Leriche症候群は腎動脈分岐部以下の腹部大動脈から両側総腸骨動脈にかけての慢性閉塞に伴う一連の疾患群であり,病変が腎動脈より中枢にまで及ぶことはまれである.今回両側腎動脈に病変が及んだLeriche症候群を経験したので報告する.症例は36歳男性.2012年頃より間欠性跛行が出現.2013年12月より難治性の高血圧を指摘された.血液検査にて各種自己抗体を認め,CT上,腹部大動脈は上腸間膜動脈分岐直後より高度に狭窄し,右腎動脈分岐部から総腸骨動脈にかけて閉塞.右腎動脈の閉塞,左腎動脈の高度狭窄を伴っていた.手術は上腸間膜動脈直下で大動脈を遮断し腎動脈分岐部末梢で離断した.血栓を除去し,腎動脈下でY型人工血管置換術を行った.術後,間欠性跛行,高血圧はともに改善した.病理所見から血栓性閉塞が疑われ,抗リン脂質抗体症候群の関与が考えられた.
単純型大動脈縮窄症の術後生存率は20年で89%, 30年で82%, 40年で79%と報告されている.術後遠隔期に生じる合併症は,術後再狭窄,大動脈瘤,大動脈解離,二尖弁による大動脈弁疾患,感染性心内膜炎,冠動脈疾患,脳血管障害,高血圧と多彩であり,生涯にわたる経過観察が必要である.症例は,生後9カ月に他院で左側方開胸による大動脈縮窄修復術を施行された.26歳時に,胸痛を主訴に当科紹介となり,二尖弁による大動脈弁閉鎖不全症と上行大動脈瘤および基部拡大を認め,Bentall術と部分弓部置換術を行った.37歳時には,遠位弓部大動脈が瘤化し,全弓部置換術を施行した.極めて遠隔期に二回の手術を施行したが,良好な結果を得たので文献的考察を加え報告する.
当院では破裂性腹部大動脈瘤(rAAA)・腸骨動脈瘤(rIAA)に対してEVARを第一選択としている.血行動態が比較的安定したFitzgerald分類4型に対してEVARにより救命し得た2例を経験した.症例1:85歳男性意識消失で救急搬送され,Fitzgerald分類4型のrIAAと診断,Rutherford分類レベル2の血行動態を示した.EVARを施行し血行動態は安定した.術後肺炎を併発したが,術後58日目に独歩退院となった.症例2:69歳男性.意識消失で救急搬送され,Fitzgerald分類4型のrAAAと診断,Rutherford分類2型の血行動態を示した.EVARを行い血行動態は安定,術後11日目に独歩退院となった.血行動態の安定したFitzgerald分類4型には,EVARが有効である可能性が示唆された.