景タイプに該当する居住景観の評価は, 郊外 (農村寄り) を除いて高い傾向にある, 2) 農村景観は心象風景タイプに関わりなく高い評価を得る, 等が明らかとなった。
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西嶋 啓一郎, 仲間 浩一
2000 年64 巻5 号 p.
713-718
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
風光明媚が知られる関門海峡地域は, 古代より東アジアを含めた日本の地域間交通の要所であり, 歴史的には様々な観点からの風景の意味付けが存在している。しかし.近代以降は, 土木技術の発展により海峡をまたぐインフラストラクチュアが集中し, 景観の著しい変化がもたらされた。
本研究では, この地域の景観体験の質の変遷について, 歴史的に評価された風景と, 近代以降に出現した風景に対する価値付けの意識を比較考察した。その結果, インフラストラクチュアの整備過程では,「風景の体験認識, 編集」という風景生成の条件に固有の特徴があったことが明らかにされ, 近年展開している景観整備事業において重視されている風景に対する価値付けの意識が, 近世以前のものと共通性を帯びていることが確認された。
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高荷 久昌
2000 年64 巻5 号 p.
719-722
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
東京港埋立地には42か所の海上公園が開園し, 年間900万人の利用者がある。これらの公園は, 時代や地域の要請を受けながら計画内容を変えて整備されており, この実態を若洲海浜公園を事例として分析し, 東京港における公園緑地の形成過程を明らかにする。若洲海浜公園は廃棄物処理場跡地に計画されたため, ガスの発生があり整備まで20年を要した。この間に, 運動公園計画, 自然公園計画を経て最終はゴルフ場を中心とする公園整備となった。最終の公園計画は, これまでの時代のニーズを受けた施設が共存し, 重層化した構成になっている。この検討結果は, 東京港全体の公園緑地の形成過程にも同様な傾向がみられる。
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小林 昭裕, 愛甲 哲也
2000 年64 巻5 号 p.
723-728
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
入込み規制として車両規制されている知床カムイワッカを対象に.実際の遭遇人数や利用動態を把握する手法上の課題を整理するとともに.混雑感や利用者相互の遭遇に対する許容限界混雑に対する利用者の対処について検討した。混雑感は遭遇人数に左右されたが.期待や利用状況への不快感や車両規制への評価の影響が強かった。混雑に不快感を覚える許容限界への回答率は低く, 許容限界の人数は, 遭遇人数や混雑感と関連しなかった。混雑への対処として, 雑踏を不快に感じる傾向の強い利用者では.これを回避する意識や行動の変化が確認された。
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奥 敬一, 深町 加津枝
2000 年64 巻5 号 p.
729-734
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
オンサイトかつシークエンシャルな景観評価モデルに基づいて, 京都大学芦生演習林内のトレイルを対象として標識サンプリング法による調査を行い, レクリエ-ションサイトの景観計画に利用できる空間一人間行動系のパターンを見出すことを目的とした。43被験者による10ケ所のサンプリング地点での景観評価, 満足度疲労度についてのデータを集計し解析を行った結果, レクリエーション利用者が体験した景観に対する評価や満足度は, その地点の環境の物理的な要因と, シークエンスの移動に伴う要因の双方に影響を受けて変動することが示された。
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栗原 雅博, 古谷 勝則, 油井 正昭, 多田 充, 赤坂 信
2000 年64 巻5 号 p.
735-740
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
八ケ岳中信高原国定公園霧ケ峰地区を対象に, 二次草原における植生の維持と景観保全に考慮した植生景観管理方法を検討した。まず, 既往文献調査から二次草原の特質を論じた後, 景観調査として現地利用者アンケートを写真投影法とSD法を用いて実施した。さらに, 自然観察路周辺の植生調査も行った。写真投影法では, 二次草原の主要構成要素である草花などの近景要素, 遠景の山並みなどの眺望景観要素が多く撮影された。SD法による景観評価では, 写真投影法で抽出された興味対象の景観イメージを明らかにした。植生調査では, 歩道周辺における花群落の分布に影響を与える条件として標高と地形が重要であることが明らかになった。
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岡田 穣, 浅川 昭一郎
2000 年64 巻5 号 p.
741-746
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究では, 平地農村景観における樹林の存在意義および地域と樹林の効果との関連を把握するため.風土, 農業形態の異なる北海道・山形県庄内地方両地域において撮影された道路景観写真・シミュレーション写真による景観評価実験を両地域で行った。その結果防風林, 屋敷林といった樹林が景観評価を高めるという存在意義が確認された。また.庄内の広葉樹屋敷林の評価で地域間の相違が認められ.屋敷林の形態において地域との関連性も確認された。
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高山 範理, 小野 良平, 下村 彰男, 熊谷 洋一
2000 年64 巻5 号 p.
747-750
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
景観を評価する際に, 日常的に主体を取り巻く環境の相違等がその評価構造に差異をもたらすことが考えられる。本研究では, 主体の日常的な植物等との視覚的な関りの度合いと, 自然眺望景観に対して懐くイメージの評価構造との関連について調べるため, まず各主体が「現在」「過去」の生活域周辺において懐いている緑量 (「緑量のイメージ」) について調べた。次に, 自然眺望景観を対象としてSD法を用いた評価実験を行い,「緑量のイメージ」の多少との関連についての分析を行った。結果として, 実験に用いた一部の評価尺度と, 主体の評価構造を構成する因子軸の寄与の順序, 度合いについて「緑量のイメージ」との関連が示唆された。
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卯田 宗平
2000 年64 巻5 号 p.
751-754
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究は, 山アテ行為で用いられる陸地の景観と付与呼称との関係に着目し,(1) 船舶の定位作業で陸地景をどのように認識しているのか,(2) 如何なる形状に対して何を連想しているのか,(3) 視対象の形状を契機とする相貌的語彙の多少差が名づけ行為にどのような影響を与えているのかを明らかにする。
その結果,(1) 漁師は陸地景に対し全体から部分へと視認範囲を絞り込みながら船舶をより正確に定位している。(2) 陸地景に対し身体や道具といった身近なものを相貌しながら簡易に認識している。(3) 視対象に対する相貌的語彙の多少差が,「山」型には「もの」的表現,「崎」型には「こと」的表現という付与呼称の表現の違いを生じさせていることを導き出した。
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柴田 久, 土肥 真人
2000 年64 巻5 号 p.
755-758
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
近年, 地域の個性を反映した景観づくりを念頭に, 地方自治体独自の景観行政の重要性が指摘されている。本論では, 全国地方自治体を対象とした「景観まちづくり条例」の運用実態と, その効果, 問題点との因果関係を定量的に明らかにし, 特に公共としての地方自治景観行政に, 住民がどのように位置づけられているかという観点から考察することを目的とする。本論では, 上記考察の分析手法として, 単純・クロス集計分析に加え, 多くの観測変数を同時に分析することができる共分散構造分析の適用を試み, 地方自治景観行政の実態とその意識について因果モデルを同定した。本論の分析・考察より, 景観まちづくり条例の効果促進に必要不可欠な問題点の把握について, まちづくり協議会への行政関与と, 住民の参画した審議会の有効性等を明らかにした。
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黒田 乃生, 下村 彰男, 小野 良平, 熊谷 洋一
2000 年64 巻5 号 p.
759-764
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
伝統的建造物群保存地区制度は建造物という単体の保存から集落景観の保全へと文化財の概念をひろげた。本研究では白川村荻町を例に集落景観の特徴を把握し, それを保全する仕組を明らかにした。その結果, 水路や石垣によって細かい領域が形成されており, 垂直要素が少ないことが景観の特徴となっていることがわかった。また, 地区における維持管理主体は変容していること, 規制や基準では景観の特徴を保全するための項目はなく, 逆に現状変更において景観の特徴を損なう場合もあることが明らかになった。以上から, 集落景観を保全するための仕組の再構築が必要であることが示唆された。
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岡田 昌彰
2000 年64 巻5 号 p.
765-768
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
近年, 建築史や産業考古学の分野において, 既存の古い構造物を価値ある資産として新たに見直す動きが見られる。そこでは主に技術史, 意匠及び地域産業・生活史などの系譜の観点から価値付けが行われているが, 年月を経た結果生起した「廃墟景観」としての美的特長に対する評価手法は殆ど確立していない。
本研究では, 主に18世紀英国の「ピクチャレスク庭園」における廃墟景観の評価論を分析し,「廃城」の価値付け法として,(1) アイキャッチャー,(2) 自然 (じねん) 景観,(3) 尚古象徴及び (4) うつろい景観の4点を指摘した。これをもとに国内の廃城的産業構造物を例示し, 価値ある景観へと昇華する可能性について検討を行った。
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曽和 治好
2000 年64 巻5 号 p.
769-772
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
桂離宮庭園, 対龍山荘庭園に続き, 詩仙堂庭園を事例とし, 騒音計を用いた庭園の環境音調査を実施した。その結果 (1) 本庭園は交通量の多い市道白川通りの騒音の影響を受けにくく, 僧都の音や細やかな環境音を鑑賞するための基本的な音環境が保全されている。(2) 沈床園的空間構成を持った本庭園の視覚的中心部分に僧都・滝・小川によって形成される音環境のクライマックスが重なった。(3) 僧都の周波数分析を行い, その周波数は275Hz, 560Hz, 775Hz (Peak), 1.1kHz, 1.3kHzである。以上の事項があきらかにされた。
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伊藤 良和, 岸塚 正昭
2000 年64 巻5 号 p.
773-776
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究は, 設計速度の低い道路の線形形式で知られる単曲線設置法 (カーブセッチィング) の土木技術に着目し, 単曲線の部分にスラローム理論 (既往研究) によって提唱される歩行時の「曲率式」を適用した, 園路における平面線形の実践的設計ツールの開発が目的である。内容は,(1) 歩行園路の曲率式に基づく, 平面線形の設計法の開発 (2) 公園内で実測された踏み跡道の線形と本ツールが生成する線形との比較検証 (3) 本ツールを使用した歩行園路の設計例を作成し, 開発研究の結果が妥当であることを例証して結論とした。
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石橋 龍吉
2000 年64 巻5 号 p.
777-782
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
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高層建築物周辺に生じる強風から歩行者を保護するため, 植栽による対策がしばしば用いられる。しかし, ビル風対策を目的としてベルト状に設置されるような防風植栽の風速低減効果を測定した実測はデータは無い。このような観点から, 平均高さ約4mの植栽帯を対象に実測を行った。本論文では風向風速測定方法を示し, 風向出現頻度の高い風向SWとNNEEの結果について述べる。また, 風洞実験用の樹木の模型化を目的に, 種々の充実率を有するエッチング加工メッシュを用いて検討した。充実率25%メッシュを樹木列数配置した場合の防風効果の結果が実測結果と良く一致した。
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亀野 辰三, 熊野 稔, 岩立 忠夫, 松井 万里子
2000 年64 巻5 号 p.
783-786
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
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本研究は運転者から見た分離帯高木植栽の景観評価について言及したものである。まず, 広幅員の駅前通りを想定し, CGを用いて樹形と樹高幅員比 (H/D) を操作した分離帯高木植栽の景観評価モデルを作成した。次に, 景観評価実験を行い, 因子分析と重回帰分析により, 被験者の評価構造を分析した。これらの分析結果から, 1) 街路景観の評価は「好ましさ」感に強く影響されることが示され, 2) 望ましいH/Dは, 円錐型と球形型の樹形では0.3 (H=9.0m), 盃状型では0.2 (H=6.0m), 卵円型は0.2~0.3 (H=6.0~9.0m) であることが判明した。つまり, 分離帯高木植栽における景観面での望ましい樹高は, 総幅員の2割~3割程度の値と考えられる。
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雨宮 護, 横張 真, 渡辺 貴史
2000 年64 巻5 号 p.
787-792
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
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街路樹を有する街路景観への人による評価は, 街路樹と沿道土地利用との関係性により異なる。本研究では, 街路景観を街路樹と沿道土地利用により類型化し, 街路景観の印象を代表する形容詞対である「整然とした-雑然とした」「開放的な-閉鎖的な」「自然的な-人工的な」を用いて, 走行中の自動車からの評価を行った。その結果, 街路樹が街路景観にまとまりを与え, 開放性を低下させる効用は沿道土地利用によらず発現されること, 街路樹が街路景観の自然性を高める効用は沿道土地利用との関係によって異なることが明らかとなった。これより, 街路樹整備にあたっては, 沿道土地利用を考慮に入れながら行う必要があると考察した。
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豊原 稔, 藤原 宣夫, 田中 隆, 村上 暁信, 渡辺 達三
2000 年64 巻5 号 p.
793-796
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
「道路緑化樹木現況調査」(建設省) の全国の樹種別高木本数のデータを用い, 多次元尺度構成法により解析し, つぎの結果を得た。1) 経年的に樹種の多様化が進むとともに, 強健で萌芽力が旺盛で, 劣悪な都市環境における適応力が高い外来の街路樹種に代わって, 常緑樹など通年にわたって環境保全効果の期待できる樹種, 花木など住民のアメニティ要求に応えられる樹種が多く用いられるようになっている。2) 地域的には, 各地域に即した特色ある樹種が用いられる一方.全国的な傾向である, 花木や常緑樹への期待が一様に反映されたものとなっている。3) 以上は近年の10年間における動向であるが.その趨勢は今後とも続くものと推測される。
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山本 佳世子
2000 年64 巻5 号 p.
797-800
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
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本研究では滋賀県琵琶湖岸における市街地に着目し, GISを利用して計画と実態との間の乖離を分析することにより土地利用計画を検討することを目的とする。本研究では, 大小様々なスケールで解析成果を提示し, 地図上では問題地域の分布を細かい空間スケールでも把握することが可能になった。
また, 本研究の結論は, 以下の2点に要約できる。
(1) 彦根長浜都市計画区域及びこの近隣の町が滋賀県内で最も実態との間の乖離が著しい。
(2) 南部の3区域では線引き地域の指定の再検討, 彦根長浜は近隣の町を含めた広い地域での土地利用計画の修正, これら以外の都市計画区域では用途地域や線引き地域の指定見直しや新規導入が必要である。
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瀬戸島 政博, 赤松 幸生, 福井 裕子, 重松 敏則, 朝廣 和夫, 児玉 滋彦
2000 年64 巻5 号 p.
801-804
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
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薪炭林の役割を喪失し放置された里山林は, 自然遷移により林冠構成木も含め種組成やバイオマス量が, ダイナミックに変化しつつある。その多面的な環境保全機能およびアメニティ機能等に注目するとき, リモートセンシングデータによりその実態を迅速に, かつ的確に捉えることは重要である。本論はその一環として, 福岡市近郊の里山林を対象に, 代表的な常緑広葉樹種として, アラカシ, スダジイ, クスノキを選定し, 春季に撮影した時系列的な航空写真データから, 撮影時期の差による色調変化をRGB値とHSI値により解析したものである。その結果, 若葉・開花による色調の変化や差異によって, 当該樹種間の区分が可能なことが分かった。
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堀川 真弘, 森本 幸裕, 夏原 由博, コンスタンチン パチーキン
2000 年64 巻5 号 p.
805-810
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/09/13
ジャーナル
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アラル海地域における自然生態系の回復計画にむけたGISの作成を目的として, 最重要地域であるシルダリアデルタ地域のモニタリングを行った。2回の現地地上調査とヘリによる調査で植生や土壌などのデータを収集しSPOTデータを用いることで, エコトープの状況を明確にし, 最近10年間の変化を明らかにすることができた。その結果小アラル側と大アラル側の旧湖底の植生遷移の違いが定量的に把握できた。また河畔湿地帯のヨシ群落は衰退する一方, 最下流域において活性度の高い群落の形成が確認され, 流量に対応した湿地植生のダイナミックな変動が明らかとなり, 取水量やダム建設の影響評価のための基礎的知見が得られた。
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王尾 和寿, 鈴木 雅和
2000 年64 巻5 号 p.
811-814
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
近年, 従来の行政区域をこえた流域単位での地域計画, 環境管理のための環境情報の重要性が認識されている。本研究では流域圏の環境情報を河川構造にしたがい, 整理, 分析, 可視化し, 流域単位で環境構造を把握することを目的とした。具体的には那珂川流域を対象に, 支川8流域およびそれらを構成する単位流域を抽出し, オーバーレイ解析により, それぞれの単位流域ごとに地形土地利用等の環境情報を, 特化係数を用いて整理した。さらに, その変化過程を上流から下流へと可視化することによって那珂川流域の地形, 土地利用構造ならびに支川8流域の相対的な構造を把握することができた。
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椎野 亜紀夫, 中村 攻, 木下 勇, 齋藤 雪彦
2000 年64 巻5 号 p.
815-820
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究は, 既成住宅地における高齢者の日常的な生活管理外出の圏域特性を概観した上で, 通院外出及び買い物外出の外出先となる空間が, どのように選択されているのかを解明することを目的とした。研究の結果,(1) 高齢期の生活管理外出は自宅から半径1km圏内が中心となっていること,(2) 通院外出は医療の質に対する対象者の評価により空間選択が行われていること,(3) 買い物外出は, 運動のために自宅から半径1km圏外の空間を選択するケースが60代で, また外出の負担増大を理由に自宅から半径1km圏内の空間を選択するケースが70代以上で多く認められ, 年齢によって外出圏域に段階性があると考えられること, 等の知見が得られた。
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中村 彰吾, 小林 昌毅, 高橋 邦夫, 萩原 良巳
2000 年64 巻5 号 p.
821-824
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
近年、参加型の水辺づくりが積極的に進められている。著者らは、住民の意識や行動を取り入れた水辺デザインプロセスを提示することが必要と考えている。そして、地域住民の水辺に対する意識や行動を水辺デザインに取り込む一つの試みとして、水辺デザイン情報抽出において、「専門家のデザイン情報を地域住民が補完する」という立場を採り研究を進めている。こうした中で本研究は、都市域河川を対象に専門家5~8人の通年観察 (年4回) を行い、写真投影法を用いた考察による水辺デザイン情報取得のプロセスを提示した。
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小野 良平
2000 年64 巻5 号 p.
825-830
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
都市における歴史的遺産である庭園の保全には, 遺産としての歴史性の価値付けが求められるが, その概念および評価は多義的であることが保全のためにも有効と思われる。本稿は小石川後楽園を事例として, 庭園が周囲の都市空間の変容から影響を受けるばかりでなく, 都市の自然環境あるいは社会環境などの側面において都市空間に影響を与えてきた歴史として読み直し, この作業を通して庭園の歴史性の概念の再考を試みた。庭園と都市空間相互の関係性はその庭園の立地する場所の新しい歴史を創造し続けており, この意味において歴史性とは単なる芸術学術上の真正な価値ばかりでなく, より広い概念で捉え, 評価されるべきと考えられる。
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上原 三知, 重松 敏則
2000 年64 巻5 号 p.
831-834
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
かつての農村社会における地域資源の有機的活用に注目し, 領域や条件が特定しやすい福岡県新宮町相島地区を事例に調査・分析を行った。その結果, かつては農耕地が多く, 比較的多数の居住人口を有したが, 漁業不振による急激な過疎化等により, 農地の森林化が生じていた。本地区における適当な収容能を算定するために農用地・樹林地面積から潜在的な食糧生産力及びバイオマス生産力を検討した結果, 最大1239人分の潜在力があると考察された。具体的な計画案として人口625人での土地利用計画と, さらに太陽光・風力発電等のシステム導入を仮定し, 現在の生活水準を維持しながら地域資源の保全と活用を両立させた生活モデルを提案した。
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八木 健太郎, 竹田 直樹
2000 年64 巻5 号 p.
835-838
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
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公共空間における芸術作品をめぐっては, 近年公共性との矛盾や対立がしばしば指摘されている。本論文ではこうした公共空間に導入される芸術作品が, 公共空間の造形に対してもたらす影響を, 建築・都市のデザイナーと作品を制作するアーティストとの関係に着目して考察する。建築家とアーティストの関係が相異なる先進事例を比較検討することにより, その差異が視覚形態に表出する過程を明らかにするとともに, 公共空間に導入される芸術作品と公共性との矛盾や対立の解消に向けた解決策への示唆を得ることを目的とする。
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下村 泰彦, 三澤 伴暁, 加我 宏之, 増田 昇
2000 年64 巻5 号 p.
839-844
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
本研究では, 大阪府オアシス整備事業で整備されたため池をケーススタディとし, 半公的な緑地空間における計画プロセスや整備完了後の住民参加型維持管理の課題を探った。その結果, 住民参加型の維持管理では, 整備後の維持管理の担い手となりうる関連主体が計画プロセスの初期段階から参加していることが重要で, 特に, 推進協議会等の組織化が非常に有効であること。また, 整備完了後の維持管理段階においても, 維持管理組織を形成し, 役割分担の明確化によって各主体の管理負担の軽減を図るとともに, 共同作業を通じて共有意識を芽生えさせるような仕組みづくりがより大きな効果を生み出すこと等が明らかとなった。
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平田 富士男
2000 年64 巻5 号 p.
845-848
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
地域での緑化活動への参加意識を醸成するための一般市民を対象とした講座において, 受講によって高まった緑化活動への参加意識を修了後も維持し, 実際に緑化活動への参加を誘導していくためには, 講座修了後も引き続き, 地域での活動に役立つようなサポート対策が不可欠であると考えられる。このため, 兵庫県における花と緑のまちづくり指導者養成講座の修了生に対して種々のサポート対策を行った上で, 修了半年後にアンケートを行い, どのような対策が地域での活動や活動参加意識を維持する上で役だったか, 今後どのような対策を望むか等を把握した。この結果具体的な活動の場の設定や継続的な情報発信が有効であることなどが把握された。
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安里 直美, 池田 孝之
2000 年64 巻5 号 p.
849-854
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
身近な環境づくりの担い手として, 住民の自主的な環境保全活動 (参加型活動) が期待されている。そこで, 沖縄の参加型活動の実態把握を通じて, 今後の活動課題を整理し, それに対する支援方策上の留意点を考察した。その結果, 活動基盤・目的とフィールドの関係から「自然環境保全型」,「生活環境改善型」に類型化でき, 全般に多様な活動が展開されていた。そのうち, 直接, 場の管理にあたる活動は少ないものの, 専門的で実効力ある活動もあった。一方で, 活動主体の確立, 組織運営の強化, 亜熱帯島嶼環境での場の管理力の向上という課題を抱えており, 活動の自立を促す上で地域に根ざした支援協力の体制づくりが重要であることがわかった。
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大場 里恵, 小場瀬 令二
2000 年64 巻5 号 p.
855-860
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
ジャーナル
フリー
英国のアロットメントは長い歴史を有し, 我が国の市民農園の手本として頻繁に取りあげられている。本研究では, 英国で都市部のアロットメントが普及し始めた19世紀末から20世紀初頭に着目し, 当時の社会情勢等を関連させながら, アロットメントの変遷を体系的に捉えた。また, アロットメントの新設, 廃止に関わる行政の選択行動を実証的に分析した。その結果, 社会情勢によってアロットメントが果たした機能が異なり, それらの機能の変遷が現存の有無に大きく寄与していることがわかった。また, 廃止を決定する地方当局はその面積とオープンスペースとの立地関係を考慮して選択していることが明らかになった。
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宮本 克己
2000 年64 巻5 号 p.
861-864
発行日: 2001/03/30
公開日: 2011/07/19
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日本において, 緑地地域, 近郊地帯などの日本型グリ-ンベルト政策が行き詰まりを見せ, 新たな都市計画法の策定が模索されていた頃, アメリカにおいても, 伝統的なゾーニング手法に加えて種々の土地利用規制制度の開発が試みられていた。オレゴン州の都市成長管理政策は, アメリカにおけるこの種政策の嚆矢を成すものであり, 州政府が網羅的な計画指針を提示し, すべての地方自治体に総合計画の立案を義務付けるものである。都市成長境界線の設定も, 重要視された政策であり, ポートランド大都市圏におけるその運用には見るべきものがあり, 一つのモデル的存在とされている。それへの評価は, 地方政府の主体性を前提としながら, 地方政府と州政府が協調して土地利用を管理し都市と農地との明確な分離, 開発に対する厳しい規制と誘導, 農地・自然資源への手厚い保護政策, これらが一体となって運営され実績を挙げているところに向けられていると言える。
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