日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
24 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
症例
  • 島崎 太郎, 岩橋 徹, 松本 正隆, 川口 聡, 荻野 均
    2015 年 24 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:遠位弓部大動脈瘤に対してステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行.術後造影CT でエンドリークを認めず,経過良好にて退院した.しかしながら,術後3 カ月後の造影CT においてステントグラフト狭窄を認め,同部に対しバルーン拡張術を施行した際に,大動脈瘤内の血栓が末梢に飛散し,腹部大動脈閉塞,左腎動脈閉塞を合併し,経カテーテル的血栓摘除術を必要とした.同時に,さらなる塞栓症を予防する目的で前回のステントグラフト末梢側に新たなステントグラフトを追加挿入した.第15 病日に右総腸骨から外腸骨動脈の残存血栓に対しベアステント留置を行い,第20 病日に無事,独歩退院となった.ステントグラフト狭窄に対するバルーン拡張術は,塞栓症のリスクを伴い慎重に施行すべきであると考える.
  • 林 敏彦, 橋詰 賢一, 本多 正徳, 古泉 潔, 井上 慎也, 保土田 健太郎
    2015 年 24 巻 2 号 p. 82-86
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/10
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:ステントグラフト挿入後の脚閉塞は,術後認める重篤な合併症の1 つである.当院では,ENDURANT® AAA stent graft 留置後の脚閉塞を2 例経験している.症例1 は62 歳男性.ステントグラフト留置後1 年目,膀胱癌に対する入院中に突然の右下肢の疼痛を訴えた.CT でステントグラフト右脚内の血栓閉塞と右脚近位に狭窄を認めた.血管内治療による血栓溶解を行った後,狭窄部にステントを留置した.症例2 は64 歳男性.ステントグラフト留置後3 カ目,右下肢の痺れを訴え外来受診.CT でグラフト右脚の閉塞と右脚近位に狭窄を認め,血栓除去術後に右脚近位にステントを留置した.いずれの症例もロングネック症例で,治療後速やかに症状は改善した.両側脚のradial force 不均衡を原因として,脚近位の狭窄と脚閉塞が疑われた2 例につき,文献的考察を加え報告する.
  • 松山 翔, 山下 慶之, 松元 崇, 内田 孝之, 安藤 廣美, 田中 二郎
    2015 年 24 巻 2 号 p. 87-90
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は72 歳男性.意識障害を主訴に当院へ入院となり,精査の結果Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)による肺炎,縦隔炎,敗血症と診断された.入院4 日目に施行された造影CT にて最大径60 mm の右鎖骨下動脈瘤が出現し,切迫破裂所見を伴っていたため,手術適応と考えられた.敗血症,急性期DIC の状態であり,開胸手術は危険性が高かったため,二期的開胸手術を考慮した上で,緊急血管内治療を行う方針とした.手術は右総頸動脈から腕頭動脈へGore Excluder 脚を挿入し,右鎖骨下動脈へコイル塞栓術を行った.術後に瘤の拡大は停止し,感染制御も可能であり,術後153 日目に自宅へ退院となった.全身状態が不良な感染性右鎖骨下動脈瘤の症例に対し,緊急ステントグラフト内挿およびコイル塞栓術による血流遮断は有用と思われた.
  • 芝 聡美, 相澤 啓, 村岡 新, 齊藤 力, 大木 伸一, 三澤 吉雄
    2015 年 24 巻 2 号 p. 91-94
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は基礎疾患に20 年来の糖尿病治療歴を持つ59 歳の男性で,急速に拡大する感染性腕頭動脈瘤の診断にて緊急入院した.待機的な治療を行う方針としたが,腕頭動脈瘤の拡大による気管圧排,それに伴う呼吸困難を認めたため,緊急で非解剖学的に左-右総頸動脈バイパス,感染瘤切除と大網充填を施行した.術後腕頭動脈末梢側断端閉鎖部に仮性動脈瘤の形成を認めたため血管内治療としてcoiling を施行し,良好な結果を得たので,若干の文献を含めて報告する.
  • 後藤 芳宏, 澤田 幸史, 小川 真司, 小山 裕, 馬場 寛, 大川 育秀
    2015 年 24 巻 2 号 p. 95-98
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:近年,カテーテル治療後に止血デバイスが使用されるが,合併症として感染,仮性動脈瘤などが挙げられる.止血デバイスによる感染性仮性大腿動脈瘤の2 例を経験した.症例1 は82 歳男性.前医で血管形成術後の鼠径部に止血デバイスを用いた.その後穿刺部に発赤腫脹を認め,仮性動脈瘤の診断で手術目的に紹介となった.感染は広範囲で,血管壁は破壊されており,感染巣のデブリードメントと静脈を用いたバイパス術を施行した.術後経過良好で前医転院となった.症例2 は60 歳男性.前医で血管形成術後の止血にデバイスを使用した.術後に穿刺部感染を認め抗菌薬投与を行うも改善なく,紹介となった.感染は症例1 よりも広範囲であり,感染部のデブリードメントと人工血管を用いた非解剖学的バイパス術を施行した.感染の再燃なく退院となった.止血デバイスによる感染性動脈瘤に対して徹底したデブリードメントと血行再建を施行し良好な結果を得た.
  • 石垣 隆弘, 村上 博久, 邉見 宗一郎, 酒井 麻里, 吉田 正人, 向原 伸彦
    2015 年 24 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は38 歳,男性.34 歳時(4 年前)にベーチェット病と診断され,以後近医にて内科的治療を受けていたが,症状は寛解・増悪を繰り返していた.今回突然腹痛が出現し他院を受診,腹部大動脈瘤破裂の診断で当院に救急搬送となった.緊急で開腹下腹部大動脈人工血管置換術を施行した.術後合併症は認めず術後12 日目に軽快退院し,現在も良好に経過している.
  • 合志 桂太郎, 森本 和樹, 木谷 公紀, 高橋 章之, 森下 博之
    2015 年 24 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:気管腕頭動脈瘻は気管切開後の合併症として発生頻度は低いが非常に致死率が高い疾患である.救命のためには早期の一次止血を得ることが重要であり,出血性ショックや呼吸機能低下などのために手術加療に至れない症例も多く救命することが困難な疾患である.症例は25 歳,男性.3 年前に気管軟化症に対し気管切開を施行されていた.自宅にて気管切開孔より多量の出血を来し近医に救急受診となった.気管内挿管に切り替え,カフで一次止血を得た状態で当院へ搬送されたが,血液誤嚥のために呼吸状態が著しく悪化しており,全身麻酔導入不可と判断された.全身状態改善のためには安定した止血の維持が必要であり,局所麻酔下に腕頭動脈coil 塞栓術を施行し,1 週間後に全身麻酔下に腕頭動脈離断術を施行し救命に至った.腕頭動脈coil 塞栓術は気管腕頭動脈瘻の一時的止血法として有効な手段であると考えられた.
  • 益田 智章, 山本 修, 末澤 孝徳, 七条 健
    2015 年 24 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/10
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:EVAR 後のtype Ia endoleak は,瘤の拡大から破裂につながる危険性があり,早急に治療を必要とする.症例は85 歳女性.EVAR 後5 年目にtype Ia endoleak を認め,NBCA とコイルを用いて塞栓術を施行し,endoleak は消失したが,その5 カ月後に背部痛を伴う切迫破裂の状態となり,瘤径の拡大を伴うtype Ia endoleak の再発を認めた.中枢側ネックの拡大が原因であったため,追加の血管内治療は適応外と判断し,大動脈バンディングを施行した.バンディング後はtype Ia endoleak が消失し,9 日目に退院した.EVAR 後の中枢側ネック径の拡大によるtype Ia endoleak に大動脈バンディングは有効であると考えられる.
  • 片山 暁, 川本 純, 橘 仁志, 荒川 三和, 北浦 順也
    2015 年 24 巻 2 号 p. 113-116
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/10
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:症例は62 歳男性.突然の腹痛を自覚した後両下肢が全く動かなくなり近医受診,CT にて大動脈解離を疑われ当院に緊急搬送となった.CT では胸部下行大動脈にエントリーを有するB 型急性大動脈解離で造影後期相でも偽腔の血流は認めず腹部で真腔は高度狭小化していた.両側大腿動脈は微弱に触知した.下肢の高度虚血はなく運動障害は脊髄虚血によるものと判断し,側副血行路である内腸骨動脈の血流改善のためエントリー閉鎖目的の緊急胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を行った.TEVAR 術後両側大腿動脈は良好に触知するようになり麻酔覚醒時から両下肢の動きを認めた.その後脊髄ドレナージを行いリハビリを経て術後42 日目に独歩でリハビリ病院へ転院となった.急性大動脈解離による肋間,腰動脈の血流障害により発症した脊髄障害に対し,側副血行路維持目的で行ったTEVAR と脊髄ドレナージは有効であったと考えられた.
  • 川島 隆, 小宮 達彦, 恒吉 裕史, 島本 健, 境 次郎, 平岡 俊文
    2015 年 24 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:今回われわれはListeria 感染性腎動脈下腹部大動脈瘤に対してRifampicin(RFP)浸漬人工血管置換術を施行し良好な結果を得たので報告する.症例は84 歳女性.2 週間持続する発熱を主訴に他院受診しCT にて周囲組織に炎症を伴う腎動脈下感染性腹部大動脈瘤と診断した.徐々に瘤径の拡大を認め炎症反応再上昇したため緊急手術となった.手術により動脈瘤壁を含め周囲組織を除去,RFP 浸漬人工血管にて解剖学的再建を施行した.血液培養からはListeria が検出された.術後4 週間静注抗菌薬を投与した.術後1 年経過し,感染の再燃もなく外来通院中である.
  • 橋本 和憲, 神谷 千明, 北岡 斎, 加賀谷 英生, 出口 順夫, 佐藤 紀
    2015 年 24 巻 2 号 p. 122-125
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/25
    [早期公開] 公開日: 2015/04/09
    ジャーナル オープンアクセス
    要旨:左第5 趾に虚血性潰瘍を有する85 歳男性.血行再建を希望されず外来で保存的に加療をしていたが,懐炉による低温熱傷により,左足背部・足底部に水泡に続発する広範な潰瘍が形成され緊急入院となった.血管造影検査では左浅大腿動脈と遠位膝窩動脈に狭窄を認め,下腿動脈は閉塞し足部で足背動脈が描出された.バイパスターゲット部位の皮膚に熱傷が及んでいたため,腓骨動脈への血管内治療を先行させ,バイパスターゲット部位の熱傷が治癒後,浅大腿動脈-足背動脈バイパス術を施行した.植皮の追加後,潰瘍は完全に治癒した.熱傷を伴う虚血肢の治療は難渋するが,血管内治療とバイパス手術を二期的に組み合わせることで救肢し得た症例を経験したので,バイパス手術に先行させる場合の血管内治療における配慮を含め報告する.
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