日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
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選択された号の論文の1051件中901~950を表示しています
  • 今井 幹太
    p. 0904
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    植物の硝酸イオン能動輸送体(NRT)はNRT1とNRT2の2種に大別することができる。NRT2は高親和性のNRT活性で中心的な役割を果たしており、通常複数の分子種が存在していて、中には補助的なタンパク質であるNAR2を必要とするものもある。ヒメツリガネゴケは8つのNRT2分子種と3つのNAR2分子種を持っている。8つのNRT2分子種のうちNRT2;1、NRT2;2、NRT2;4は基質親和性が高く、NRT2;3はこれらに比べて基質親和性が低いことが分かっているが、NAR2についてもこのような機能分化があるかどうか、またNRT2とNAR2の対応関係も不明である。そこでNAR2の機能を解析するためNAR2;1破壊株、NAR2;2破壊株、そしてNAR2;1,NAR2;2二重破壊株を作製した。これらの変異株についてNRT2;3抗体を用いたタンパク質発現解析を行った結果、NAR2;1およびNAR2;2の単独破壊株ではNRT2;3タンパク質の発現が確認されたが、NAR2;1,NAR2;2二重破壊株ではNRT2;3タンパク質が発現していなかった。この結果はNRT2;3タンパク質の発現にはNAR2;3が関与しないことを示唆する。現在NAR2;1およびNAR2;2のさらなる機能解析とNAR2;3破壊株の作製を試みている。
  • 王 スーイー, 高橋 英之, 川勝 泰二, 高岩 文雄
    p. 0905
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    シラカバBet v1タンパク質はシラカバ花粉症の主要なアレルゲンである。ブナ科植物のBet v1遺伝子をシャッフルして設計された人工タンパク質Tree Pollen Chimera 7 (TPC7)は低アレルゲン性であり、ブナ科花粉症に対して複合的に高免疫原性を示す。演者らは複合ブナ科花粉症緩和米の開発・実用化に向けて、TPC7発現米を作出・解析した。N末端にGluB-1シグナルペプチド、C末端にKDEL配列を融合したTPC7をGluB-1プロモーターで胚乳特異的に発現誘導することで、TPC7の蓄積がCBB染色で検出できる程度の高蓄積系統が得られた。抗TPC7抗体を用いたウェスタンブロットの結果、サイズの異なる2本の特異的バンドが検出された。糖鎖切断酵素処理によりバンドが1本になったことから、TPC7はイネ胚乳中で糖鎖修飾を受けていることが明らかになった。イネ種子貯蔵タンパク質であるプロラミンはER由来のプロテインボディ-I(PB-I)に、グルテリンおよびグロブリンは貯蔵液胞であるPB-IIと呼ばれる貯蔵オルガネラに蓄積する。TPC7高蓄積系統ではPB-I、PB-IIとは異なる巨大な新規構造体が形成された。TPC7は主にこの新規構造体に蓄積していたため、この構造体をTPC7ボディとした。本発表ではイネ胚乳に蓄積したTPC7の挙動およびTPC7ボディの特性について報告する。
  • 長嶺 愛, 松坂 弘明, 川越 靖, 小川 雅広, W. Okita Thomas, 熊丸 敏博
    p. 0906
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    イネ種子において、アルコール可溶性貯蔵タンパク質、プロラミンはシステイン(Cys)残基を含まないCys-poorプロラミン(CysP13)とCys残基を含むCys-richプロラミン(CysR10、CysR14 、CysR16)の2種類に分類される。これらは小胞体内にプロテインボディ-I(PB-I)として集積する。本研究において、PB-Iの中心に存在するCysR10のPB-I形成における作用を明らかにするために当該遺伝子のRNAi形質転換体を作成した。このCysR10-RNAi形質転換体において、CysP10の特異的な減少とCysP13の集積量の減少並びにPB-Iの顕著な形成異常が認められた。一方、殆どのCysRプロラミン分子が減少するesp3変異体において、PB-Iの肥大化と構造の歪みが認められた。これらの結果から、CysR10の存在がPB-I内におけるプロラミンの規則的な配置に重要であることが示唆された。またCysR10-RNAi形質転換体とesp3変異体におけるPB-Iの形態が異なることから、CysR10-RNAi形質転換体におけるPB-Iの形成異常がCysR10以外のCysRプロラミンの存在に起因することが考えられる。
  • 諫山 昇, 長尾 遼, 榎並 勲, 鞆 達也
    p. 0907
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    酸性温泉に生息する原始紅藻Cyanidium caldariumは、pH1~3の酸性下で生息するが、pH7以上の領域では死滅する。われわれは前年度までに、C. caldariumを中性で培養すると、動物に存在するlysyl oxidase(LOX)と相同性を持つタンパク質(lysyl oxidase likeタンパク質、LOL)が細胞外に大量に分泌されることを報告した。この分泌に関するpH依存性を調べた結果、中性ばかりではなく酸性pHにおいても微量ながらこのタンパク質が分泌されていることを確認した。相同性検索の結果、このタンパク質は光合成生物ではC.caldariumCyanidioschyzon merolaeにのみ存在する事が明らかになっている。このため C. merolaeを用い同様の実験を行ったがpH1~6の範囲で、細胞外にこのタンパク質を検出する事は出来なかった。動物細胞におけるLOXの役割の一つとして細胞膜の形成に関与していることが挙げられるがLOLタンパク質、C. caldariumにおける役割は不明である。そのため抗体を作製し、その局所部位を解析した結果、C. caldariumの細胞内画分においても抗体反応が検出された。現在、LOLの詳細な局所部位と機能に関する解析を進行中である。
  • 前川 修吾, 安田 盛貴, 百目木 幸枝, 藤原 正幸, 深尾 陽一朗, 浅岡 凜, 植村 知博, 中野 明彦, 佐藤 長緒, 山口 淳二
    p. 0908
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    植物において,糖(C)と窒素(N)は有機物合成の基幹的2大栄養素であり,互いの代謝はクロストークしている.それゆえ,植物は,環境変化に応じて変動する細胞内のCとNのバランス(C/N)を感知・制御することで,個体の生育を最適化している.我々は,シロイヌナズナを用いたC/Nストレス耐性変異体のスクリーニングから,新規C/N応答制御遺伝子ATL31を単離した(Sato et al. Plant J, 60: 852, 2009).ATL31の過剰発現体はC/Nストレスに耐性を示し,またKOでは逆に過剰応答した。
    ATL31はユビキチンリガーゼATLファミリーに属しており,そのユビキチン化標的タンパク質として,これまでに14-3-3タンパク質群を同定している。更に詳細なATL31によるC/N制御機構解明を目指し,架橋剤を用いたATL31相互作用因子の探索を行った。その結果,Rab small GTPaseやSNAREなど,メンブレントラフィックに関与する因子が多数同定された。そこで現在,ATL31とその相互作用因子について遺伝学および生化学的解析を行っている。
    本発表ではATL31が制御するC/N応答にメンブレントラフィックがどのように関与しているかについて議論したい.
  • Nakayama Takato, Shibasaki Kyohei, Uemura Matsuo, Rahman Abidur
    p. 0909
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Intracellular protein trafficking affects a wide range of developmental processes. However, little is known about its role in resistance to environmental stresses. To better understand the role of protein trafficking in cold stressed induced root growth and development, we investigated the response of the available Arabidopsis trafficking mutants to cold stress, and also screened new mutants. Both the SNARE mutant vam3, and retromer mutant snx1 showed a delayed recovery to gravity after cold stress, while the knockout mutant of RabA4C showed a faster recovery. For root growth recovery, vam3 and snx1 showed a delayed response compared with wild-type. Collectively, these results suggest that intracellular protein trafficking regulates the plant growth and development under cold stress. Among the screened mutants, ems41-16 showed delayed recovery to root growth and gravity response after cold stress, while ems38-1 showed an opposite phenotype, faster recovery of root growth and gravity response. Identification of these mutated genes will enable us to better understand the role of protein trafficking in cold stress induced inhibition of growth and development.
  • 田中 優史, 戒能 智宏, 川向 誠, 中川 強
    p. 0910
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    真核細胞内の物質輸送を担う輸送小胞のうち、COPII被覆小胞は小胞体からゴルジ体へ向かう順方向の輸送を司っており、その被覆は低分子量GTP結合タンパク質,Sar1と2種類のタンパク質複合体(Sec23/Sec24複合体, Sec13/Sec31複合体)から構成される。これらの複合体のうちSec23/Sec24複合体は積荷の選択や認識などに関わっており、Sec13/Sec31複合体は積荷の濃縮と膜の湾曲に関与している。当研究室では、シロイヌナズナにおいてSec31のホモログ(ATSEC31A)が孔辺細胞と花粉の発達に関与することを見出した。そこで、本研究では別の構成因子であるSec23のホモログに注目して解析を行っている。これまで、シロイヌナズナにおいてSec23のホモログ(ATSEC23)が7種存在することを見出し、それぞれの発現部位と各遺伝子産物の細胞内局在について解析を行ってきた。また、各遺伝子破壊株を用いて機能解析も行っている。本発表ではこれまでの機能解析結果から、これらATSEC23がシロイヌナズナの発達にどのように関与するのかを報告する。
  • Duan Guilan, Lombardo Fabien, Miwa Hiroki, Hakoyama Muneo, Kamiya Take ...
    p. 0911
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Molybdenum (Mo) is an essential trace element which is an electron donor and/or acceptor in Mo requiring enzymes. We previously isolated MOT1, the first molybdate transporter in eukaryotes, from Arabidopsis thaliana.
    In this study, we found a low Mo accumulation Lotus japonica mutant by screening EMS-mutagenized seeds. Based on the genome analysis, Lotus has four genes that are closely related to MOT1. By sequencing theses putative Mo transporters in mutant, we found that there is a single nucleotide substitution (G876 to A876) in ST53 (LjMOT1) gene, a MOT1 like gene. This substitution changes amino acid Met to stop codon. To confirm the low Mo phenotype is due to the mutation in LjMOT1, the mutant was transformed with wild type LjMOT1 genomic fragment including promoter. Several independent transgenic plants were generated and the Mo concentrations in leaves of the transgenic lines were about 4 times higher than mutant. The mutant does not exhibit defect in nodulation and transcript accumulation is not much affected by nodulation. These data demonstrated that LjMOT1 is a major Mo transporter of Lotus for taking up Mo from soil, but not involved in the symbiosis.
  • 斉藤 貴之, 岩田 直子, 大前 芳美, 小林 奈通子, 田野井 慶太朗, 中西 友子
    p. 0912
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    これまで、主要作物であるイネ(日本晴)を用い、Mgの吸収・移行動態の解析結果を報告した。その結果、植物体内の随所で能動的なMg輸送が行われていることが示され、多数の輸送タンパク質が関与する輸送機構の存在が示唆された。そして、ゲノムデータベースよりシロイヌナズナのMg輸送体AtMRS2のオーソログを検索し、得られた9遺伝子(以下、OsMRS2)を対象として発現解析を行ったので報告する。
    幼植物期、分げつ期、花成期の各生育ステージにおいてOsMRS2ファミリーの発現組織を半定量的PCRにより調べた結果、植物体全体で発現していることが確認された。また、幼植物期において地上部、地下部のmRNA蓄積量を定量した結果、地下部よりも地上部での発現量が多い傾向が確認された。さらに、Mg欠乏処理を施したイネについて、根および各葉の葉身、葉鞘部を分け、OsMRS2の発現量の変化を8日目まで調べた。その結果、地上部、地下部ともMg欠乏による誘導性は確認されなかった。その一方、この期間に展開葉の葉鞘部における発現量は最大30倍程度まで変化し、生育に伴う増減が確認された。
    GUSレポーター遺伝子のコンストラクトに、酵母において機能相補性を示したOsMRS2の上流配列を挿入し、形質転換体を作出することによって発現組織の解析を試みた。その結果、葉鞘部分などで染色が確認され、引き続き解析を行っている。
  • 菅野 里美, 山脇 正人, 中西 友子
    p. 0913
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物は、土壌環境中のリンに適応し生育するためのさまざまな応答機構を備えている。特に、リン酸の吸収と輸送に関わるリン酸トランスポーター遺伝子は植物体内外の環境変化に応じその種類や数を変化させている。これらリン酸トランスポーター遺伝子の発現部位は根の箇所ごとに異なっており、これに応じて根のリン酸吸収量も部位ごとに異なることが考えられた。
    そこで、本研究では、シロイヌナズナを用いて主根と側根の部位別に32P(PO43-)トレーサを与えた時のリン酸の吸収と移行を解析した。その結果、シロイヌナズナの主根から吸収したリン酸は側根からのリン酸と比較して単位時間あたりの地上部へのリン酸移行量は約2倍多かった。また、葉から与えたリン酸は1時間以内に根へ移行しており、リン酸が植物体内で上下方向に移行していることが示された。
  • Eltayeb Amin Elsadig, Qi YanHua, Eltayeb Habora Mohamed Elsadig, Masum ...
    p. 0914
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    デンプンは植物の重要な貯蔵炭素形態であり、動物ではグリコーゲンが貯蔵形態である。グリコーゲン合成の開始機構は十分に明らかになっているが、植物のデンプン合成開始は大部分がまだ確定していない。デンプンは葉緑体で合成されるので、OsGGTの細胞内局在性を調べたところ、原形質膜に存在していることが明らかになった。OsGGTを過剰発現させた形質転換イネは野生型よりも1.3倍のデンプン含量の増加を示したが、OsGGTのノックアウト体はデンプンプールの完全な低下を示さなかった。完全冠水2日後、過剰発現イネは初めのデンプン含量の61%を示したが、野生型は34%の低下を示した。冠水4日目では、両植物で同量のデンプン含量を示した。これらの結果はOsGGTは冠水条件下でのデンプンプールの急速な欠如を積極的に防御することを示しているかもしれない。
  • 金松 澄雄
    p. 0915
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    酸素ストレスの上昇に対応して分子進化してきたSODは特徴的なアイソザイムおよびそれらのアイソフォームの存在パターンを示す。我々は先に、緑色植物系統でこれまでに明らかにされた最も古い葉緑体型 (chl) CuZn-SOD遺伝子を緑藻Spirogyraから単離し、またコケ植物(Pogonatum)やシダ植物(Equisetum)で2種類のchl CuZn-SODアイソフォーム遺伝子を見いだしている。最近のゲノム解析の結果、プラシノ藻のOstreococcusにもchl CuZn-SOD遺伝子が見いだされ、またヒメツリガネゴケにも2種のchl CuZn-SODアイソフォームの遺伝子が明らかにされたので、今回、chlとcytの2種のアイソザイムの分岐時期やアイソフォームの系統関係を検討した。OstreococcusSpirogyra のchl CuZn-SOD遺伝子は高い相同性を示すが、エクソン・イントロン構造には類似性は無い。Mesostigmaで見いだされた遺伝子断片はcyt 型であった。これらの生物を含めた系統解析により、chl SODとcyt SODにはsister-group 関係が示され、両アイソザイムは緑藻植物からストレプト植物が生じる前に分岐したことか示された。またコケ・シダ植物のchl SODのアイソフォームはそれぞれの種の分岐後の遺伝子重複に由来することが示唆された。
  • 原口 武士, 伊藤 光二, 山本 啓一
    p. 0916
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    これまでミオシンの運動機構は、筋肉のミオシンを中心に研究が進められてきた。しかし、近年の研究により、多種多様な非筋ミオシンは、まったく異なる性質をもつことが示された。それらの研究を通して、ミオシンの運動機構の理解は大きく進んだ。
    モデル植物のシロイヌナズナには、クラスXIミオシンが13ある。我々は、それらの1つであるミオシンXI-Iの酵素活性を調べた。このミオシンXI-Iは、シロイヌナズ内での発現量がかなり高いが、性質は明らかになっていない。
    ミオシンXI-Iのアクチン活性化ATP加水分解活性は低く(3 Pi/head/sec)、また、アクチン滑り速度も遅かった(モータードメインのみで0.02μm/sec)。しかし、アクチンとの親和性は、今まで測定された全てのミオシンの中で、最も高かった(Kapp = 0.5μM)。
    また、変異体を用いた実験により、アクチンとの高い親和性にはloop 4が部分的に関わっていることがわかった。
  • 仲本 準, 藤田 健作
    p. 0917
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Hsp90は、代表的な熱ショックタンパク質の一つである。原核生物を代表する大腸菌のHsp90と、酵母・ヒトなどのHsp90の構造はよく保存されている。一方、真核生物のHsp90が細胞の機能と生存に不可欠であるのに対して、大腸菌Hsp90(HtpG)は生存に必須ではなく、熱誘導されるにもかかわらずhtpG変異株は高温感受性を示さない。枯草菌や歯周病菌などのhtpG変異株の表現型も現れず、基質タンパク質も明らかにされてこなかった。一方、真核生物Hsp90に関しては、100以上もの基質タンパク質が知られ、その主要なものはシグナル伝達に関わるタンパク質で、ステロイド(ホルモン)受容体、転写因子やキナーゼなどが代表的である。真核生物のHsp90は、他のシャペロンやコシャペロン(シャペロン補助因子)等と複合体を形成し、これらのタンパク質と協同して働くことが分かっている。一方、原核生物HtpGのコシャペロンに関する報告は皆無で、単独で働くものと説明されている。我々は、ラン藻のHtpGが、高温等のストレス下で必須の働きをすることや、フィコビリソームのリンカーポリペプチドやウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素を基質とすることなどを初めて明らかにした。さらに、HtpGがDnaK(Hsp70)シャペロン系と協同してシャペロン作用することを見出した。本発表では、これらの結果について紹介する。
  • 鈴木 康生, 寺井 弘文, Dandekar Abhaya
    p. 0918
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    バラ科果樹には転流糖としてソルビトールとシュクロースの2種類の糖が存在する。糖は遺伝子の発現を調節するシグナル因子としての役割も有する。バラ科果樹における糖のセンシングとシグナリングの機構を理解することは重要である。なぜならソース葉で合成されるソルビトールとシュクロースの割合が果実品質や栄養成長に影響を及ぼすからである。ソルビトール及びシュクロースの生合成のキー酵素はそれぞれソルビトール6リン酸脱水素酵素(S6PDH)及びシュクロースリン酸合成酵素(SPS)である。本研究では、それらの遺伝子発現に及ぼす糖の影響について調べた。ビワの切断葉-葉柄を糖水溶液で処理した後、遺伝子発現解析をRT-PCRで行ったところ、S6PDH遺伝子はソルビトールにより発現が抑制され、スクロースにより増加した。シュクロースとソルビトールを同時に処理した実験結果から、これは浸透圧の影響によるものでないと考えられた。またグルコースやフルクトースは発現を抑制した。一方、SPS遺伝子はいずれの糖によっても発現は抑制された。これらのことから、バラ科果樹のソース器官にはソルビトールの割合を多く保つための機構が存在し、これにはシュクロースがシグナル分子として関係していることが示唆された。
  • 成瀬 孝史, 小林 康一, 下嶋 美恵, 増田 真二, 太田 啓之
    p. 0919
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物の葉緑体膜はMonogalactosyldiacylglycerol (MGDG)やDigalactosyldiacylglycerol (DGDG)といったグリセロ糖脂質によって占められている一方、その他の膜は動物等と同様主にリン脂質によって構成されている。しかしリン酸欠乏条件下では、植物はこれらのリン脂質を分解し、代替脂質としてDGDGを葉緑体外に蓄積することが知られている。糖脂質合成酵素であるMGDG synthase 2 (MGD2)は、リン酸欠乏時特異的にDGDGの前駆体となるMGDG合成を行う酵素であり、この酵素のmRNAレベルはリン酸欠乏時に大きく上昇することがシロイヌナズナにおいて明らかとなっている。本研究では、リン欠乏時における発現制御機構を明らかにするため、シロイヌナズナMGD2遺伝子のプロモーター解析を行った。すなわち、MGD2上流に存在するプロモーター領域を段階的に短くし、その短くなったプロモーター配列の制御下で、レポーター遺伝子であるβ-glucuronidase (GUS)を発現させるベクターを作成し、シロイヌナズナに導入した。これらの形質転換された植物を用いてレポーター遺伝子の発現を調べた結果、プロモーター上流に通常時のMGD2の発現抑制を行う配列とリン酸欠乏応答に関わる領域を見出したので報告する。
  • 片山 健太, Akbari Hana, Frentzen Margrit, 和田 元
    p. 0920
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    カルジオリピン(CL)は、真正細菌から真核生物のミトコンドリアにまで広く存在する特徴的な構造をもったリン脂質である。私たちは真核多細胞生物で初めてCL合成酵素遺伝子CLSをシロイヌナズナにおいて同定し、その遺伝子にT-DNAが挿入されたタグラインclsを用いてCLの機能を解析している。cls/clsは胚発生を中心として生育速度が遅延し、CLが局在するミトコンドリアの形態が異常であった。このうち、異常の程度が大きいcls-2/cls-2は、CLSの機能が完全に欠失していると考えられた。実際、外来エストロゲンの投与によりCLSの発現を誘導できるpER8:CLScls-2/cls-2に導入した株の単離ミトコンドリアを用いた解析では、誘導前の状態ではCLS活性を検出できなかった。しかし、cls-2/cls-2の芽生えを[33P] Piで長時間ラベルしてCL量を測定したところ、全リン脂質中に占めるCLの割合はWTと比べて低下していたものの、cls-2/cls-2においてもCLと思われるスポットが検出された。これらのスポットおよび他の植物におけるCLのGCによる脂肪酸分析およびTOF-MS解析の結果を基に、植物におけるCLの合成と機能について議論したい。
  • 加藤 舞, 今井 博之
    p. 0921
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    スフィンゴ脂質の代謝産物である長鎖塩基1-リン酸は,気孔開閉に関与するアブシシン酸情報伝達における脂質シグナル伝達物質である。長鎖塩基1-リン酸は,長鎖塩基キナーゼによって合成され,長鎖塩基1-リン酸リアーゼ(DPL)または長鎖塩基1-リン酸ホスファターゼ(SPP)によって分解される。本研究において,シロイヌナズナのAt3g58490遺伝子が長鎖塩基1-リン酸ホスファターゼ (AtSPP1)をコードすることがわかった。AtSPP1に関するT-DNA突然変異株spp1を用いて,地上部の新鮮重量の変化を計時的に測定した結果,spp1における重量の減少速度が野生株に比べて有意に低かった。さらに,葉の表皮を用いてABA処理による気孔開度を測定したところ,spp1は野生株よりも気孔をより閉鎖することが分かった。これらの結果から,AtSPP1が気孔開閉に関与するアブシシン酸情報伝達経路の構成要素の一つであることが示唆された。シロイヌナズナのDPL突然変異体であるdpl1は,セラミド合成酵素の阻害剤であるフモニシンB1に対して感受性を示す。本研究において,spp1をフモニシンB1で処理したが,感受性を示さなかった。このことは,長鎖塩基1-リン酸の分解系におけるDPLとSPPの生理的機能の違いを反映しているかもしれない。
  • 中村 憲太郎, 寺西 美佳, 日出間 純
    p. 0922
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    UVB誘発DNA損傷(CPD)を修復するCPD光回復酵素は、大腸菌から植物まで、胎生哺乳類以外の多くの生物が有する酵素であり、植物のUVB抵抗性を左右する重要な因子である。我々はイネにおいてCPD光回復酵素がリン酸化修飾を受けていることを見出したが、これまでイネ以外の生物では報告例がない。そこで、このリン酸化修飾がイネ特有の現象なのかを明らかにするために、コムギ、オオムギ、トウモロコシなどのイネ科植物を材料にして脱リン酸化酵素処理や二次元電気泳動を用いた解析を行い、CPD光回復酵素のリン酸化修飾の有無を調べた。その結果、コムギではリン酸化修飾を受けていることを確認できたが、オオムギおよびトウモロコシでは確認できなかった。
    リン酸化修飾が酵素機能に与える影響を明らかにするためには、リン酸化修飾を受けるアミノ酸配列を同定することが重要である。そこでまず、イネとコムギ、そしてリン酸化修飾を受けていないと推測されたトウモロコシのCPD光回復酵素のアミノ酸配列を比較することで、イネCPD光回復酵素のリン酸化部位を推定した。推定されたアミノ酸配列をアラニンに変異させたイネCPD光回復酵素遺伝子を作製し、昆虫細胞無細胞発現系を用いて変異導入イネCPD光回復酵素を合成することにより、リン酸化修飾の有無を解析した。その結果、イネCPD光回復酵素において分子量のシフトを生み出すリン酸化部位を同定した。
  • 高橋 正明, 寺西 美佳, 石田 宏幸, 高橋 さやか, 日出間 純
    p. 0923
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    紫外線UVBは、植物細胞内の核、葉緑体、ミトコンドリアゲノム上にDNA損傷の一つであるピリミジン二量体 (CPD) を誘発する。CPD損傷の蓄積は、UVBによる生育抑制の主要因であるため、その修復機構の存在は重要である。これまでの研究から、核においてはCPDを青色光を利用して修復するCPD光回復酵素が主要な修復系となっていることが示されてきたが、葉緑体やミトコンドリアでの修復機構は明らかとなっていない。
    我々は、イネでは核、葉緑体、ミトコンドリアDNA上に誘発されたCPDが青色光の照射時間に依存して減少することを示した。本研究では、この青色光依存的なCPDの減少がCPD光回復酵素によるのか否かに関して、CPD光回復活性が異なるイネ、CPD光回復酵素組換えイネを材料に解析を行った。その結果、(1)酵素活性の高いイネは、低いイネより各オルガネラでのCPDの減少が速いこと、(2)CPD光回復酵素を過剰に発現した組換えイネでは、親株と比較してCPD減少の速度が著しく速いことが分かった。さらに、単離オルガネラ画分を用いたウェスタンブロッティング解析や、免疫電顕による解析では、核、葉緑体、ミトコンドリアでCPD光回復酵素が検出された。以上の結果から、イネでは1コピーで核にコードされているCPD光回復酵素が、核、葉緑体、ミトコンドリアに移行してCPD修復の機能を担っていることが明らかとなった。
  • 寺西 美佳, 高橋 祐子, 宗村 郁子, 日出間 純
    p. 0924
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    紫外線B(UVB)は、生体内のDNAに吸収され、DNA上にシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)や(6-4)光産物などのDNA損傷を生じさせる。生物はこれらのDNA損傷を、光を利用する光回復や、光を利用しない暗修復によって修復している。(6-4)光産物は、CPDに比べ二本鎖DNAを大きく歪ませるため、ヒト細胞において暗修復により優先的に修復されることが知られている。植物においてCPDと(6-4)光産物は、それぞれの損傷に特異的なCPD光回復酵素と(6-4)光回復酵素によって主に修復されている。CPD光回復酵素は、植物個体のUVB抵抗性に大きく寄与する因子である。一方、イネにおける(6-4)光回復酵素のUVB抵抗性への寄与程度は明らかでない。そこで、UVB抵抗性の異なるイネ品種を用い、(6-4)光回復酵素活性を測定したところ、イネ個体のUVB抵抗性と酵素活性には相関が見られなかった。次に、レトロトランスポゾンTos17の挿入により(6-4)光回復酵素遺伝子が破壊された変異体を用い、UVB抵抗性試験を行ったところ、変異体のUVB抵抗性は野生型と同等であった。シロイヌナズナにおいては、(6-4)光回復酵素を欠損した変異体のUVB抵抗性が野生型よりも低下することが報告されている。それに対しイネにおいては、本研究結果より、(6-4)光回復酵素がUVB抵抗性に寄与する程度は低いと考えられた。
  • 渡辺 弘恵, 菅野 晶子, 植田 勇人, 小島 俊男, 及川 胤昭
    p. 0925
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    過去3回にわたり、我々は本学会で、CaH2などのイオン結合性水素化金属が、植物の成長促進、延命(現状維持)開花などを制御していることを発表した。たとえば、イオン結合性水素化金属で作製された電離水素水で処理した切り花は、その後も成長し丈も伸び、更には新たな花をつけるなどの現象がみられた。イオン結合性水素化金属が、カルシウムチャネルなどのイオンチャネルをコントロールしている可能性が示唆され、今回、DNAアレー法を用いて遺伝子発現解析を行った結果、イオン結合性水素化金属を入れた水の中で処理した植物では、peroxidase 40・CYP71B36・GRP16 が上昇、thioredoxin-dependent peroxidase 2・vitamin C permease family protein ・heavy-metal-associated domain-containing proteinなどのmRNAが低下していた。
    学会当日には、IPA解析を用いた解析結果を交えて報告する
  • 菅野 晶子, 渡辺 弘恵, 及川 胤昭
    p. 0926
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    イオン結合性水素化金属を入れた水が植物に及ぼすさまざまな影響について、過去3か年に渡り発表してきた。この水を吸わせた切り花は、不思議な現象を引き起こしていく。切り花が水の中で成長し丈も伸び、更には新たな花をつける。切ったそのままの状態を維持する。葉だけ、時には花だけをつけて行く。突然、枯死する事もある。
    金属水素化物の中でも、CaH2などのイオン結合性水素化金属は、水素がマイナスイオン状で結合されている事から、このマイナス状の水素イオンがさまざまな現象を引き起こしていると推察される。
    今大会報告、「イオン結合性水素化金属が及ぼす植物への影響その 1 (遺伝子発現解析)」での解析結果を踏まえ、成長促進、延命、開花などをコントロールする現象について報告する。
  • 青木 秀之, 矢頭 治
    p. 0927
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    白葉枯病の圃場抵抗性が減少した「日本晴」突然変異系統XC20からレトロトランスポゾン Tos17 が挿入された xc20 遺伝子を同定した。XC20系統に野性型 xc20 を再導入した組換え体は白葉枯病の圃場抵抗性が回復した。さらに xc20 の翻訳領域またはプロモーター領域に Tos17 が挿入されて機能が失われた5系統の突然変異個体に白葉枯病菌の接種検定を行った結果、全系統で原品種の「日本晴」に比べて白葉枯病菌の病斑は進展した。従って xc20 が白葉枯病の圃場抵抗性と確認された。
    xc20 から翻訳されるアミノ酸配列はオーキシンで誘導されるSAURと類似している。これまで植物に病原菌を接種するとオーキシンが発生して抗菌性タンパク質の誘導を阻害することや、オーキシンの集積によってSAURが早期に誘導されてその集積を抑制することが報告されている。従って xc20 も白葉枯病菌の感染に伴うオーキシンの発生によって発現が誘導され、オーキシンの集積を抑制させることで病害抵抗性の向上に関与していることが推測される。
    XC20系統は「日本晴」に比べて葉色がやや黄色を呈したが、 xc20 領域に Tos17 が挿入された他の変異系統の葉色は「日本晴」と変わらなかったため、XC20系統の葉色変異は白葉枯病の圃場抵抗性の低下との関連性は無いと考えられる。
  • 宮本 皓司, 小宮山 紘平, 岡田 敦, 中条 哲也, 岡田 憲典, 古賀 仁一郎, 渋谷 直人, 野尻 秀昭, 山根 久和
    p. 0928
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    イネの主要なジテルペン型ファイトアレキシンであるモミラクトン類とファイトカサン類の生合成酵素遺伝子は、4番染色体と2番染色体においてそれぞれ遺伝子クラスターを形成している。我々はこれまでにキチンエリシター応答性bZIP型転写因子OsTGAP1がMEP経路遺伝子・モミラクトン生合成酵素遺伝子・ファイトカサン生合成酵素遺伝子の発現制御に関与することを報告した。本発表では、他のOsTGAP1の標的遺伝子の同定を目指してOsTGAP1過剰発現株培養細胞を用いたマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析の結果、エリシター処理0時間後においては1352遺伝子が、6時間後においては1539遺伝子が、24時間後においては1267遺伝子が野生型株と比較してOsTGAP1過剰発現株で発現量が2倍以上に上昇していた。これらの過剰発現株で発現が誘導されていた2268遺伝子について、階層的クラスタリング解析により発現パターンの分類を行った。ジテルペン型ファイトアレキシン生合成酵素遺伝子が含まれるcladeに注目したところ、このcladeに含まれるPR10遺伝子やchitinase遺伝子などがそれぞれ遺伝子クラスターを形成していることがわかった。現在、これらの遺伝子についてより詳細な発現解析を行っている。
  • 増田 優花, 中条 哲也, 岡田 憲典, 加星 光子, 高橋 章, 西澤 洋子, 南 栄一, 野尻 秀昭, 山根 久和
    p. 0929
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物に病原菌が感染すると、病原菌由来の成分等がエリシターとなって受容体と結合し、それが引き金となり様々な抵抗性反応が誘導される。我々は、イネからキチンエリシター応答性の転写因子として単離したOsWRKY53が、転写活性化因子として機能することや、OsWRKY53過剰発現体イネがイネいもち病菌に対し抵抗性を示すことをこれまでに報告した。これらのことから、OsWRKY53はイネの病害抵抗性を制御する重要な分子スイッチであると考えられる。他の植物では、MAPキナーゼカスケードによる、WRKY型転写因子のリン酸化と活性制御が報告されている。そこで本研究ではOsWRKY53を介したシグナル伝達経路の解明に向けOsWRKY53の翻訳後修飾を解析した。その結果、OsWRKY53の予想リン酸化サイトを全てアスパラギン酸に置換した疑似リン酸化OsWRKY53では野生型OsWRKY53と比べ転写活性化能が上昇し、逆に同じサイトを全てアラニンに置換すると転写活性化能が低下した。これらの結果から、OsWRKY53はリン酸化により活性化する可能性が示された。現在、OsWRKY53組換えタンパク質がOsMKK4-OsMPK6カスケードによってin vitroでリン酸化されるか検証している。また、疑似リン酸化OsWRKY53過剰発現体におけるマイクロアレイ解析も進めており、その結果についても発表する予定である。
  • 高橋 史憲, 溝口 剛, 吉田 理一郎, 市村 和也, 篠崎 一雄
    p. 0930
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    MAPKカスケードは真核生物に広く保存されており、環境ストレスや病原菌応答、ホルモンシグナル、細胞分裂応答において、重要な役割を果たす事が報告されている。シロイヌナズナMAPKファミリーにおいて、もっとも大きいサブグループを形成するグループDのMAPKは、上流因子であるMAPKKによるリン酸化部位が植物にしか存在しないTDYモチーフを持ち、C末端が長いという特徴的配列を持つ。本研究では、グループDの一つであるMPK8に着目して解析を行っている。傷害ストレスにおいて、MPK8はMAPKKの一つであるMKK3によってリン酸化を介して活性化されることを明らかとした。また、MPK8はカルシウム依存的にカルモジュリン(CaM)と結合し、活性化される。この活性化には、TDYのリン酸化は関与しない。更にCaMによるMPK8の活性化は、Ca2+/CaMの結合によってのみ制御されていることを明らかにした。傷害によるMPK8の活性化は、リン酸化とカルシウムシグナルの両方を必要とすること、またMPK8 pathwayはNADPH oxidaseの一つであるRbohDの転写を抑制し、ROSのシグナル伝達と蓄積を負に制御することを遺伝学的に明らかとした。CaMとMKK3の両方で活性化されるMPK8の制御機構について議論する。
  • 富永 真規子, 行田 敦子, 武内 薫, 駒野 輝弥, 寺川 輝彦, 岡本 龍史, 小柴 共一
    p. 0931
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    RSOsPR10は、塩や乾燥処理によりイネの根に特異的に発現が誘導されるタンパク質として同定された。RSOsPR10はJAとACC により発現が誘導され、その誘導がSAにより抑制されることが示されている。RSOsPR10の発現経路に関わる情報伝達因子に関する解析を行ったところ、JAを介さない経路の存在が示唆された。一方、JA、ETの下流で働くOsERF1がRSOsPR10の誘導に関与することが推定された。さらに、エリシター応答性bZIP型転写因子OsTGAP1の発現が、塩、JA処理に対するRSOsPR10の誘導に同調して一過的に増加する傾向が観察された。これらのことにより、RSOsPR10の発現には複数の因子が関与していると予想される。
    RSOsPR10 遺伝子上流1.9kbまでには根特異性、ストレス応答性に関する制御領域が見られず、データーベース解析で2-3kb付近にERF1、TGAP1を初めとする転写因子の結合配列を複数確認した。そこで、上流2、3、4kbをGUSに繋いだコンストラクトを導入した形質転換イネを作成し、発現制御に関わるシス配列の存在について検討を加えている。また、プロモーター::LUCコンストラクトを導入した培養細胞系での一過的発現を観察する実験系の確立も進めている。
  • 永田 真紀, 平山 潤太, 伊沢 剛, 安田 美智子, 篠崎 聰, 仲下 英雄
    p. 0932
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物は、様々なストレスに適応するために独自の自己防御機構を備え、外的なストレスによって全身に誘導される重要なシグナルとして植物ホルモンが働くことが知られている。アブシジン酸を介する環境ストレス応答シグナルが、サリチル酸を介する全身獲得抵抗性誘導シグナルを抑制することが明らかとなり、サリチル酸とアブシジン酸の両者にシグナルの相互抑制的な関係が存在することが示されてきた。このように、サリチル酸、アブシジン酸、ジャスモン酸の3つの植物ホルモンは相互に拮抗的関係にあり、外からの生物的・非生物的ストレスに対する応答がこれら三つ巴の相互関係により制御されていることが示唆されている。前大会では、サリチル酸、アブシジン酸、ジャスモン酸を処理した野生型の葉組織を材料に、植物ホルモンシグナルのバランスと病傷害抵抗性に関わる植物ホルモン応答性遺伝子発現の関係について報告した。今回は、サリチル酸、アブシジン酸、ジャスモン酸等の各種植物ホルモンの生合成変異体またはシグナル変異体を材料に、植物ホルモン処理や各種のストレス処理を組み合わせ、植物ホルモン濃度のバランスと植物ホルモン応答性の遺伝子発現の関係について解析した。その結果、様々なストレスに応答する植物ホルモン応答性遺伝子の発現には、1つの植物ホルモンの増減だけではなく、植物組織の内生植物ホルモンのバランス変化が重要であることが示唆された。
  • 草島 美幸, 安田 美智子, 平山 潤太, 永田 真紀, 浅見 忠男, 篠崎 聰, 仲下 英雄
    p. 0933
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物の全身獲得抵抗性(SAR)は病原体の感染部位における防御応答を契機として、サリチル酸(SA)の蓄積およびPR遺伝子の発現が誘導され、様々な病原菌に対する抵抗性が誘導される植物独自の自己防御機構である。SAR誘導剤であるBIT (benzisothiazole)はイネにおいて実用化されているが、ときおり効果が不安定であったことから、何らかの環境要因に左右されていることが推察された。また、シロイヌナズナにおいてアブシジン酸(ABA)を介する環境ストレス応答とSARの拮抗的な相互作用が報告されている。そのため本研究ではイネにおいて環境ストレスがSARの誘導にどのような影響を与えるか解析を行なった。18度に設定した気象器を用いて低温処理を行った植物では、BIT処理によるいもち病抵抗性が25度のコントロールと比較して抑制された。ABA生合成阻害剤であるアバミンを共処理した植物では、その抑制が回復した。SAが関与する病害抵抗性関連遺伝子だけでなく、ABA関連遺伝子の発現を解析した結果、低温処理区の植物では発現の誘導が認められ、BIT処理によって誘導は抑制された。これらの結果から、イネにおいても複数の植物ホルモンシグナルのクロストークを用いて、様々な状況に適応していることが示唆された。現在、実際の植物ホルモン濃度と遺伝子発現量の相関について解析を行っている。
  • 石田 快, 山篠 貴史, 水野 猛
    p. 0934
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    二成分制御系(TCS)は植物に普遍的な情報伝達様式の一つである。植物TCSの代表例はサイトカイニン(CK)応答であり、CK受容体はHisキナーゼであることが知られている。これらの知見は主にシロイヌナズナで得られたものであるが、最近になりTCS研究の対象としてマメ科植物が注目されている。なぜならば、シロイヌナズナには見られないマメ科植物の特徴である根粒形成にCK受容体Hisキナーゼ(LHK1)が重要な役割を担っていることが分かったからである。我々は植物におけるTCSの普遍性と多様性を理解する一環としてミヤコグサを対象としてTCS関連遺伝子のゲノムワイド解析を行い、TCS因子群がモデルマメ科植物にもよく保存されていることを明らかにしつつある。例えば、(i)ミヤコグサのCK受容体型Hisキナーゼはシロイヌナズナ同様三種類(LHK1/2/3)存在すること、(ii)A型LjRRaのみならずLHK1やB型LjRRb2と名づけた転写因子が根でCKによる特異的転写誘導をうけることを見いだしている。これらを背景に、ミヤコグサTCS因子群の根粒形成における役割を、形質転換による毛状根形成を利用した逆遺伝学的手法を用いて解析している。これらの結果を、現在知られてるい根粒形成遺伝子発現ネットワークの中に位置づけて考察する。
  • 高原 正裕, 馬郡 慎平, 横山 博, 矢野 幸司, 岡本 暁, 佐藤 修正, 田畑 哲之, 武田 直也, 寿崎 拓哉, 川口 正代司
    p. 0935
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    マメ科植物は根粒菌による共生窒素固定により窒素源の乏しい環境でも生育することが可能である。一方、窒素固定には多量の生体エネルギーが必要であり、過剰な根粒の着生は宿主植物の生育を阻害する。そのため根粒数は宿主植物により厳密に制御されているが、その分子機構に関しては不明な点が多い。この根粒数制御にシュートで働くレセプターキナーゼHAR1が必要であることから、長距離シグナル伝達を介した根粒数制御機構の存在が示唆されている。本研究ではマメ科モデル植物ミヤコグサの根粒過剰着生変異体too much love (tml)を用い、より詳細に根粒数制御の分子機構を理解することを目的とした。これまでの解析からTMLHAR1と遺伝学的に同一経路かつ根で機能することがわかっている。しかしながらtmlは大規模欠失を有する変異体であり、その責任遺伝子の単離が困難であった。近年Transcript-Based Gene Cloningにより幾つかの根粒形成関連遺伝子がクローニングされていることから、同様の方法で欠失領域中の候補遺伝子を検索した。候補遺伝子の一つを含むゲノム配列をtml変異体へ導入すると根粒数が減少する傾向が見られたことから、この遺伝子がtmlの根粒過剰着生に関わる責任遺伝子の有力な候補であることが示された。
  • 小薄 健一, 鈴木 章弘, 原 仁俊, 山下 健司, 小林 優子, 浅見 忠男, 九町 健一, 内海 俊樹, 東 四郎, 阿部 美紀子
    p. 0936
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    マメ科植物には根粒着生の全身的な制御機構(autoregulation of nodulation,AON)が備わっており、共生のバランスを維持している。AONは、根粒菌の感染を地上部へと伝える感染シグナル、地上部のシグナル受容体、地上部から根への根粒着生の制御シグナルが主な構成要素と考えられる。ミヤコグサでは、シグナル受容体としてHAR1、感染シグナルの有力な候補としてLjCLE-RS1LjCLE-RS2が同定されている。しかし、根粒着生制御シグナルは未同定であり、根での根粒着生の抑制機構については殆ど知見がない。ストレス応答ホルモンとして知られているアブシジン酸(ABA)はクローバ(Trifolium repens L.)およびミヤコグサ(Lotus japonicus)の根粒着生を抑制する。また、ABAは、ミヤコグサのβ-1,3-glucanase遺伝子(LjGlu1)の発現を誘導する。LjGlu1の発現を抑制すると、根粒着生が増加する傾向があり、LjGlu1は根粒形成の制御に関与している可能性がある。本研究では、ABA応答性のLjGlu1がAONに関与している可能性についてsplit-root systemを用いて検討した。また、LjCLE遺伝子を恒常的に発現する形質転換毛状根を作出し、LjGlu1の発現量を解析した結果を報告する。
  • 高山 仁美, 村上 英一, 九町 健一, 阿部 美紀子, 武藤 さやか, 永野 幸生, 永田 真紀, 佐藤 修正, 東 四郎, 内海 俊樹
    p. 0937
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    根粒菌とマメ科植物の共生成立には、根粒菌のリポ多糖(LPS)が重要な要素であることを示す報告は多い。しかし、植物による細菌のLPS認識機構は未解明である。動物では、リポ多糖結合性タンパク質(LBP)が、細菌由来のLPSと複合体を形成し、自然免疫を活性化する。ミヤコグサゲノム上でLBP遺伝子を探索し、LjLBP1, 2, 3, 4の4種を同定した。本研究では、根粒菌との共生における植物のLBPの機能解明を目指し、LjLBPsの発現を解析した。
    NH4Cl 0.5 mMを与えて栽培したミヤコグサを根粒非着生体、根粒菌を接種し栽培したものを根粒着生体とし、葉、茎、根、根粒ごとに解析した。各組織のLjLBPの発現量を根粒非着生体と根粒着生体で比較すると、どのLjLBPも根粒着生体での発現量が低く、特にLjLBP3/4の発現量は著しく低かった。また、ミヤコグサで病徴を示す植物病原菌2種または根粒菌を根に接種し、0h、4h、10h、24h後の発現を解析したところ、LjLBP3/4はいずれの菌接種でも4hで発現量上昇が見られた。LjLBP発現抑制変異体の根粒着生についても報告する。
  • Eltelib Hani, Fujikawa Yukichi, Esaka Muneharu
    p. 0938
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Monodehydroascorbate reductase (MDHAR) is a key enzyme of the ascorbate-glutathione cycle that maintains reduced pools of ascorbic acid (AsA) and serves as an important antioxidative enzyme. cDNA encoding MDHAR was isolated from acerola (Malpighia glabra), a plant that accumulates very large amount of AsA. MDHAR transcript and enzyme activity were significantly up-regulated in acerola leaves under cold and salt stress conditions, indicating that expression of MDHAR gene is transcriptionally regulated under these stresses. Acerola MDHAR cDNA was then introduced into tobacco plants using an Agrobacterium-mediated gene delivery system. Transgenic tobacco plants accumulated higher amount of AsA and showed higher MDHAR activity than the untransformed control plants. Lipid peroxidation and chlorophyll degradation were restrained in the transgenic plants under salt stress conditions compared to untransformed control plants. These results indicate that overexpressing of acerola MDHAR provided higher tolerance to salt stress.
  • 横山 国大, 森 達也, 田部 記章, 丸田 隆典, 佐藤 信雄, 高橋 広夫, 重岡 成, 吉村 和也
    p. 0939
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナSRタンパク質ファミリーの中で、動物の主要なスプライシング因子ASF/SF2のホモログであるatSR30は強光に対して迅速に発現応答する(Plant Cell Physiol. 48: 1036-49, 2007)。さらに、atSR30はスプライセオソーム基本構成因子や他のSRタンパク質などと相互作用する。これらの結果から、atSR30による強光に応答した選択的スプライシング制御機構の存在が示唆される。そこで本研究では、atSR30遺伝子破壊株(KO-sr30)を用いて、atSR30により選択的スプライシング効率が制御される遺伝子群の同定を試みた。
    タイリングアレイ解析の結果、強光ストレス(800 μmol/m2/s, 1 h)下においてKO-sr30株では野生株と比較して230ヶ所のコーディング領域が有意に変化していた(P<0.01)。それらの領域にはタンパク質ターンオーバー(21%)、転写因子(15%)、シグナル伝達(30%)に関連する遺伝子が多数存在した。半定量的RT-PCRによる検証の結果、強光ストレス下における選択的スプライシング効率もしくは転写レベルの変化が22個の遺伝子において認められた。シークエンス解析の結果、atSR30はカセットエキソン型および選択的3’,5’スプライス部位型選択的スプライシングの制御因子として機能していると考えられた。
  • 平出 優人, 後藤 武知, 井原 邦夫, 藤田 祐一
    p. 0940
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ラン藻のクロロフィル生合成系には、進化的起源の異なる2つのプロトクロロフィリド還元酵素、光依存型酵素(LPOR)と暗所作動型酵素(DPOR)が併存する。DPORはニトロゲナーゼと類似した酵素であり、酸素によって速やかに不活性化される。DPORが酸素発生型光合成生物においてどのように機能しているのかを検討するため、ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803のLPOR欠損株を単離した。LPOR欠損株は強光下では生育不能だが、一定の光強度以下の弱光下では生育することから、弱光下では酸素に対する何らかの防御系が機能すると推察される。このDPOR防御系同定のため、活性酸素種消去に関わる遺伝子群をLPOR欠損株のゲノム中立部位(slr2030-slr2031)に導入し、光感受性形質の相補を検討した。ところが、何も発現させない対照形質転換体も光感受性を相補した。そこで、LPOR欠損株とその元となった野生株についてゲノム解析を行った結果、全ゲノム配列が決定されたKazusa株では154-bpの欠失が生じたために中立部位と見なされているslr2031が、LPOR欠損株とその野生株ではその欠失のない完全長として保持されていた。このことから、完全長slr2031部位へのベクター導入によって引き起こされるslr2031の欠失がLPOR欠損株の光感受性を緩和する可能性が示唆された。
  • 森田 重人, 加藤 真人, 林 清音, 生澤 彰大, 鈴木 健吾, 山本 裕範, 増村 威宏, 佐藤 茂, 寺地 徹
    p. 0941
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    過酸化水素消去酵素であるアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)は、葉緑体における活性酸素消去に重要な役割を果たしている。一方で葉緑体型APXは極めて不安定であり、強いストレス条件下では失活することから、光酸化障害の初期段階での標的分子であると考えられている。本研究では、葉緑体型APXのストレス耐性における役割を調べるために、タバコにおいてストロマ型APX(sAPX)を過剰発現させ、その効果・影響を検討した。
    タバコ由来のsAPX cDNAをpsbAプロモーターの制御下で発現する葉緑体形質転換タバコを作出したところ、野生型に比べ27-32倍の全APX活性の上昇が見られた。また形質転換体(APX7系統、APX11-1系統)は、葉に淡緑色のまだら模様が現れる表現型を示した。それらの系統は野生型と比較して、非ストレス条件においてクロロフィル含量、F v/F mが低下していた。また低温ストレス処理(15℃)を4週間行った結果,APX7系統の葉に顕著な退色と,Fv/FmとΦ?の低下、全APX活性とsAPXタンパク質レベルの低下が見られた。以上の結果から、sAPX形質転換体は恒常的に光阻害を受けていること、また低温処理により顕著な光酸化障害を受けていることが示唆された。
  • 末岡 啓吾, 仲本 準
    p. 0942
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ペルオキシレドキシンは過酸化物を還元するチオールペルオキシダーゼである。その中でも2-CysペルオキシレドキシンはH2O2の細胞内濃度の調節で重要な役割を果たしている分子として注目されている。我々はこれまでに、Thermosynechococcus elongates BP-1においてNADPHチオレドキシンレダクターゼ(NTR)C がNADPHの還元力を2-CysペルオキシレドキシンであるBAS1に供給し、この還元力を使ってBAS1は過酸化物を還元することを示してきた。今回我々はNTRCが分子シャペロン活性を持つことを見出した。BAS1はクエン酸合成酵素(CS)の熱変性凝集を抑制しなかったが、NTRCはCSの熱変性凝集を抑制した。このことからNTRCには分子シャペロン様の活性があることが示された。BAS1とNTRCが共に存在すると、BAS1とNTRCは凝集塊を形成し、CSの熱変性凝集を抑制しなかった。NADPH存在下ではBAS1とNTRCによる凝集塊形成は見られず、NTRC単独の時と同様にCSの凝集を抑制した。さらに一度形成されたNTRCとBAS1による凝集塊はNADPHの添加によって溶解し、CSの熱変性凝集を抑制した。以上の結果よりNTRCの分子シャペロン様活性はBAS1とNADPHによって調節を受けていると考えている。本年会ではそのメカニズムについて議論したい。
  • Eltayeb Habora Mohamed Elsadig, Eltayeb Amin Elsadig, Tsujimoto Hisash ...
    p. 0943
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    砂丘草本植物ハマニンニク(Leymus mollis)(Triticeae; Poaceae)はコムギ(Triticum aestivum)の野生類縁体で主に海浜や内陸の乾燥地に生息する。ハマニンニクは塩や乾燥ストレスに対して、極めて強く、病気に抵抗性で、過酷な環境に適応している。ハマニンニクの乾燥、塩ストレスに対する生理的耐性を支配する遺伝要因は殆ど未解明である。私たちはSSH法でハマニンニクの乾燥ストレス耐性に寄与する候補遺伝子を同定し、その中から両ストレスに応答して高発現する未知遺伝子を同定した。この遺伝子はジャスモン酸とジベレリンに応答して上方制御された。シロイヌナズナの対応する類似遺伝子を用いて、この遺伝子が葉緑体に局在することを見出した。この遺伝子は過剰発現させることで乾燥耐性植物作出の候補遺伝子になる可能性があり、さらに、ハマニンニクがコムギと交配可能なことから、この遺伝子は乾燥耐性コムギ選抜の良好なDNAマーカーになる可能性がある。
  • 栗山 昭, 山口 直人, 松本 拓磨, 山口 真輝
    p. 0944
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、乾燥法による植物培養細胞の超低温保存の研究を行っている。ある種のコケ培養細胞(コスギゴケ)では、前培養することなく乾燥法による超低温保存が可能であった。この培養細胞は、十分乾燥した状態だと冷蔵庫内でも室温でも保存可能であった。本研究では、高等植物であるイネの培養細胞を乾燥により超低温保存したので報告する。
    継代培養しているイネ細胞は乾燥に耐えられないのに対し、0.4 Mショ糖を含む培地で5日間前培養することにより乾燥耐性が高まることが分かった。例えば、相対湿度70%,27℃の条件下で18時間乾燥した細胞は、乾燥後もさらに液体窒素保存後もほぼ100%と高い生存率を示した。コスギゴケと同様に乾燥した細胞を液体窒素温度以外の温度で保存した。コスギゴケでは26℃で8週間、4℃で20週間の保存が可能であったのに対し、イネでは4℃では、ある程度の保存が可能であったが、26℃では1日後にはすべての細胞が死滅した。乾燥したコスギゴケとイネの細胞の間には何らかの物理化学的な状態に何らかの違いがあるのかもしれない。さらに、乾燥したイネ培養細胞の高温耐性を調べたところ、コスギゴケでは80℃で1時間の処理後にも60%の生存率があったのに対しイネでは50℃で1時間の処理ですべての細胞が死滅した。
  • 吉田 拓也, 藤田 泰成, 圓山 恭之進, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
    p. 0945
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物が乾燥や高塩濃度などの水ストレスにさらされると細胞内に植物ホルモンアブシシン酸(ABA)が蓄積し、ストレス耐性に機能する様々な遺伝子の発現が誘導される。これらABA誘導性遺伝子のプロモーター領域にはABA応答配列が保存されており、ABA応答配列に結合するタンパク質としてAREB/ABF転写因子が単離された。シロイヌナズナゲノム中には9個のAREB/ABF転写因子が存在するが、そのうちAREB1,AREB2,ABF3は乾燥、塩、またはABA処理により栄養生長期の植物体で発現が強く誘導される。これまで、areb1 areb2 abf3三重変異体を用いた解析から、AREB1,AREB2,ABF3が水ストレス応答時のABAを介した遺伝子発現制御において中心的な役割を果たしている転写因子であることを示してきた。AREB1,AREB2,ABF3は系統樹上で同一の群に属するが、この群に含まれるもう一つの転写因子であるABF1は水ストレスによる発現誘導が顕著でなく、その機能はよくわかっていない。本研究では、ABF1の機能を明らかにするために、areb1 areb2 abf3 abf1四重変異体とareb1 areb2 abf3三重変異体を用いて表現型および遺伝子発現制御における比較解析を行った。これらの結果をもとにして、ABF1の水ストレス応答における役割について考察する。
  • 加藤 浩, 山口 裕司, 竹中 裕行
    p. 0946
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    陸生ラン藻の類縁株である Anabaena sp. PCC7120は耐乾燥性研究に有用なモデル生物であり、アレイ解析より選別した乾燥応答遺伝子を遺伝子破壊で解析し、窒素固定条件(窒素飢餓条件)で耐乾燥性能に関与することを見出した。それそれの遺伝子はストレス応答に関与することから、乾燥等の極限環境下で起こる細胞内外の現象に対応するために誘導されている可能性が示唆された。更に変化の起こらない光合成系の遺伝子(psb28)を解析したところ耐乾燥性能が失われたことから、光合成の一部が影響を受けることでも耐乾燥性能が低下することが明らかとなった。なおこの遺伝子の機能はよく分かっていない。
    そこで、耐乾燥性に関わる光合成と窒素固定能を利用した、環境改善などに応用可能な有用ラン藻、陸生ラン藻 Nostoc commune単離を進め、無菌化した。これは上記のラン藻の類縁株であり、細胞外多糖を多く含むことから、植物栽培に必要な根の成長と窒素源の供給、さらに無菌化の利点を活かした食品等へ応用が期待される。まず、土壌としての可能性を模索するため、ラン藻マット上に植物の種子を播種し、生育阻害の有無を確認した。植物の栽培は可能であるが、成長を更に進めるためにはより多くのラン藻が必要なため大量培養系が必要であり。また植物の種類を検討する必要があることも明らかとなった。
  • Le Dung, Nishiyama Rie, Watanabe Yasuko, Tran Lam-Son Phan
    p. 0947
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    The population of the earth is increasing rapidly, setting food security one of the major issues in the world. Drought, flooding, unpredictable epidemics, soil erosion and pollutants further threaten sustainable agriculture. We have shown in Arabidopsis that cytokinins (CKs) regulate plant adaptations to various abiotic stresses. In this study, we performed a genome-wide identification of CK metabolic genes encoding isopentenyl transferases and CK oxidases in soybean, and analyzed their expression profiles under normal and dehydration conditions. We found 14 and 17 genes encoding GmIPTs and GmCKXs, respectively, with high homology to its Arabidopsis counterparts. The promoter regions of these genes were found to contain several abiotic-stress inducible cis-elements. Next, we performed expression analysis of these two gene families and found that six GmIPT and six GmCKX genes were induced upon dehydration; three GmIPT and five GmCKX genes were down-regulated by dehydration. Taken together, our data indicated a substantial component of the CK metabolism is involved in the adaptation to dehydration stress in soybean.
  • JAN ASAD, Nakashima Kazuo, Todaka Daisuke, Shinozaki Kazuo, Yamaguchi- ...
    p. 0948
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    We describe an Oryza sativa stress-related CCCH-type Zinc Finger protein gene (OsSCZF1) involved in stress responses in rice. The expression of OsSCZF1 was induced by drought and high salinity. OsSCZF1 gene expression was also induced by abscisic acid, methyl jasmonate and salicylic acid. GFP localization analyses showed that OsSCZF1 is cytoplasmic and also localized in cytoplasmic foci. Histochemical GUS activity in PSCZF1-GUS transgenic rice plants was observed in young leaf, panicle and anthers. Transgenic rice plants over-expressing OsSCZF1 constitutively exhibited poor seed germination, a lesion mimic phenotype upon maturity and low reproductive yields. These transgenic rice plants showed improved tolerance to high-salt stress and delay in leaf senescence and also exhibited increased tolerance to rice blast and RSV virus diseases. A number of biotic and abiotic stress related genes were regulated in OsSCZF1 over-expressing rice plants. These results demonstrate that OsSCZF1 encodes a functional protein involved in modulating stress tolerance in rice.
  • 徐 劭旭, 刑部 祐里子, 田中 秀典, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
    p. 0949
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    カリウムイオン(K+)は、植物において、原形質構造や膜電位の維持、pHおよび浸透圧の調節に重要な役割を担っている。さらに、乾燥ストレス時には、孔辺細胞においてアブシシン酸(ABA)シグナル伝達により制御されたK+排出が膨圧調節を行い、気孔が閉鎖する。我々はシロイヌナズナのマイクロアレイ解析により、乾燥誘導性が示されたK+/H+交交換輸送体様遺伝子AtKEA5に着目し解析を行った。一価陽イオン/H+交換輸送体CPA(Cation Proton Antiporter)ファミリーに属するAtKEAファミリーは、シロイヌナズナでは6個の遺伝子(AtKEA1-AtKEA6)が存在した。AtKEAファミリ―遺伝子のストレス条件における発現様式をRT-PCRおよび定量的RT-PCRにより解析を行った結果、浸透圧ストレス時にAtKEA2およびAtKEA5の遺伝子発現が誘導されることが明らかになった。さらに、乾燥時の地上部と根における詳細な発現様式の解析を行ったところ、AtKEA5は根においてより強い誘導性を示した。またGFP-KEA5融合タンパク質はシロイヌナズナの細胞膜および細胞内膜系に局在した。現在、AtKEA5と共に相同性遺伝子AtKEA2、AtKEA4、AtKEA6の局在性および組織特異的発現の解析、およびこれら遺伝子の欠損変異体の解析を行っている。
  • 森本 恭子, 溝井 順哉, Qin Feng, 佐久間 洋, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
    p. 0950
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナの転写因子DREB2Aは、乾燥および高温ストレス応答の初期段階において、認識配列であるDREを介してそれぞれのストレスに特異的な下流遺伝子群の転写活性化にとって重要な役割を担っている。DREB2Aの活性は、転写段階に加え、翻訳後段階でも制御されており、通常条件ではDREB2A遺伝子を過剰発現させただけでは、標的遺伝子の発現は活性化されない。DREB2Aタンパク質には負の活性調節領域が存在し、この領域を欠失させたDREB2Aは恒常的な活性型になる。また、DREB2Aはユビキチン‐プロテアソームシステムにより通常条件下では不安定化されているが、恒常的な活性型DREB2Aは安定性が向上する。しかし、ストレス条件下で標的遺伝子の転写が活性化されるためには、DREB2Aが安定化するだけで十分なのか、別に活性化を受ける必要があるのか明らかになっていない。そこで、恒常的プロモーター下でDREB2Aを発現させた形質転換シロイヌナズナに対し、通常条件下でプロテアソーム阻害剤による処理を行ったところ、DREB2Aタンパク質の蓄積が確認されたが、標的遺伝子の転写誘導は見られなかった。よってストレス条件下でのDREB2Aによる転写活性化には、DREB2Aタンパク質の安定化に加え、それぞれのストレスに特異的な活性化が起きることが必要である可能性が考えられた。
  • 小平 憲祐, 秦 峰, Tran Lam-Son Phan, 圓山 恭之進, 藤田 泰成, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
    p. 0951
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物は環境ストレスを認識し、成長制御などの多様な生理反応を行うことにより、環境に適応していると考えられる。植物において、ZPT2タイプのCys2/His2型ジンクフィンガー遺伝子群は、高度に保存された転写抑制ドメイン(EAR)を持ち、転写抑制因子として機能することが報告されている。我々は、シロイヌナズナのZPT2類似遺伝子であり、浸透圧ストレスやABA処理により発現が誘導されるAZF1AZF2に注目し、環境ストレス下におけるこれらの遺伝子の機能解析を行った。GFP標識による解析により、AZF1とAZF2は、それぞれ恒常的に根の核に局在し、後者は、ストレス処理により葉の細胞核において蓄積することが観察された。ストレス誘導性プロモーターやGVG誘導系を用いてAZF1AZF2を発現誘導した植物は、成長阻害およびストレスへの高感受性を示した。マイクロアレイ解析を行うことにより、これらの遺伝子をそれぞれ過剰発現した植物では、浸透圧ストレスやABA処理により発現が抑制される多数の遺伝子の発現が減少していることが示された。特に、オーキシン誘導性遺伝子であるSAUR遺伝子群の発現は、両方の過剰発現体に共通して減少していた。以上の結果より、AZF1とAZF2は機能的に相補しており、多数のSAUR遺伝子の発現を抑制することにより、環境ストレス下における植物の成長制御に寄与していることが示唆された。
  • 市川 雄太, 三部 衛, 喜多山 秀一, 森山 淳, 小川 覚, 内山 純爾, 太田 尚孝
    p. 0952
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ラン色細菌Synechocysis sp. PCC 6803におけるSll1558はmannose-1-phosphate guanylyltransferaseであり、mannose-1-phosphateをGDP-mannoseへと触媒している。sll1558は、酸性条件下のDNAマイクロアレイ及びreal-time RT-PCRにより発現の上昇が確認された。本研究ではSll1558の酸性ストレスでの生理機能の解明を目的とした。
    sll1558及びパラログであるsll1496の欠損変異株をそれぞれ構築し、酸性ストレスでの影響を検討した。sll1558欠損変異株は野生株に比べて酸性ストレスに高い感受性を示した。細胞壁の構成成分であるcapsular polysaccharideとlipopolysaccharideをそれぞれ比較したところ、sll1558欠損変異株は野生株と異なる結果を示した。また、Arabidopsis thalianaにおいて、sll1558と相同性のあるcyt1の欠損変異株は、野生株に比べて酸性条件下で主根の伸長が大きく阻害された。このことからSll1558は細胞壁の生合成に大きく寄与し、酸性条件下では発現が上昇し細胞壁の構造を変化させることで酸性ストレスに適応していることが示唆される。
  • 大堀 鉄平, 森脇 崇, 溝井 順哉, 城所 聡, 関田 佐知子, 圓山 恭之進, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
    p. 0953
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナのDREB2AはAP2/ERFドメインを有する転写因子で、シス因子のDRE/CRTに結合し、乾燥・高温などの環境ストレス応答性遺伝子の発現を制御している。DREB2AにはSer、Thrに富み、活性を負に調節するドメイン(NRD)が存在し、NRDを欠失したDREB2Aをシロイヌナズナで過剰発現させると環境ストレス耐性能が向上することが知られている。我々は食料や飼料として重要な作物であるダイズの環境ストレス耐性能を高めることを目的として、ダイズのDREB2A相同遺伝子の機能解析を行っている。
    これまでに、系統解析により同定された18のDREB2A相同遺伝子の1つであるGmDREB2A;2は、DREB2Aと同様に、乾燥・高温ストレスによって強く誘導され、DRE配列を介した転写活性化能を有することを示した。また、GmDREB2A;2を過剰発現したシロイヌナズナは熱ストレス耐性能が向上していることを示唆した。今回、我々はNRDの相同配列がGmDREB2A;2にも存在することを確認し、ダイズの茎細胞を用いた一過的発現系での解析からNRDの相同配列を欠失したGmDREB2A;2は全長のGmDREB2A;2よりも高い転写活性化能を有することを示した。現在、NRDの相同配列を欠失したGmDREB2A;2を過剰発現するシロイヌナズナを作製し、表現型について解析を進めている。
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