日本放射線技術学会雑誌
Online ISSN : 1881-4883
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81 巻, 4 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
原著
  • 津野 隼人, 佐々木 浩二, 五十嵐 博
    2025 年81 巻4 号 論文ID: 25-1517
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    【目的】一般的に成績集計は表計算ソフトで行いファイルをメール送信し別メールでパスワードを送信する方法が用いられるが,この方法にセキュリティの堅牢性はないことが指摘されている.また,新しいシステム導入は現状維持バイアスによる心理的な要因で難しい.そこで簡便にすぐに導入が可能な表計算ソフトを用いた新しい成績集計システムが有用であると考え,RSA暗号を実装した自動成績集計システムを開発することを研究目的とした.【方法】Excelでは,仕様により有効数字16桁以上を表記できないため,べき乗剰余法をモジュラ演算に応用する方法を考案した.この方法を用いて暗号化に要する時間を5回測定しその平均値を求め,先行研究と比較することで教員が業務に利用できるかどうかを評価した.【結果】複数の教員が採点した成績表を科目責任者にメール送付して使用してもらい,科目責任者が集計用ファイルを用いて集計できることが確認できた.暗号化に要する時間は約2.3秒であった.RSA暗号はセキュリティが高いため,ファイルをメール配信できるメリットもあり,ペーパレス化したワークフローが構築できた.【結語】開発したRSA暗号を実装した自動成績集計システムはセキリュティ対策により安全性が高く,メール送信も可能であり,自動化によりヒューマンエラーに起因する事故やミスを未然に防ぐ手段として有効であると評価された.

  • 大杉 勇輝, 成田 啓廣, 大久保 真樹, 酒井 健一, 能登 義幸
    2025 年81 巻4 号 論文ID: 25-1528
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/21
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】最近,computed tomographyにおける非等方性の二次元noise power spectrum(2D-NPS)を測定する新たな方法が考案された.測定された2D-NPSはヘリカルスキャンにおけるX線管角度θに依存して変化し,これを2D-NPSθと定義した.しかし,この方法は,統計的な変動の少ない2D-NPSθを測定するために多数のスキャンが必要となり,労力を要する.本研究では,2D-NPSθは一つの非等方性2D-NPSがX線管の回転に連動し,空間周波数領域の原点を中心に回転したものであると仮定した.その一つの非等方性2D-NPSを2D-NPSrotと定義し,少ないスキャン回数で2D-NPSrotを測定する方法を提案する.【方法】水ファントムを100回スキャンし得られたノイズ画像から2D-NPSθ(θは0°から180°まで30°刻み)を算出した.提案法では,2回スキャンにより得られた各ノイズ画像から2D-NPSθを算出し,それぞれθだけ逆回転させることで同一形状の2D-NPSを求めた.それらを加算平均し,一つの2D-NPSrotを得た.【結果】2D-NPSrotをθだけ回転させたものは対応する2D-NPSθと類似した.各θにおける誤差率の平均の絶対値は0.7%以下,標準偏差は6.12%以下であった.【結語】非等方性2D-NPSの簡便な測定法を提案し,その妥当性が示唆された.

  • 吉田 達也, 佐々木 浩二, 早川 倫生, 川代 稔之, 柴﨑 貴加子, 川﨑 善幸
    2025 年81 巻4 号 論文ID: 25-1531
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/28
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】前立腺がんの画像誘導放射線治療では,コーンビームCT(cone-beam computed tomography: CBCT)による被ばく線量の増加が問題となる.目的は,骨盤部CBCTにビスマスシートを用いた時の被ばく線量低減効果を評価することである.【方法】蛍光ガラス線量計(GD-352M)とX線管回転角度が異なる三つのCBCT撮影条件(292°–88°,92°–248°,92°–88°)を用いて,骨盤ファントムの前立腺から5 cm頭側の直腸,膀胱前壁と後壁,左右の骨盤皮下および精巣の吸収線量を測定した.次に,ビスマスシートでこれらの測定点を覆った時でも同じ測定を行った.【結果】92°–248°でビスマスシートを用いた時の吸収線量は,直腸は16.3±0.2 mGyから31.3%低減して11.2±0.2 mGy,精巣は45.0±2.7 mGyから57.1%低減して19.3±1.0 mGyとなり,それぞれ最小となった.膀胱前壁は48.7±11.5 mGy,後壁は20.2±0.4 mGyとなりそれぞれ撮影条件間で最大であったものの,42.0%および36.9%の高い低減率であった.【結語】直腸,膀胱,精巣の被ばくリスクより,ビスマスシートを用いた92°–248°が被ばく低減のために効果的である.

臨床技術
  • 瀬川 恵子, 澁谷 孝行, 山口 裕祐, 市川 肇, 小西 貴広, 米山 寛人, 中嶋 憲一
    2025 年81 巻4 号 論文ID: 25-1524
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/21
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】99mTc心筋血流シンチグラフィの定量評価に使用される日本人正常データベース(NDB)はフィルタ逆投影(FBP)法の減弱,散乱線,空間分解能補正なしで作成されているが,近年,各種補正を組み込んだ逐次近似法(IR)法で再構成する施設が増加している.IR法のアルゴリズムは装置ごとに異なるためにそれぞれにNDB構築が望まれるが,各施設でのNDB作成は倫理的側面から難しい現状がある.そこで本研究ではFBP法のNDBをIR法に適用させたときの定量指標の影響について検証した.【方法】3社のSPECTまたはSPECT-CT装置で,心筋血流SPECT検査を行った患者の画像を用いた.FBP法とIR法で,各種補正なしとありの画像をそれぞれ作成した.QPSソフトウェアを用いて17セグメントごとのpolar mapを作成し,負荷%uptakeおよびスコアを求め,再構成法および補正法によるスコアの異なるセグメントの差を評価した.更に,冠動脈支配領域別にスコア差を評価した.【結果】FBP法のNDBをIR法に適用した場合のスコアの差分は,装置の種類および補正の有無にかかわらず,差がないセグメントが一番多くなった.しかし,装置および補正方法により,冠動脈支配領域によるスコアの変化を認め,減弱補正によって右冠動脈領域のスコアは低値を示した.【結語】心筋血流シンチグラフィにおいてFBP法で作成されたNDBをIRに適用する場合,おおむね同一スコアで診断することが可能であった.しかし,各種補正方法や装置により定量指標に影響があるため,その特性を理解することで精度の高い診断につながることが示唆された.

  • 藤井 亮輔, 杉村 正義, 栗田 仁一
    2025 年81 巻4 号 論文ID: 25-1467
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/07
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究の目的は,骨皮質描出を目的とした3種類のCT-like image(oZTEo, LAVA, MERGE)のシーケンスの違いが画質に与える影響を検証することである.【方法】 GE Healthcare社(Milwaukee, WI, USA)MRI Pioneer 3.0Tと豚の足の骨と4種類の生体近似ファントムで作成した自作ファントムを用い,骨皮質と生体近似ファントムのcontrast ratio(CR),contrast to noise ratio(CNR),生体近似ファントムの信号変化比,視覚評価で比較した.【結果】CRおよびCNRはMERGE,LAVA,oZTEoの順に低値となった.信号変化比と視覚評価はoZTEo,LAVA,MERGEの順に高値となった.【結語】MRIを用いたCT-like imageの比較では,すべてのCT-like imageで骨皮質を白黒反転表示で白く描出することが可能であり,骨折線も描出可能であった.各撮像シーケンスの特徴に合わせたCT-like imageを撮像することで,MRIのみで完結できる検査が増加し,MRIの有用性が更に高まることが予想される.

  • 春國 知貴, 松本 賢治, 小坂 賢吾, 松田 大志
    2025 年81 巻4 号 論文ID: 25-1470
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/11
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】左乳房に対する深吸気息止めdeep inspiration breath hold(DIBH)照射において,自施設におけるDIBHの治療精度の定量評価を行った.【方法】治療時に取得したシネ画像を用いて,検証ソフトでcentral lung distance(CLD),central skin distance(CSD)の解析を行った.得られたデータより治療中の動きのintra-fractional motionと治療間の動きのinter-fractional motionを算出し,systematic error(ΔΣ),random error(Δσ)からplanning target volume(PTV)marginを算出し,他報告と比較した.【結果】得られたΔΣは1.15 mm,Δσは1.53 mmとなり,他報告と同等であった.【結語】検証ソフトによる解析は問題なく実施することができた.解析の結果,当院での左乳房DIBH照射における照射手法の再現性は良好であった.DIBH照射は,ビーム照射が行われている間,胸壁の高さを保持しておくことが前提であり,照射中の胸壁の位置誤差が許容範囲内であるかを定量的に評価することが重要である.

教育講座─リング型放射線治療装置のコミッショニングと臨床運用─
教育講座─放射線防護のアーカイブス─
教育講座─核医学治療の進展と放射線技術科学との結びつき─
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