【目的】本研究の目的はワイドビームcomputed tomography(CT)装置における3つのタングステンリング(TR)と80,120 kVを使用したビーム幅計測法の考案と誤差の要因を特定し,その補正法を開発することとした.【方法】TR法にて80,120 kV時のビーム幅を算出し,flat-panel detector(FPD)法の計測値と比較した.また陽極方向の線量低下による誤差を補正するため,ヒール効果補正を実施して比較した.【結果】公称ビーム幅160 mmでは,TR幅5,10,15 mmの80 kV,120 kVのTR法とFPD法ではそれぞれ182.5/182.1,167.5/165.7,168.2/163.0,172.9 mmであり,ヒール効果補正により80 kVの条件下ではTR幅10,15 mmのビーム幅は172.4,173.2 mmと改善した.【結語】TR幅5 mmはワイドビーム幅の計測が困難であった.ヒール効果補正を実施したTR幅10,15 mmはワイドビーム幅の計測に適しており,120 kVを用いた条件下においても計測可能である.
【目的】腹部CT検査での再構成アルゴリズムとノイズ低減強度が低コントラスト検出能に与える影響を調査した.【方法】上腹部擬似人体ファントムを用い,FBP,hybrid IR,深層学習ベースの再構成法(DLR for body, DLR for body sharp)を比較した.撮像は四つの放射線量条件で実施し,ノイズ低減強度を3種に設定,評価指標はNPSおよびCNRLOを使用した.【結果】DLR for body sharpは強いノイズ低減強度で優れた低コントラスト検出能を示し,他より高いCNRLOを達成した.Hybrid IRとDLR for bodyはノイズ低減強度に関係なく同等性能を示し,低周波ノイズ抑制の制約が確認された.【結語】検査目的に応じた再構成アルゴリズムとノイズ低減強度選択が重要で,DLR for body sharpは低線量下で画像品質向上と被ばく低減に有用である.
【目的】本研究は,低線量肺がんcomputed tomography(CT)検診において画像再構成法,撮影線量,pitch factor(PF)を変化させた場合の物理特性を評価し,適切な低線量化を行うための撮影線量と最適なPFおよび低線量肺がんCT検診におけるdeep learning reconstruction(DLR)の有用性を検証することを目的とした.【方法】X線CT装置にはAquilion Prime SP/i Edition(キヤノンメディカルシステムズ,栃木)を使用し,水ファントムと胸部ファントムを用いて物理特性を評価した.画像再構成法は,filtered back projection(FBP),iterative reconstruction(IR)応用法,DLRを用い,撮影線量を4段階,PFを3段階に変更した.物理特性は,noise power spectrum(NPS),task transfer function(TTF),low-contrast object specific contrast-to-noise ratio(CNRLO),system performance function(SPF)を用いて定量的に評価した.【結果】雑音特性は,IR応用法およびDLRでは低線量時においてもFBPに比べて向上した.PFを変化させた場合,IR応用法およびDLRで高空間周波数領域のノイズ低減が認められた.TTFは低線量時にDLRが有用であることが示され,SPFもstandard deviation (SD) 50でDLRを用いることで向上した.CNRLOはPFによる差はなかった.【結語】低線量肺がんCT検診においてDLRの有用性が示唆され,適切なSD設定とPFの選択が画像の最適化に寄与することが明らかとなった.
職業被ばくの推移を把握することは,放射線防護の啓発に重要である.しかし,2018年度以降の被ばくの推移の報告例が見当たらない.本資料では,2018–2022年度の医療・放射線分野と原子力分野の職業被ばくを調査し,その年次変化を評価した.その方法は,網羅性の高い個人線量の統計データを利用し,平均/集団線量を整理した.また,線量下限指標値を年間0.1,1,20 mSvに設定し,各集団を分析した.その結果,線量は検出下限未満が支配的であり,その割合に年次変化はなかった.平均線量は,大きな年次変化がなかった.0.1,1 mSv超は診療放射線技師と医師が多いが,2018年以降で減少傾向であった.20 mSv超では医師の人数が半数以上である.ただし,医療分野は線量データに反映がされていない場合がある.原子力従事者は20 mSv超がおらず,どの集団でも年次変化がほとんどなかった.線量下限指標値を設定して分析することで,被ばくの実態がある従事者は,個人線量とその年次変化が評価できる.