日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
29 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
症例
  • 千葉 慶宜, 大川 美穂, 柴田 豪, 石川 和徳, 新垣 正美, 森下 清文
    2020 年 29 巻 6 号 p. 361-364
    発行日: 2020/11/13
    公開日: 2020/11/13
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は78歳,男性.背部痛を主訴に救急要請.接触時,心肺停止に陥り,心肺蘇生で自己心拍再開を認めた.造影CTで上行大動脈から胸部下行大動脈まで血栓化した偽腔を認め,遠位弓部大動脈の偽腔に造影効果がみられた.帰室後,心タンポナーデによる心停止に陥り,心膜開窓ドレナージを施行.心拍は再開したが出血が持続し,救急外来の隣室の血管撮影室でステントグラフト内挿術を施行.Zone 2より遠位弓部大動脈に留置し,出血をコントロールした.術後合併症はなく,3カ月後のCTでエンドリークはみられなかった.しかし,4カ月後に逆行性A型大動脈解離(RTAD)を発症し,緊急で全弓部大動脈置換術を施行した.Stanford A型急性大動脈解離に対する救命手段としてステントグラフト内挿術は有効だが,RTADの術後発症に注意を要する.

  • 遠藤 佑介, 犬塚 和徳, 佐野 真規, 片橋 一人, 竹内 裕也, 海野 直樹
    2020 年 29 巻 6 号 p. 395-398
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は50歳男性.左下肢間欠性跛行を主訴に当科を受診した.左下肢のABIは0.74と低下していた.造影CTで左膝窩動脈の血流は途絶し,側副路を介して下腿動脈は正常に造影された.造影MRIで左腓腹筋内側頭は外側へ偏位し,左膝窩動脈はさらに外側に偏位していた.左膝窩動脈捕捉症候群と診断して手術を施行した.腹臥位,膝窩部S字切開でアプローチし,膝窩動脈を圧迫する腓腹筋内側頭の異常筋束を切離した.しかし,術中インドシアニングリーン(ICG)蛍光血管造影で膝窩動脈は造影されなかったため,大伏在静脈を用いて膝窩動脈を間置した.術後のABIは1.12と改善し,造影CTで左膝窩動脈以下は良好に描出された.跛行症状も軽快し,術後7病日に退院,以後症状は認めていない.膝窩動脈捕捉症候群は筋束の切離だけでは血行改善が得られない場合が少なくない.本例では腹臥位手術での血流評価にICG蛍光血管造影が有用であった.

  • 佐藤 雅信, 小野 公誉, 尾崎 喜就, 脇田 昇
    2020 年 29 巻 6 号 p. 399-403
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

    大腿深動脈瘤は稀な疾患で,術後再発例の報告も少ない.また腹部大動脈から下肢動脈にかけてびまん性の血管拡張を認める病態はarteriomegalyといわれ,その多くは末梢動脈瘤を合併するといわれている.今回われわれは大腿深動脈瘤の術後15カ月に再発したarteriomegalyを伴った大腿深動脈瘤の1例を経験したので文献的考察を含め報告する.症例は74歳男性.15カ月前に左大腿深動脈瘤に対して瘤切除と自家静脈による総大腿動脈–大腿深動脈バイパス術を施行された.今回,左大腿部に拍動性腫瘤を自覚され,造影CT検査にて45 mm大の左大腿深動脈瘤の再発と血管造影検査にて両側総腸骨動脈から膝窩動脈にかけてびまん性の血管拡張を認めた.手術では,前回手術時の末梢側吻合部以遠に新たな大腿深動脈瘤を認め,瘤切除と人工血管置換術を施行した.順調に経過し退院に至り,術後3年の現在も再発なく経過している.

  • 古川 博史, 奥薗 康仁, 増田 憲保, 上部 一彦
    2020 年 29 巻 6 号 p. 405-410
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は70歳,男性.約12年前に大動脈基部置換術(Bentall手術,機械弁)を受けワーファリン内服中,約2年半前から血液透析中.約5年前に最大径71×78 mmの腹部大動脈瘤(AAA)に対してステントグラフト内挿術(EVAR: ENDURANT II)を施行.その後type IIエンドリークに対し2回コイル塞栓を施行したが,瘤は拡大傾向であった.2020年3月,持続する左側腰腹部痛を認め,腹部造影CTで最大径98×105 mmの巨大なAAAと瘤内にtype IIエンドリークを認めた.AAA切迫破裂の診断で準緊急開腹手術を行った.動脈瘤切開後,2本の腰動脈を縫合止血,下腸間膜動脈は結紮,ステントグラフトは温存し瘤壁を縫縮した.術後経過良好,術後14日目に独歩退院した.透析患者,ワーファリン内服中のEVAR術後type IIエンドリークによるAAA切迫破裂症例に対する外科治療を経験したので報告する.

  • 白谷 卓, 上村 桂一, 徳留 純平, 坂口 祐紀, 宮坂 成人
    2020 年 29 巻 6 号 p. 411-414
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

    われわれは内腸骨動脈閉塞に伴う難治性臀筋跛行に対して,高負荷運動療法を行い良好な経過を得た1例を経験したので報告する.症例は61歳.男性.主訴は右臀筋跛行.既往歴として慢性心房細動,下肢急性動脈閉塞,造影剤アレルギーが認められた.半年以上続く歩行時の臀筋の痛み,疲労感あり当科紹介となった.階段1階分昇降で臀筋跛行の出現を認めた.下肢MRIで右内腸骨動脈の描出不良が認められた.臀筋に高い負荷を与える筋力トレーニングを中心とした運動療法を8週間のプログラムで組み,筋力強化指導を施行したところ,階段昇降時の臀筋跛行は著明に改善し,ほぼ消失した.臀筋に対する高負荷運動療法は非侵襲的であり,その効果も十分に期待できることから今後の臀筋跛行に対する治療の一つのオプションとなりうる可能性が示唆された.

2018年JCLIMB年次報告
  • 日本血管外科学会Jclimb委員会, Ncd Jclimb分析チーム
    2020 年 29 巻 6 号 p. 365-393
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

    2013年以降,日本血管外科学会は,我が国の血管外科医により行われている重症下肢虚血(critical limb ischemia; CLI)診療の現状を明らかにし,その結果を現場の医師に還元することで,医療の質の向上に貢献することを目的として,全国規模のCLI登録・追跡データベース事業を開始した.このデータベースは,非手術例も含むCLI患者の背景,治療内容,早期予後,および治療後5年までの遠隔期予後を登録するもので,JAPAN Critical Limb Ischemia Database(JCLIMB)と呼称し,NCD上に設置されている.2018年は90施設が1145肢(男性758肢:66%,女性387肢)のCLIを登録し,うちASOが1105肢(男性733肢:66%,女性372肢)で,全体の97%を占めた.この年次報告書では,登録肢の背景,虚血肢状態,治療,治療後早期(1カ月)の予後を集計し報告する.

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