日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
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選択された号の論文の1051件中401~450を表示しています
  • 濱田 晴康, 小谷野 智子, 来須 孝光, 朽津 和幸
    p. 0403
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物の感染防御応答の最初期過程で、膜電位変化(Kuchitsu et al. 1993)と細胞膜を介したCa2+動員(Kurusu, Hamada et al.. 2010)が誘導されるが、哺乳動物に多種存在する膜電位依存性Ca2+チャネルの多くのホモログは植物に見出されておらず、Ca2+動員機構は謎に包まれている。膜電位センサードメインを持つ陽イオンチャネルtwo-pore channel (TPC)ファミリーは、動植物の双方に存在するが、機能は未知の点が多い。イネOsTPC1は、糸状菌由来のタンパク質性エリシターTvXにより誘導される培養細胞の感染防御応答の制御に関与する(Kurusu et al.. 2005) 。本研究では、感染防御応答初期に誘導されるCa2+動員にOsTPC1が関与する可能性を検証するため、野生型株やOsTPC1機能破壊株培養細胞の[Ca2+]cyt測定系を構築し、TvX等種々のエリシターにより誘導される[Ca2+]cyt変化を解析した。さらに、細胞膜、液胞膜を単離し、抗OsTPC1抗体を用いて、細胞内局在部位を詳細に解析した。これらの結果に基づき、OsTPC1の細胞内局在と生理機能を、シロイヌナズナなど他の植物種や動物と比較しながら議論する。
  • 石川 寿樹, 秋 利彦, 柳澤 修一, 内宮 博文, 川合 真紀
    p. 0404
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Bax inhibitor-1 (BI-1) は高等動植物が共通に持つ小胞体局在の細胞死制御因子であり、様々な環境ストレス下における酸化ストレス誘導性細胞死の抑制に寄与する。シロイヌナズナのBI-1 (AtBI-1) は小胞体においてスフィンゴ脂質代謝酵素と相互作用することから、スフィンゴ脂質がBI-1の作用機構に重要な役割を持つことが示唆されている。スフィンゴ脂質は細胞膜マイクロドメインの主要構成因子であり、その分子組成の変化はマイクロドメイン機能に影響を及ぼすことが予想される。そこでAtBI-1過剰発現イネ培養細胞の細胞膜マイクロドメイン構成成分を解析したところ、スフィンゴ糖脂質の増加とタンパク質プロファイルの変化が見出され、AtBI-1によるスフィンゴ脂質代謝の亢進が細胞膜マイクロドメイン構造に影響を及ぼすことが明らかとなった。さらにショットガンプロテオーム解析により、AtBI-1過剰発現細胞で顕著に減少しているタンパク質として過敏感細胞死関連因子やシグナル伝達複合体形成に関与する因子が同定され、これらを介した細胞死抑制メカニズムがBI-1の下流で機能していることが示唆された。本発表では、同定したマイクロドメイン局在タンパク質のストレス誘導性細胞死における機能について報告し、植物の細胞死制御機構における細胞膜マイクロドメインの役割について議論したい。
  • 浜本 晋, 中村 葉子, Mithofer Axel, Kombrink Erich, Boland Wilhelm, 魚住 信之, 上田 ...
    p. 0405
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ジャスモン酸類の植物への作用は、生育抑制やストレス応答など多岐にわたる。これまでに、アメリカネムノキ(Samanea saman)の葉枕に作用して葉を閉じさせる就眠分子として、ジャスモン酸(JA)の配糖体である(-)-12-O-β-D-glucopyranosyl jasmonic acid((-)-LCF)を単離した。本研究では、就眠運動の作用機構の解明のため、 (-)-LCF、(+)-ent-LCF、JA-Ile等のジャスモン酸類による葉枕の運動細胞の体積変化を検討した。その結果、(-)-LCFのみが細胞収縮を誘導し、その収縮は葉枕内側の運動細胞にのみ見られた。また、イオンチャネル阻害剤により細胞収縮が抑制されたことから、(-)-LCFの下流におけるイオンチャネルの活性化が推定された。次に、既知のJAシグナル伝達と(-)-LCFの関連性を検討した。JAにより誘導され、COI1-JAZの支配下にあるpLOX2::GUSを導入したシロイヌナズナをジャスモン酸類を用いて処理したところ、(-)-LCFはpLOX2::GUSを誘導しなかった。また(-)-LCFは、典型的なジャスモン応答である揮発性成分生合成誘導活性も示さなかった。以上より、就眠運動は(-)-LCFによって誘導され、(-)-LCFはCOI1-JAZとは異なるシグナル伝達経路を用いて運動細胞に作用することが示唆された。
  • 奥村 将樹, 井上 晋一郎, 高橋 宏二, 石崎 公庸, 河内 孝之, 木下 俊則
    p. 0406
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    高等植物の細胞膜プロトンポンプ(H+-ATPase)は、ATPの加水分解エネルギーを利用してH+の能動輸送を行い、様々な二次輸送体と共役した物質輸送、細胞の恒常性維持や細胞伸長において重要な役割を果たしている。最近の研究により、H+-ATPaseのC末端から二番目のスレオニンのリン酸化とリン酸化部位への14-3-3蛋白質の結合が、高等植物に共通した活性化機構であることが明らかとなってきている。しかし、現存する陸上植物の中で最も進化的に古い系統と考えられる苔類のH+-ATPaseについては、これまで解析が行われていなかった。そこで本研究では、苔類ゼニゴケのH+-ATPaseについて解析を行った。ESTデータベースの検索の結果、ゼニゴケには少なくとも8つのH+-ATPase遺伝子が存在することが明らかとなった。興味深いことに、4つの遺伝子はC末端のスレオニンを含む典型的な高等植物タイプのH+-ATPaseであったが、残りはC末端領域を欠く高等植物には見られないタイプのH+-ATPaseであった。RT-PCR解析の結果、葉状体では両タイプのH+-ATPaseが共に発現していた。現在、カビ毒素フシコクシンや様々な生理的刺激による高等植物タイプのH+-ATPaseのリン酸化に対する影響を調べており、これらの結果についても報告する予定である。
  • 林 優紀, 木下 俊則
    p. 0407
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    細胞膜プロトンポンプは、細胞膜を介したH+の電気化学的勾配を形成する一次輸送体である。これまでの研究により、プロトンポンプはC末端スレオニン残基のリン酸化とリン酸化部位への14-3-3蛋白質の結合によって活性化されることが明らかとなっているが、この反応を触媒するプロテインキナーゼやホスファターゼは不明である。本研究では、ホスファターゼの同定を目指して生化学的解析を行った。
    シロイヌナズナ黄化芽生えより単離した細胞膜を用いて、プロトンポンプのin vitro脱リン酸化反応を調べた結果、細胞膜中にプロトンポンプを脱リン酸化するホスファターゼが存在することが明らかとなった。次に、各種阻害剤の影響を調べた結果、脱リン酸化は2価カチオンキレート剤であるEDTAにより阻害されたが、タイプ1/2Aホスファターゼの阻害剤であるカリクリンAには阻害されなかった。さらに、脱リン酸化はMg2+またはMn2+要求性を示したことから、ホスファターゼはタイプ2Cホスファターゼ(PP2C)である可能性が高いと考えられた。興味深いことに、脱リン酸化は細胞膜を1% TritonX-100で処理した不溶性画分においても観察され、ホスファターゼは不溶性画分に存在することが示唆された。現在、質量分析により不溶性画分に含まれるPP2Cの同定を試みており、この結果についても報告する予定である。
  • 根本 圭一郎, 関 原明, 篠崎 一雄, 遠藤 弥重太, 澤崎 達也
    p. 0408
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    チロシン(Tyr)キナーゼによるタンパク質のリン酸化は、ヒトを含む多細胞真核生物の生育や発生を制御している。しかし、植物には動物で知られているような典型的なTyrキナーゼと相同性をもつ遺伝子が存在しないことから、植物におけるTyrリン酸化の生理学的役割は懐疑的であった。しかし、リン酸化Tyr残基に特異的なフォスファターゼの単離や、近年の高感度な質量分析解析によって、シロイヌナズナから約100種類のリン酸化Tyr残基をもつタンパク質が同定されている。これらのことから、植物にもTyrキナーゼによるリン酸化ネットワークが存在していることが推測される。そこで、本研究は、植物におけるTyrキナーゼを探索・同定し、そのリン酸化ネットワークを明らかにすることを目的とした。解析には、コムギ無細胞タンパク質発現系とAlphaScreenを組み合わせたハイスループットな解析技術を用いた。まず、シロイヌナズナRAFLから759種類のプロテインキナーゼ(PK)を選び、それを転写鋳型にしたin vitro でのタンパク質合成を行なった。ついで、Ser/Thr/Tyr自己リン酸化活性をAlphaScreenによって解析した結果、39種類のPKにTyr自己リン酸化活性が認められ、これらを植物Tyrキナーゼ(PPTK)と定義した。現在、これらの基質タンパク質の探索を行なっており、その結果についても述べたい。
  • 加藤 真理子, 青山 卓史, 前島 正義
    p. 0409
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    AtPCaP2(A. thaliana Plasma membrane associated Ca2+-binding protein-2)は、当研究室で発見された細胞膜局在性の新規Ca2+結合蛋白質である。PCaP2は根毛および受粉後の花粉細胞で強く発現し、Ca2+に加えて、ホスファチジルイノシトールリン酸(PIPs)、カルモジュリン(CaM)などの情報伝達因子と相互作用する(Kato et al. Plant Cell Physiol. 2010)。PCaP2の情報伝達と生理機能の詳細については全く分かっていない。そこで、まずPCaP2とその相互作用因子の結合領域を、リコンビナントPCaP2を作製し生化学的手法により検討した。その結果、PCaP2はN端でPIPs、CaMと相互作用し、N端以降の領域でCa2+と結合することが明らかとなった。次に、得られた知見に基づきアミノ酸を改変したPCaP2を根毛細胞特異的なExpansin7プロモーターを用いて過剰発現した植物体を作製し、根毛の表現型を詳細に観察した。その結果、N端領域を欠失したPCaP2を過剰発現した植物体では、根毛先端が異常に膨らみ根毛の極性を著しく喪失した表現型を示した。本研究により明らかとなった知見をもとに、根毛形成におけるPCaP2の情報伝達とその意義を議論したい。
  • Thibaud Marie-Christine, Desnos Thierry, Marin Elena, Kanno Satomi, Ja ...
    p. 0410
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Phosphate (pi) is a crucial and often limiting nutrient for plant growth. it is also a very insoluble ion heterogeneously distributed in soil. to cope with such a situation, plants have evolved a complex network of morphological and biochemical processes controlled by various regulatory systems. These signaling pathways are triggered either by pi concentration in the growth medium or by plant cells internal pi. A split-root assay performed to mimic an heterogeneous environment combined with a transcriptomic analysis was used to identify clusters of genes locally or systemically regulated by pi starvation . The combination of genetic tools and physiological analysis revealed distinct regulatory roles for the internal and the external pi. They also pointed out a central role of the transcription factor phr1 for genes systemically controlled by low pi. In addition, results obtained with a set of tools including chemical genetics and manipulations of the entire family of the high affinity Pi transporters will be presented. These tools offer novel powerful approaches to dissect Pi perception pathways.
  • Jusoh Malinna, McWatters Harriet, Fricker Mark, 岡本 晴子
    p. 0411
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    cAMPは、様々な細胞内プロセスを制御することが知られる信号伝達のセカンドメッセンジャーの一つで、ATP を基質としてアデニル酸シクラーゼ(AC)によって生成される。定量法の確立によって、動植物の細胞で多量に存在することがわかってきたが、高等陸上植物における生理作用についてはこれまであまり研究されていなかった。そこで、本研究では、シロイヌナズナにおいて、アミノ末端に核酸結合ドメインを有し、トウモロコシのAC である PsiP と相同性を示すAt3g14460 (AC1) および At3g14470 (AC2)の2つの遺伝子に注目し、その機能解析を行った。これらの遺伝子は、シロイヌナズナの生活環におけるほとんどの過程において主要な組織で発現し、特に花芽組織で高い発現が観察されることから、これらの組織でなんらかの機能を持つと考えられた。さらに、AC1AC2は、cAMP合成能を欠くE.coliAC変異株(cya)の表現型を相補した。そこで、これらの遺伝子を過発現する植物体および、T-DNA挿入変異株を用いてさらに解析を進めたところ、これらの遺伝子が、発芽種子の塩耐性に関わることを示唆する結果を得たのでこれを報告する。
  • 裏地 美杉, 片桐 健, 三浦 彩, 中村 宜督, 森 泉, 篠崎 一雄, 村田 芳行
    p. 0412
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物の孔辺細胞は植物ホルモンアブシジン酸(ABA)に応答して気孔閉口する。その反応において、セカンドメッセンジャーが産生され、イオンチャネルの活性化調節を行なわれる。しかしながら気孔におけるABAシグナル伝達経路については全容が解明されていない。ホスフォリパーゼD (PLD)は細胞膜のリン脂質を加水分解しホスファチジン酸を産生する酵素である。シロイヌナズナゲノムにおける12個のPLD遺伝子のうちPLDα1とPLDδの二重変異体pldα1pldδは乾燥ストレス条件下において著しくPA産生を損なわれた。またABA誘導気孔閉口においても、pldα1とpldδの各一重変異体は、ABAに対して感受性を示し、pldα1pldδはABAに対し非感受性を示した。野生型とPLDの各変異体はPAやH2O2によって気孔閉口を誘導した。さらにABA誘導気孔閉口で検出される孔辺細胞でのROS産生及び細胞質のpHアルカリ化は、pldα1pldδで欠失していることが明らかとなった。この結果より、PLDα1とPLDδはABA誘導気孔閉口において重複した機能を持ち、また、孔辺細胞のABAシグナル伝達においてROS産生、細胞質アルカリ化の上流で機能していることが示唆された。
  • 高橋 洋平, 蛭子 雄太, 木下 俊則, 土井 道生, 大熊 英治, 村田 芳行, 島崎 研一郎
    p. 0413
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物は水ストレス時にはアブシジン酸(ABA)を介して気孔を閉鎖して体内からの水分損失を防ぐ。気孔を構成する孔辺細胞において、ABA情報伝達は、最近同定されたABA受容体から蛋白質のリン酸化を介して開始されると考えられている。しかし、その下流においてイオン輸送の制御を担う分子機構はよくわかっていない。我々は、生化学的手法によりシロイヌナズナ孔辺細胞でABAに応答して素早くリン酸化され14-3-3蛋白質と結合する3つの新規bHLH転写因子様蛋白質を見出し、ABA-responsive Kinase Substrates (AKS1, 2, 3)と命名した。遺伝子破壊株のaks1aks2では光やfusicoccinによる気孔開口速度が低下していたが、ABAによる気孔閉鎖は正常だった。aks1aks2の孔辺細胞では、気孔開口を駆動する細胞膜H+-ATPaseの活性化は正常だったが、KAT1を含む内向き整流性K+inチャネルの発現、K+inチャネル活性とK+取込み活性が低下していた。AKS1は転写促進因子でABAにより阻害された。クロマチン免疫沈降解析で、AKS1がKAT1プロモーターに結合し、ABAによるリン酸化に依存して解離した。以上の結果から、ABAはbHLH転写因子をリン酸化して遺伝子発現を抑制し、気孔開口を阻害していることが示唆された。
  • 石田 裕太郎, 橋本 美海, 射場 厚
    p. 0414
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物はCO2濃度に応じて気孔開度を調整しているが、その応答性に異常をきたした変異体としてht1(high leaf temperature 1)が単離されている。ht1はCO2応答性に異常を示すものの、他の気孔開口・閉鎖シグナル(光・ABA)に対する応答性は正常である。またHT1はキナーゼをコードしており、孔辺細胞特異的に発現している。よってHT1キナーゼは、光やABAシグナル伝達経路とは独立した、CO2シグナル伝達経路で機能する因子であると考えられる。孔辺細胞内CO2シグナル伝達経路では、CO2はCA(炭酸脱水酵素)によってHCO3-に変換され、その後H2O2の生成を誘発することで、最終的に気孔閉鎖を引き起こすことが知られている。しかし、CO2シグナル伝達経路において、HT1キナーゼの機能する位置や、H2O2発生との関係はまだ分かっていない。そこで、孔辺細胞内CO2シグナル伝達経路におけるその作用機作の検証を行った。ht1においては、H2O2投与による気孔閉鎖は確認されたものの、HCO3-投与による気孔閉鎖やNADPHオキシダーゼの阻害剤DPI投与による気孔開度の回復は確認されなかった。このことから、HT1キナーゼは孔辺細胞内CO2シグナル伝達経路において、HCO3-生成の下流に位置するが、NADPHオキシダーゼによるH2O2の発生には大きな影響を与えていない可能性が考えられた。
  • 都築 朋, 高橋 宏二, 井上 晋一郎, 沖垣 友季子, 村田 芳行, 島崎 研一郎, 木下 俊則
    p. 0415
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物の表皮に存在する気孔は、その開度を調節することにより、植物と大気間のガス交換を調節している。本研究では、気孔開閉のシグナル伝達の分子機構を明らかにすることを目的として、EMS処理したシロイヌナズナを用い、葉の重量変動を指標にした気孔開度変異体のスクリーニングを行った。単離した rtlrapid transpiration in detached leaves1 変異体は、矮性・ペールグリーンであり、アブシジン酸(ABA)存在下でも気孔が閉鎖しないABA非感受性の表現型を示した。マッピングによる原因遺伝子の同定の結果、rtl1変異体には第5染色体のMg-キラターゼHサブユニット遺伝子(CHLH)にミスセンス変異を引き起こす1塩基置換が存在することが明らかとなった。CHLHはクロロフィル生合成に関わる酵素であり、近年、ABAとの結合能からABA受容体としても機能することが報告されている(Nature 2006, Plant Physiol. 2009)。そこで、3H-ABAを用いて結合解析を行ったが、組換えCHLHとABAの特異的な結合は観察されなかった。以上の結果から、CHLHがABA受容体である可能性は低いものの、気孔のABAシグナル伝達に何らかの影響を与えていることが示唆された。CHLHのABAシグナル伝達への関与について考察したい。
  • 牛山 翔, 小田切 正人, 井野 洋子, 梅澤 泰史, 平山 隆志
    p. 0416
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物ホルモンABAの情報は、PYR型受容体-PP2C-SnRK2の経路をへて様々な因子に伝えられることが明らかとなった。シロイヌナズナでは、少なくとも6つのPP2Cがこの情報伝達に関わっていると考えられている。そのうちAHG1とAHG3は、他の4つのPP2Cと一次配列が若干異なるのみでなく核のみに局在し種子で強く発現するといった点でも一線を画しており、この2つのPP2Cは特有の機能を持つと予想される。それを検証する一つのアプローチとして、本研究ではAHG1, AHG3と特異的に相互作用する因子の探索を試みた。TAP法を用いて植物抽出液からAHG1と相互作用する因子を探索したところ、転写抑制複合体の構成因子と考えられる蛋白質の一つが得られた。酵母を用いた相互作用実験により、その蛋白質は6つのABA関連PP2Cの中でAHG1とAHG3のみと相互作用することが示された。また、AHG1とAHG3は転写抑制複合体の他の構成因子とも相互作用することが示された。最近、ジャスモン酸応答で転写抑制複合体が重要な役割を果たしていることが明らかにされ、同様の複合体がABA応答でも機能していることが示唆されている。本研究で得られた結果から、ABA応答における転写抑制複合体の機能を、AHG1およびAHG3が特異的に制御している可能性が示された。
  • 鈴木 規弘, 小松 憲治, 西川 友梨, 太田和 眸, 中谷 麻央, 桑村 麻由里, 竹澤 大輔, 林 隆久, 太治 輝昭, 坂田 洋一
    p. 0417
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ABI1に代表される2C型脱リン酸化酵素(グループA PP2C)はABAシグナル伝達の負の制御因子である。我々は、グループA PP2CによるABAシグナル伝達制御機構がヒメツリガネゴケやゼニゴケにも存在することを明らかにし、陸上植物の進化の過程で保存されてきた機構であることを報告した。我々はグループA PP2C(PpABI1A,PpABI1B)を完全に欠損したヒメツリガネゴケを作出した。この二重破壊株は通常条件下において、生育抑制、ABA応答性遺伝子の恒常的発現、乾燥や凍結といった水分ストレスに耐性を示すといった表現型を示し、ABAシグナル系が恒常的に活性化されていることが明らかとなった。この二重破壊株のABA応答を糖、熱可溶性タンパク質、およびデハイドリンの蓄積を指標に解析したところ、その蓄積レベルは外的ABAの濃度によらず一定であり、明確なABA応答は観察されなかった。さらに、それらの蓄積レベルは10μM ABAを与えた野生型や一重破壊株よりも低いことが明らかとなった。以上の結果は、ヒメツリガネゴケグループA PP2Cは通常状態においても活性化状態となり得るABAシグナル系を抑制している主要要因であり、さらに、高濃度ABA存在下ではABA応答を正に制御する機能ももつことが示唆している。
  • 北川 宗典, 藤田 知道
    p. 0418
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物の形態形成の基礎となる細胞の運命決定には位置情報が必須である。原形質連絡(plasmodesmata、PD)はそのような情報伝達経路の1つであり、主に高分子シグナルの細胞間輸送に重要であることが知られている。さらにPDは自身のサイズ排除限界(Size Exclusion Limit、SEL)を変化させ高分子シグナルの細胞間輸送を制御し、結果として植物の発生制御に重要な役割を果たしていると考えられている。これまでに主に被子植物において発生段階や環境シグナルに応じたSELの時空間的な制御が明らかになっている。しかし、SELが細胞レベルでどのように制御されているのかはほとんどわかっていない。
    そこで我々はヒメツリガネゴケ原糸体がシンプルな体制を持つことに着目しこの問題にアプローチしている。我々は光変換型蛍光タンパク質Dendra2を構成的に発現する形質転換体を作出し、タンパク質の細胞間移動のカイネティクスを得ることを可能にした。この解析方法を用いて細胞間の連続性と細胞の環境応答の関係性を調査した結果、原糸体における細胞間の連続性が環境ストレス応答に重要な植物ホルモンであるアブシジン酸によってダイナミックに変化することがわかった。この結果は被子植物と同様にコケ植物においてもSELが環境ストレスに応じてダイナミックに制御されていることを示唆している。
  • 榎本 元, 広瀬 侑, 成川 礼, 池内 昌彦
    p. 0419
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    シアノバクテリオクロムとは、シアノバクテリアが持つフィトクロムとは似て非なる一群の光受容体であり、多くは青色光吸収型 (Pb)と緑色光吸収型 (Pg)で可逆的な光変換を示すと考えられている。これまでの研究で、Pb/Pg変換においては、発色団として結合している開環テトラピロール色素フィコビオロビリン (PVB)のC15-Z/E変換に加え、C10へのCysの脱着が起こることが示唆されている。本研究ではPb/Pg型シアノバクテリオクロムと考えられるThermosynechococcus elongatus BP-1のTlr1999に注目し、発現精製した。得られた標品はPb (418nm)とPg (498nm)の可逆的光変換を示した。Pgを、チオール基特異的修飾薬であるヨードアセトアミド (IAA)処理すると、そのスペクトルに大きな変化は見られなかったが、緑色光照射により552nmに光不活性成分(P552)を生成した。PbをIAA処理すると、Pbが経時的に減少し、P552が増加した。またP552をジチオスレイトール処理すると、Pbに似た青色光吸収型を再生し、これはPb/Pg型光変換を示した。これらの結果は、Pb/Pg型光変換には特定のCys残基というよりチオール基の脱着が必要であることを示している。
  • 広瀬 侑, Rockwell Nathan C., Martin Shelly, 成川 礼, 猪股 勝彦, Lagarias J. Clar ...
    p. 0420
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    一部のシアノバクテリアは、赤色光を吸収するフィコシアニンと、緑色光を吸収するフィコエリスリンの組成を調節する。この現象は、緑色光吸収型(Pg)と赤色光吸収型(Pr)の間で光変換するフィトクロム型光受容体(シアノバクテリオクロム)によって制御される。この光変換には、開環テトラピロール色素であるフィコシアノビリン(PCB)のC15-Z/E変換が関わる。本研究では、Pg/Pr変換型シアノバクテリオクロムであるRcaEの吸収スペクトルのpH依存性を調べた。低pHではPgがPrに変換、高pHではPrがPgに変換し、これらの滴定曲線はヘンダーソン・ハッセルベルヒ式で非常によく近似された。これは、PCBが脱プロトン化するとPgを形成し、逆にPCBがプロトン化するとPrを形成することを強く示唆している。また、pKaは、C15-ZのPCBでは約5.5、C15-Eでは約8.0と大きくシフトしていた。つまり、光照射によるPCBのC15-Z/E変換がpKaのシフトを引き起こし、プロトン分子の脱着によって吸収型の変換が起こることが明らかとなった。これは、色素がPrとPfrの両方でプロトン化されているフィトクロムとは異なる、新規の光変換機構である。アミノ酸置換変異体の解析により、色素近傍のリジンとグルタミン酸がE型のPCBをプロトン化し、ロイシンがZ型のPCBの脱プロトン化を保持していることが示唆された。
  • 成川 礼, 神谷 歩, 猪俣 勝彦, 池内 昌彦
    p. 0421
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    近年、赤/遠赤色光変換型フィトクロムと似て非なる新規光受容体群シアノバクテリオクロムが見出され、多様な光質に応答する光受容体が同定されている。中でも、AnPixJのGAFドメイン(AnPixJ-GAF)はフィコシアノビリン(PCB)を共有結合し、緑色光吸収Pg型と赤色光吸収Pr型の間を可逆的に光変換する。AnPixJ-GAFのPr型はフィトクロムのPr型同様、色素構造はZZZであり、赤色光照射により、CD環の間の二重結合が回転しZZE構造となるが、最終的にはフィトクロムとは異なった短波長吸収Pg型に光変換する。これまでは、シアノバクテリア、または、PCB産生大腸菌から精製したホロAnPixJ-GAFを解析してきたが、本研究では、AnPixJ-GAFをアポタンパク質として大腸菌から精製し、PCBとin vitro再構成することで、AnPixJ-GAFの色素結合過程を詳細に解析した。アポAnPixJ-GAFはPCBと混合後すぐに共有結合し、その結合は1分以内で完了した。暗条件で再構成したホロAnPixJ-GAFはPr型であり、Pg型との間の可逆的光変換を示した。混合直後の吸収スペクトルにおいて、Pr型のピーク波長よりも長波長(680 nm)に吸収の肩が検出され、Pr型の生成過程において中間体の存在が示唆された。この中間体も合わせて、AnPixJ-GAFの色素結合反応スキームを議論する。
  • 金澤 拓也, 堀田 淑坤, 前川 未来翔, 長谷川 浩司, 有坂 文雄, 兵藤 守, 早川 芳宏, 太田 啓之, 増田 真二
    p. 0422
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    BLUFは、近年発見されたフラビンを発色団とする青色光受容体タンパク質ドメインで、多くの微生物の光応答に関与している。特に近年、日和見感染症原因菌のバイオフィルム形成を調節する因子として注目されている。先の研究から、BLUFが光を受容する機構は明らかになってきたが、変換した光シグナルがどのように下流の因子へ伝わるのかはよく分かっていない。今回、BLUFが酵素ドメインの活性をどのように調節しているのかを明らかにするため、紅色細菌Rhodopseudomonas palustris由来のBLUFタンパク質PapBとその相互作用タンパク質PapAの機能解析を行った。変異体の解析からPapBは、この菌の青色光依存的なバイオフィルム形成に関与することがわかった。精製タンパク質の解析から、PapAは細菌のセカンドメッセンジャーc-di-GMP の分解を触媒することがわかった。PapBをPapAに加えると光照射下でのみPapAの活性を促進した。超遠心分析およびプルダウンアッセイにより、PapBはPapAに直接相互作用するが、その相互作用は光に依存しないことがわかった。このことは、分子間の相互作用部位とシグナル伝達部位は異なることを示唆する。そのメカニズムを議論する。
  • 芳賀 健, 酒井 達也
    p. 0423
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    光屈性におけるオーキシン輸送体PINの働きについて調べるために、オーキシンの横輸送に関与すると考えられているPIN3と、その近縁分子種であるPIN7に注目し解析を行った。暗所で育てたシロイヌナズナの芽ばえを材料にして、パルス誘導型の光屈性について解析すると、野生型では典型的なベル型の曲線が得られた。pin3pin7pin3 pin7突然変異体でもベル型の曲線が得られ、光量依存性は野生型と同様だったが、最適条件下ではそれぞれ50%、20%、70%程度反応が弱まっていた。一方、青色光の照射時間に依存する光屈性(時間依存型光屈性)について調べると、野生型では照射時間を3分以上長くすると時間依存型光屈性が現れることが分かった。pin3pin7pin3 pin7変異体でも3分以上の照射により時間依存型の光屈性は誘導されるが、反応は部分的に弱まっていた。これらの結果から、少なくともPIN3とPIN7はパルス誘導型光屈性および時間依存型光屈性の両方に関与し、それらがオーキシンの不均等分配に働いていると考えられる。ところが、芽ばえに30分以上青色光を連続的に照射すると、pin3 pin7変異体でも野生型と同様な光屈性を示した。この結果は、連続照射によって誘導される光屈性の場合、PIN3、PIN7以外の因子がオーキシンの不均等分配に関与していることを示唆している。
  • 酒井 達也, 槌田(間山) 智子, 上原 由紀子, 松井 南
    p. 0424
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    BTBドメイン及び Coiled-Coil モチーフを持つ NRL (NPH3/RPT2-like) ファミリータンパク質 RPT2 は、青色光受容体フォトトロピン phot1 と結合能を示し、phot1 シグナル伝達経路に働くアダプタータンパク質である。我々はRPT2 の光屈性における機能を明らかにするため、その発現解析を行った。RPT2 が青色光照射によってすみやかに転写誘導されることは以前の研究で報告している。我々は最近、この転写誘導はフィトクロム (phy)、クリプトクロム (cry) 光受容体ファミリー、両者の働きによることを明らかにした。phyA cry1 cry2 三重変異体は rpt2 変異体と同様に強光下の胚軸光屈性に異常が観察され、この表現型は 35S-promoter:RPT2 遺伝子の導入によって部分的に相補した。さらにウエスタンブロット解析によって、phy、cry の働きとは別に、phot1 の活性化に依存してRPT2タンパク質の蓄積がおこることを明らかにした。これらの結果は、phy、cry が RPT2 の転写誘導を介して強光下の光屈性に重要な機能を持つこと、さらに RPT2 の転写後発現誘導機構の解明が AGCVIII キナーゼファミリーに属する phot1 の未だ詳細が明らかになっていない生化学的機能を解明する上で重要であることを示唆した。
  • 中西 華代, 堀 菜七子, 山篠 貴史, 水野 猛
    p. 0425
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    避陰反応は植物の光応答系において最も特徴的な現象の一つであり、近接する植物の陰に入った植物は著しく背丈が徒長する。こうした避陰反応は遠赤色光が重要な光シグナルとなりフィトクロム(主にphyB)を介した光情報伝達系により制御されていることが明らかになっている。我々はミヤコグサの光シグナル伝達系の解析をする過程でミヤコグサに特に顕著な避陰反応を見いだしたので報告する。避陰反応には背丈の徒長に加え、早咲き、腋芽からの分岐の抑制などがある。シロイヌナズナでは腋芽からの分岐抑制現象はあまり顕著ではなくほとんど解析されていない。我々はミヤコグサを遠赤色光に富んだ光条件下で生育させ避陰反応を誘導すると腋芽からの分岐が極端に阻害され、白色光条件下で生育させた植物体と全く異なる形態を示すことを見いだした。このことはミヤコグサが「光シグナルによる避陰反応の誘導」と「ストリゴラクトンによる分岐制御」とのリンクを解析する上で格好の材料であることを示している。以上のような背景をもとに、今回は次の点を中心に報告する。(i)ミヤコグサにおける避陰反応としての腋芽分岐制御の詳細な現象の記述。(ii)トウモロコシの分岐制御因子teosinte branched 1 (tb1)のミヤコグサオルソログの機能解析。(iii)シロイヌナズナで研究の進んでいる分岐制御MAX経路に相当するミヤコグサ遺伝子群の同定と解析。
  • 山脇 沙織
    p. 0426
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ヒメツリガネゴケは陸上植物の進化を考える上で格好の研究材料である。我々は、シロイヌナズナを対象とした研究の延長として、ヒメツリガネゴケの「二成分制御系」や「概日時計」に関して興味ある知見を得てきた。今回はシロイヌナズナの光形態形成において重要な転写因子群に関して、ヒメツリガネゴケにおける進化的保存性に焦点を当てて解析した。シロイヌナズナにおいて光受容体(フィトクロムやクリプトクロム)の下流で働く光形態形成関連因子としてはHY5(bZIP型)、BBX(B-box-CCT型)、PIF(bHLH型)の各ファミリーに属する転写因子がよく解析されている。これらの因子はヒメツリガネゴケでも保存されているであろうか。機能は光情報伝達と関連しているであろうか。今回はこれらの疑問に答えるべく次のことを報告する。(i)HY5、BBX、PIFファミリーに属する転写因子は全てヒメツリガネゴケに存在する。(ii)それらの遺伝子を取得してシロイヌナズナにおいて過剰発現させることにより機能的保存性を確認した。(iii)ヒメツリガネゴケに二つ存在するHY5ホモログ遺伝子(PpHY5aとPpHY5b)の二重欠損変異体を作成し、その生育に及ぼす影響を解析した。HY5ホモログの欠損体ではコロニー周辺でのカウロネマ細胞の先端伸長が著しく阻害されることを含めて、植物における光形態形成関連の転写因子群の進化に関して考察する。
  • 鐘ヶ江 健
    p. 0427
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ホウライシダで発見された赤色光/青色光受容体PHY3/neo1は、フォトトロピン(phot)のN末端側にフィトクロムの光受容部位が配置した構造を持つ。phot領域は、青色光受容の発色団FMNを結合する2つのLOV領域(LOV1, LOV2)とプロテインキナーゼ部位で構成され、PHY3は光によるキナーゼ活性の調節によりシグナルを伝達している。シロイヌナズナphot1ではLOV2領域のCys残基に青色光依存的にFMNが結合することで局所的構造変換が起こり、抑制が解除されることによるキナーゼ活性化機構が示されている。そこでPHY3キナーゼ活性の光調節機構を明らかにするため、LOV領域のFMN結合Cys残基を変異させたPHY3をシロイヌナズナのphot変異体に導入し、胚軸の光屈性反応を調べた。その結果、LOV1, LOV2の一方、あるいは両方のCys残基にアミノ酸置換を導入したPHY3形質転換体のいずれにおいても、赤色光・青色光依存の胚軸の光屈性が誘導された。光依存のキナーゼ活性化時に起こる構造変換に関与することが示されているLOV2のGln残基を置換した場合も、赤色光・青色光による光屈性が誘導された。以上から、PHY3におけるキナーゼ部位の活性化にはLOV領域でのFMN-Cys結合形成は必須ではなく、高等植物フォトトロピンとは異なるPHY3独自の制御機構が存在することが示唆された。
  • 高野 成央, 高橋 祐子, 山本 充, 寺西 美佳, 長谷 純宏, 坂本 綾子, 田中 淳, 日出間 純
    p. 0428
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    イネのUVB耐性獲得に関わる主因子は、UVBによって誘発されるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を修復するCPD光回復酵素である。しかし、いまだUVB耐性機構の全容は明らかになっていない。これまでに我々はUVB耐性に関わる因子の探索を目的に、UVB抵抗性イネ・ササニシキを親株とし、炭素イオンビーム(320 MeV:12C6+, 80 Gy)誘発UVB耐性変異体UVTSa-319の選抜に成功し、解析を進めてきた。これまでの解析により、UVTSa-319は野生型と比較し、CPDの生成数(UVBの透過性)や修復活性には差が無いこと、また、第7染色体の機能未知遺伝子2つを含む約45 kbが欠失していることがわかっている。UVBはCPDや6-4光産物、酸化損傷などのDNA損傷を誘発し、DNAの複製を阻害する。そこで我々はUVTSa-319の変異がUVBによる複製阻害に影響を及ぼしているのかを調べるため、複製阻害剤としてdNTPの合成阻害剤であるHydroxy Urea、DNA架橋形成等を誘発するMitomycin Cが含まれた寒天培地上での種子根の生育を野生型とUVTSa-319とで比較した。その結果、UVTSa-319はこれらの試薬に対し、野生型と比較して耐性を示すことがわかった。本大会ではこれらの結果を踏まえ、UVTSa-319が獲得したUVB耐性機構について考察する。
  • 古川 晴也, 寺西 美佳, 日出間 純
    p. 0429
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    UVB耐性に関する主要因子であるCPD光回復酵素(UVB誘発DNA損傷【CPD】を修復する酵素)は、イネの生体内ではリン酸化修飾を受けている。しかし、そのリン酸化修飾の生体内での機能は明らかではない。そこで我々は、CPD光回復酵素のリン酸化酵素を明らかにすることでリン酸化型CPD光回復酵素の機能を探ることを考えた。
    まず、リン酸化酵素の特性について解析を行った。イネ生体内におけるCPD光回復酵素のリン酸化状態について、異なる葉齢のイネ葉、黄化実生、イネ培養細胞を用いて調べた。その結果、いずれにおいてもリン酸化型と非リン酸化型のCPD光回復酵素が存在していた。また、イネCPD光回復酵素を昆虫細胞において発現させると、イネ生体内と同様にリン酸化修飾をうけることを見出した。そこで、非リン酸化型イネCPD光回復酵素を昆虫培養細胞抽出液と混合したところ、リン酸化反応が起こることから、昆虫培養細胞抽出液中にはイネCPD光回復酵素をリン酸化することができる酵素が含まれていることを見出した。昆虫培養細胞抽出液に含まれるリン酸化酵素の生化学的特性について解析した結果、リン酸化酵素が活性を有するためには、マグネシウムイオンが補因子として必要であることが明らかになった。現在、リン酸化酵素阻害剤を用いた解析を行っている。これらの結果を含め本発表では、CPD光回復酵素のリン酸化酵素の特性について報告する。
  • 高橋 さやか, 高橋 正明, 寺西 美佳, 日出間 純
    p. 0430
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    UVBによって誘発されるDNA損傷であるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を修復するCPD光回復酵素は、イネにおいてその酵素活性の高低がUVB抵抗性を決定する。植物細胞の核、葉緑体、ミトコンドリアは独自のDNAを有しており、各DNAにはUVBによりCPDが誘発される。我々は、イネにおいてCPD光回復酵素がDNAを有する全てのオルガネラに移行して機能していることを示してきた。しかし、その移行メカニズムの実態は不明である。本研究では、各オルガネラへの移行に関与する配列を同定するために、CPD光回復酵素の部分配列とGFPとの融合タンパク質を用いた発現解析を行った。イネCPD光回復酵素(全長506アミノ酸)のC末端領域385-506番目のアミノ酸配列とGFPの融合タンパク質においては、核とミトコンドリアへのGFPの局在が観察された。より範囲を限定した解析を行ったところ、(1)391-401番目のアミノ酸配列とGFPの融合タンパク質においてはミトコンドリア移行への関与が、(2)487-489番目の3アミノ酸の核移行への関与が示唆された。一方、葉緑体に関しては、CPD光回復酵素の全長とGFPとの融合タンパク質を、イネ幼植物体に導入することにより観察可能であることを見出した。現在、より詳細な移行シグナルの解析を行っている。
  • 石丸 泰寛, 筧 雄介, 佐藤 豊, 佐藤 祐樹, 魚住 信之, 中西 啓仁, 西澤 直子
    p. 0431
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    イネ科以外の植物は,根圏にプロトンを放出してpHを下げ,フェノール類を分泌して3価鉄を可溶化し,それを還元して2価鉄を吸収する。一方,イネ科植物は,「3価鉄‐ムギネ酸類」として鉄を吸収する。これらの吸収機構に関わる分子の多くが同定されているが,フェノール類を分泌するトランスポーターは明らかになっていない。本研究では,イネからのフェノール類の一種であるプロトカテク酸(PCA)放出トランスポーターを同定すると共に,イネもフェノール類の分泌により鉄を可溶化していることを明らかにした。PCAの放出トランスポーターの単離は,これが初めての報告である。
    我々は,カドミウムを蓄積する変異体のスクリーニングの結果,PCAの放出に関わるpez1PCA efflux zero 1)の欠損イネを得た。導管液と根分泌物をLC/MSを用いて解析したところ,野生型に見られるPCAのピークがpez1欠損株では検出できなかった。イネにおいてPEZ1-GFPは細胞膜に局在し,PEZ1はPCAの輸送活性を示した。また,PEZ1は中心柱に発現していた。
    PCAは3価鉄を可溶すること,還元作用を持つことが報告されている。pez1欠損株の鉄含量を測定したところ,鉄が根に蓄積し,導管液中の鉄含量が減少していた。PCAを放出できないpez1欠損株では,根のアポプラズムに沈着した鉄を十分に可溶化できないことを示している。
  • 高橋 竜一, 石丸 泰寛, 瀬野浦 武志, シモ ウーゴ, 石川 覚, 荒尾 知人, 中西 啓仁, 西澤 直子
    p. 0432
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    OsNRAMP1は鉄欠乏によって発現が誘導される鉄トランスポーターであるが、鉄だけでなくカドミウムも輸送する。昨年の熊本大会において、OsNRAMP1は細胞膜に局在しており、0、0.2、1μMカドミウム条件下では主に根で発現し、その発現はカドミウム低蓄積品種よりも高蓄積品種で高いことを報告した。本大会では、OsNRAMP1過剰発現(OX)イネとOsNRAMP1発現抑制(RNAi)イネを作成したので、その解析結果について報告する。
    OXイネは根、茎葉ともに野生型イネよりも伸長が抑制されており、RNAiイネは野生型イネと生育には差がなかった。カドミウム含量はOXイネの葉で野生型イネよりも高く、根では低かった。鉄含量は葉、根ともにOXイネと野生型イネで差がなかった。RNAiイネでは、葉のカドミウム含量は野生型イネよりも減少していた。RNAiイネの根ではカドミウム含量、鉄含量ともに野生型イネと差がなかった。
    以上の結果から、OsNRAMP1の発現が高いと根の細胞内のカドミウム濃度が上昇し、地上部へのカドミウムの移行量が増加することが考えられ、OsNRAMP1が地上部のカドミウム蓄積に関わる遺伝子の一つであることが考えられた。
  • Shimo Hugo M., Ishimaru Yasuhiro, An Gynheung, Nakanishi Hiromi, Nishi ...
    p. 0433
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Cadmium (Cd) is a widely used metal in industry; however it is extremely toxic even at low concentrations. Rice grains contaminated with Cd represent a major risk to the health of more than half of the world population who depends on rice as basic source of energy.
    We have targeted the development of rice plants that contain low amounts of Cd in grains using transgenic techniques. A rice T-DNA library was constructed and then screened for the Cd tolerant phenotype resulting in selection of low Cd (lcd) mutant.
    In lcd plants, the T-DNA is inserted in the first intron of the LCD gene located in the chromosome 1. LCD expression localized mainly in the vascular bundle in roots, and in phloem companion cells in shoots, suggesting a relationship between LCD and Cd transport. LCD is specific for rice and no reports have been found about its function up to date.
    Growth on experimental field in Korea on a Cd contaminated soil showed that lcd grains had a 55% reduction in Cd content when compared to WT. No differences in grain yield, grain weight, grain appearance, tiller number and leaf blade DW were observed. This is a promising line to mitigate the threat of Cd to human health.
  • 齋藤 達彦, 松田 大樹, 井上 雅貴, 倉俣 正人, 田口(塩原) 文緒, ユセフィアン ショハブ, 草野 友延, 高橋 芳弘
    p. 0434
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    カドミウム感受性酵母へイネ品種日本晴の幼植物体から調製したcDNAライブラリーを導入する方法で,イネ由来のカドミウム耐性遺伝子の網羅的探索を行った.これまでに,3x105クローンから5個の耐性クローンを得ている.併行して行ったハクサンハタザオcDNAの同様の探索から,多く得られたファイトケラチン合成酵素遺伝子は得られず,植物種毎にカドミウム耐性クローンのプロファイルが大きく異なることが明らかとなった.上述の5クローンの中には,先に演者らがメヒシバから単離したDcCDT1の相同遺伝子であるOsCDT1,そしてOsCdR1が存在した.OsCDT1は55アミノ酸からなりシステインに富むペプチドをコードしていた.OsCdR1を導入した酵母は,カドミウムの他に銅に対しても耐性となったが,Co2+,Ni2+,Zn2+,Mn2+に対する感受性は変わらなかった.現在,OsCdR1を過剰発現したイネおよびシロイヌナズナの形質転換体を作出して,植物における本クローンの役割を評価しようとしている.
  • 浦口 晋平, 齋藤 彰宏, 神谷 岳洋, 坂本 卓也, 安藤 露, 江花 薫子, 矢野 昌裕, 藤原 徹
    p. 0435
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    生物に有害な重金属であるカドミウムの耐性や無毒化に関わる分子機構には,依然として未解明な点が多い。我々はカドミウムに対する耐性がシロイヌナズナよりも強いイネをモデルとして,新規のカドミウム耐性に関わる遺伝子の単離を目的としていくつかのアプローチにより研究を行っている。
    台中65号を遺伝的背景とするMNU変異集団(約1200系統)を用い,カドミウムに感受性を示す変異株のスクリーニングを行った。カドミウムの無毒化機構に機能欠損をもつ植物体は,カドミウムに対する感受性が増加すると予想し,200μMのカドミウムを含む培地での変異株の生育を観察した。カドミウム感受性を示す21の変異株が得られた。これらの変異株について原因遺伝子の解析を進めると同時に,カドミウムの輸送や蓄積の解析を行っている。
    NIASコアコレクションを用いて同様の解析も行った。コアコレクションに含まれる系統のカドミウム耐性/感受性を解析した結果,カドミウム耐性を示す1系統が単離された。コシヒカリとのF2を用いてQTL解析を行い,11~17%の寄与率を示すQTLを3つ同定した。
    イネのcDNAライブラリーから酵母のカドミウム感受性変異株を相補する遺伝子の検索を行った。OsPCS1を含む複数の遺伝子が酵母にカドミウム耐性を付与した。単離された遺伝子のT-DNA/Tos17挿入株を取得し,解析を行っているところである。
  • 岡田 夕賀子, 市川 和樹, 中村 敦子, 小嶋 和明, 大野 豊, 小林 泰彦, 太冶 輝昭, 林 隆久, 坂田 洋一
    p. 0436
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    強い毒性を示すカドミウム(Cd)に対し、植物はファイトケラチン(PC)によるキレート化を主要な解毒機構としてもつことが知られている。我々はPC系以外のCd耐性機構に変異をもつシロイヌナズナのCd高感受性変異株(cadmium sensitive1;cds1)を用いて新規のCd耐性遺伝子の同定を試みてきた。遺伝学的マッピングの結果、cds1の原因遺伝子は第4染色体下腕部約70kbp内に位置しており、この領域内には27遺伝子が存在することが明らかとなった。これら27遺伝子のORF領域の全塩基配列を決定し、各遺伝子の発現解析を行った結果、2つの遺伝子に跨る約2.5kbpが欠損しており、この2遺伝子のみ発現が認められなかった。2遺伝子のうちシキミ酸キナーゼ(AtSK2)をコードする遺伝子の全ゲノム配列をcds1に導入した結果、Cd高感受性が回復したことから、AtSK2cds1の原因遺伝子であることが明らかとなった。シキミ酸キナーゼ(SK)はシキミ酸経路で働く酵素で、現在までにSKがCd耐性に関わるという報告はされておらず、本報告が初めてである。一方、シキミ酸経路の代謝産物の一部はCdに応答して蓄積が増加することや、サリチル酸やトリプトファンなどの代謝産物がCd耐性を向上させることが報告されており、今回の結果からシキミ酸経路がCd耐性に重要な役割を果たしていることが新たに示唆された。
  • 原田 英美子, Isaure Marie-Pierre, 金 志娥, Sarret Geraldine, Meyer Andreas J., ...
    p. 0437
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    タバコ (Nicotiana tabacum L.) をカドミウム(Cd)で処理すると、Cdとカルシウム(Ca)を含んだ結晶状物質が葉のトライコーム先端に形成されることをこれまでに報告している。放射光を用いたmicro X-ray diffraction法および micro X-ray absorption near edge structure法で分析したところ、この結晶状物質に含まれるCdの化学形態は主にCd-substituted calcite あるいはvateliteであった。トライコーム特異的なESTライブラリを作成したところ、組織特異的に発現するCysteine-rich なPRタンパク質が多数同定され、これらが重金属キレーターとして機能している可能性が考えられた。また、Class 5 PRタンパク質をコードする遺伝子は、葉とトライコームいずれでもCd処理で正に誘導された。共焦点レーザー顕微鏡を用いて植物体内のグルタチオンを可視化する手法により分布を調べたところ、葉のトライコームの先端の細胞に蓄積しており、さらにグルタチオンペルオキシダーゼをコードする遺伝子の発現が高いことが判明した。これらの知見から、タバコ葉のトライコームの重金属解毒機構にイオウ代謝系が関連している可能性が示唆され、種々の環境ストレスに応答する機構を備えた器官であることが示された。
  • 新岡 祥平, 香取 拓, 坂田 洋一, 林 隆久, 井内 聖, 小林 正智, 太治 輝昭
    p. 0438
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    セシウム(Cs)はカリウム(K)と化学的に類似しており、同様の経路を通り植物体に吸収され、微量で植物体に毒性を示す事が知られている。
    モデル植物Arabidopsis thalianaは世界中で1000種以上のaccessions(エコタイプ)が存在する。accessions間では百塩基に一塩基しか違いがないにも関わらず、形態形成やストレス耐性等に大きなバリエーションがあることが知られている。そこで本研究では、354種のaccessionsを用いてCs耐性評価を行った。その結果、実験系統Col-0と比較して顕著な耐性を示すCs耐性系統と、逆に高感受性を示すCs高感受性系統を見出した。Csストレス下における地上部のCs蓄積量を測定した結果、Cs耐性系統のCvi-0がCsを低蓄積している事が明らかとなった。
  • 鈴木 江莉奈, 坂田 洋一, 林 隆久, 篠崎 一雄, 太治 輝昭
    p. 0439
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Thellungiella halophila (以下Thellungiella)は、モデル植物であるArabidopsis thaliana と近縁種であり、海水程度の塩水でも生育可能な塩生植物である。本研究室では、Thellungiellaの様々な組織、あるいはストレス処理を行った植物体を用いて完全長 cDNA ライブラリーを作製した。20,000クローンについて両端読みシークエンスを行った結果、374個の転写因子を含むことが判明した。本研究では、Thellungiella の374個の転写因子を対象に、有用遺伝子探索法( Full-length cDNA OvereXpressor gene hunting System, FOX hunting )を用いて、耐塩性を付与する遺伝子の同定を進めていた。約100 遺伝子につき8 ラインずつの過剰発現株を作出し耐塩性評価を行ったところ、AP2 型転写因子を同定した。
  • 静 秀人, 坂田 洋一, 林 隆久, 篠崎 一雄, 太治 輝昭
    p. 0440
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Thellungiella halophila (以下 Thellungiella) は、モデル植物である Arabidopsis の近縁種でありながら、高塩濃度でも生育できることのできる塩生植物である。この Thellungiella は、植物体が小さい、生活環が短い、形質転換が可能といった利点を持つことからモデル塩生植物として研究されている。この植物は、極度の耐塩性を持つ他、凍結ストレス、酸化ストレス、高温ストレスに対しても耐性を示す。我々が作成した Thellungiella の完全長 cDNA ライブラリー (20,000クローン) から、9,569個の独立した遺伝子が明らかとなっている。本研究では、機能獲得型変異株スクリーニング (Full-length cDNA overexpressor gene hunting system、通称 FOX hunting) を用いて、ライブラリーに含まれる全遺伝子を対象に耐塩性および耐熱性を付与する遺伝子の探索を行った。全遺伝子を約1000ずつ、合計10プールに分割してArabidopsisの形質転換体を分析した。現在までに、3,265ラインのT2種子を一次スクリーニングにかけ、耐塩性候補遺伝子を1個、耐熱性候補遺伝子を8個獲得した。
  • 田中 莉夏子, 浅田 裕, 丸山 洋介, 上中 弘典, 山口 淳二
    p. 0441
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物は病原体など外敵の侵入に対し、防御遺伝子の発現や過敏感細胞死(HR)を機能することにより対抗している。これらの反応を含め、植物が身を守るための反応は植物免疫と呼ばれる。当研究室では、恒常的にHRを示すnsl2necrotic spotted lesions 2 =cad1)変異体を単離し、この変異体が病原性細菌に対する抵抗性を獲得していることを明らかにした(Plant Cell Physiol. 2005, 46: 902-912)。さらにNSL2を介した免疫機構を明らかにするため、酵母two-hybrid法を用いて相互作用タンパク質の探索から機能解析を行った。その結果、NSL2と相互するF-boxタンパク質NIFC1 (NSL2-interacting F-box group C1) を同定した。これはユビキチンリガーゼ(E3)を構成するサブユニットの一つであり、細胞内の様々なタンパク質分解を担うユビキチン・プロテアソーム系で機能している。NSL2との相互作用領域を詳細に解析した結果、C末端側の領域と結合することが確認された。NIFC1タンパク質はC末端側で分解基質の認識を行うと予想されることから、NSL2が細胞内の分解経路を介して植物免疫機構を制御している可能性が示唆された。
  • 勝又 邦明, 浅田 裕, 丸山 洋介, 上中 弘典, 山口 淳二
    p. 0442
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物の免疫には、防御関連遺伝子の発現や細胞死が知られる。この細胞死には、病原体の感染拡大を抑制する働きがあり、戦略的細胞死と考えられている。このような細胞死形質を恒常的に示すシロイヌナズナ突然変異体nsl2necrotic spotted lesion 2)を単離し、解析を行っている(cad1を改名)。nsl2変異体では、病原性細菌に対する抵抗性を獲得していたことから、nsl2変異体の細胞死形質は免疫機構に関与することが明らかとなった(Plant Cell Physiol. 2005, 46: 902-912)。
    NSL2タンパク質の機能を解析するために、酵母 Two-Hybrid法を用いて相互作用因子の探索を行った。その結果、TocopherolやCarotenoid合成の初発の酵素とされるTAT3(Tyrosine Amino Transferase)を同定した。
    WTの植物体に免疫やsenescenceに関与するホルモンを処理したところ、 TAT3の発現上昇が確認された。また、tat3変異体では、病原性細菌に対する抵抗性が低下していることが明らかになった。これらのことから、TAT3の免疫機構への関与が示唆された。TAT3のホモログであり、ジャスモン酸誘導型のTAT1との比較を中心に、TAT3と植物免疫、またはNSL2との関連について報告する。
  • 瀬尾 茂美, 五味 剣二, 加来 久敏, 中保 一浩, 小林 光智衣, 瀬戸 秀春, 安部 洋, 一瀬 勇規, 光原 一朗, 大橋 祐子
    p. 0443
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    タバコの立枯病やトマト等ナス科植物を含む多くの作物で発生する青枯病は、土壌細菌Ralstonia solanacearumの感染で起こる重要病害の一つである。本菌は根等の組織から侵入すると導管内で増殖し、感染した植物は、結果、青枯れ症状を呈する。立枯病・青枯病による被害は世界規模で問題となっているが、完全に防ぐ技術は確立されていないのが現状である。私達は、効果的な環境調和型立枯病・青枯病防除技術の開発に資するべく、立枯病・青枯病に対して抑制効果を示す天然物質の探索を試みた。立枯病・青枯病菌の感染に対して抵抗性が発揮されている植物では本病に対して抑制効果を示す物質が蓄積しているとの仮説に基づき、立枯病菌に対して抵抗性が誘起されたタバコから抑制物質を探索したところ、酢酸エチル可溶中性画分に強い抑制活性を見出した。生化学的手法により活性成分を単離し、構造解析を行った結果、抑制物質は既知物質であることがわかった。なお、この物質自体には立枯病・青枯病菌に対する抗菌活性は示さなかった。この物質を処理したトマトやシロイヌナズナは青枯病に対して強くなることから、植物種を問わずに抑制効果を発揮することがわかった。マイクロアレイ解析によって同定した本抑制物質で誘導されるシロイヌナズナ遺伝子の変異体を用いた解析結果並びに有機合成した各種類縁体を用いた構造活性相関の試験結果と併せて報告したい。
  • 石原 岳明, 中保 一浩
    p. 0444
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    青枯病抵抗性トマト品種における抵抗性の分子メカニズム解明の端緒を得るため、茎部に病原細菌を接種し24時間後の抵抗性品種LS-89と感受性品種ポンデローザの接種部近傍における遺伝子発現をマイクロアレイで網羅的に解析した(対照は水接種)。LS-89では約150遺伝子に2倍以上の発現変動が確認されたが、ポンデローザでは数遺伝子のみだった。このうち青枯病菌接種LS-89では、Class III acidic 及びbasic β-1,3-glucanase両遺伝子の発現量がいずれも大幅に増加することが明らかになった。そこで両遺伝子と、Class I及びClass II β-1,3-glucanase遺伝子も加えた計4遺伝子の発現をリアルタイムPCRで解析した。いずれの遺伝子も接種12時間までほとんど発現が見られなかったが、LS-89では接種24時間後までに発現が増加し、48時間後にはさらに増大した。一方、ポンデローザでは大きな変化は観察されない遺伝子と、接種48時間後に発現量が増加する遺伝子に二分された。また、106から109 CFU/mlの菌濃度で接種したところ、接種濃度と接種24時間後の発現量の関係は遺伝子によって異なっていた。以上のことから、これらのβ-1,3-glucanase遺伝子はいずれも青枯病菌の濃度依存的に発現するものの、それぞれ異なる制御を受けていることが示唆された。
  • 鳴坂 真理, 白須 賢, 久保 康之, 白石 友紀, 畠山 勝徳, 平井 正良, Kang Seung Won, 河本 晃一, 江面 浩, ...
    p. 0445
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    私たちは、SSLPマーカーによるマッピング、SNPを用いたnatural variation解析およびT-DNA挿入変異体を解析することによって、アブラナ科野菜類炭疽病菌(以下炭疽病菌と略す)に対して抵抗性を示すシロイヌナズナ(Ws-0)においてR-遺伝子の同定を試みた。その結果、炭疽病菌の認識にはトマト斑葉細菌病菌(非病原力遺伝子AvrRps4を有する)に対応するR-遺伝子RPS4と青枯病菌に対応するR-遺伝子RRS1の両遺伝子が必要であることを明らかにした。デュアルR-遺伝子システムの普遍性を解析するため、2kbのプロモーター領域を有するRPS4Wsと1.7kbのプロモーター領域を有するRRS1Wsをアブラナ科作物のコマツナ(品種おそめ)に導入した結果、両遺伝子が導入された形質転換体が3個体、RRS1Wsのみを有する形質転換体21個体およびRPS4Wsのみを有する1個体の形質転換体が得られた。さらに、T2世代において炭疽病菌および青枯病菌に対する感受度検定を行った結果、1遺伝子導入個体は感受性を示し、2遺伝子導入個体のみが両病原菌に対して抵抗性を示した。これより、アブラナ科作物においてもデュアルR-遺伝子システムが機能し、2つのR-遺伝子が協調して異なる病原体を認識することが示唆された。現在、ナス科作物のトマトやタバコへのデュアルR-遺伝子システムの導入を試みている。
  • 稲田 のりこ, 桧垣 匠, 馳澤 盛一郎, セイボリー エリザベス, ティアン ミアオイン, デイ ブラッド
    p. 0446
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    カビ真菌の病原体であるうどんこ病菌は、穀物・野菜・観葉植物など数多くの植物に感染し、毎年多大な被害を及ぼしている重要な病害である。うどんこ病菌は、宿主組織表皮細胞の細胞壁と細胞膜との間に吸器と呼ばれる器官を形成し、エフェクター因子の送り込みによる宿主免疫応答の抑制、宿主細胞からの栄養分の吸収を行う。しかしながら、この吸器を介したうどんこ病菌感染確立の分子機構はこれまで未解明のまま残されていた。私たちは、シロイヌナズナのアクチン脱重合因子AtADF4のノックアウト変異体及び複数のAtADF因子をノックダウンしたシロイヌナズナ形質転換体が、シロイヌナズナを宿主とするうどんこ病菌Golovinomyces orontiiに対して非常に強い抵抗性を示すことを発見した。うどんこ病菌吸器を取り囲む宿主シロイヌナズナアクチン繊維の配向パターン、及び、非常に強い抵抗性を示すAtADFノックダウン株の感染細胞における細胞死などの観察結果から、私たちは、うどんこ病菌が宿主シロイヌナズナのアクチン繊維を操作して、エフェクター因子の宿主細胞内への分泌に利用しているのではないか、との仮説を立て、AtADF変異体の詳細な表現形解析を行った。本発表では、アクチン構造における定量的解析など最新の結果を交えて報告したい。
  • 関根 健太郎, Venugopal Srivathsa, Kachroo Aardra, Kachroo Pradeep
    p. 0447
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    脂肪酸合成系のstearoyl-ACP-desaturaseに変異を生じたシロイヌナズナssi2変異体は,矮化形態,自発的細胞死の誘導,サリチル酸並びに防御関連遺伝子の恒常的な蓄積を伴い,広範な病原体に対する基礎的防御機構の増強が認められる.本研究では,ssi2変異体にさらにEMS処理を施すことによりssi2特異的な表現型を抑制した復帰変異体rdc2 ssi2を得て,病害抵抗性誘導に機能する脂肪酸シグナル伝達系に関わる因子を新たに見出すことを目的とした.rdc2 ssi2二重変異体は,ssi2の表現型が完全には抑制されておらず,野生型の植物に比べて多少の矮化が認められた.また,野生型の植物との戻し交配により得たrdc2単独の変異体は,葉が若い時期に淡緑色になる特徴的な表現型を呈した.さらに,rdc2単独の変異体は,野生型の植物と比較して,1)クロロフィル含量が少ないこと,2)活性酸素を発生させることにより細胞死を誘導するパラコートを処理した際の壊死斑の形成が抑制されること,3)非親和性の病原体の感染に対する活性酸素の発生が抑えられ,抵抗性が弱まることが分かった.以上より,RDC2遺伝子は活性酸素の生成に関与すると推察され,脂肪酸合成系の関わる抵抗性シグナル伝達系は活性酸素を介する経路で誘導される可能性が考えられた.
  • 吉岡 美樹, 水上 優子, 小八重 善裕, 石濱 伸明, 吉岡 博文
    p. 0448
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    イネの重要害虫であるツマグロヨコバイ (GRH) は九州~本州,中国やアジアの山間地帯の稲作地域で発生し,吸汁加害に加え,ファイトプラズマ,イネ萎縮病・わい化病の原因となるウィルスを伝搬する.植物と病原菌における相互作用の解析から,植物は微生物由来分子パターン (MAMPs) やエフェクターを認識し,防御応答を発揮することが分かってきた.しかし,植物と害虫との相互作用に関する知見はまだ少ない.本研究では,GRHのPAMPs (pest-associated molecular patterns) やエフェクターを探索することを目的とした.まず,GRH総タンパク質ライブラリー,およびこれらをスクリーニングするためのレポーターイネを作成した.GRH cDNAライブラリーをファージミドにmass excisionし,このクローンを100個ずつプールした後,in vitro転写/翻訳システムによりタンパク質の合成を行った.多数のタンパク質が発現していることを35S-メチオニンでラベルすることにより確認した.レポーターイネ作出のため,GRH吸汁により誘導される遺伝子を,マイクロアレイによりスクリーニングした.吸汁に応答するプロモーターZIMproを単離し,GUSを連結した遺伝子をイネに導入した.現在これらを用いて,スクリーニングを行っている.
  • 野村 裕也, 藤原 正幸, 深尾 陽一朗, 椎名 隆, 吉岡 博文
    p. 0449
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    活性酸素や一酸化窒素は、植物免疫応答や様々なストレス応答に関与して生成されるラジカル分子であり、その生成が急激な応答であるためラジカルバーストと呼ばれている。これまで、MAPKカスケードがラジカルバースト制御において重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。一方、ラジカルバーストに関わる因子として、葉緑体に局在するタンパク質CASを見いだしてきた。シロイヌナズナのCASノックアウト変異体 (cas-1) は、非親和性細菌Pseudomonas syringae DC3000(avrRpt2)接種による過敏感細胞死の遅延やラジカル生成量の減少を示す。さらにCASは、flg22が誘導する気孔閉鎖、サリチル酸合成、カロース蓄積などの免疫応答に関与することが明らかとなった。このことから、葉緑体は、ラジカルバーストをはじめ植物免疫における様々な応答において重要な役割を果たすと考えられた。今回、免疫応答における葉緑体機能変化を捉えるため、葉緑体タンパク質におけるプロテオーム解析を行った。シロイヌナズナ葉をflg22で処理すると、2時間後で多くのタンパク質の増減が確認された。さらに、flg22による免疫応答を著しく欠損するcas-1は、これらの変動が遅延した。本発表では、プロテオーム解析によって明らかとなった免疫応答時の葉緑体機能制御について得られた知見を紹介する。
  • 石濱 伸明, 山田 麗子, 吉岡 博文
    p. 0450
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    MAPKカスケードは、植物の防御応答において重要な役割を担っている。私達はこれまでに、ベンサミアナ植物 (Nicotiana benthamiana) から、病害応答性のMAPKであるSIPK、NTF4、WIPKの基質として、WRKY8を同定した。WRKY8には、動物や酵母のMAPK基質によく保存されたD domain様の配列が存在する。D domainは、MAPKとの相互作用に関わり、基質の効率的かつ特異的なリン酸化を保証する役割を持つ。今回、WRKY8のリン酸化におけるD domain様配列の役割を調べた。BiFCおよびプルダウンアッセイによりWRKY8とMAPKの相互作用を解析した。WRKY8はSIPK、NTF4、WIPKと相互作用したが、NTF6とは相互作用しなかった。また、D domain様配列に変異を加えると、WRKY8とSIPK間の相互作用が顕著に阻害された。D domain様配列に変異を施した変異WRKY8は、in vitroにおけるSIPKによるリン酸化も、in vivoにおける恒常活性型MEK2の発現に依存したリン酸化も著しく抑制された。これらの結果は、WRKY8がD domain依存的に直接MAPKと相互作用し、そのD domainを介した相互作用がMAPKによるWRKY8のリン酸化に必要であることを示している。
  • Furuichi Naotaka, Ohta Masahiro
    p. 0451
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    An elicitor (PiPE) from the oomycete Phytophthora infestans (Pi) stimulates the hypersensitive response (HR) in potato. The PiPE, purified by anion-exchange chromatography from a water-soluble extract of Pi caused cell death, characteristic of HR, and enhanced active oxygen species (AOS) generation in tuber tissues. The sequence of the PiPE cDNA derived by PCR had homologous domain to fructose 1,6 bisphosphate aldolase (FBA) gene. To demonstrate that the PiPE cDNA encodes an active elicitor, we expressed PiPE in Echerichia coli, high five insect cells and purified the recombinant protein. His-PiPE induced HR, browning and generation of AOS in potato tissues. The PiPE was produced in the germination fluid from Pi and was located in the cell wall of Pi. The role of PiPE is discussed in the induction of HR in incompatible and compatible interaction between Pi and potato cells.
  • 宮田 一範, 野口 航, 寺島 一郎
    p. 0452
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    葉への入射光が強い時、葉は光阻害を受ける。光化学系II(PSII)の正味の光阻害の程度は、PSIIのD1タンパク質の光損傷と、D1タンパク質ターンオーバーによる修復とのバランスによって決まる。タンパク質のターンオーバーには、大きなエネルギーコストがかかるので、それを定量することは葉のエネルギー収支を知る上で重要である。また、葉の光合成系は、光環境に馴化するので、それに伴い修復活性も変化する可能性が高い。本研究では、まず、強光(HL)と弱光(LL)下で栽培したホウレンソウの葉に、損傷速度と修復速度に差異があるかを調べた。Katoら(2002)に基づき、損傷速度定数(kpi)と修復速度定数(krec)を算出した。kpiはLL葉で大きく、krecはHL葉で大きかった。Kato & Sakamoto(2009)に基づいて計算した光損傷後のD1タンパク質を修復するためのエネルギーコストは、1,600 μmol m-2 s-1の光を120分間照射時には、15,000~20,000 μmol ATP m-2に達した。これは、同時間に暗呼吸で生産されるATPの10%以上にあたる。また、修復コストはHL葉の方が大きかった。kpiとkrecの結果と併せて考えると、 HL葉の方が面積あたりのPSIIの量が多いことが、その原因であろう。
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