日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
選択された号の論文の1105件中651~700を表示しています
  • 佐藤 由夏, 伊藤 元己
    p. 0651
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    被子植物の生殖器官である花は、一般的にがく・花弁・雄しべ・雌しべという器官で構成されており、その器官の数・配列・形態などが多種多様である。祖先的な被子植物の花は全て放射相称であり、一部の花器官が不特定多数でらせん配列している。進化の過程で、被子植物の花器官の数は一定化し、らせん配列から輪生配列へ、放射相称から左右相称へと花の形態は多様化していった。そこで、花器官の数が不特定多数から一定化する事が花形態の多様性が生じるための重要な出来事として考え、花芽分裂組織決定遺伝子であるAPETALA1(AP1) に着目した。本研究では、祖先的な分類群である真正双子葉類の基部に位置し、多数の雄しべと雌しべがらせん配列するキンポウゲ科のタガラシからAP1相同遺伝子を単離し、発現パターンや機能を調べることを目的とした。現在までに、タガラシAP1相同遺伝子であるRascFUL1を単離し、半定量的RT-PCR、リアルタイムPCRを行った。その結果、開花時において苞葉・がく・雌しべで強い発現が観察された。この結果より、がくと花弁で発現が見られるシロイヌナズナのAP1と、タガラシのRascFUL1は発現パターンが異なることが示され、機能も異なる可能性が示唆された。さらに、花器官原基が発生する時のRascFUL1の発現を詳細に観察するために、in situ ハイブリダイゼーションを行っている。
  • 真鍋 和人, 山崎 聖司
    p. 0652
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    キュウリは同一個体上に雌花と雄花を分化する雌雄異花同株植物である。キュウリの性分化は,がく,花弁,雄蕊,雌蕊の各原基を形成する両性花的な発育段階を経た後,雄蕊または雌蕊原基の選択的な退化によって起こる。そのため,雌花には雄蕊原基の痕跡が,雄花には雌蕊原基の痕跡が認められる。雌花における雄蕊原基の退化はプログラム細胞死(PCD)を伴うことが知られているが,雄花における雌蕊原基の退化とPCDの関係は不明である。動物では,PCD,増殖,分化,組織の三次元構築には細胞外マトリックス(ECM)が重要な役割を果たす。ECMは細胞から分泌された高分子の複合体であり,マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)によって分解される。近年,キュウリ子葉からMMPをコードする遺伝子Cs1-MMPが単離され,その発現は子葉でPCDがおこる直前に強いことが示された。本研究ではキュウリの性分化に伴う生殖器官の退化におけるMMPの関与を調べるために,花器官におけるCs1-MMPの発現をRT-PCRサザン分析法で解析した。その結果,Cs1-MMPは雄花の発育ステージを通じて,がくと,雌蕊原基が退化した領域で強く発現した。特に,雌蕊原基が退化した領域での発現は,雄花の発育ステージが進むにつれて強くなった。雌蕊原基が退化した領域におけるCs1-MMPは,キュウリの性分化と雄花の発育に重要な役割を果たす可能性がある。
  • 渡辺 敦史, 栗田 学, 宗原 慶恵, 中田 了五
    p. 0653
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    スギは我が国の造林樹種の中で最も重要な樹種の一つである。しかし、春先に飛散するスギ花粉は花粉症を引き起こし、社会問題化している。林木育種センターでは、雄性不稔個体であるスギ個体を「爽春」の品種名で品種登録出願した。現在、「爽春」は組織培養やさし木等で大量に増殖するとともに、人工交配を行って様々な形質を保有する個体の作出を試みている。これに加え、「爽春」の雄性不稔化の原因やそれに関係する遺伝子が明らかとなれば、より多様な雄性不稔スギを開発できる可能性がある。そこで、花芽が形成される8月後半から一週間ごとに雄花を採取し、雄花形成を電子顕微鏡によって観察した。その結果、9月初頭に花粉形成を開始したが、10月初頭から花粉形成に異常が認められ、10月後半には花粉が崩壊する過程が観察された。この結果に基づいて、9月期の雄花をテスターに10月期の雄花をドライバーにサブトラクションライブラリーを構築し、遺伝子単離を行った。約200の遺伝子を単離した結果、ラジアタマツのPrMALE1遺伝子と相同性が高い遺伝子が約17%を占めていた。同様にchalcone synthase-like proteinが約6.8%、dihydroflavonol 4-reductaseが約6.3%出現し、これら3遺伝子で全体の3割に達した。さらに、遺伝子単離を進めるとともに、単離した遺伝子の発現定量解析を行う。
  • 鈴木 英理子, 鈴木 優志, 村中 俊哉, 永田 典子
    p. 0654
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    成熟した雄性配偶体表面にある、脂質等を主成分とするポーレンコートは、UVからの保護や柱頭での水和作用に関わっており、欠損することで雄性不稔になる。ポーレンコート形成には、タペータム細胞内の特異的な脂質系オルガネラのエライオプラストとタペトソームが関わることが報告されている。我々は、これらの脂質系オルガネラからポーレンコートが形成されるまでのプロセスを明らかにすることを目的として、野生型シロイヌナズナおよびポーレンコート形成不全変異体を材料に、詳細な電子顕微鏡観察を行った。野生型の観察により、タペータム崩壊の前に成熟したタペトソーム内に小胞が出現しタペトソームが小さく分離する過程が見られること、タペータム細胞質が消失してオルガネラが雄性配偶体周辺に周りこんだ後にエライオプラストの最外膜が消失して2つのオルガネラは融合すること、など幾つかのポーレンコート形成のプロセスが明らかとなった。また、超長鎖脂肪酸合成経路に異常がある cer1-1変異体やイソプレノイド合成酵素欠損変異体群の観察を通じて、複数のイソプレノイド代謝産物がタペータム内のオルガネラ形成において異なる機能をもつことが明らかとなり、さらに、スクアレンより上流の代謝産物が脂質系オルガネラの主成分であることなどが示唆された。
  • 佐々 路佳, 齊藤 弘子, 中村 研三, 石黒 澄衞
    p. 0655
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    シロイヌナズナのポーレンコートは花粉表面を覆うタンパク質や脂質からなる物質で花粉の稔性に重要な働きを持つ。本研究では、ポーレンコートに大量に存在するEXTRACELLULAR LIPASE4(EXL4)およびEXL6タンパク質に注目し、これがポーレンコートの機能またはその形成にどのような働きを持っているか解明することを目的として研究を行った。これまでの研究で、 EXL4、EXL6両遺伝子の発現をほぼ完全に抑えた植物体(exl4-RNAi exl6)ではポーレンコートの形成が不完全になり、明らかに花粉稔性が低下することを見いだしており、まずその原因についてさらに解析を進めた。 exl4-RNAi exl6の花粉を野生型植物の柱頭に付けてその変化を走査型電子顕微鏡で観察したところ、柱頭からの吸水が著しく抑制され、それが不稔性の原因であることがわかった。次にポーレンコートを抽出してそこに含まれるタンパク質を分析したところ、EXL4やEXL6だけでなくそれ以外の主要タンパク質も大幅に減少していた。脂質成分についても現在解析を進めている。さらに、EXL4、EXL6タンパク質の細胞内局在部位を調べるため、GFP融合タンパク質を作製し、タペート細胞で発現させた。その結果、両タンパク質は細胞内で顆粒状に蓄積している像が観察された。以上の結果は、EXL4、EXL6タンパク質はタペート細胞の内容物が分解され正常なポーレンコート成分が形成される過程で何らかの重要な働きをしていることを示している。
  • 田畑 亮, 山本 興太朗, 中村 研三, 石黒 澄衞
    p. 0656
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    ジャスモン酸(JA)は葯の裂開や開花時の花弁伸長に必要であるが、その生成がどのような因子によって制御されているかは不明な点が多い。我々はauxin response factor 6 (arf6)8 (arf8) の二重変異体では蕾でのJAの生成量が減少することに着目し、その機構の解明を試みた。JA生合成に関与する酵素の遺伝子の発現を調べた結果、arf6 arf8ではDEFECTIVE IN ANTHER DEHISCENCE1 (DAD1) 遺伝子の発現が強く抑制されていることを見いだした。そこでこの二重変異体にPISTILLTAプロモーターにつないだDAD1遺伝子を導入したところ、花序におけるJA量が一部回復した。一方、arf6 arf8二重変異体の花では、花弁の維管束形成異常、細胞分裂の低下など、器官形成の異常が観察される。これはクラスI KNOX遺伝子の異所発現を疑わせる。調べた結果、arf6 arf8の花序ではこれらの遺伝子の発現が野生型に比べて明らかに増加していた。つづいてarf6 arf8 stm+/-個体を作出したところ、器官形成の異常が一部回復したほか、DAD1の発現が増加し、葯の裂開や花弁の伸長などJAと関係する表現型も回復が見られた。以上より、花器官形成においてARF68によるKNOX遺伝子群の発現抑制が正常な器官形成に必要であり、同時にJAの生成に必要なDAD1の発現制御にも関与していると考えられる。
  • 黒柳 美和, Kansup Jeeraporn, 山田 健志, 西村 幹夫, 西村 いくこ
    p. 0657
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    液胞プロセシング酵素(VPE)は病原体感染や病原性毒素により誘導される細胞死(1,2),種皮形成過程における細胞死(3)に関与することが見いだされた.この他にもVPEの遺伝子発現は,シロイヌナズナにおいて老化や傷害応答などによって誘導されることがわかっている.そこで,シロイヌナズナの老化過程におけるVPEの役割について調べることにした.葉や根などの栄養器官で主に働くVPE は経時的にその発現量が増加し,VPE活性も上昇した.老化の誘導に関与する植物ホルモン(エチレン,サリチル酸)の影響を調べるため,各変異体を用いてVPE活性を測定した結果,これら変異体におけるVPE活性が抑制された.老化過程でのVPEの機能にエチレンやサリチル酸の関与が示唆された.シロイヌナズナに存在する4つのVPE遺伝子を破壊した変異体(VPE-null)を用いて,老化過程における葉の表現型を観察したところ,VPE欠損により葉の老化が遅延する傾向が示された.さらに,VPE-nullにおける液胞に局在するプロテアーゼの挙動をイムノブロット法により調べたところ,RD21, AtCPYなどのシステインプロテアーゼが蓄積していた.以上の結果から,VPEは液胞内のタンパク質分解を制御することで,葉の老化過程に関与していることが考えられた.

    (1) Hatsugai et al., 305, 855-858 (2004) Science
    (2) Kuroyanagi et al., 280, 32914-32920 (2005) J. Biol. Chem.
    (3) Nakaune et al., 17, 876-887 (2005) Plant Cell
  • 羽方 誠, 岡 義人, 中村 英光, 村松 昌幸, 清田 誠一郎, 天野 晃, 土岐 尚子, 梶川 真理子, 馬場 晶子, 田切 明美, 川 ...
    p. 0658
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    我々は、遺伝子の構成的過剰発現がもたらす異常表現型を指標にした包括的遺伝子機能解明システム〔FOX (Full-length cDNA Over-eXpressor gene) Hunting System〕をイネに適用している。その過程で、顕著な生育促進を示す2つの独立したFOXイネ系統を見出した。これらの系統は稈や根の伸長促進や種子胚乳肥大等を示したが、節間や胚乳の細胞を詳しく観察した結果、伸長促進形質は細胞の伸長ではなく、分裂の促進に起因していた。両系統ではTIFY/ZIM モチーフタンパク質をコードするcDNA(FR29と呼称)を過剰発現していた。FR29遺伝子発現は遠赤色光照射や傷害により迅速かつ一過的に上昇したことから、FR29の光およびストレスシグナリングへの関与が示唆された。シロイヌナズナではJAZ(JASMONATE ZIM-DOMAIN)タンパク質がSCFCOI1ユビキチンリガーゼのターゲットで、ジャスモン酸(JA)応答性遺伝子発現のリプレッサーとして働くことが示されている(Thinesら 2007他)。FR29-FOXイネ系統にMeJAを処理したところ、JA感受性の低下やJA応答性遺伝子発現誘導の抑制が見られた。以上の知見から、FR29はJAシグナリングを抑制的に制御する一方、細胞分裂を促進することで植物の生長を促す機能を持つと考えられる。
  • 平賀 勧, 大坪 憲弘, 小川 健一
    p. 0659
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    過度な活性酸素は植物の生育を妨げるが、適度な活性酸素処理は逆に成長を促すことが様々な植物で示されている。本研究では、ダイズの発芽、ならびに発芽後成長に及ぼす過酸化水素処理の影響について調べた。
    ダイズ種子を一定時間過酸化水素水中に浸漬して吸水させたところ、粒大や種皮色の異なる様々な品種で発芽の促進が観察された。本研究で行った実験条件では、過酸化水素処理が発芽を抑制することは無く、また、過酸化水素水での吸水は、水で吸水させる際にエアレーションで溶存酸素濃度を高くした場合よりも明らかに発芽を促進していたことから、過酸化水素処理が、種子でのカタラーゼ(様)反応による酸素発生を通してでは無く、酸化刺激として作用したと考えられた。
    発芽後成長期のダイズは、低酸素条件にさらされるとその後の成長が明らかに遅延する。酸素が十分な場合(21% O2)は、過酸化水素水中で吸水させたダイズと水で吸水させたダイズの間で、発芽後成長には差が認められなかったが、播種後、酸素分圧を4ないし5%に低下させた条件では、過酸化水素中で吸水させた方が良好に成長していた。よって、ストレス条件下では、過酸化水素処理による酸化刺激がダイズ発芽後成長も促進するものと考えられた。
  • 奈良 久美, 小林 和貴, 正岡 詩織, 小林 淳子, 中澤 美紀, 松井 南, 鈴木 均
    p. 0660
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    高等植物の根毛形成は、光や植物ホルモン、活性酸素等、さまざまな環境刺激や内的シグナルによって調節されている。シロイヌナズナでは、光による根毛形成の促進にフィトクロムが関与していることが報告されているが、フィトクロムによる光受容と根毛形成をつなぐ分子メカニズムに関しては未だ不明な点が多い。そこで、光による根毛形成促進に関わる分子を特定するために、シロイヌナズナのアクチベーションタグラインから、光による根毛形成促進が過剰におこる突然変異体lrh1を単離し、その解析を行った。lrh1変異体では、一定強度(1~10 W m-2)の白色光照射下で育てた場合に、野生株よりも実生の根毛量が増加した。またlrh1変異体には、根毛形成以外にも、実生の胚軸や主根が短い、側根が少ない等、野生株と異なる形質が認められた。lrh1変異の原因因子を探るため、lrh1変異体のT-DNA挿入部位を特定したところ、3番染色体の2つのトランスポゾン関連の偽遺伝子の間にT-DNAが挿入されていることがわかった。ASRP及びAUSPデータベースを用いて調べたところ、T-DNA内のエンハンサーの影響で転写活性化が起きると予想される範囲には、300以上の低分子RNAの配列や9つのproproteinの配列が存在していた。現在、T-DNA挿入部位近傍の領域を過剰発現させ、その影響を解析しており、その結果を併せて報告する。
  • 鎌田 直子, 鈴木 光宏, 米田 好文
    p. 0661
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    シロイヌナズナacaulis1 (acl1) 変異体は、ロゼット葉が小さく縮れ、花茎長が短くなる表現型を示す。強い表現型を持つacl1-1アレルでは、ロゼット葉の直径は非常に小さく1cm前後であり、花茎もロゼットの高さよりもわずかに長い程度で先端に2-3個の花をつける。弱いアレルacl1-3でもロゼット葉はやや縮れて野生型よりも小さく、花茎全長も短くなる。これらの表現型は22°Cにおいて観察されるが、28°Cに生育温度を変化させると失われ、両acl1アレル共にほぼ野生型と同等の大きさにまで植物体が成長する。
    acl1変異体種子にEMSによる突然変異原処理を行い、22°Cにおけるacl1表現型のエンハンサーおよびサプレッサー変異体を複数ライン得た。22°Cでのacl1変異体の葉や花茎の形態異常がどのような遺伝子経路を介しているのかを知る手がかりとなると考えている。また、acl1-1アレルでは変異表現型の直接の原因ではないものの表現型をエンハンスする性質を持つ逆位が4番染色体に見つかっている。この逆位がacl1表現型に及ぼす影響についても解析を行っている。
  • Ferjani Ali, 藤森 玉輝, 堀口 吾朗, 柳澤 修一, 塚谷 裕一
    p. 0662
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    葉の細胞数の減少を引き起こす突然変異はしばしば、細胞サイズの増加を伴うことが知られている。葉の器官サイズの減少が細胞サイズの増加によって、あたかも補償されるかのように見えるため、この現象を補償作用と呼ぶ。器官形成における細胞増殖と細胞伸長の統御機構は不明な点が多いが、補償作用はこれを理解するための重要な手がかりとなる。今までに我々は、補償作用を示すfugu突然変異株を5系統単離、解析し報告してきた。本発表では、fugu5の持つ興味深い表現型について報告する。fugu5の子葉は野生型に比べて細長い形態を示し、補償作用を示すが、MS培地上での生育により、その葉型が野生型へと回復することが明らかとなった。さらに、細胞レベルでの解析を行なった結果、培地生育条件下では、細胞数が野生型レベルへと回復するとともに補償作用が完全に抑制されていることが明らかとなった。次に補償作用を抑制する培地成分を検討するため、スクロースを含まない培地でfugu5を生育させたところ、補償作用が誘導された。一方、スクロースと同濃度のソルビトールを用いてfugu5を生育させた場合でも、補償作用は抑制されなかったことから、スクロースの補償作用に与える影響は浸透圧によるものではないことが明らかとなった。現在、各種の糖が補償作用に与える影響を検討中である。
  • 岡 真理子, 長谷川 勇輝, 赤沼 由紀, 樽井 義人, 田中 良和, 藤山 英保
    p. 0663
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    アッケシソウ (Salicornia herbacea) は海岸部や塩湿地に自生する塩生植物であるが、その成長機構についてはほとんど知られていない。本研究では、NaCl存在下におけるアッケシソウの成長とそのパラメーターについて調べた。アッケシソウ種子をNaCl溶液を含む濾紙上で発芽させたところ、NaCl濃度の上昇に伴って発芽時期が遅くなったが、NaCl 1 Mの高濃度においても発芽し、最終的にはいずれの濃度においても同程度に発芽した。アッケシソウの芽生えを水耕栽培したところ、NaClを含まない培地に比べNaCl 100-200 mMを含む培地でより成長が良好であった。水分含有率は、NaCl 100-200 mM処理区では低下しなかったものの、より高濃度処理区においては低下した。細胞の浸透濃度はNaClの処理濃度の増加に伴って高くなった。また、暗黒下NaCl存在下で生育させ、クリープ粘弾性解析法を用いて胚軸の伸展性を調べた結果、細胞壁の粘性の低下が認められた。一方、NaCl 100 mM、KCl 100 mMおよびマンニトール 200 mM存在下で生育させた植物の胚軸の成長を調べたところ、NaCl処理区では無処理区と比較して生重量の増加が認められたが、他の処理区では無処理区と同程度かあるいは減少した。以上の結果から、アッケシソウにおいてはNa+が特異的に成長を促進しすること、 Na+存在下においても細胞の吸水が阻害されないこと、さらにNa+によって細胞壁の粘性が低下し細胞伸長が促進されることが示唆された。
  • 八木 慎宜, 檜垣 マリコ, 槻木 竜二, 岡田 清孝
    p. 0664
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    細胞が極性をもち方向依存的に伸長することは細胞の形、ひいては植物の形を決める重要な過程である。方向依存的な細胞伸長は細胞膜付近に存在する表層微小管の配向により制御されているが、その分子メカニズムはあまり明らかになっていない。方向依存的な細胞伸長の制御について理解を深めるため、我々は細胞伸長に異常が見られるシロイヌナズナ突然変異体itosugi (itg)を用いた解析を行っている。itg変異体では、明所芽生えの根および暗所芽生えの胚軸において、器官の伸長方向への細胞伸長が抑制され、器官の伸長方向と垂直な方向に細胞が肥大する。このことは、ITGタンパク質が根および胚軸の方向依存的な細胞伸長に必要であることを示唆する。微小管重合阻害剤であるオリザリンで芽生えを処理すると、表層微小管の配向が乱れ根の伸長が抑制される。itg変異体ではオリザリンによる根の伸長抑制効果が野生型に比べ低くなっていた。また、ITG:GFP融合タンパク質は細胞膜付近において表層微小管に似たすじ状の局在パターンを示す。これらのことはITGタンパク質の機能と表層微小管による細胞伸長方向制御に関連性があることを示唆している。現在、itg変異による表層微小管の配向への影響、およびITGタンパク質と表層微小管の共局在性について解析を進めている。
  • 蓑田 歩, 柳澤 修一
    p. 0665
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    栄養に応答した細胞の増殖と成長の制御に重要な制御因子としてTORは真核生物に広く保存されている。TORは、植物の成長においても重要であることが示されている一方で、動物や酵母で知られているTOR相互作用因子の中には植物には存在しないものがあることから、TORがどのようにして植物の成長を制御しているのかというメカニズムはわかっていない。私達は、シロイヌナズナにおいてAtTORと相互作用する新規因子を同定することで、植物が栄養に応答して細胞の増殖と成長を制御する機構の一端を明らかにしたいと考えて研究を進めている。シロイヌナズナのプロトプラストを核画分と細胞質画分に分離後、ウェスタンブロットによりAtTORの標的の一つとして知られている2つのS6キナーゼの局在を調べたところ、現在までの報告とは異なり、共に細胞質画分に存在した。この2つのS6キナーゼは植物の発達段階での発現パターンも異なる。これらのことは、AtTORが植物の発達段階などに応じて異なる構成因子からなる複合体を形成して機能していることを示唆する。現在、AtTOR特異的な抗体や過剰発現体を利用した免疫沈降とともに、ハイスループットスクリーニング系として、プロトプラストで一過的に過剰発現したタンパク質に付加したタグを利用した免疫沈降によって、AtTOR複合体の構成因子の同定を試みており、これらもあわせて報告したい。
  • Kyohei Shibasaki, Matsuo Uemura, Abidur Rahman
    p. 0666
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    Plants respond to environmental stresses in multiple ways including changing the hormonal responses. The plant hormone auxin controls every aspect of growth and development. However,little is known about the effect of temperature stress on auxin response. To understand the mechanistic basis of cold temperature stress and auxin response, we characterized the root growth of Arabidopsis thaliana at 23°C after pre-incubating the seedlings at 4°C. The time course assay revealed that 8-12 hr pre-incubation at 4°C inhibited the root growth and reduced the gravity response approximately 50% compared to that of untreated controls. The auxin-signaling mutant axr1-3, which shows a reduced gravity response, responded to cold treatment like wild-type indicating that auxin transport rather than auxin signaling mechanism is affected by cold stress. Consistently,the expression of the auxin responsive marker was found to be altered in cold treated plants; accumulating GUS staining in the outer layer cells of the root meristem.
  • 森 一晃, 陳 静, 大林 武, 佐々木(関本) 結子, 櫻井 望, 青木 考, 鈴木 秀幸, 柴田 大輔, 太田 啓之
    p. 0667
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    ジャスモン酸(JA)を代表とするジャスモン酸類は,病傷害応答や雄しべの成熟,塊茎形成など様々な生理作用を持つ.12-オキソフィトジエン酸(OPDA)はJAの前駆体であると共に,JAとは異なるシグナルとして機能を持つ.シロイヌナズナでの研究からJAとOPDAの各々に応答する遺伝子群(JRG,ORG)の存在が知られている.JRGは主にF-BOXタンパク質であるCOI1を介してユビキチンプロテアソーム系によって制御され,またORGはCOI1を介さず制御されることがわかっている.
    本研究では,JRG,ORGがどのような経路を介して発現しているのかを明らかにするのを目的とし,GeneChipを用いて,coi1変異体におけるJA,OPDAに応答する遺伝子を網羅的に解析した.その結果,知られているようにJRGの大部分はCOI1依存的であり,ORGはほとんどがCOI1非依存的な応答を示すことを確認した.さらにcoi1変異体でもJA処理に対し同様の挙動を示す遺伝子を選び出し,COI1非依存なJRGとして解析を行った.まず野生株でJA処理後30分,3時間における3倍以上の応答を閾値として342個のJRGを得た.さらにcoi1変異体において野生株と同様の強度・プロファイルで応答を示す遺伝子として,55個のCOI1非依存的JRGを得た.また同様に,coi1変異体において応答強度が全体的に低下するものの,野生株と類似したプロファイルを示す遺伝子を39個得た.この中にはVSP1をはじめとする,主要なJRGが含まれていた.これらの遺伝子の詳細な発現解析について報告する.
  • 中村 郁子, 藤岡 昭三, 辻本 雅文, 北野 英己, 中野 雄司, 松岡 信
    p. 0668
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    ラミナジョイント(LJ)は葉身及び葉鞘という二つの性質の異なる葉をつなぐヒンジの役割をしており、その伸長制御は収量に影響を与えうる重要な問題である。LJの屈曲テストの歴史は古いが、その屈曲角度の制御機構については不明な点が多い。本研究では最近のゲノム解析と共に蓄積が進んだブラシノステロイド(BR)関連の変異体を用いて、LJの屈曲に関わる植物ホルモンであるBRとオーキシンによるLJの屈曲制御機構を詳細に解析した。野生型植物でBRやオーキシンに対して最も反応性が高いのは葉の抽出後展開前の時期であり、その時期にはBRの受容体であるBRI1が向軸側背軸側共に発現していたが、その後BRI1は向軸側のみに発現が限定された。何れのホルモン処理によってもLJの細胞数に変化はなく、専ら細胞伸長によりLJは伸長しており、伸長が著しいのは向軸側の外縁部の細胞であった。BR関連の変異体を用いてオーキシンに対するLJの反応を調べたところ、BRI1欠損変異体であるd61ではオーキシン処理による屈曲角度は小さくなったものの、細胞伸長は観察された。一方強い表現型を示すBR欠損変異体、d2やbrd1ではオーキシンに対して過敏に反応し、細胞伸長も促進されていたが、弱い表現型のdwf4やd11では過敏反応は見られなかった。これらの結果によりBRとオーキシンは複雑に相互作用しながら作用していることが示唆された。
  • 竹内 良徳, 内藤 喜之, 水谷 正治, 清水 文一, 平竹 潤
    p. 0669
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    インドール酢酸-アミノ酸複合体(IAA-aa)は、IAAの不活性化経路の鍵中間体で、IAA-aa 合成酵素はオーキシン恒常性を制御する重要な酵素である。オーキシン早期誘導遺伝子GH3 は IAA-aa 合成酵素をコードしているが、シロイヌナズナでは複数のGH3が機能重複しているため、遺伝学的手法によりオーキシン不活性化機構を探ることは困難である。そこで、我々は、GH3がアシル活性化酵素ファミリーの一員であり、IAAのアデニル化を経て反応を触媒していることに注目し、反応中間体アナログ阻害剤として、天然および人工オーキシンのN-acylsulfamoyladenosine 誘導体 (sulfamate型) を設計・合成した。これらの化合物は、シロイヌナズナ由来の複数のGH3を強く阻害する活性をもつばかりでなく、in vivoでも活性を示すことを、これまでに発表した。
    今回、阻害剤の植物体への取り込みが in vivo 活性を左右することが示唆されたため、より疎水的で化学的に安定な阻害剤を目指して、N-acylsulfamoylaminoadenosine 誘導体 (sulfamide型, acyl = IAA, PAA, NAA, 2,4-D) を設計・合成した。これらの化合物は、酸性・アルカリ性条件下で安定で、またGH3に対してin vitroで高い阻害活性を示した。
  • 林 晋平, 村山 真紀, 浅見 忠男, 篠崎 一雄, 平山 隆志
    p. 0670
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    26Sプロテアソームの各サブユニットの機能欠損が引き起こす表現型は一様ではない。このことは、個々のサブユニットがタンパク質の分解において異なる選択性を与えている可能性または独立した機能を持つ可能性を示唆している。我々は、種子発芽においてABA高感受性を示すシロイヌナズナのahg12変異体を分離し、マップベースクローニングにより26Sプロテアソームのサブユニットをコードする遺伝子に変異を同定した。ahg12変異体はABA高感受性以外にもいくつかの多面的な表現型を示し、その組み合わせはこれまでに報告のあるサブユニット変異体と異なっていた。このことからahg12変異は、このサブユニットに依存した標的タンパク質の選択性または何らかの未知の機能に影響を与えていると考えられる。ahg12はこれまでに報告のない優性のミスセンス変異であることから、さらなる解析によりサブユニットの機能について重要な情報の取得が期待できる。また、26Sプロテアソームは真核生物で高度に保存されているため、本研究で得られた知見は他の生物種へも適用され得る。現在、タンパク質分解に依存したABA応答の調節、さらに26Sプロテアソームサブユニットの機能について新たな知見を得ることを目的とし、シロイヌナズナおよび出芽酵母を用いて、この変異について詳細な解析を試みている。
  • 清水 久代, 佐藤 壮一郎, 綿引 雅昭, 山本 興太朗
    p. 0671
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    最近オーキシン受容体が明らかになり、オーキシン応答の初発反応は同受容体によるAux/IAAタンパク質の分解促進であると考えられている。このことを具体的な生理反応で明らかにする第一歩として、ルシフェラーゼ(LUC)を融合させたIAA17/AXR3やIAA19/MSG2タンパク質を35Sプロモーターを用いて強制発現する形質転換体をシロイヌナズナで作製し、これら融合タンパク質の安定性を測定することを試みた。これら形質転換体を暗所で4-5日間生育し、ルミノメーターを用いてLUCの発光量を計測した。発光量計測時にシクロヘキシミドを投与すると発光量が急速に減衰するので、その経時変化よりそれぞれのタンパク質の半減期を調べた。Aux/IAAタンパク質に融合させないLUC単独タンパク質を発現させた場合は、発光量の半減期は1時間以上であった。それに対して、IAA17タンパク質を融合させたものは約10分、IAA19を融合させたものは約15分の半減期を示し、Aux/IAAタンパク質と融合することでLUCが生体内で分解されやすくなっていることがわかった。IAA17融合タンパク質の半減期が10分程度であることは既に報告されているが(Dreher et al., 2006)、IAA19もIAA17同様、10分程度の半減期を示したことから、IAA19も一般的なAux/IAAタンパク質であることが示唆された。
  • 小嶋 美紀子, 上田 七重, 槇田 庸絵, 武井 兼太郎, 榊原 均
    p. 0672
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    植物の発生から栄養生長、花芽分化から種子形成にいたる様々な局面で植物ホルモンは情報分子として極めて重要な役割を演じている。個々のホルモンは各々の情報伝達系を介し遺伝子発現を制御するとともに、他のホルモンとの量的バランスによる相互制御により多様な作用を可能にしている。ここ数年主要ホルモンの生合成や情報伝達に関わる重要遺伝子が同定されたが、それらの機能や種々の変異体の表現型を生理学的に説明するには実際の組織中に存在する複数のホルモン分子種含量を知ることが重要である。我々は半自動固相抽出法とUPLC-タンデム四重極質量分析技術を利用することで、活性型分子種を含むサイトカイニン23種、IAAとそのアミノ酸縮合体を含むオーキシン7種、アブシジン酸、そしてジベレリン11種の計42分子種を同じ植物試料から測定する方法を確立している。この方法を用いることで10 mg ~ 100 mg新鮮重量組織から同時に180サンプルの抽出・測定ができ、一連の変異体コレクションなどのホルモンプロファイリングも可能になった。この技術を利用して解析を行ったイネ完全長cDNAをシロイヌナズナで過剰発現させたFOXラインの結果や、イネ、シロイヌナズナの各種変異体のホルモンプロファイリングの結果についても紹介する予定である。本研究の一部は科学技術振興調整費「イネ完全長cDNAによる有用形質高速探索」の支援によって行われている研究である。
  • 綾野 まどか, 郷田 秀樹, 横山 峰幸, 篠崎 一雄, 吉田 茂男
    p. 0673
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    リノレン酸由来の生理活性物質の一つであるα-ketol linolenic acid (KODA)は複数の植物に対し、ストレス耐性の付与、花器官の成長促進作用が観察された。KODAの生合成過程はジャスモン酸(JA)の生合成過程と類似している事が推測された。その過程では、JAと同じ機能を持つが、基質の酸化位置に違いがある二つの酵素lipoxygenase(LOX)とallene oxide synthase(AOS)が触媒作用を行なうと推測された。すなわちJA生合成では13位を特異的に酸化する酵素(13-LOX、13-AOS)が必須であるのに対し、KODAの生合成は9位特異的に触媒する酵素(9-LOX、9-AOS)の働きに依存すると推測された。近年ジャガイモやトマトで、9位特異的な酵素が花茎や塊茎の維管束に局在する事が明らかにされ、リノレン酸由来の生理活性物質の機能解析が急速に進んだ。さらに近年複数の植物に対するKODAの生理機能解析を行なった結果、KODAはJAの影響を受ける事、花茎と花器官の成長に関与する事が示唆された。その一方でモデル植物のシロイヌナズナでは9位特異的なLOX、AOSの情報は不足している。そこで我々は9-LOX及び9-AOSの機能解析とKODAの生合成経路について詳細な検討を行なった。
  • 豊島 正和, 佐々木 直文, 藤原 誠, 佐藤 直樹
    p. 0674
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    フィラメント状のラン藻であるAnabaena sp. PCC 7120は、培地中の硝酸塩やアンモニアなどの窒素源が無くなると、一部の細胞が約10個に1個の間隔でヘテロシストと呼ばれる窒素固定細胞に分化する。このヘテロシスト分化について、分化に関わる転写因子やヘテロシスト膜の形成に関わる遺伝子などが同定されている。また、細胞分裂ができない変異株の解析からヘテロシスト分化には細胞分裂が必要であるという報告もある。しかし、実際に1本のフィラメント上でどのようにヘテロシストが形成されていくのかについては、未だ明らかにされていない。本研究では、1本のフィラメント上におけるヘテロシスト形成を継時的に観察した。硝酸塩存在下で液体培養した細胞を、硝酸塩を含むプレート培地、または含まないプレート培地に移し、Anabaena sp. PCC 7120の一本の細胞列を構成する個々の細胞の形状と自家蛍光を4時間おきに観察し、近接細胞間の細胞分裂および蛍光強度の相関を解析した。その結果、細胞分裂は同期しておらず、分裂せずに分化する細胞も見られた。また,蛍光強度の濃淡には空間的な周期性が見られ、その周期が時間の経過とともに変化した。ヘテロシストの周期性もこの一部と考えられる。
  • 丸山 剛史, 橋本 薫, 日渡 祐二, 佐藤 良勝, 村田 隆, 長谷部 光泰, 藤田 知道
    p. 0675
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    多細胞生物は、幹細胞の不等分裂により自己複製した幹細胞と、分化した非幹細胞の異なる運命をもつ2つの娘細胞を生み出し、多細胞体制を作り上げる。このような幹細胞の不等分裂過程では特定のmRNAやタンパク質が不均等に分布する事が重要な役割を果たしている。しかし植物幹細胞の不等分裂過程において、どのタンパク質がいつ、どこに、どのように不均等分布をするのかについてはまだよくわかっていない。そこで我々は、ヒメツリガネゴケから単離したプロトプラストが不等分裂する幹細胞であることに注目し、植物幹細胞の不等分裂制御機構ならびに細胞運命制御機構の解明を目指し研究を進めている。
    これまでに、ヒメツリガネゴケプロトプラスト不等分裂制御に関与すると考えられる58遺伝子を報告し、これら遺伝子産物が不等分裂の際にどのような局在変化を示すのかを調べる目的で、遺伝子ターゲティングにより黄色蛍光タンパク質(シトリン)遺伝子を各候補遺伝子に対してノックインした形質転換体を作成し、内在性プロモーター制御下におけるシトリン融合タンパク質の局在解析を行っている。その結果、幹細胞の極性形成部位に局在するものや不等分裂後の幹細胞に非対称に分配されるものなど興味深い局在変化を示す因子を同定することができた。本大会では幹細胞化過程や不等分裂時におけるこれら融合蛋白質の局在変化をタイムラプス観察した結果を報告する。
  • 齊藤 隆, 藤河 秀喜, 羽賀 望, 伊藤 正樹
    p. 0676
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    植物の細胞周期中でG2/M期に発現する遺伝子の多くは上流域に共通のシスエレメント(MSAエレメント)を持ち、そこに結合するR1R2R3-Mybによって転写が制御されている。シロイヌナズナには5個のR1R2R3-Myb遺伝子が存在するが、そのうちMYB3R1MYB3R4は互いによく似た転写活性化因子をコードしており、myb3r1 myb3r4二重変異体ではG2/M期特異的遺伝子のmRNAレベルの減少や、不完全なサイトキネシスに起因する様々な異常が見られる。我々はG2/M期特異的遺伝子の転写活性化に関わる新奇因子群の同定を目的として、myb3r4破壊株に見られる弱いサイトキネシスの異常をエンハンスする変異体の単離と解析を行っている。このようなエンハンサー変異体からはMYB3R1, MYB3R4と重複した機能を持つ転写因子や、MYB3R1の転写や活性を制御する因子、サイトキネシスに直接関わる標的遺伝子などが同定される可能性がある。これまでの研究から野生型ランズバーグ株に存在する多型がmyb3r4の異常をエンハンスすることを偶然明らかにしており、現在その原因遺伝子の同定を行っている。また、myb3r4変異体の種子にEMS処理を行い、エンハンサー変異体の単離を行っているのであわせて報告する。
  • 安達 澄子, 南澤 一徳, 梅田 正明
    p. 0677
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    真核細胞の細胞周期は、サイクリンとサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の複合体によって制御される。これらの制御因子は進化的に保存されており、シロイヌナズナでは、AおよびB型CDKとA、B、D型サイクリンが細胞周期進行を中心的に制御すると考えられている。このうち、我々は植物特異的なB2型CDK(CDKB2)とその活性制御サブユニットであるD4型サイクリン(CYCD4)に注目して解析を行っている。
    CDKB2については、タンパク質の存在量が転写に加えてプロテアソーム依存的なタンパク質分解によっても制御されることをこれまでに報告した。今回、CDKB2の機能解析とともにDNA傷害ストレスに対する発現応答について解析したので報告する。CDKB2はDNA傷害に応答して転写レベルで抑制を受けるほか、タンパク質分解もCDKB2の発現抑制に寄与していることを示す結果が得られた。
    また、胚軸上部で気孔形成に先立つ細胞分裂を促進するCYCD4については、現在、発現解析および気孔形成に異常が見られる変異体との交配により、より詳細な機能解析を行っている。
  • 石田 咲子, 山本 宏子, 園田 裕, 佐古 香織, 眞木 祐子, 池田 亮, 山口 淳二
    p. 0678
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    26Sプロテアソームは異常タンパク質の分解による品質管理システムとして、また特定タンパク質の分解による分子スイッチとして機能している。26Sプロテアソームは20S複合体と19S複合体からなる。そのうちATP依存的なタンパク質分解を行うための基質の認識と活性の調節を19S複合体が担っている。19S複合体はATPase活性を持つ6種のRPTタンパク質群と、ATPase活性を持たない13種のRPNタンパク質群からなる。RPNおよびRPTタンパク質群は複合体を形成して機能するのみならず、それぞれに特異的な機能を保持する。さらに植物を含めた多くの多細胞生物において、RPTサブユニットの多くが2種類以上のパラログ分子からなることが報告されている。
    シロイヌナズナAtRPTサブユニットは、AtRPT3を除き、2種類のパラログ分子が存在する。AtRPT2に着目した研究では、AtRPT2a欠損変異体は顕著な器官の巨大化を示し、これは細胞数の増加ではなく、細胞サイズの増大に起因していた。また、トライコームの分枝数も増加していた。一方、AtRPT2b欠損変異体はこのような表現型を示さなかった。その他に、AtRPT5a欠損変異体もAtRPT2a欠損変異体と同様に器官の巨大化を示した。現在、各AtRPT欠損変異体を用いて、表現型等の網羅的解析を進めているので,これについて報告する。
  • 眞木 祐子, 佐古 香織, 山崎 直子, 園田 裕, 今井 久美子, 青山 卓史, 池田 亮, 山口 淳二
    p. 0679
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    26Sプロテアソームはユビキチン化タンパクを能動的に分解する巨大タンパク質複合体であり、構成するサブユニットはそれぞれ特異的な機能を有している。これらのサブユニットが相互作用することでプロテアソームは特定のタンパク質を特定の時期に分解するという高度な機能性を確立している。植物では多くの生命現象がユビキチン・プロテアソームシステムにより制御されており、優れた環境適応能力の一翼を担う分子機構であると考えられている。
    我々はシロイヌナズナの26SプロテアソームサブユニットAtRPT2aが細胞分裂を伴わないDNA複製であるエンドリデュプリケーション(ERD)による細胞サイズの制御に関与していることを明らかにした。そこで今回ERDのモデル材料であるトライコームを指標としてAtRPT2aの機能を解析した。トライコームは表皮細胞が伸長して形成された1細胞からなる器官であり通常4回のERDを起こし核相32C,分枝3本となる。Atrpt2aでは過剰なERDが起こり64C以上分枝4,5本のトライコームがみられた。そこで4回目のERDが抑制される変異体gl3Atrpt2aとの二重変異体を作成した。その結果核相がWTと同程度に回復した。このことからAtrpt2aでは3回目以前と4回目以降のERDが過剰に促進されていることが示唆された。現在ERDの抑制に機能するCYCA2;3との関係についても検証中である。
  • 坂本 綾子, 中川 繭, 佐藤 勝也, 鳴海 一成
    p. 0680
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    細胞分裂周期の進行は、内的または外的な様々な要因によって常にストレスを受けており、それによってDNA複製の中断や染色体の分配異常などが引き起こされることが知られている。細胞周期チェックポイントとは、こうした異常事態の際に細胞周期の進行を停止し、適切な処理が行われるまで次のステップに移行しないようにするための機構である。
    我々は、シロイヌナズナの紫外線感受性変異株のスクリーニングの過程で、suv2 (sensitive to UV 2) 変異株を単離した。suv2変異株は、様々なDNA変異原やヒドロキシウレアに対して感受性を示し、その表現系は損傷チェックポイントに関わるAtATRの欠損株に非常に良く似ていた。さらに、SUV2蛋白質はGCN4型のコイルドコイルドメインを持つ蛋白質をコードしており、N末側にはPI3K様プロテインキナーゼのターゲット配列が2カ所存在していた。そこで、SUV2蛋白質同士どうしの相互作用を酵母two-hybridの系で解析したところ、SUV2は2量体を形成することが明らかになった。また、SUV2蛋白質はシロイヌナズナ核抽出物によってin vitroでリン酸化された。我々はSUV2がATRの活性を制御するATRIP/Rad26のシロイヌナズナにおけるホモログであると結論づけ、AtRad26と命名した。
  • 原 博子, 吉積 毅, 津本 裕子, 島田 浩章, 松井 南
    p. 0681
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    エンドリデュプリケーションは、核及び細胞質の分裂を伴わない特殊な細胞周期で、植物において形態形成に関与することが知られている。しかし、その分子メカニズムは明らかになっていない。そこで、そのメカニズムを明らかにするため、シロイヌナズナのアクチベーションタグラインから核DNA含量が増大する変異体を単離した。その変異体の一つであるincreased level of polyploidy4-D (ilp4-D)変異体を用い、この原因遺伝子の解析を行った。その結果、ilp4-D変異体の原因遺伝子はプロテインキナーゼをコードしていることが分かった。ILP4遺伝子の発現解析を行ったところ、この遺伝子は根や子葉、胚軸で組織特異的に発現することが分かった。また、ILP4とGFPを融合させて細胞内局在を観察したところ、核に局在が見られた。ILP4の働きを見るため、ILP4遺伝子のT-DNA挿入変異体の解析を行った。しかし、この変異体では核相の減少が見られなかった。そこで、ILP4遺伝子とそのホモログの1つであるILP4L1遺伝子の二重変異体を作製したところ、この変異体では核相の減少が見られた。次に、ILP4によるタンパク質のリン酸化が核相の増大に関与するかを調べた。キナーゼドメインを削除したILP4遺伝子の過剰発現体においても核DNA含量の増大が見られた。このことから、ILP4によるエンドサイクルの促進にはILP4のキナーゼドメインは関与しない可能性が示唆された。
  • 本郷 洋明, 吉積 毅, 黒森 崇, 神谷 麻子, 島田 浩章, 松井 南
    p. 0682
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    理化学研究所・PSCでは、シロイヌナズナのトランスポゾン挿入変異体が多数作製され、様々な表現型解析が行われている。
    これらのタグラインの中から、トランスポゾンのマーカー分離に異常が見られる変異株が見つかり、segregation distortion (sd)変異体と名付けた。その中のsd5は、ホモ接合体では本葉の発達が起こらずに幼少の時期に成長を止めるという表現型が観察され、その原因がAt3g24730へのトランスポゾンの挿入であることが明らかになった。
    At3g24730のコードするタンパク質は、高等真核生物で高度に保存されているDIM2と高いホモロジーを示した。DIM familyはDIM1とDIM2があり、高等真核生物では両方をそろえているが、酵母ではDIM1のみを持つ。分裂酵母のDIM1はmRNAのスプライシングに関わるタンパク質をコードしており、欠損を起すと細胞周期の進行が妨げられて、致死となる。DIM1の温度感受性変異株を用いた相補性実験では、SD5は制限温度において機能を相補できなかった。シロイヌナズナのDIM1ホモログは相補できたことから、SD5は分裂酵母DIM1と異なる、高等生物特異的な因子と考えられる。
    現在、sd5の本葉発達不全について、子葉の核相レベルの解析や、細胞周期関連遺伝子や茎頂分裂組織特異的に発現のある遺伝子の転写量を調べることで、原因の究明を行っている。さらにSD5がスプライオソームの一構成因子であるか、Y2H法を用いて解析しており、合わせて報告する。
  • Hye-Kyoung Kwon, Guan-Zheng Qu, Yong-Eui Choi
    p. 0683
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    B-type cyclins are known as mitotic cyclins. We have isolated and sequenced a cDNA clone encoding a cyclin B gene from Nicotiana tabacum. The full-length cDNA had an open reading frame of 1422 bp with a deduced amino acid sequence of 473 residues. In order to investigate the role of cyclin B gene in the plant growth and development, transgenic tobacco overexpressing cyclin B gene was constructed. Cyclin B transgenic plants showed longer root hairs than the wild type. RT-PCR analysis revealed that expression of both cyclin B and CDK genes in transgenic plants were enhanced. Also, flow cytometry analysis showed that the isolated cells from root hair elongation zone in transgenic plants had increased G2-M phase of cell cycle compared with wild type.
  • 庄野 由里子, 板山 俊一, 高橋 征司, 望月 伸悦, 明賀 史純, 篠崎 一雄, 本橋 令子, 永田 典子
    p. 0684
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    胚形成時に形成される子葉と発芽後茎頂より器官分化する本葉は、組織的・形態的に異なる器官である。我々はトランスポゾンAc/Dsを用いて得られた、白色子葉と緑色本葉をもつシロイヌナズナ突然変異体をapg7と名付け解析を行ってきた。最近、このapg7cyo1という名前で報告され、子葉で分子シャペロン活性を持つことが明らかとなった(shimada et al.,2007)。我々は、apg7/cyo1の子葉だけが白くなるのは、子葉と本葉の色素体分化過程の違いに原因があるのではないかと仮定し、胚形成時から乾燥種子を経て発芽するまでの色素体の形態を、経時的にかつ詳細に透過電子顕微鏡で観察した。野生型の子葉では葉緑体がプロラメラボディをもつプロプラスチドに退化した後再分化したが、茎頂ではプロラメラボディが見られなかった。一方、apg7/cyo1では子葉プロプラスチドからの再分化が異常であったが、茎頂からの本葉の分化は正常であった。さらに、apg7/cyo1の成熟胚を完全明所で培養すると子葉も緑色となり、逆に暗所を介して葉緑体分化をさせると本葉でも白くなった。以上の結果から、apg7/cyo1では子葉特異的に異常が起こるのではなく、プロラメラボディを介する葉緑体分化経路が異常であると考えられた。APG7/CYO1は、プロラメラボディからチラコイド膜を形成するときにだけ機能する分子シャペロンなのかもしれない。
  • 浦野 薫, 明賀 史純, 庄野 由里子, 永田 典子, 篠崎 一雄
    p. 0685
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    プトレスシン、スペルミジン、スペルミンなどのポリアミンは、微生物から動物、植物に至るまで細胞内に広く存在する低分子生理活性物質である。シロイヌナズナにおいて、ポリアミン合成関連遺伝子欠損変異体の解析が行われ、プトレスシンがストレス応答、スペルミジンが種子形成、そしてスペルミンが花茎伸長に重要な働きを行うことが明らかになっている。本研究では、植物におけるポリアミンの合成・輸送の分子機構を詳細に解析するため、シロイヌナズナ・ポリアミン輸送タンパク質候補遺伝子AtPTP (Arabidopsis thaliana Polyamine Transporter Protein)の単離・解析を行った。AtPTP遺伝子の欠損変異体(atptp)は種子の成熟過程ならびに植物体の成長過程に異常が生じることを見出した。電子顕微鏡による観察の結果、atptpの発芽直後の子葉では脂質やタンパク質などの種子貯蔵物質が減少し、成長した本葉では発達したチラコイド膜が存在しなかった。ドメイン解析の結果、AtPTPタンパク質はN末端にプラスチドへのシグナル配列、C末端に機能ドメインを持ち、両ドメインがAtPTPの働きに重要であることが示唆された。現在、さらに詳細な機能ドメインの解析を行っており、その結果も合わせて、AtPTPのシロイヌナズナにおける生理学的役割について議論したい。
  • 天野 豊己, 新美 康太, 堀 恵悟, 湯澤 優一
    p. 0686
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    植物由来のFtsHプロテアーゼが欠損した植物は、斑入りの表現型を示すことが知られている。これは葉緑体の形成と維持に本酵素が重要な働きを担っていることを示している。植物のFtsHプロテアーゼは、葉緑体のチラコイド膜に存在し、光合成反応などで生じた異常タンパク質の代謝回転に大きく関与している。しかし、本酵素には十分な精製系も発現系も存在しないため、生化学的な背景を確立することが困難である。材料はタバコ由来のFtsHプロテアーゼを用いた。この酵素のプロテアーゼドメインをPCRによって増幅し、大腸菌における発現系であるpET21aに導入した。導入した遺伝子の配列はDNAシーケンスによって確認し、発現したタンパク質のN末端が予定した配列であることもペプチドシーケンスによって確認した。発現させたタンパク質は、インクルージョンボディーとなったが、尿素変性と透析によるリフォールドを行うことで活性をもつ酵素が得られた。基質タンパク質はFITC(fluorescein isothiocyanate)が結合したFITC-カゼインを用いた。FITC-牛血清アルブミンは基質とならず基質特異性がみられた。最適pHおよび各種イオンの要求性の解析も行ったところ、弱アルカリ性で最適pHを示し、高濃度のマグネシウムイオンを要求することが明らかとなった。現在さらなる解析を進めている。
  • 湯澤 優一, 天野 豊己
    p. 0687
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
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    FtsHプロテアーゼは、PSIIの反応中心であるD1タンパク質の分解に関与している。FtsHプロテアーゼには膜貫通ドメイン、ATPaseドメイン、プロテアーゼドメインの3つがある。その中でATPaseドメインは、基質タンパク質を変性させ、プロテアーゼドメインへ輸送して分解させる働きを持つ。本研究は、このATPaseドメインについて発現系の構築と解析を行った。まず、タバコ由来のFtsHプロテアーゼであるDS9のATPaseドメインをPCRで増幅した。これをpET21bに導入して発現ベクターとした。ベクターの塩基配列はDNAシークエンサーで確認した。このベクターを大腸菌BL21-CodonPlus (DE3)-RILにトランスフォーメーションし、DS9のATPaseドメインのタンパク質を得た。発現条件を検討して可溶性画分に発現する条件を見出した。これをNi2+アフィニティーカラムで精製し、発現タンパク質を得た。ウエスタンブロットとペプチドシークエンサーを用いてこのタンパク質を分析し、DS9のATPaseドメインであることを確認、活性を認めることができた。精製したサンプルを用いて、2価イオン依存性、ATP濃度依存性、pH依存性など、諸性質について解析を行った。その結果、活性の最適条件には、Mg2+を要求することや、弱塩基性のpHが適していることを見出した。また反応速度論的解析も行った。
  • 堀 恵悟, 天野 豊己
    p. 0688
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    FtsHプロテアーゼが欠損したシロイヌナズナでは、斑入りの表現型を示す。このことから、葉緑体タンパク質の品質管理・維持を行っていると考えられる。FtsHプロテアーゼは金属依存性のプロテアーゼで、膜貫通領域、ATPase領域、プロテアーゼ領域の3つからなる。ATPase領域は基質タンパク質を変性させ、変性したタンパク質をプロテアーゼドメインに送り、分解すると考えられている。そのためftsh5が変異している斑入り形成株である、VAR1変異株に由来するDNAのATPase領域の発現系を構築した。まず、この領域をBL21-CodonPlus (DE3)-RIL に導入し、IPTGを添加後、可溶性画分にタンパク質が含まれるように過剰発現させた。発現させたATPase領域をHis-Tagカラムによる精製を行い、精製されたタンパク質がATPase活性を持つこと、このタンパク質がVAR1のATPase領域であることをウエスタンブロットとペプチドシークエンスによって確認した。また、最適pHや最適Mg2+濃度、様々な阻害剤の検討など、生化学的な性質の一部を明らかにした。阻害剤の中でEDTAによる阻害が顕著に確認できたことから、VAR1のATPase領域は2価金属に依存していることが明らかとなった。現在は、Km、Vmaxの算出などを中心に、温度依存性や基質類似体の検討を行っている。
  • 吉岡 泰, 陳 玉玲, 浅野 智哉, 町田 泰則
    p. 0689
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナのCRUMPLED LEAF (CRL)遺伝子は色素体外包膜に局在するタンパク質をコードする核ゲノムの遺伝子である。CRLが色素体に局在するタンパク質であるにも関わらず、CRL遺伝子の変異体ではプラスチドの分裂阻害に加えて、植物細胞の分化や分裂方向に異常が観察される。今回、我々はcrl変異を相補することができるCRL-GFP融合遺伝子を野生型シロイヌナズナの染色体上へ導入し、その系統を用いてCRL-GFP融合タンパク質の細胞内局在をくわしく解析した。その結果、大部分のCRL-GFPのシグナルは色素体の周縁部にリング状に局在したが、そのシグナルの強さが一様ではない例が多数観察された。さらに、根や発生途中の葉の細胞においては、色素体包膜に融合あるいは出芽するようにみえる小胞状のCRL-GFPシグナルや、核周縁部に存在するCRL-GFPのシグナルが観察された。以上の結果からCRLタンパク質の一部が何らかの小胞膜や核膜にも存在していることが示唆された。現在、植物の発生段階や環境条件などの違いによってCRL-GFPの細胞内局在が変化するのかなどを解析している。また抗CRL抗体を用いたホールマウント免疫染色によって内在CRLタンパク質の細胞内局在の解析も進めている。これらの結果も合わせて報告したい。
  • 加藤 智子, 岡田 恵里, 板山 俊一, 松井 南, 黒田 浩文, 篠崎 一雄, 本橋 令子
    p. 0690
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナのトランスポゾンAc/Dsのタグラインであるalbino orpalegreen mutant 4apg4)は子葉がアルビノ表現型を示し、本葉は黄色と緑色の斑入りの表現型を示す。apg4は核ゲノムにコードされた葉緑体タンパク質の欠損変異体であり、その原因タンパク質は大腸菌のRBFA(Ribosomal binding factor A)と相同性を示す。高等植物においてRBFAの機能はまだ解明されていない。大腸菌のrbfA変異体は低温ストレス下で16S rRNAの成熟を抑制する事が報告されているが、apg4では大腸菌とは異なり23S rRNAと4.5S rRNAの間のプロセッシングに異常が観察された。また、大腸菌ではRimM(21-kDa protein formerly called 21K)やEra(E.coli Ras-like)がRBFAの類似機能タンパク質として報告されている。APG4は子葉で一番強く発現しており、apg4は成長するにつれて表現型が回復する事から、シロイヌナズナにおいてもRimM、Eraタンパク質が存在し、APG4の機能を相補するために、成長するにつれて表現型が回復すると考えられる。シロイヌナズナにおけるRimM、Eraのホモログ遺伝子の細胞内局在、組織別の発現量の変化や欠損変異体の表現型を解析したので、APG4の機能との関係も含めて報告する。
  • 高橋 祥子, 道羅 英夫, 切岩 祥和, 青木 考, 藤原 正幸, 深尾 陽一朗, 本橋 令子
    p. 0691
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    我々は高等植物のプラスチド間の分化機構に関与するタンパク質を同定するために、プラスチドプロテオーム解析を試みた。
    まず、葉緑体分化に関与するタンパク質を調べるために、シロイヌナズナの核コードの葉緑体タンパク質をチラコイド内膜へ輸送するΔpH依存経路が欠損したapg2albino or pale green mutant 2)と葉緑体タンパク質の翻訳終結因子を欠損したapg3のプラスチドプロテオームデータを得た。野生型に比べて、葉緑体ゲノムコードタンパク質の翻訳に大きな影響が見られるapg3では葉緑体タンパク質のうち核コードタンパク質が多く推定されたのに対して、apg2は葉緑体ゲノムコードタンパク質が多く推定された。このようにapg3apg2のプラスチドプロテオームの結果は原因遺伝子の機能とよく一致し、原因遺伝子の機能解析に有用と考えられる。
    次に、葉緑体からクロモプラストへの分化に関与するタンパク質を調べるために、4つの成熟段階(Mature Green・Yellow・Orange・Red)のマイクロトム果実のプラスチドプロテオームデータを得た結果、MG果実ではATPase β subunitやendoribonuclease/protein kinase IRE1 like protein、Red果実ではplastid lipid associated proteinやlipocalinが多く蓄積していた。
  • 松浦 匡輔, 明賀 史純, 篠崎 一雄, 庄野 由里子, 永田 典子, 本橋 令子
    p. 0692
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    葉緑体の形成・機能に関与するタンパク質の多くは、核にコードされている。その1つであるPPR(Pentatricopeptide Repeat)タンパク質は、タンデムに並んだ35アミノ酸からなるPPRモチーフの反復により定義され、主に高等植物において巨大なファミリーを形成し、オルガネラ遺伝子の転写後調節に関与している。葉緑体における機能は、オペロンで転写された前駆体RNAのプロセシング、スプライシング、編集、安定化など多岐にわたる。我々は、PPRタンパク質機能を明らかにするため、シロイヌナズナのタグラインよりその欠損変異体を単離し、著しい色素異常の表現型を示す変異体apg(albino or pale-green)14、apg15、apg16について解析を行なった。APG14は、pTAC(plastid transcriptionally active chromosome)ファミリーに属するタンパク質であり、APG15とAPG16は共にPPRファミリーのタンパク質である。PPRファミリーはタンパク質のモチーフ構造により分類されるが、APG15はPPRモチーフの他にC末側に良く保存されたDYWモチーフを持つPLSサブファミリーに分類され、一方APG16はPPRモチーフのみを持つPサブファミリーに分類される。apg15について葉緑体遺伝子の転写産物のプロセシング異常の有無を確認した結果、4.5sと5srrnの転写産物に明らかな異常が確認された。本研究では、これら3つのタンパク質の葉緑体遺伝子発現における一連のプロセシングとの関係を報告する。
  • 原 美由紀, 明賀 史純, 庄野 由里子, 永田 典子, 篠崎 一雄, 本橋 令子
    p. 0693
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    葉緑体を構成するタンパク質の多くは核にコードされている。核コードの新規葉緑体タンパク質の機能を明らかにするため、シロイヌナズナのAc/Dsトランスポゾンタグラインで単離された色素体異常を示すapg変異体の解析を進めている。その中のひとつ、apg9変異体はアルビノ表現型を示し、遺伝子破壊変異体であることを確認した。APG9はSAPドメインとpentatricopeptide repeat(PPR)ドメインを持っており、SAPドメインはDNA結合ドメインであることが報告されている。PPRタンパクは高等植物でRNAの成熟過程に関与するという報告があるが、これらドメインのAPG9における機能は未知である。apg9変異体ではRubisco LSU・SSU、OEC23、LHCという重要な光合成タンパク質が検出されなかった。この変異体では正常なタンパク質が合成できず、葉緑体形成が行われていないためアルビノ表現型を示すと考えられる。apg9変異体のプロセシング異常を調べたところ葉緑体ゲノムの遺伝子rpoArpoBrpoC1rpoC24.5s-rrn5s-rrnrbcLの転写産物において異常が見いだされた。一方核ゲノムの遺伝子cabrbcSの転写産物には異常は見られなかった。APG9が多くの葉緑体遺伝子のRNA成熟過程に関係していることが分かったので報告する。
  • 八木 祐介, 石崎 陽子, 椎名 隆
    p. 0694
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    色素体は、藍藻由来の細胞内小器官であり自身のゲノムと独自の遺伝子発現系を持っている。葉緑体への分化過程における葉緑体遺伝子の発現は厳密に制御されており、特に藍藻に由来するバクテリア型RNAポリメラーゼ(PEP)による光合成遺伝子の転写調節が重要であることが分かっている。しかし、葉緑体から調製された転写活性の高い画分内(pTAC: plastid transcription active chromosome)にはPEPだけでなく、藍藻にホモログの無い複数のタンパク質が検出されている。このことは、藍藻とは異なった高等植物独自の葉緑体遺伝子発現制御機構の存在を示唆するが、pTACタンパク質の分子機能は、ほとんど解析されていない。pTAC3は、真核生物のmatrix attachment regionの結合に関わるDNA結合ドメイン(SAPドメイン)を持ち高等植物のみに存在するタンパク質である。Gel shift解析によりpTAC3のSAPドメインは、配列非特異的なdsDNA結合性を有していることが示された。また、pTAC3のノックアウト変異体は葉が白色化する表現型を示し、その変異体における転写パターンを調べた結果、PEPによる転写産物の蓄積が大きく減少することがわかった。これらの結果よりDNA結合タンパク質pTAC3は、PEPによる遺伝子発現制御に関わっていることが示唆された。
  • 小森 禎子, 野村 裕也, 椎名 隆
    p. 0695
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    植物のストレス応答や病害応答において、Ca+2はセカンドメッセンジャーとして重要な役割を担っている。我々は最近、葉緑体が細胞質Ca+2シグナルの発生と機構閉鎖運動の制御に関わっていることを明らかにした(Nomura et al., 2007 Plant J)。しかし、葉緑体内のストロマCa+2レベルがどの様に制御されているか、その詳細はわかっていない。そこで、本研究ではCa+2感受性発光タンパク質エクオリンを用いて、過酸化水素およびエリシター処理に対するストロマCa+2レベルの応答を測定した。ROSの一種である過酸化水素(H2O2)は植物細胞のシグナル伝達に関わっていると考えられている。我々は今回、H2O2処理に応答して葉緑体内Ca+2濃度が一過的に変動することを見いだした。細胞質のCa+2レベルは1~2分の早い変動を示したが、葉緑体では20~30分かけてゆっくりと上昇するCa+2変動が見られた。これは、H2O2シグナルを葉緑体に伝える未知のシグナル伝達系が存在することを示唆する。過敏感細胞反応を引き起こすエリシターを処理した場合も、細胞質Ca+2変動に引き続き、葉緑体Ca+2シグナルが生じることが分かった。細胞質から葉緑体へのCa+2シグナルの伝達は,病害応答に関わるシグナル伝達においても、重要な役割を果たしている可能性がある。
  • 中村 英光, 村松 昌幸, 羽方 誠, 上野 修, 長村 吉晃, 廣近 洋彦, 高野 誠, 市川 裕章
    p. 0696
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、Full-length cDNA Over-eXpresser gene (FOX) hunting systemを用いたイネ完全長cDNAの機能解析の過程で、2,4-D存在下でもカルスが緑化した2つのFOXイネ系統を得た。両系統はGARP転写因子をコードするOsGLK1遺伝子を高発現しており、これらのカルスにおいてグラナを持つ葉緑体が発達し、一連の葉緑体関連遺伝子の発現も上昇していた(中村ら、2007年度年会)。その後、我々はOsGLK1緑色カルスが光合成活性を示すこと、低ショ糖濃度でも生育可能であることを新たに見出した。これらの知見は発達した葉緑体が実際に機能していることを示すもので、OsGLK1はプロプラスチドから葉緑体への発達におけるマスターキーの役割を果たすと考えられる。そこでOsGLK1がどのような遺伝子の発現を調節しているかを探るべく、イネ44kオリゴマイクロアレイを用いて解析した。OsGLK1-FOXカルスでは葉緑体ゲノムコード遺伝子の発現も上昇していたが、その発現を調節するシグマ因子の発現量も増加していた。また、クロロフィル生合成系に関しては、プロトポルフィリン合成以降の葉緑素生合成系酵素遺伝子群の発現が顕著に増加していた。本発表では、これらの結果をもとに、OsGLK1が葉緑体分化にどのように関与しているのかについて考察したい。
  • 長舩 哲齊, 長谷 榮二
    p. 0697
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、葉緑体やミトコンドリアの細胞核支配の構築タンパク質分子の輸送経路、 構造への組込み、 機能の発現が細胞とオルガネラのどこで、 どのように行われているか、について分子細胞形態学および生化学的手法により解明しようとする。われわれは免疫電顕法により、光化学系II集光性クロロフィルa/b結合タンパク質複合体分子(LHCPII)が、 ゴルジ体を経由し、葉緑体へ輸送される現象を最初に見いだした(1990)。すなわち、 分泌タンパク質以外の光合成タンパク質分子が、ゴルジ体を経由し葉緑体へ輸送される、全く新しい現象である。この現象はSchwartzbachにより生化学的手法により再確認された。その後 Morse (2003)らは渦鞭毛藻類、Villarejoら(2005), Radhamonyら(2006)は高等植物でも、同現象がみられることを報告している。すなわち、このような現象は葉緑体を有する単細胞藻類から、高等植物に至るまで報告されている。光合成能を有する植物では、核支配タンパク質の葉緑体への輸送は、動物や真菌と比較し従来考えられていたものとは異なり、より複雑な輸送経路を有すると思われる。今回、われわれがみいだした現象を踏まえ、 免疫電顕法によりゴルジ小胞体から葉緑体への輸送について報告する。
  • 森山 崇, 寺沢 公宏, 藤原 誠, 佐藤 直樹
    p. 0698
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    植物や藻類のオルガネラゲノムの複製は、大腸菌のDNAポリメラーゼI(Pol I)とある程度の相同性を持つ酵素が行っていると考えられており、イネ、シロイヌナズナ、およびタバコにおいて、色素体とミトコンドリアへの両局在、組換えタンパク質を用いた活性測定、細胞分裂が活発におこっている細胞で高い発現を示すことなどが報告されている。C. merolae(シゾン)の核ゲノムには、このような酵素のホモログをコードする遺伝子(PolB)と、Pol Iに対してさらに高い相同性を持つ酵素をコードする遺伝子が存在する(PolA)。以前報告したように、PolAは色素体、PolBは色素体とミトコンドリアの両方に局在し、および同調培養における発現量の変化の解析から、PolBがオルガネラゲノムの複製酵素であると考えられる。シゾンの細胞からPolBを精製し、酵素的性質について組換えPolBと比較した。比活性は組換えPolBの20倍以上高く、失活温度は60℃で組換えPolBよりも10℃高かった。ddTTPによる阻害は同程度であったが、ホスホノ酢酸に対してはシゾンから精製したPolBの方が感受性が高かった。植物からはこれまでネイティブなサイズの酵素は精製されておらず、活発に分裂している細胞を大量に得ることのできるシゾンを用いたことで初めて精製することができた。今後はこのシゾンから精製したPolBを用い、より詳細な解析を行う予定である。
  • 内山 幸伸, 武内 亮, 木村 成介, 坂口 謙吾
    p. 0699
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    色素体とは植物細胞内存在する葉緑体やアミロプラスト、白色体など、2重の膜に包まれたオルガネラの総称である。細胞内共生により生じた色素体には独自のDNAが存在し、核とは異なるDNA複製・修復機構を持っている。細胞の分裂に伴って色素体DNAも複製するが、その機構については不明な点が多い。
    以前、私達は始めて色素体内で機能するDNAポリメラーゼのcDNA(OsPolI-like)を単離し、同定した。このDNAポリメラーゼ種はバクテリアのDNAポリメラーゼIと相同性があり、真核生物のDNAポリメラーゼの分類のAファミリーに属する。このDNAポリメラーゼは真核生物においてこれまで発見されているどのクラスにも属さないため、今回私達は新たにDNAポリメラーゼπ(POLP)という名前を提案するとともに、イネ細胞内に存在する2種のPOLPのうちの1つであるOsPOLP1の全長組換えタンパク質の酵素活性の特性について紹介する。さらに、これらの結果から、色素体DNAの複製修復様式について議論したい。
  • 井上 貴之, 小田原 真樹, 関根 靖彦
    p. 0700
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/18
    会議録・要旨集 フリー
    ヒメツリガネゴケには2種のバクテリア型recA相同遺伝子(PprecA1,2)が存在している。葉緑体へ移行するPprecA2遺伝子の破壊株は、野生株に比べDNA損傷剤に対する抵抗性が低下した。PprecA2破壊株はDNA損傷剤処理によって葉緑体DNAコピー数が減少することや光合成活性の低下することわかった。これらの結果は、PpRecA2が葉緑体DNA修復、DNA複製に関与することを示唆する。PpRecA2の葉緑体内の相同組換えへの関与を検証するため、葉緑体形質転換におけるターゲッティングの効率を測定した。PprecA2破壊株は野生株に比べ葉緑体ゲノムのターゲッティング効率が低下していたことから、PprecA2破壊株は葉緑体内の相同組換え活性が低下していることがわかった。以上の結果は、ヒメツリガネゴケ葉緑体において、PpRecA2タンパク質はDNA組換え/修復、DNA複製に深く関与し葉緑体ゲノム維持に重要な役割を果たしていることを示唆する。
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