【目的】股関節X線撮影時に銅(Cu)フィルタを付加した場合の画質評価および線量低減の可否について検討した.【方法】管電圧70 kVにおいてCuフィルタ付加なし(0 mm),あり(0.1/0.2 mm)における実効エネルギーの算出および,入射表面線量一定時におけるコントラスト,信号差対雑音比(signal-difference-to-noise-ratio: SDNR)を算出し,線量低減率を推定した.【結果】実効エネルギーはCu 0,0.1,0.2 mmの順で32.07,37.59,40.91 keVとなった.Cuフィルタ付加を厚くするごとにコントラストは低下したが,SDNRは増加した.骨組織を対象とするSDNRより算出した線量低減率は,最大で0.1 mm Cuにて34%,0.2 mm Cuにて47%となった.【結語】股関節X線撮影時にCuフィルタを付加することで,SDNRを基準とする画質を一定に保ったまま入射表面線量低減の可能性が示唆された.
【目的】心臓magnetic resonance imaging(MRI)検査における心筋のT1値測定において,脈波同期法は心電同期法の代替となりうるか検討した.【方法】当院において心臓MRI検査を受けた49名の患者に対して,心電同期法と脈波同期法でそれぞれ5s(3s)3s modified Look-Locker inversion recovery(MOLLI)法を用いたT1 map撮像を行い,左室基部,左室中部,心尖部の短軸画像を取得した.取得した画像のT1値測定を行い,得られたT1値を比較した.T1値の比較においてはBland–Altman解析と級内相関係数を用いて心電同期法と脈波同期法の一致度を検証した.また,心電波形の収縮期の長さと,心電波形のRから脈波波形のR(R′)までの伝達の長さ(R–R′)を計測し,脈波同期法による撮像が拡張期で撮像可能かもあわせて評価した.【結果】心電同期法と脈波同期法の良好なT1値の一致度が確認され,脈波同期法は初期設定のまま追加の設定を要さず心臓の拡張期で撮像が可能であることも確認された.【結語】心筋T1測定において,脈波同期法による撮像は心電同期法による撮像と代替可能であると考えられる.
【目的】子宮頸がんの密封小線源治療における線源停留位置の違いが線量分布に与える影響を検討した.【方法】子宮頸がん患者の治療計画データを使用した.治療を行った線源停留位置を0点とした.1 mm間隔で,最大5 mm変化させた治療計画を作成した.腔内照射と組織内照射併用腔内照射(IC/IS BT)において,高リスク臨床標的体積90%線量(HR-CTV D90%),直腸2 cm3線量(Rectum D2 cc),小腸2 cm3線量(Small D2 cc),S状結腸2 cm3線量(Sigmoid D2 cc),膀胱2 cm3線量(Bladder D2 cc),左右A点線量を比較した.【結果】腔内照射では,0点位置から線源停留位置がin方向に1 mm変化するとHR-CTV D90%やRectum D2 cc,Small D2 cc,Sigmoid D2 ccの線量が最大2.2%増加した.一方,Bladder D2 ccでは0点位置から線源停留位置がout方向に1 mm変化すると線量が1.3%増加した.IC/IS BTでも同様の傾向であった.【結語】線源停留位置が1 mm変化すると最大で2%以上の線量に影響を与えることが示された.線源停留位置の精度確認は非常に重要であり,装置を使用する前に必ず行うべきである.
【目的】DRLs 2020では基準透視線量率としてファントム入射表面空気カーマ(Ka,e)が17 mGy/minと設定されているが,すべての血管撮影に対応する値であり,撮影線量率は設定されていない.血管撮影プロトコルの現状をアンケート調査し,放射線防護の最適化の参考値となり得る領域疾患別のKa,eを評価した.【方法】79施設274装置461プロトコルのKa,eを分析した.疾患や診断,interventional radiology (IVR)でプロトコルを変更している場合はKa,eの変化率,DRLs 2020にてプロトコルを変更した場合は調整前後のKa,eおよび臨床での患者照射基準点空気カーマ(Ka,r),面積空気カーマ積算値(PKA)の変化率を算出した.【結果】Ka,eは領域疾患別で線量差が確認された.DRLs 2020によって13施設36プロトコルがKa,eを低減させたが,Ka,r,PKAが増加したプロトコルも存在した.【結語】Ka,eを低減させると必ずしもKa,r,PKAが減少するとは限らないが,領域疾患別にKa,eを比較することで,装置性能評価を含めた防護の最適化が期待できる.