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寺村 浩, 榎本 裕介, 佐々木 忠将, 島田 浩章
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0754
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
イネの
OsMac1遺伝子の転写産物にはおよそ500塩基からなる5'非翻訳領域(5'UTR)が存在する。この5'UTRの3'領域には3個のupstream ORF (uORF)が存在していた。また、この5'領域に CU rich領域が存在した。この5'UTRはExon1とExon2のスプライシング部位で生じた選択的スプライシングに由来する3種の異なる構造を有するもの(UTRa,UTRb,UTRc)が存在した。UTRaとUTRbはUTRcよりもそれぞれ54塩基、38塩基短かった。この5'UTRは下流のORF の翻訳の制御に関与していることが予想されたため、この下流にGUS遺伝子を結合し、この領域による発現制御の可能性を調べた。UTRcの下流にGUS遺伝子を結合した場合、5'UTRを付加しないコントロールよりも非常に高い翻訳効率を示した。一方、UTRaやUTRbの下流に結合した場合には、コントロールと同程度の低い翻訳効率を示した。部位得的変異によりuORFの翻訳開始コドンを欠損させた場合でも翻訳効率に大きな変化は認められなかった。一方5’領域のCU rich 領域を欠損させた場合、欠損の度合いに応じて、翻訳効率が低下した。このことから
OsMac1の5'UTRによる下流のORFの翻訳の促進は、5'領域のCU rich 領域とUTRcに含まれる38塩基が大きく関わっていることが示唆された。
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山下 由衣, 尾上 典之, 尾之内 均, 内藤 哲
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0755
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
シスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)はメチオニン生合成経路の鍵段階を触媒する。CGSをコードするシロイヌナズナの
CGS1遺伝子の発現は,mRNA分解の段階でメチオニンの代謝産物である
S-アデノシルメチオニン(AdoMet)に応答したフィードバック制御を受ける。この制御にはCGSのN末近傍の14アミノ酸であるMTO1配列が,シス配列として重要である。
CGS1 mRNAの分解に先だって,AdoMetに応答して,MTO1領域を翻訳した直後にリボソームが一時停止する。このことは,翻訳アレストしたリボソーム出口トンネルの中に,MTO1ペプチドが存在することを意味する。
リボソーム出口トンネルにおけるMTO1ペプチドの作用機構は未知である。そこで,我々は,MTO1配列を含む,CGS1新生ペプチドが,AdoMetに応答して構造を変えると考えた。この可能性を小麦胚芽試験管内翻訳系を用いた,ペジレーションアッセイによって検証した。その結果, AdoMetに依存して,CGS1新生ペチドが縮んだ構造をとることが示唆された。新生ペプチドの縮んだ構造と翻訳アレストの関係について議論する。
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小山 博彰, 竹本 まり子, 遠洞 弥生, 渡部 峻, 蝦名 績, 高橋 広夫, 内藤 哲, 尾之内 均
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0756
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
真核生物のmRNAの5'非翻訳領域には、upstream ORF (uORF) と呼ばれる小さなORFが存在する場合がある。uORFの中には、コードするペプチドのアミノ酸配列が植物種間で高度に保存され、下流の主要なORFの翻訳制御に関与するものがあることがこれまでに報告されている。私たちはuORFにコードされるペプチドが関与する翻訳制御を新たに同定する目的で、シロイヌナズナにおいてペプチド配列依存的に主要なORFの翻訳に影響を与えるuORFを探索した。その結果、ペプチド配列依存的に翻訳制御に関与すると考えられるuORFを新たに5つ同定した。
そのうちのいくつかの翻訳制御に、複数のuORFが関与することを見いだした。それらの系では、ペプチド依存的に翻訳を抑制するuORFのさらに上流に別のuORFが存在し、そのuORFは下流のuORFの翻訳効率の調節に関与することが示唆された。
また、ペプチド配列依存的な翻訳制御が見られなかったuORFの中で、シロイヌナズナではuORFのアミノ酸配列の保存性が比較的低く、他の植物ではより高度にアミノ酸配列が保存されているuORFをいくつか見いだした。これらについては他の植物のuORFを用いて、ペプチド配列依存的な翻訳制御が見られるかを検討している。
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荒木 希和子, 工藤 洋
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0757
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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クローナル植物は、栄養器官からのクローン成長により新たな植物体(ラメット)を生産することから、遺伝的個体であるジェネットは、複数の独立したラメットから構成され、集団内に広く分布している。このような植物では、同一遺伝子を保有するラメットが野外不均一な環境に遭遇と考えられるため、ジェネティックな変異に加えてエピジェネテッィクな変異が、生育地環境への適応に重要な役割を果たしている可能性が高い。
そこで本研究では、DNAシトシン塩基へのメチル基修飾パターンの違いを認識する二種類の制限酵素を用いたAFLP法(methylation-sensitive amplified polymorphism)によりDNAメチル化解析を行った。地下茎によりクローン成長を行うコンロンソウ(
Cardamine leucantha)を対象に、ラメット内,ラメット間,ジェネット間でのメチル化を定量し、空間的な変異パターンを解析した。
その結果、メチル化のパターンは近縁・近隣であってもジェネットごとに異なっていた。また、同一ジェネット内でもメチル化変異が見られたが、これらは近い場所に位置するほど類似したパターンを示すことがわかった。一方で、植生被度に基づいた環境との相関は遺伝子座ごとに異なっており、これらのメチル化変異はゲノムの様々な領域に及ぶことが示唆される。
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Fujimoto Ryo, Dennis Elizabeth
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0758
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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fwa is a late flowering epi-mutant in Arabidopsis thaliana. FWA is stably silenced in A. thaliana but in related Arabidopsis species, FWA expression and DNA methylation levels vary in vegetative tissue. In this study, we show that variation in FWA expression in field isolates having identical DNA sequences is associated with changes in DNA methylation and may change over time. Vegetative FWA expression is correlated with decreased methylation at non-CG sites in the region upstream of the transcription start site in species related to A. thaliana and we conclude that methylation of this region is critical for FWA silencing in these species. In A. thaliana, FWA expression is affected by methylation in regions both upstream and downstream of the transcription start site. Ectopic thaliana FWA expression causes a late flowering phenotype, but over-expression of lyrata FWA does not. In A. thaliana, stable silencing of FWA to prevent late flowering may have evolved through the selection of large tandem repeats and spread of the critical methylated region to include these repeats.
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安喜 史織, 中井 秀人, 岡 穆宏, 青山 卓史, 柘植 知彦
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0759
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
COP9シグナロソーム(CSN)の生体における機能を明らかにするため、CSNと直接結合する因子を探索し、SAP130を同定した。SAP130は、スプライソソームを形成するU2snRNP構成因子であり、遺伝子転写調節複合体であるSTAGA/TFTCにおいても同定されているが、SAP130そのものの機能や複合体間での動態は明らかでない。
シロイヌナズナSAP130は、第3染色体上の2つの遺伝子(
AtSAP130a, AtSAP130b)にコードされている。これらの遺伝子発現を器官別に解析した結果、両遺伝子は類似した発現様式を示した。またプロモーター発現解析において、
AtSAP130a, AtSAP130bは共に特定の時期の葯に特異的な発現を示した。これらのことから
AtSAP130a, AtSAP130bの機能重複が示唆された。そこでRNAi法を用いて
AtSAP130a, AtSAP130b両遺伝子を標的とした発現抑制体(
AtSAP130 RNAi)を作製し、形態学的な解析を行った。その結果、
AtSAP130 RNAiは花粉形成におけるmicrospore stageからbicellular stageへの移行期に異常を示すことを明らかにした。
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中井 秀人, 安喜 史織, Heyl Alexander, 青山 卓史, 柘植 知彦
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0760
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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COP9シグナロソーム (CSN)は核内で情報伝達を制御するタンパク質複合体である。CSN1サブユニットのN末端領域 (CSN1N)は、動物で転写抑制能を示し、植物では生存に不可欠である。CSN1Nが担う分子機構を解明するために、シロイヌナズナを用いてCSN1Nと相互作用する因子群を解析した結果、植物固有のTrihelix型転写因子と推定されるタンパク質を得た。このタンパク質は、アミノ末端側に3つのヘリックス、カルボキシル末端側にα-ヘリックスを形成することが予測され、配列の相同性からASIL1 サブファミリーに属していることが判明した。このサブファミリーのタンパク質の機能は未知なものが多く、さらにCSNとの相関は不明である。
そこで、シロイヌナズナより単離したこのタンパク質と、相同性の高い2つのタンパク質とを用いて詳細な機能解析を行なった。まず
in vitro でCSN1Nとpull-downを行なったところ、これらのタンパク質はCSN1Nと特異的に結合した。さらに、T-DNA挿入変異体、過剰発現体、RNAi法による変異体を作成し、発現が増加、減少した植物を解析した結果、胚軸伸長に異常があるものが得られた。これら変異体の表現型と、それぞれの遺伝子のプロモーター活性、発現プロファイルを合わせ、これら転写因子群の機能とCSN1の相互作用が担う役割について議論する。
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田崎 麻衣子, 浅妻 悟, 松岡 健
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0761
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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飢餓状態において誘導される分解系として、オートファジーが知られる。我々は、タバコ培養細胞BY-2株に、チトクロームb5と蛍光波長変換タンパク質Kikumeの融合体、Cyt b5-Kikumeを発現させ、Cyt b5-Kikumeの蛍光分布の変化及び切断、蛍光変換を指標とすることで、オートファジーによる分解及びオートファジー誘導前後におけるタンパク質合成の定量的解析を進めている。これまで、この系を用いて、細胞がリン酸飢餓状態初期においては新規のタンパク質合成を行なうこと、そしてリン酸飢餓状態の細胞では、飢餓前(オートファジー誘導前)から存在したタンパク質と共に新規に合成されたタンパク質もオートファジーにより分解されることを見出した。
今回はリン酸飢餓状態におけるオートファジーの誘導機構の解明を目指し、まずリン酸の代替肥料として期待されている亜リン酸のリン酸飢餓培地への添加実験を行なった。その結果、亜リン酸はリン酸飢餓状態において、オートファジーの誘導を遅らせる効果があることが明らかとなった。この結果についてはオートファゴソームのマーカータンパク質であるAtg8の発現パターン解析によっても示された。また、窒素飢餓状態や糖飢餓状態において亜リン酸の効果は確認できなかったことから、栄養応答性オートファジーの誘導機構は飢餓の種類によって異なることが示唆された。
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中川 海人, 川村 誠, 小川 光貴, 亀村 和生, 今村 綾
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0762
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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O-GlcNAc修飾は、UDP-GlcNAcをドナーとしてタンパク質のセリン/スレオニン残基に1分子の
N -acetylglucosamine (GlcNAc)が付加される動的な翻訳後修飾である。動物においては
O-GlcNAc修飾タンパク質が続々と同定され、
O-GlcNAc修飾の生理機能解析が進められている。植物では、シロイヌナズナやイネにおいて、動物の
O-GlcNAc転移酵素(
O-GlcNAc transferase, OGT)と高い相同性を有するタンパク質としてSPYNDLYとSECRET AGENTの2つが同定されているが、内在性
O-GlcNAc修飾タンパク質の存否は未だ不明である。そこで我々は、シロイヌナズナ内在性
O-GlcNAc修飾タンパク質の同定を試みた。発芽から初期成長過程に注目し、
O-GlcNAc修飾タンパク質の存否を検証したところ、抗
O-GlcNAc抗体陽性タンパク質が複数存在しており、成長過程に特有の変動パターンを示すことがわかった。また、ハプテン阻害試験によって、これらの抗
O-GlcNAc抗体陽性シグナルが消失したことから、内在性
O-GlcNAc修飾タンパク質が存在することが示唆された。以上の解析から、シロイヌナズナ初期成長過程に出現する抗
O-GlcNAc抗体陽性タンパク質を同定するとともに、
O-GlcNAc構造の糖鎖であるか解析中である。
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池田 宏介, Geisler Katrin, 青野 裕子, Osbourn Anne, 豊田 和弘, 白石 友紀, 一瀬 勇規, 稲垣 善茂
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0763
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物が生産するサポニンは配糖化トリテルペンであり、抗がん作用や植物病原菌に対する抗菌活性を持つものなど様々な誘導体が知られている。またエンバクを除く単子葉類では抗菌性サポニンは生合成されていない。そこで我々はイネに抗菌性サポニンの生産能を賦与することによる耐病性の獲得を最終目的として, イネのトリテルペン生合成経路遺伝子群の同定とその分子解析を試みている。これまでに1)イネのトリテルペン生合成経路遺伝子
Oxidosqualene Cyclase 遺伝子はイネゲノム中に12個存在するが, トリテルペン生合成に関与する活性型の遺伝子は見い出せなかったこと,2)トリテルペン生合成経路の次のステップである
CYP51 sterol demethylase 遺伝子もまたイネゲノム中に12個存在し、1つがステロール生合成に、また他の1つがトリテルペン生合成に関与している可能性が見いだされたことを報告した。今回、我々は
Oxidosqualene Cyclase 遺伝子であるエンバクのβ-amyrin合成遺伝子
AsbAS1 を導入した形質転換体イネを作出し、このイネにおいて、トリテルペン中間体及びトリテルペンの代謝物分析をGC/MSを用いて行った。その結果、β-amyrinの蓄積は確認できたが、それ以降の代謝物の合成は認められなかった。
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北尾 直子, 柴田 萌, 水野 幸一, 谷川 奈津, 加藤 美砂子
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0764
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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カフェインやテオブロミンは、チャ(
Camellia sinensis)をはじめとするツバキ科ツバキ属チャ亜属の植物に存在するプリンアルカロイドである。プリンアルカロイドの合成は
N-メチルトランスフェラーゼによって制御されており、プリン環の
N-3位と
N-1位のメチル化を行うカフェインシンターゼと、7-メチルキサンチンの
N-3位のメチル化を特異的に触媒するテオブロミンシンターゼが存在する。これまでに我々は、カフェイン合成能のないツバキ属植物にもテオブロミンシンターゼ遺伝子が普遍的に存在し、その転写産物が存在することを報告している。カフェインシンターゼとテオブロミンシンターゼは、SAM結合部位としてモチーフB’という保存領域を持つモチーフB’メチルトランスフェラーゼファミリーに属する。
本研究では、対象をツバキ属植物からツバキ科植物に広げ、12種の植物からモチーフB’メチルトランスフェラーゼ遺伝子の単離を試みた。20個の遺伝子を単離し、組換え型酵素を作製した結果、オオバタイワンツバキ(
Gordonia acuminata)からテオブロミンシンターゼ活性、ヒサカキ(
Eurya japonica)からサリチル酸メチルトランスフェラーゼ活性を検出した。これらの遺伝子の生化学的特徴や構造を調べ、ツバキ科植物におけるモチーフB’メチルトランスフェラーゼ遺伝子の分子進化について考察した。
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恩田 和幸, 山溝 千尋, 大宮 あけみ, 小野 道之
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0765
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
アサガオ
(Ipomoea nil)の花弁は多様な色彩を呈する。文献によれば黄色も江戸時代に存在していたとされるが、現在では明瞭な黄色の系統はない。カロテノイドは、多くの植物において黄色花色の発現を担っている。アサガオと同じ
Ipomoea属植物でカロテノイドにより黄色花色を示すキバナイポメア
(Ipomoea sp.
)と、白花系統のアサガオの花弁を比較すると、
isopentenyl pyrophosphate isomerase (IPI) 以降のカロテノイド合成酵素遺伝子群の発現が白花系統では非常に低い(Yamamizo et al. , 2009)。そこで、カロテノイド合成酵素遺伝子群を導入することによる黄花アサガオの作出を試みた。まず、プロモーターの検討を行い、キク由来の
flavanone 3-hydroxylase (F3H)のプロモーターがアサガオにおいて花弁特異的に働くことを確認した。次に、
IPIの下流に位置する
geranylgeranyl pyrophosphate synthase (GGPS) と
phytoene synthase (PSY) を
F3Hプロモーター制御下でアサガオに導入した。これらは視覚的には変化が認められなかったが、HPLCによって解析したところ、花弁におけるβ-caroteneの量が非形質転換体と比較して多い系統が得られた。
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水野 新也, 吉本 尚子, 斉藤 和季
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0766
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ニンニクが有する抗菌活性や発癌抑制作用は、含硫二次代謝物アリインの開裂産物から生成される様々な有機硫黄化合物に由来する。アリイン生合成の最終反応は、システイン誘導体である
S-アリルシステイン(SAC)の
S-酸化である。最近、シロイヌナズナにおけるグルコシノレートの
S-酸化反応が、フラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO)によって行われることが報告された。我々は、SACの
S-酸化反応がFMOによって触媒されると仮定し、ニンニクからのFMO遺伝子の単離を行った。ニンニク鱗片から得たタンパク質粗抽出液にSACを添加したところ、顕著なSAC分解活性が確認された。そこで、ニンニク鱗片からRNAを抽出し、タマネギのFMO様遺伝子のESTクローンの配列をもとに設計したプライマーを用いてRT-PCRとRACEを行い、FMOをコードすると考えられる遺伝子
AsFMO1の全長配列を得た。
AsFMO1は、FMO活性に不可欠なFAD結合モチーフおよびNADP結合モチーフを含む457 aaのタンパク質をコードすると考えられた。
AsFMO1のアミノ酸配列をグルコシノレート合成に関わるシロイヌナズナのFMO群のアミノ酸配列と比較したところ、51-55%の相同性があった。現在、大腸菌発現系を用いて、
AsFMO1タンパク質のSAC酸化活性の評価を行っている。
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野田 章彦, 石橋 弘規, 田野井 慶太朗, 中西 友子
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0767
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
グルコシノレート(GSL)は、アブラナ科植物が二次代謝物として合成する含硫配糖体の総称である。GSL及びそれに由来する揮発性化合物は、微生物や昆虫に対する防御物質として機能している。一方で、種子に蓄積され、イオウ欠乏によってGSLの分解が促成されることから、イオウ貯蔵機能も合わせ持っていると考えられている。
シロイヌナズナでは、特に種子でのGSL含量が多いこと、ロゼット葉と種子において各GSL比率が異なることが報告されているが、生殖成長期におけるGSL量の変化の詳細やその機能は未だ明らかにされていない。
そこで本研究では、生殖成長期のシロイヌナズナを用いて、果実の生育段階におけるGSL含有量とその化学組成の変化を解析した。開花後10日目までの果実をつけた植物体を用い、24種類のGSL含量を測定した。果実における総GSL量は開花後5日目までは増加せず、開花後6日目から増加を始めた。また、GSLの化学組成の変化については、開花後6日目から10日目にかけて、4-Methylsulfinylbutyl GSLが減少し、4-Methylthiobutyl GSLと4-Benzoyloxybutyl GSLが増加した。成熟種子のGSL組成が変化する変異株
aop3について同様の測定を行い、種子のGSL含量が生育に与える影響についても解析を行なったので報告する。
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金指 真菜
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0768
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
Botryococcus brauniiは炭化水素を合成する淡水性の単細胞緑藻である。B.brauniiは現在のところ,一属一種に分類されているが,脂肪酸合成系に由来するアルカジエンやアルカトリエンを持つraceA,テルペノイド合成系に由来するbotryococceneを持つraceB,テトラテルペンであるlycopadieneを持つraceLの3つタイプが存在する。我々は,raceBであるB70株の炭化水素の基質となるイソペンテニル二リン酸(IPP)は, MEP経路から供給されることを第51回大会で報告した。本研究では, MEP経路の最初の反応であるピルビン酸とグリセルアルデヒド3-リン酸の縮合を触媒する1-deoxy-D-xylulose 5-phosphate synthase(DXS)に着目し,この酵素をコードする2個の遺伝子(BbDXS1,BbDXS2)をB70株から単離した。2個のDXS遺伝子のN末には葉緑体移行シグナルと思われる配列が存在し,中央付近にはチアミン二リン酸結合ドメインが保存されていた。この2つの遺伝子は共に,raceBだけでなくraceAの株でも発現していた。得られたcDNAを大腸菌で発現させ,組換え型酵素を作製し,その性質を検討すると共に,BbDXS1とBbDXS2の機能について考察した。
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神 裕太, 田中 康史, 大河 浩
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0769
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
ラン色細菌
Synechocystis sp. strain PCC6803は、光によって駆動される無機炭素輸送機構を持っている。この機構に関与するNa
+依存性のHCO
3-輸送体SbtAやPxcAなどが報告されている。またPxcA遺伝子欠損株は酸性条件下でCO
2の取り込みが大きく阻害されることが知られている。
我々はラン色細菌の無機炭素輸送機構の植物への導入を検討するために、関連する輸送体タンパク質をコードする
sbtAおよび
pxcAを候補遺伝子としてシロイヌナズナに発現させることを試みた。過剰発現用バイナリーベクターを有したアグロバクテリウムによりシロイヌナズナを形質転換し、数千個体からファーストスクリーニングにより過剰発現形質転換植物体候補を得た。これらの系統は特に形態的異常は示さなかった。さらに系統間で目的遺伝子発現の有無や発現量の違いについて検討し、それぞれの遺伝子発現系統を得たが、タンパク質発現が確認できたのはPxcA過剰発現形質転換植物体のみであった。自殖後代によって、得られた形質転換植物体を用いて、異なるNa
+濃度およびpH条件が初期生育に及ぼす影響について検討を進めている。
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永島 良樹, 金井 沙織, 奈良 篤佳, 杉山 健二郎
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0770
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)は、心疾患、動脈硬化、あるいは乾癬などを予防、改善する高機能物質として、サプリメント等に利用されている。従来、EPAおよびDHAの商業的生産には魚油が用いられているが、魚油からのEPAおよびDHAの精製には、特有の臭い、高い精製コストなどの問題点がある。そのため、現在では、新たな供給源の開発が求められている。硫黄島の潮溜まりから単離された海洋性微細藻類KU01は、その体内に多量のEPAおよびDHAを蓄積しており、新たなEPAおよびDHA供給源として期待される。本研究では、海洋性微細藻類KU01のEPAおよびDHA生産量を増加させることを目的として、光強度、温度、通気量、培地中のpHおよび窒素源が生育量とEPAおよびDHA含有量に及ぼす影響について検討した。その結果、窒素源として0.5 mM CH
4N
2Oを添加した培地を用いて、pH 7.0、光強度70 μE/m
2s、温度25℃、通気量150 mL/minの条件で培養した際に最大生育量を示すことが判明した。一方、脂肪酸含有量は、すべての条件において有意な差異が見られなかった。最適条件下において培養した際の海洋性微細藻類KU01のEPAおよびDHA生産量は、それぞれ6.1および1.3 mg/Lとなり、コントロール条件下のそれらと比較して約2.5および1.6倍となった。
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松田 峻, 中村 茉樹, 野志 昌弘, 尾尻 恵, 丸田 隆典, 薮田 行哲, 吉村 和也, 石川 孝博, 重岡 成
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0771
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
活性酸素種(ROS)を介した酸化的シグナリングは種々の環境ストレス応答に重要な役割を担っている。これまでに我々は、葉緑体由来の酸化的シグナリングの分子機構を明らかにするために、チラコイド膜結合型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(tAPX)発現の誘導抑制系を用いて、葉緑体由来のH
2O
2に応答する遺伝子群を同定してきた。そこで今回は、同定した遺伝子群を欠損させたシロイヌナズナラインよりパラコート感受性変異株を選抜し、原因遺伝子の機能解析をおこなった。
遺伝子欠損株(241ライン)のパラコート感受性評価により、いくつかのパラコート非感受性変異株(
psi)および高感受性変異株(
pss)が得られた。それらの原因遺伝子の多くは転写因子やプロテインキナーゼをコードしており、発現データーベースより病原菌応答性を持つことが示唆された。したがって、
PSIsおよび
PSSsは光酸化的ストレスと病原菌応答の両方に機能することが示唆された。野生株への強光照射あるいはパラコート処理により、ほとんどの
PSIおよび
PSS遺伝子群の発現は上昇した。現在、各変異株のサリチル酸やエリシター処理に対する感受性を評価するとともに、転写因子をコードする
PSS遺伝子の機能解析を進めている。
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丸田 隆典, 中上 知, 野志 昌弘, 松田 峻, 尾尻 恵, 田内 葵, 薮田 行哲, 吉村 和也, 石川 孝博, 重岡 成
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0772
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
葉緑体は植物細胞内における主要な活性酸素種(ROS)の生成部位であるため、酸化シグナリングの発信源であると考えられる。これまでに我々は、葉緑体で生成されたH2O2を介した酸化的シグナリングの生理作用を明らかにするために、チラコイド膜結合型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(tAPX)発現の誘導抑制系を構築してきた。tAPXの誘導抑制により、葉緑体の酸化損傷の増大とともに、低温ストレスや病原菌応答に関与する遺伝子群の発現が変化することが分かった。そこで本研究では、葉緑体由来のH2O2のストレス耐性/応答に及ぼす影響を解析した。
tAPXの誘導抑制により、低温ストレスシグナリングに関与するいくつかの転写因子の発現が抑制された。また、tAPX発現を抑制させた植物は低温ストレスに高感受性を示した。一方、tAPXの誘導抑制により、病原菌応答性遺伝子群の誘導も認められたが、サリチル酸レベルの増加は見られなかった。よって、葉緑体由来の酸化的シグナリングは非生物的ストレス応答だけではなく、生物的ストレス応答にもサリチル酸非依存的に関与することが示唆された。現在、tAPXの誘導抑制のエリシター処理や病原菌への感受性に及ぼす影響を解析している。
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佐々木 健太郎, 金 明姫, 今井 亮三
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0773
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
大腸菌の低温馴化においては,RNAシャペロンとして低温下で形成されるRNAの2次構造を解消する活性をもつ低温ショックタンパク質(CSPs)が必須である.植物の低温ショックドメイン(cold shock domain ; CSD)タンパク質は細菌のCSPsと高度に保存されたドメインをもつ.我々は,コムギおよびシロイヌナズナのCSDタンパク質を同定し,それがRNAシャペロン活性を持つことを明らかにしている.本研究ではシロイヌナズナをモデルとして植物CSDタンパク質の生体内における機能を解明することを目的とし,以下に示す結果が得られた. シロイヌナズナのCSDタンパク質の1つであるAtCSP2の過剰発現株は発芽の遅延,植物体の縮小,花成の遅延等の多面的な表現型が見られた.また,AtCSP2過剰発現株は野生株と比較して,低温馴化後の耐凍性が低下していた.次に,AtCSP2ノックダウン変異株およびAtCSP2の相同遺伝子であるAtCSP4のノックアウト変異株を単離し,AtCSP2と4の二重変異株を作出した. その結果,二重変異株は野生株と比較して花成が促進し,低温馴化後の耐凍性が向上していた.二重変異株では耐凍性獲得のマスター因子(CBF)およびその制御下遺伝子の発現が上昇していることから,AtCSP2は低温馴化過程において,CBFを介して耐凍性を負に制御していると考えられる.
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岩下 望己, 井上 晋一郎, 田畑 亮平, 高橋 洋平, 後藤 栄治, 島崎 研一郎
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0774
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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気孔は青色光に応答して開口する。この気孔開口は、青色光が孔辺細胞のフォトトロピンによって受容され、下流の細胞膜プロトンポンプの活性化を介して、細胞膜を横切る過分極を引き起こし、カリウムの細胞内への取り込みを駆動することによって誘導される。しかし、光に依存した気孔開口のシグナル伝達の全体像は未だ不明な点が多い。本研究では、このシグナル伝達を解明するため、赤外線サーモグラフィーを用いて、光によって気孔が開口しない突然変異株のスクリーニングを行った。その結果、光照射によっても気孔が開かず高い葉温を示す変異株(24-H9)を得た。24-H9株の気孔は、生葉でも表皮でも、光に応答した開口は見られなかった。しかし、青色光に依存した孔辺細胞のプロトンポンプのリン酸化は正常であった。一方、24-H9株の孔辺細胞では、内向き整流性カリウムチャネルであるKAT1とAKT1の遺伝子発現がともに70%に低下していた。マッピングの結果、24-H9株の原因遺伝子は、植物ホルモンブラシノステロイドの生合成酵素の一つをコードするDWARF5 (DWF5)であった。他のブラシノステロイド生合成酵素DET2やブラシノステロイドの受容体BRI1の変異株においても、24-H9株と同様に気孔開口が損なわれていた。以上の結果は、ブラシノステロイドがカリウムチャネルの発現を介して気孔開口を調節していることを示唆している。
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永田 千咲子, 加藤 真理子, 長崎ー武内 菜穂子, 木下 俊則, 土平 絢子, 半場 祐子, 前島 正義
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0775
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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PCaP1 (plasma membrane associated cation-binding protein-1)は、シロイヌナズナで発見されたタンパク質で、
N-ミリストイル化を介して細胞膜に結合している。Ca
2+、 Cu
2+、PtdIns
Ps、 CaM/Ca
2+ との結合能を持つ(Nagasaki
et al. 2008a, b)。本研究ではPCaP1の細胞内局在と動態を明らかにするため、PCaP1-GFP融合タンパク質をシロイヌナズナに発現させ、共焦点レーザ顕微鏡で観察した。PCaP1は植物のほぼ全ての組織の細胞膜に観察された。PCaP1は銅過剰およびflg22処理に応答してmRNA量が増え、かつPCaP1-GFPの蛍光強度は増加した。また、PCaP1は気孔孔辺細胞の外輪部にのみ偏在した。この偏在に注目し野生株と
pcap1株で気孔開度を測定したところ、暗条件において
pcap1では気孔が閉じにくくなる現象が見られた。さらに両植物の葉の気孔コンダクタンス測定を行った。また、気孔開閉に関与する条件として暗条件および高CO
2濃度条件下での生育を比較した。以上の結果よりPCaP1は細胞膜に安定に結合し、PtdIns
Ps や CaM/Ca
2+と相互作用して、機構開閉も含む細胞内の様々なシグナル伝達に関与していると考えられる。
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河原崎 朋子, 今井 亜耶, 森 恭一郎, 賀屋 秀隆, 朽津 和幸
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0776
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物は、生体防御応答、形態形成等の過程で積極的に活性酸素種(ROS)を生成する。ROS生成酵素NADPH oxidaseの本体としてrespiratory oxidase homolog (rboh)が同定されており、シロイヌナズナには、AtrbohA-Jの10種のアイソザイムが存在する。分子遺伝学的な解析から、
AtrbohD, AtrbohF は生体防御応答や環境応答、
AtrbohC/RHD2 は根毛の先端伸長、
AtrbohB は種子発芽に関与することが示唆されており、10種のAtrbohの機能分担が想定される。そこで、様々な局面における積極的なROS生成制御機構を解明するため、AtrbohA-Jの網羅的比較解析を進めている。
ヒト培養細胞を用いた異種発現系解析の結果、AtrbohC, AtrbohDは、EF-hand様領域へのCa
2+ 結合と、自身のタンパク質リン酸化により相乗的に活性化されることが明らかになった。そこで、AtrbohA-Jの10種について、ROS生成活性の比較解析を進めている。また、
AtrbohA-J遺伝子について
promoter::GUSを構築し,発現部位の比較解析を進めている。各遺伝子の発現部位、各アイソザイム間の活性や制御機構を比較し、Atrbohの機能分担について議論する。
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田中 秀典, 刑部 祐里子, 桂 彰吾, 水野 真二, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
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0777
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
受容体様プロテインキナーゼ(RLK)は、水分ストレス条件で細胞外環境の認識に重要な役割を持つと考えられる。我々は水分ストレス誘導性の細胞質型RLK遺伝子である
ARCK1を解析している。ARCK1タンパク質はシステインリッチリピート(CRR)-RLKサブファミリーに属するが、キナーゼドメインのみからなる。
ARCK1遺伝子発現は水分ストレス及びアブシジン酸(ABA)処理により主に葉で上昇し、sGRP-ARCK1タンパク質は細胞質に局在することが示された。
arck1変異体は、ABAによる子葉緑化抑制に感受性を示した。ARCK1の相同性遺伝子である水分ストレス誘導性
RLK遺伝子
ARCK1-LIKE1 (
ARCL1)は、細胞外にCRRドメインを持つRLKである。
ARCL1遺伝子は水分ストレスにより主に地上部で発現が誘導され、ARCL1-sGFP融合タンパク質は細胞膜に局在した。これら2因子の相互作用を解析した結果、酵母及び植物内で相互作用を示すことが明らかとなった。RNAi法により
ARCL1遺伝子発現を抑制した形質転換体は、ABAと塩による子葉緑化抑制において
arck1変異体と同様に高い感受性を示した。ARCK1は細胞膜上でARCL1と複合体を形成し水分ストレスシグナル伝達を担う可能性が示唆された。現在これらの因子により制御される下流因子を探索しており、その結果についても合わせて報告する。
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Bhyan Salma Begum, Daisuke Takezawa
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0778
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
Cold tolerant plants acquire freezing tolerance in response to exposure to non-freezing temperature. In higher plants, cold stress can cause increased accumulation of ABA, which could affect the signaling and regulatory pathways that direct the low temperature responses. In contrast, the role of ABA in cold acclimation process is not clearly understood in bryophytes. Protonema cells of the moss
P.patens acquire freezing tolerance in response to cold and ABA treatment. In this study, we examined effects of low temperature treatment on freezing tolerance of the mutant and transgenic lines of
P.patens. Low temperature treatment for seven days of wild type plants increased the freezing tolerance significantly but the treatment had little effect on that of ABA-insensitive lines. Protein and sugar analyses indicated that cold treatment induces accumulation of specific LEA-like proteins and soluble sugars in wild type, whereas the treatment increased only soluble sugars but not LEA-like proteins in the ABA-insensitive lines. These results indicate that low temperature affects ABA signaling in
P.patens,leading accumulation of LEA-like proteins, which are required for freezing tolerance.
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志村 遥平, 木村 聡, 白岩 善博, 鈴木 石根
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0779
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
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ラン藻
Synechocystis sp. PCC 6803のHik33は様々なストレス条件に応答し、遺伝子発現を制御するヒスチジンキナーゼである。しかし、そのシグナル検知の分子機構は未解明である。一般にヒスチジンキナーゼは、N末端側のシグナル検知ドメインと、C末端側のキナーゼドメインの2つのモジュールから構成されている。我々はHik33のシグナル検知ドメインの機能を解析するため、染色体上のリン酸欠乏応答性ヒスチジンキナーゼSphS遺伝子のシグナル検知ドメインに相当する領域をHik33のそれと置換してキメラ型のキナーゼを
Synechocystis細胞内で発現させた。この株ではキメラキナーゼが活性化されると、アルカリフォスファターゼ(AP)の活性として検出できる。キメラキナーゼ発現株は、通常の培養条件下でAP活性を発現し、ストレス条件下ではその発現が低下した。Hik33のシグナル検知ドメインからPASドメインを欠失させるとAP活性が増大した。以上の結果から、PASドメインがセンサーの機能に重要であると考えられたので、PASドメイン中の保存された14残基に点変異を施したところ、2種の点変異株でキナーゼ活性の著しい減少が見られた。これらの結果から、Hik33のPASドメインはキナーゼ活性を適切なレベルに保つために必要であることが示唆された。
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赤城 文, 霜野 真幸, 高辻 博志
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0780
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
イネにおいて、抵抗性誘導剤ベンゾチアジアジール(BTH)は、サリチル酸シグナル伝達経路に作用して転写因子WRKY45を活性化し、病害抵抗性を誘導する。また、
WRKY45過剰発現(
WRKY45-ox)イネは、いもち病(
M. grisea)や白葉枯病(
X. oryzae)に対して強い抵抗性を示す。本研究では、WRKY45によって制御されている耐病性機構の解明を目的とし、
WRKY45-oxイネおよびBTH処理後のイネでのいもち病菌感染過程における顕微鏡観察および遺伝子発現解析を行った。
WRKY45-oxイネに親和性いもち病菌を接種したところ、いもち病菌の貫入菌糸のイネ細胞壁への貫通の段階で侵入が強く阻止されていることがわかった。また、菌糸の侵入を許した部位ではHR細胞死をともなう抵抗性反応が観察された。マイクロアレイの結果、
WRKY45-oxでは、ジテルペン型ファイトアレキシンであるモミラクトンAの生合成遺伝子等が、いもち病菌接種後に発現誘導されていた。また、非形質転換イネにおいて、モミラクトンA生合成遺伝子はBTH処理のみでは転写誘導されず、いもち病菌接種後にはじめて誘導されることがわかった。またこれらの遺伝子発現は
WRKY45抑制イネでは見られなかった。これらの結果は、抵抗性誘導剤処理したイネにおいてWRKY45は防御遺伝子の発現をプライミングすることを示している。
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香西 雄介, 岸本 久太郎, 賀来 華江, 澁谷 直人, 南 栄一, 西澤 洋子
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0781
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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我々は、植物に持続的で強い抵抗性を付与する目的で、菌類病菌の普遍的なMAMPsであるキチンオリゴ糖に対するイネの応答性の改変を試みている。キチンオリゴ糖受容体CEBiPと受容体型キナーゼ(RLK)であるXA21(イネ白葉枯病抵抗性タンパク質)の細胞内領域を融合させた人工受容体CRXAを発現する組換えイネでは、キチンオリゴ糖処理による細胞死誘導が亢進し、いもち病抵抗性が向上した(Kishimoto
et al. 2010)。今回、XA21とは異なるタイプのRLKの利用の可否を調べる目的で、CEBiPと日本晴型Pid2(RLK型いもち病真性抵抗性タンパク質ホモログ)との融合タンパク質CRPiを発現するイネの解析を行った。CRPi発現細胞では、キチンオリゴ糖処理後のオキシダティブバーストが亢進するなど、応答性に変化が認められたが、細胞死誘導レベルはCRXA発現細胞よりも低かった。次に、CRPi植物体の葉鞘と葉身におけるいもち病抵抗性を検定したところ、菌糸の伸展や病斑形成がベクターコントロールと比べて有意に抑制され、いもち病抵抗性の向上が認められた。以上の結果から、CEBiP をXA21とは異なるRLK型抵抗性タンパク質の細胞内領域と融合させた場合でもキチンオリゴ糖シグナルの受容と変換が可能であり、いもち病抵抗性の付与に利用できることが示唆された。
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後藤 新悟, 下田(笹倉) 芙裕子, 霜野 真幸, 菅野 正治, 高辻 博志
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0782
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
イネの転写因子WRKY45は、サリチル酸経路に作用する薬剤による誘導抵抗性において中心的役割を担う。トウモロコシ・ユビキチン・プロモーターを用いた
WRKY45発現イネ(
PMaize Ubi:WRKY45)は、いもち病および白葉枯病に対して強力な抵抗性(複合抵抗性)を示す。しかしながら生育遅延や収量の低下などの農業形質への悪影響のため、この系統は実用利用ができない。そこで、複合抵抗性と農業形質の両立を図るため、イネ由来の様々な恒常発現プロモーターの制御下に
WRKY45を発現するイネ系統を作製して最適化を試みた。
様々な発現特性をもつ22種のイネ遺伝子の転写開始点上流配列(2 kb)を単離し、下流に
WRKY45 cDNAを接続してイネに導入した結果、葉身において様々なレベルで
WRKY45を発現する形質転換イネ系統を多数得た。このうち3種の上流配列(
POsUbi1,
PEF1α,
POsUbi7)をプロモーターとして用いた
WRKY45発現イネにおいて、いもち病および白葉枯病に顕著な抵抗性を示した。また、
POsUbi7:WRKY45イネは、野外環境追随温室において、
PMaize Ubi:WRKY45イネよりはるかに良好で、非形質転換イネに匹敵する生育と収量を示した。これらの結果により複合抵抗性と農業形質が両立するイネ作出への可能性が示された。
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丸山 智美, 李 京愛, 大西 浩平, 曵地 康史, 木場 章範
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0783
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
Pseudomonas cichorii(Pc)によるレタス腐敗病の発病過程には,植物のアポトーシス様自己細胞死(PCD)が関与する。本研究ではPcを接種したレタス植物内で発現が誘導されるP. cichorii-responsive genes(PcRG)4-5-2遺伝子に着目した.本遺伝子の推定アミノ酸配列は,Plant AT-rich sequence and Zn-binding protein (PLATZ) 領域を有していた(Lactuca sativa PLATZ :LsPLATZ).LsPLATZ遺伝子は野菜類軟腐病菌Pectobacterium cartovora subsp. cartovora,PCDを伴う抵抗性である過敏感反応(HR)を引き起こすP. syringae pv. syringae,およびP. syringae pv. phaseolicolaを接種した場合には発現誘導は認められなかった.またLsPLATZ遺伝子の発現は既知の植物細胞内情報伝達物質であるサリチル酸,ジャスモン酸,過酸化水素処理による影響も受けなかった.以上の結果から,LsPLATZ遺伝子は腐敗病の発病過程に特異的に関与し,既知のシグナル伝達系とは異なった経路で発現が誘導されると考えられた.現在,LsPLATZ遺伝子の詳細な機能解析を進めている.
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間瀬 圭介, 石濱 伸明, 森 仁志, 児玉 基一朗, 吉岡 博文
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0784
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
AAL毒素は,トマトアルターナリア茎枯病菌の病原因子である.AAL毒素はスフィンガニンの構造類似体であり,セラミド合成系を攪乱することにより宿主植物にプログラム細胞死を誘導すると考えられている.これまでに,AAL毒素による細胞死においてエチレンシグナル経路が重要な役割を果たすことを明らかにし,AP2/ERF転写因子である
NuERF4がAAL毒素細胞死に関与することを示した.
NuERF4をサイレンシングした
Nicotiana umbraticaにおいては,AAL毒素による細胞死,茎枯病菌の病徴ともに抑制された.今回,
Arabidopsis thalianaにおいても
NuERF4ホモログがプログラム細胞死に関与するか調べるため,AAL毒素の構造類似体であるFumonisin B1 (FB1) を用いた.NuERF4のAP2ドメインと
A. thalianaのERFのAP2ドメインを用いて多重アミノ酸解析した結果,
NuERF4の
A. thalianaのホモログである
A. thaliana ERF4 homolog (AEH1) を特定した.FB1で
aeh1変異体を処理したところ,野生型の植物と比較して細胞死が遅延した.また,AEH1の過剰発現体を作出し,野生型と比較してAEH1過剰発現体において発現量が変化する遺伝子をマイクロアレイにより探索した.
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佐藤 健太, 末永 貴義, 前田 佳菜子, 清水 健雄, 賀来 華江, 渋谷 直人
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0785
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
植物は、微生物に共通して存在するMAMPsを非自己として認識し様々な防御応答を引き起こす。我々はこれまでにイネおよびシロイヌナズナにおいてLysM型受容体キナーゼOsCERK1 およびAtCERK1を同定し、これらがそれぞれの植物においてキチンエリシターを介したシグナル伝達に重要な役割を果たすことを明らかにした1)。更にこれらの受容体直下のシグナル伝達については、OsCERK1がHsp90およびHop/Sti1との相互作用を介して様々な因子と複合体を形成し、小胞体から細胞膜へのOsCERK1の輸送やシグナル伝達に関与することが報告されている。本研究では、AtCERK1/OsCERK1直下のシグナル伝達機構の理解を更に進めるため、酵母ツーハイブリッド法によりこれらの受容体キナーゼのKinase-Active/Dead型細胞内ドメインと相互作用し下流のシグナル伝達に関与する因子の探索を行った。その結果、E3ユビキチンリガーゼや細胞質型タンパクキナーゼ、 Forkhead-associatedドメインを含むタンパク質など十数個の候補遺伝子が得られた。現在、これら候補遺伝子の欠損変異体のキチンエリシター応答性を指標に、これらがAtCERK1/OsCERK1下流のシグナル伝達系に及ぼす影響を解析している。
1)PNAS, 104, 19613; Plant J., 64, 204.
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元山 記子, 新屋 友規, 長田 友彦, 池田 あさひ, 賀来 華江, 渋谷 直人
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0786
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
植物は動物の自然免疫系と同様に、パターン認識受容体による微生物分子パターン(MAMPs)の認識を介して潜在的病原菌の感染を検出する能力を持っている。キチンは代表的な真菌由来のMAMPであり、われわれはこの認識に関わる受容体分子として現在までに、イネのGPIアンカー型タンパク質CEBiP、シロイヌナズナ・イネの受容体キナーゼCERK1/OsCERK1を同定している(1,2)。本研究ではシロイヌナズナにおいて、キチン認識機構に関わる可能性のある分子、特にCEBiP型分子に着目してその機能解析を行った。相同性解析より見出された3種のシロイヌナズナCEBiPホモログについて、タバコBY-2細胞を利用した発現系を利用してキチン結合性解析を行った。その結果、イネCEBiPと同様に高いキチン親和性を有するCEBiPホモログ(AtCEBiP1)を同定した。興味深いことにAtCEBiP1のノックアウト変異体では、キチン応答性にほとんど変化が認められなかった。この結果は、シロイヌナズナのキチン認識系においては、CEBiP型分子はキチン結合性をもつにもかかわらず、キチン応答に関与せず、CERK1が単独で受容体として機能する可能性を示唆している。
1)Kaku et al., PNAS 103, 11086 ('06)
2)Miya et al., PNAS 104, 19613 ('07)
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大友 一平, 出崎 能丈, 賀来 華江, 渋谷 直人
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0787
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
近年、動植物の防御応答を誘導する共通的な機構として、微生物固有の分子パターン(MAMPs: microbe-associated molecular patterns)認識に基づく防御応答が注目されている。我々はこれまでにグラム陰性細菌の細胞壁構成成分であるリポ多糖(LPS)がイネ培養細胞にプログラム細胞死を含む防御応答を誘導すること(1)、またLPSとキチンオリゴ糖の同時処理によってシナジー効果と呼ばれる相乗的な防御応答の増大を誘導することを明らかにしてきた。
一方、LPSの機能部位に関しては、動物の先天性免疫では分子中のLipid A部分が認識されることが報告されているが、植物が認識する構造については明確になっているとはいえない状況にある。そこで今回我々は、グラム陰性細菌Pseudomonas aeruginosa由来のLPSを用い、植物によって認識される活性部位の構造を解析した。LPSを穏和な加水分解によってLipid Aと糖鎖部分に分解し、それぞれの活性を調べた結果、イネにおけるLPSの生物活性は主としてLipid Aによって担われていることが明らかになった。このことは、動植物におけるLPS認識機構の進化的保存性を示唆するものとして興味深い。
1)Desaki et al.,Plant Cell Physiol.,47,1530(2006)
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井上 晴彦, 林 長生, 松下 茜, 中山 明, 菅野 正治, 姜 昌杰, 高辻 博志
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0788
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
穂いもち病圃場抵抗性遺伝子
Pb1(Panicle Blast1)は、インディカ・イネ「Modan」に由来し、安定で高度な発病抑制効果を示す。Pb1タンパク質はCC-NB-LRR型Rタンパク質様構造をもち、サリチル酸経路を介した誘導抵抗性に中心的な役割を果たす転写因子WRKY45と特異的に相互作用することをこれまで報告した。
Pb1によるいもち病抵抗性のWRKY45依存性を調べるため、
Pb1をもつイネ系統および
Pb1を過剰発現するイネにおいて、RNAi法により
WRKY45遺伝子を発現抑制し、いもち病抵抗性に対する影響を調べた。その結果、いずれの場合も
Pb1による抵抗性が抑制され、
Pb1による抵抗性が
WRKY45に依存していることが示された。一方、核排除シグナルを付加したPb1を発現させたイネはいもち病抵抗性を示さないことから、Pb1の核局在が抵抗性に必須であることが示された。次に、WRKY45はプロテアソーム分解制御を受けることから、これと
Pb1抵抗性との関連に着目して解析した。その結果、Pb1は、タンパク質間相互作用を介してWRKY45を分解制御から保護することが示された。いもち病菌接種後のWRKY45タンパク質の蓄積を調べると、
Pb1過剰発現イネでは対照の日本晴より多量の蓄積が見られた。以上より、
Pb1抵抗性は、WRKY45の分解制御からの保護を介して発現していることが示唆された。
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近藤 真千子, 乗京 知宏, 吉田 裕貴, 宇野 雄太, 島田 真弥, 蔡 晃植
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0789
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
植物免疫反応の一つである過敏感細胞死は、細菌のHrp分泌装置を介して植物細胞内に分泌されるエフェクタータンパク質によって誘導される。イネの過敏感細胞死誘導機構を明らかにするため、イネ病原細菌
Acidovorax avenaeの非病原性N1141菌株の
Hrp (
Hypersensitive response and pathogenicity)遺伝子群を探索したところ、分泌装置をコードする遺伝子を含む約30kbpから成る
Hrp遺伝子群の存在が明らかになった。分泌装置をコードする遺伝子を欠損させると、イネの過敏感細胞死が誘導されなかったことから、イネ過敏感細胞死誘導にはこの菌のHrp分泌装置を介して分泌されるエフェクタータンパク質が関与することが示唆された。そこで、このエフェクタータンパク質を同定するために、N1141株とそのHrp分泌装置欠損株をイネ培養細胞に接種し、Hrp分泌装置欠損株の菌体内で特異的に蓄積するタンパク質をプロテオーム解析により同定した。同定したタンパク質の各遺伝子変異株を作成したところ
Ahp1と名付けた遺伝子変異株が過敏感細胞死誘導能を失うことが示された。さらに、この遺伝子をイネ細胞内に導入し、発現させたところ、過敏感細胞死が誘導されたことから、この遺伝子産物がイネの過敏感細胞死に関与する可能性が示唆された。
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武藤 さやか, 松崎 佐和子, 永野 幸生
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0790
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
グラム陰性菌の細胞壁構成成分であるリポ多糖(lipopolysaccharide: LPS)は植物自然免疫を誘導するエリシターである。しかし、植物のLPS認識機構は全く分かっていない。そこで我々は、ヒトのLPS認識機構において、LPSと直接結合するLPS結合タンパク質(LPS-binding protein; LBP)と殺菌性/透過性増強タンパク質(bactericidal/permeability-increasing protein; BPI)に注目した。シロイヌナズナは2つのLBP/BPI関連タンパク質(AtLBP)を持っている。AtLBPの自然免疫における機能解析を試みた。
組換えAtLBPを用いた結合解析により、AtLBPとLPSが直接結合することを明らかにした。また、AtLBP変異株を用いて自然免疫応答の変化を調べた。LPS処理後のPR1遺伝子発現とカロース蓄積について調べた。その結果、AtLBP2変異株は、WTに比べて早くPR1遺伝子が発現した。また、AtLBP2変異株はより低濃度のLPS処理に対してカロースの蓄積を示した。AtLBP2変異株はWTに比べて高いLPS感受性を持つといえる。これらの結果は、AtLBP2がLPSシグナルを負に制御することを示唆している。
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丸山 洋介, 浅田 裕, 鈴木 悠也, 千葉 由佳子, 山本 宏子, 山口 淳二
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0791
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
恒常的な細胞死の形質を示すシロイヌナズナ突然変異体、
nsl2(
necrotic spotted lesion 2 =
cad1)変異体は,病害抵抗性のマーカー遺伝子の活性化や病原菌感染に抵抗性を示すことがわかっている(
Plant Cell Physiol. 2005, 46: 902-912)。これまでにマイクロアレイを用いた解析や遺伝学的な解析により,
nsl2変異体は既知のサリチル酸やジャスモン酸が関わる病害応答経路に関わっていることが示唆されている。また、DEX誘導型RNAiシステムを用いたNSL2遺伝子のサイレンシングによって,
PR遺伝子等の全身的な発現が観察されたことにより、NSL2の発現ステージに関わらず、細胞死の誘導を司っていることが示唆された。しかしながら,
nsl2が示す恒常的な細胞死の機構は未だに詳細になっていない。細胞死が関わる詳細な機構を解明するために酵母two-hybrid法によりNSL2との相互作用因子の特定を行った。今回は相互作用因子群から示唆されるNSL2タンパク質の性質について議論したい。
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石川 和也, 山口 公志, 古谷 綾子, 落合 弘和, 津下 誠治, 島本 功, 川崎 努
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0792
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
病原菌は、タイプ場L分泌装置 (TTSS) を用いてタイプ場Lエフェクターを宿主細胞に注入することにより防御応答システムを錯乱、打破することで植物の抵抗性反応を抑制し、宿主に感染する。そのため、エフェクターの標的は植物の防御応答システムに非常に重要な因子であると考えられる。本研究では、イネ白葉枯病菌T7174R株のエフェクターであるXopPを用いて新規イネ耐病性機構を解明することを目的としている。
これまでに、
XopP 過剰発現イネにイネ白葉枯病菌のタイプ場III分泌装置が欠損したHrpX変異株を接種した結果、顕著な病徴の拡大が認められた。また、イネの細胞においてXopPは細胞質に局在することが明らかになっている。しかしながら、これまでXopPの機能については全く明らかになっていない。興味深いことに、
XopP 過剰発現培養細胞ではキチンエリシター処理によって誘導される防御遺伝子の発現の誘導が顕著に抑制されていた。このことから、XopPはキチンによって誘導されるイネの防御応答を阻害していると考えられる。そこで、酵母ツーハイブリッド法を用いてXopPのイネ相互作用因子の探索を行った結果、新規のU-boxドメインを有するARMリピートタンパク質を同定した。本発表では、XopP過剰発現イネや培養細胞を用いた解析、およびXopPの相互作用因子について報告する。
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加藤 大明, 竹本 大吾, 川北 一人
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0793
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
植物が病原菌に対する抵抗反応を誘導する際に一酸化窒素(nitric oxide,NO)が生成され、様々な抵抗反応の制御に関与することが知られている。一方、植物内において生成したNOがどのような機構を介して抵抗反応誘導に至る情報伝達を行うかについては不明な点が多い。そこでNOの介在するタンパク質翻訳後修飾機構のひとつである
S-ニトロソ化(protein
S-nitrosylation)に着目し、ジャガイモ塊茎および葉組織における
S-ニトロソ化タンパク質の検出と同定を行った。タンパク質沈殿法を用いて調製したジャガイモ植物抽出タンパク質にNO供与体GSNOを処理し、ビオチンスイッチ法を用いて
S-ニトロソ化タンパク質の検出を試みたところ、多数の
S-ニトロソ化タンパク質を検出した。ビオチン標識した
S-ニトロソ化タンパク質をアビジンアガロースを用いて精製し、質量分析計を用いた解析により、ジャガイモ植物においてレドックス制御に関与する因子を含む、多数の
S-ニトロソ化候補タンパク質を同定した。
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高見澤 大介, 清水 健雄, 佐藤 圭, 早船 真広, 賀来 華江, 渋谷 直人
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0794
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
植物は微生物の持つ特有な分子パターン(MAMPs)を認識し様々な防御応答反応を誘導する。これまで我々はMAMPであるキチンの防御応答系に関与する2種類の受容体CEBiP/OsCERK1を同定し、両分子がキチンエリシターの受容とシグナル伝達に重要な役割をもつことを明らかにした
1,2)。またこれらの受容体はホモ及びヘテロ二量体を形成する潜在的能力を持ち、イネ原形質膜上ではOsCERK1は主として単量体、CEBiPは単量体及びホモ二量体で局在することを示した。さらに特異抗体を用いた免疫沈降反応の結果、CEBiPとOsCERK1はキチンエリシター依存的に受容体複合体を形成することを明らかにした。CEBiPは細胞内領域を所持していないが、GPIアンカー型タンパク質と推定されるω配列を持っていた。そこでイネMF画分をホスホリパーゼCで処理した結果、CEBiPは酵素により切断され膜画分から遊離し、OsCERK1は切断されなかった。この結果はCEBiPがGPIアンカー型受容体であることを示唆し、OsCERK1とは異なる形状で原形質膜上に局在することを明らかにした。さらに我々はイネの原形質膜上の脂質ラフトにCEBiPが存在することを確認し、その詳細についても報告する。
1) Kaku et al.
PNAS(2006)
2) Shimizu et al.
Plant J.(2010)
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松川 みずき, 柴田 裕介, 川北 一人, 竹本 大吾
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0795
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ナス科のモデル植物であるベンサミアナタバコ (
Nicotiana benthamiana) の成熟個体はジャガイモ疫病菌 (
Phytophthora infestans) に対して強い抵抗性を示す。ウイルス誘導型ジーンサイレンシング法(VIGS)を用いた疫病菌抵抗性低下株のスクリーニングにより、小胞体局在型シャペロンであるカルレティキュリン遺伝子
NbCRT3および糖タンパクに付与されるN-グリカンの合成系酵素であるN-アセチルグルコサミンリン酸転移酵素遺伝子
NbGPTが抵抗性に必要な遺伝子として単離された。対照株と比較して、
NbCRT3および
NbGPTのサイレンシング株では疫病菌由来のエリシタータンパク質であるINF1の処理によって誘導される活性酸素生成が著しく低下した。また、CRT3と共に小胞体におけるタンパク質の品質管理機構に関与するUDP-グルコース:糖タンパク質グルコース転移酵素 (UGGT) のサイレンシング株においても、INF1処理による活性酸素生成や過敏感細胞死の誘導が顕著に抑制されていた。以上の結果は、小胞体品質管理機構を介したN-グリコシル化タンパク質の成熟化が疫病菌由来のエリシター認識に必要であることを示しており、N-グリコシル化によって小胞体で成熟化されることが知られる細胞外型レセプターがベンサミアナタバコの疫病菌認識に関与している可能性が高いと推察された。
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柴田 裕介, 小鹿 一, 川北 一人, 竹本 大吾
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0796
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ベンサミアナタバコの成熟個体はジャガイモ疫病菌に対して強い抵抗性を示す。ウイルス誘導型ジーンサイレンシング法(VIGS)を用いた解析で、これまでにエチレン情報伝達因子(EIN2)によって遺伝子発現制御を受けるカプシジオール(タバコのファイトアレキシン)生合成酵素5-エピ-アリストロケン合成酵素および水酸化酵素(EAS、EAH)が疫病菌抵抗性に必須であることを明らかにしている。VIGSを用いた疫病菌抵抗性低下株のスクリーニングにより抵抗性に必須な遺伝子の単離を試みたところ、PDR型ABCトランスポーター(PDR1)が単離された。これまでに、
N. plumbaginifoliaのPDR1がテルペノイドであるスクラレオールの細胞外輸送に関与するとの報告があることから、ベンサミアナタバコのPDR1がテルペノイドであるカプシジオールの分泌を担うと推察されたが、
PDR1サイレンシング株において疫病菌由来のINF1エリシター処理によって誘導されるカプシジオール蓄積量及び細胞内外の分布を調べたところ、予想に反して総蓄積量の顕著な減少が認められた。一方、INF1を処理した
PDR1サイレンシング株では初期の防御応答である活性酸素生成が対照株と同等に検出された。これらの結果から、
PDR1がカプシジオール前駆体の細胞内輸送など、ファイトアレキシン合成に直接関与している可能性が示唆された。
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中野 真人, 大西 浩平, 曵地 康史, 木場 章範
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0797
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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植物の発病機構を解明するために、青枯病菌の病原性株の感染によってNicotiana植物で特異的に発現する遺伝子の機能解析を進めている。今回はホスファチジン酸脱リン酸化酵素(PAP)と相同性を示す
NbPAPについて報告する。PAPを欠損した酵母の高温での生育は
NbPAP遺伝子の導入によって相補され、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系において合成したNbPAPタンパク質はin vitroでPAP活性をした。PAPの基質であるホスファチジン酸(PA)は様々なストレス応答においてセカンドメッセンジャーとして機能することから、NbPAPは植物―病原体相互作用において生じるPAを介して植物免疫を調節しているのではないかと考えられた。そこで、植物におけるNbPAPの役割を解析するために、virus-induced gene silencing法を用いて
NbPAPサイレンシング植物を作製したところ、
NbPAPサイレンシング植物ではPAP活性が低下し、青枯病菌の感染に応答して蓄積するPAの量が増加した。さらに、青枯病菌の病原性株を接種した
NbPAPサイレンシング植物は萎凋症状の進展が顕著に抑制され、抵抗性を示した。現在、青枯病菌以外の病原体との相互作用におけるNbPAPの役割について解析中である。
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山本 拓海
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0798
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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強い生殖隔離により雑種致死するタバコ種間雑種(
N. gossei x
N. tabacum)の培養細胞GTH4は、37℃から26℃への温度遷移で直ちに細胞死を起こす。我々は、これまでにGTH4の細胞死が活性酸素種(ROS)と一酸化窒素(NO)、特にO
2-とNOの量比バランスおよびH
2O
2とNOの相互作用の制御下にあることを確認し、またROS発生がMAPK経路の制御下にあることを明らかにした。しかし、NO発生がどのような制御下にあるかは不明であった。本報告は、動物のNO合成酵素(NOS)、植物のNO発生に寄与する可能性の高い硝酸還元酵素(NR)への阻害剤投与実験から、NO発生の機作と細胞死について検討すると共に、培養細胞で確認できたROSとNOの作用が、やはり温度依存的致死をおこす雑種幼苗においても同様であるかを調査した。NOSの阻害剤であるL-NAME投与は細胞死を抑制したが、細胞外に放出されるNO量への抑制効果はなかった。誘導型NOSの阻害剤であるAG投与は共に効果はなかった。NRの阻害剤であるタングステン酸投与は、細胞死を抑制したが細胞外NO量には影響しなかった。これらの薬剤による細胞内NO量については調査を進めている。他方、雑種幼苗でのROSとNOの動態は、幼苗の細胞死の動態と合わせて培養細胞で確認されたO
2-とNOの量比バランスが重要であることを示していた。
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和佐野 直也, 菅野 真美, Golisz Anna, 安部 洋, 藤井 義晴
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0799
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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ユキヤナギ葉から単離されたアレロケミカル(シス桂皮酸配糖体)は、強い植物生長阻害活性を示す。その作用機構解析を目的として、シス桂皮酸投与後のシロイヌナズナ植物体を用いてマイクロアレイ解析を行った。シス桂皮酸を投与して6時間後、全RNAを抽出し、マイクロアレイを行った結果、75遺伝子の発現を活性化し、116遺伝子の発現を抑制していた。それらの遺伝子群の解析を行った結果、PRタンパク質をコードする遺伝子群に正の制御、ジャスモン酸/エチレン応答遺伝子群、環境ストレス応答転写因子、細胞伸長過程において細胞壁に特異的に発現する遺伝子群、活性酸素種解毒酵素遺伝子群等に負の制御を誘導することが明らかになった。これらの結果から、シス桂皮酸は植物ホルモン制御系の撹乱、環境ストレスに関わる生体防御機構の撹乱、さらに細胞伸長過程に関わる細胞壁代謝系を撹乱を引き起こしている可能性が示唆された。
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佐藤 淳史, 松村 理恵, 都筑 幹夫, 佐藤 典裕
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0800
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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我々は、緑藻クラミドモナスが硫黄(S)欠乏条件下、唯一の硫黄含有膜脂質であるスルフォキノボシルジアシルグリセロールを分解し、タンパク質合成のための主要な硫黄源とすることを示した[1]。今回、この研究の過程で、緑藻がS欠乏条件下、トリアシルグリセロール(TG)を蓄積することを認めたので、報告する。クラミドモナスでS欠乏条件へ移行後、120時間まで中性脂質の挙動を追った。通常の生育条件下では、中性脂質として主にTGと遊離脂肪酸が認められたが、24時間から96時間にかけてTGの顕著な増加が認められた。同様に、S欠乏条件下、TGの特異的な蓄積がクロレラでも観察された。一方、クラミドモナスをリン欠乏条件に曝しても、TGや遊離脂肪酸の含量に関して、特に大きな変動は認められなかった。以上の結果は、TGの蓄積が栄養塩欠乏ストレスで一般的ではなく、少なくとも、S欠乏特異的な応答であることを示している。これまでにクラミドモナスを含め緑藻では、窒素欠乏条件下、TGが蓄積すると報告されている。TGの蓄積はタンパク質合成の低下と関連するのかもしれない。
[1] K. Sugimoto, M. Tsuzuki and N. Sato: New Phytol. 185, 676 (2010).
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尾関 文隆, 鐘ヶ江 健, 石崎 公庸, 河内 孝之, 門田 明雄
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0801
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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苔類のゼニゴケ (Marchantia polymorpha) の tdTomato-talin 発現株を用い、葉状体細胞の葉緑体光定位運動時における葉緑体上のアクチンフィラメントの 動態を分析した。細胞骨格阻害剤を用いたこれまでの解析から、葉緑体運動にはアクチンフィラメントが重要な働きをしていることが明らかになっている。また、tdTomato-talin の発現によるアクチンフィラメント可視化株の観察から葉緑体表面には短いアクチンフィラメント (cp-actin filaments) が存在し、絶え間なくその構造を変化させることがわかっている。強光および弱光の青色微光束照射により葉緑体の集合および逃避反応を誘導しアクチンフィラメントを蛍光観察したところ、集合および逃避反応のいずれの場合も運動する葉緑体表面の運動前方端への cp-actin filaments の局在が観察される。今回、cp-actin filaments 局在化を定量化して調べたところ、葉緑体の運動速度は局在の強さに対応して変化することが見いだされた。また、細胞全体への青色光照射においても微光束照射時と同様の cp-actin filaments の構造変化が誘導されることが観察された。これらの結果より葉緑体光定位運動に cp-actin filaments 構造変化の役割を考察したい。
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兼平 清江, 森川 友紀, 姉川 彩, 大西 美輪, 深城 英弘, 三村 徹郎, 橋本 徹, 七條 千津子
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0802
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
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暗黒で発芽した双子葉植物の芽生えは胚軸上部にフックを形成する。フックは地中で茎頂を保護しつつ成長するために必要であり、芽生えが地表に出て光に当たるとフックは開き胚軸が立ち上がるというのが植物生理学の定説である。しかし我々は、光がフックを巻き込ませることをトマトの芽生えで明らかにした。この光受容体はフィトクロムであり、フック巻込みの意義は、子葉を強固に被う種皮を地中で脱ぎ捨てるためであることを、フィールドシミュレーション実験と芽生え種子部の解剖学的調査により示した。さらに種皮をその内部に残る胚乳とともに芽生えから取り除くと光によるフック巻込みが起こらなくなることが明らかになり、種皮もしくは胚乳がフック巻込みに関わることが示された。我々は既にトマト以外の植物種においても光によるフック巻込みを明らかにしているが、それらはいずれも子葉が胚乳に取り囲まれた状態で種皮内に閉じこめられている時フックを巻き込む。そこで今回、胚乳中に光によるフック巻込みを制御する因子が存在するのではないかとの作業仮説を立て、発芽直後のトマト芽生えより取り出した胚乳の水抽出液を、種皮と胚乳を取り去ったトマトの芽生えの子葉に与えたところ、赤色光下でフックが巻き込むことを見出した。その結果の詳細について報告する。
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角村 寧子, 宮脇 克行, 浜岡 宏和, 高橋 章, 野地 澄晴
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0803
発行日: 2011年
公開日: 2011/12/02
会議録・要旨集
フリー
シロイヌナズナにおいてアントシアニン生合成に関連する遺伝子発現に有効な光質はUV-B、UV-Aおよび青色光であることが報告されている。イチゴ花托の着色はUVで促進されることは報告されているが、青色光またはそれ以外の光質の役割はまだわかっていない。本研究では、イチゴ着色における光受容体遺伝子の機能解析のために、さちのか(
Fragaria ananassa)の赤く色づく前の白い花托にLEDを照射し、イチゴ花托への着色効果を解析した。LEDを24時間照射後、暗黒に36時間放置し、アントシアニン含量を定量した結果、青色LED(465 nm)を照射した花托では、緑色(525 nm)、赤色(625 nm)照射と比較して、3倍以上増加した。
また、アグロバクテリウムを介したRNAi法を用いて、青色光受容体遺伝子 (
phototropin,
cryptochrome) の機能解析を行ったところ、全体的に赤色を呈するコントロールと比較して、表皮および内部の着色の低下が観察でされ、RNAi花托のアントシアニン含量は低下(
phot RNAi 約56%、
cry RNAi 約45%)していることがわかった。
以上のことから、イチゴ花托において、青色光の照射により着色が促進され、青色光受容体の機能を抑制すると着色が低下したことから、青色光受容体がアントシアニン生合成に関与していることが示唆された。
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