日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
32 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 滝浪 学, 緑川 博文, 植野 恭平, 太田 和寛, 堀田 明敬, 菅野 恵
    2023 年32 巻1 号 p. 13-18
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】亜急性期preemptive TEVAR(PTEVAR)の成績と瘤径変化関連因子について考察した.【方法】対象は38例,TEVAR 1年後の瘤径縮小S群32例と瘤径拡大N群6例に分け,術前および術後因子,CT評価(Parsa分類)について検討した.【結果】統計学的有意な瘤径変化に関与する因子はS群で術前re-entryなし,術後6カ月以内の偽腔消失,Parsa分類3,N群で術前の腸骨領域re-entry,偽腔全開存,中枢landingがzone 2,術後type Ia EL,type V EL,Parsa分類0であった.追加治療に関して,N群では中枢側に2例,S群では末梢側に1例,さらにre-entry閉鎖を要した症例を各々に1例認めた.【結論】亜急性期PTEVARは有効であったが,広範囲な解離,zone 2 landing,広範囲偽腔残存例では,瘤径が縮小しない傾向にあった.

症例
  • 藤田 顕弘, 斎藤 聰, 坪根 咲里依, 小林 俊郎, 郷良 秀典
    2023 年32 巻1 号 p. 1-5
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル オープンアクセス

    足背動脈瘤は末梢動脈瘤の中でも極めて稀な疾患であり,手術に際しては血行再建の要否について一定の見解が得られていない.当院で足背動脈瘤の2手術例を経験したので文献的考察を含め報告する.1例目は囊状瘤であり瘤切除後,端々吻合で血行再建を施行した.術後4年目の造影CTで再建血管は閉塞し側副血行路の発達が確認された.2例目は紡錘状動脈瘤であり瘤切除後,断端の距離があり直接端々吻合による再建は不可能であった.術前造影CTで弓状動脈から足底動脈弓にかけての血行路を確認できていたこと,また術中所見により血行再建は不要と判断した.いずれも術後末梢の血流障害は認めていない.末梢動脈瘤の中でも極めて稀な足背動脈瘤の2手術例を経験したため報告する.

  • 山本 諭, 重松 邦広, 小櫃 由樹生
    2023 年32 巻1 号 p. 7-11
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル オープンアクセス

    閉塞導管により血栓塞栓症を生じるstump syndromeが報告されているが,自家静脈を用いた下肢血行再建においても同様の血栓塞栓症が起こるかは明らかでない.症例は41歳,男性.7年前に大伏在静脈を用いて大腿動脈–脛骨腓骨動脈幹バイパス施行.3年前に静脈グラフト内血栓およびその塞栓による腓骨動脈閉塞・末梢吻合部狭窄に対し,対側大伏在静脈を用いて静脈–静脈側端吻合を行い静脈グラフト–前脛骨動脈バイパス施行.その後,中枢吻合をとった旧静脈グラフトの末梢側から中枢側に血栓が進展し,静脈–静脈側端吻合部狭窄が出現.静脈パッチ形成によるグラフト孔閉鎖術・吻合部狭窄解除術を施行した.術中所見でフィブリン血栓の突出あり,塞栓症を生じ得る状態だった.本症例により,stump syndrome類似の血行動態になれば,自家静脈を用いた下肢血行再建においても血栓塞栓症が起こり得ることが確認された.

  • 村上 貴志, 吉龍 正雄, 齋藤 哲也, 東 将浩, 深井 照美, 榊 雅之
    2023 年32 巻1 号 p. 19-23
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル オープンアクセス

    異物誤飲により小腸粘膜を損傷し,菌血症の原因となって感染性大動脈瘤に至った報告は稀である.症例は60歳代喫煙家女性で2週間前から腰痛,発熱と炎症反応の上昇を認めたため当院を紹介された.造影CTで小腸内に誤飲義歯を認めたが腸管穿孔や腹膜炎を示唆する所見はなく,胸腹部大動脈に最大短径66 mmの仮性瘤を認めた.破裂リスクが極めて高いと判断し,人工心肺下胸腹部大動脈置換術を施行した.瘤周囲に多量の膿を認めたため,可能な限り郭清した.回復期に義歯の除去手術を予定していたが,術後8日目に腹膜炎を発症した.義歯による空腸穿孔の診断で空腸切除術を施行したが,最終的に多臓器不全により術後90日目に永眠された.血液培養と瘤周囲の膿からStreptococcus intermediusを検出した.義歯誤飲による消化管損傷が原因と考えられた感染性大動脈瘤という稀な症例を経験したため報告する.

  • 勝部 年雄, 秋田 雅史, 稲村 順二
    2023 年32 巻1 号 p. 25-29
    発行日: 2023/01/27
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は70歳女性.他院にて腹部大動脈瘤を指摘され,当院紹介受診された.慢性腎不全に対し維持透析中であり,大動脈の石灰化も強く,開腹手術後でもあることからステントグラフト留置術を行う方針となった.大動脈の形状は大きな屈曲もないことからExcluderを使用することとした.メインボディ中枢側を展開後,対側ゲートをカニュレーションし,対側レッグを留置の後,constraining systemの除去を試みたが,中枢が拘束されてしまい困難であった.ワイヤーを交換し,バルーンで中枢側を固定しつつ用手的にconstraining systemを除去し,システム全体を抜去した.抜去したデバイスにはconstraining systemのロックピンが屈曲しており,ワイヤーがロックピンとconstraining loopのアンカー部に入り込んでしまったことが考えられた.

  • 村岡 拓磨, 島田 晃治, 竹久保 賢
    2023 年32 巻1 号 p. 31-35
    発行日: 2023/01/27
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は57歳女性.13年前に偽腔開存型急性大動脈解離Stanford B型を発症し保存的に経過観察中.2年前に急性Stanford A型解離を発症し,上行大動脈置換術および胸部下行大動脈のULP病変に対してステントグラフト内挿術を行った.1年前,左下肢と臀部に偽腔血栓由来の末梢多発塞栓を生じ解離性大動脈瘤の拡大も伴い手術適応と判断した.解離は胸部下行大動脈から左外腸骨動脈におよび,腹部分枝動脈はいずれも真腔灌流であった.残存エントリーは腹腔動脈起始部中枢側に,リエントリーは左総腸骨動脈の内腸骨動脈分岐部手前にあり左内腸骨動脈は偽腔灌流であった.左大腿動脈を穿刺し左総腸骨動脈のリエントリー経由で左内腸骨動脈を塞栓,ステントグラフト内挿術によりエントリー,リエントリーを閉鎖した.術後偽腔は完全血栓化し,現在術後1年経過しているが大動脈径の拡大はなく経過している.

  • 井内 幹人, 那須 通寛, 田中 仁
    2023 年32 巻1 号 p. 37-40
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/02/01
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は67歳,女性.右大腿外側の痛みを主訴に整形外科を受診した.MRIにて異常血管を指摘され当科へ紹介された.CT血管造影にて右内腸骨動脈は上臀動脈分岐後に大坐骨孔を通り紡錘状の最大外径2.0 cmと瘤化し,大腿背側より膝窩動脈へ連続していた.浅大腿動脈は低形成で大腿末梢部にて終止し,Pillet-Gauffre分類type 2aの遺残坐骨動脈の瘤化と診断した.拍動した遺残坐骨動脈瘤による坐骨神経への圧迫症状と考えられた.坐骨神経周囲への外科的侵襲を避けるためVIABAHNを瘤内に留置した.退院前には瘤の縮小は証明できなかったが,endoleakを認めず,坐骨神経痛は軽減した.1年後に瘤は完全に縮小しており,同時に坐骨神経痛,運動障害は消失していた.4年間外来観察中で,VIABAHNの破損・閉塞もなく,endoleakも認めず良好に開存しており,坐骨神経痛もなく順調に経過している.

  • 宮崎 真奈美, 大井 正也, 東田 隆治, 高橋 啓
    2023 年32 巻1 号 p. 51-55
    発行日: 2023/02/17
    公開日: 2023/02/17
    ジャーナル オープンアクセス

    膝窩静脈静脈性血管瘤(popliteal venous aneurysm; PVA)は,肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism; PTE)を合併し,時に致死的となりうるため注意を要する.ほとんどは孤発性であるが,今回われわれは報告の少ない重複PVAの1例を経験した.症例は79歳,女性.労作時の呼吸困難を主訴に近医より紹介され,造影CTにて急性PTEと診断された.同時に右膝窩静脈に約30 mm,内部に血栓を有する囊状の血管瘤と,近傍に約15 mmの紡錘状の瘤化を認めた.PTEに対する治療ののちこれら二つの瘤を同時に切除し,大伏在静脈を使用して血管形成術を行った.半年後の現在まで再発なく経過している.

  • 柳清 洋佑, 杉山 博太郎, 坂田 純一, 中村 雅則
    2023 年32 巻1 号 p. 57-61
    発行日: 2023/02/17
    公開日: 2023/02/17
    ジャーナル オープンアクセス

    総大腿動脈は,カテーテル時の穿刺部あるいは血行再建時の吻合部として,頻回に使用される.そのため稀に感染が及び治療に苦慮する場合がある.われわれは2例経験し,1例目は閉塞性動脈硬化症に対する総大腿動脈パッチ形成術後の感染,2例目は冠動脈カテーテル治療穿刺部の感染性仮性動脈瘤破裂であった.いずれの症例も出血をきたし緊急手術を行った.感染した動脈壁は脆弱であり,総大腿動脈の温存・再建は困難であった.2例とも大腿動脈閉鎖による感染巣の隔離および大伏在静脈グラフトを用いた外腸骨動脈–浅大腿動脈バイパス術にて血行再建を行った.緊急手術であったためグラフトは閉鎖孔を経由せず鼠径あるいは大腿外側の皮下トンネルを通して浅大腿動脈まで導いた.創治癒遅延はあったが抗生剤治療と創部処置にて治癒した.大腿動脈感染・出血に対する緊急時の治療法として外腸骨動脈–浅大腿動脈バイパス術は有用である.

  • 近藤 禎晃
    2023 年32 巻1 号 p. 63-67
    発行日: 2023/02/23
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢静脈瘤血管内塞栓術(cyanoacrylate closure)の経過において未治療の浅在性分枝にglue流入に伴うphlebitisを生じ,内服治療で軽快が得られず切除に至った症例を経験した.症例は75歳男性.右大伏在静脈(great saphenous vein: GSV)本幹に対し血管内塞栓術を施行.GSV本幹には顕著な炎症は認めず経過したが,術後1週間目に未治療のGSV分枝に発赤,痛みを伴う硬結が生じphlebitisと診断.全身症状や他の部位の皮膚病変は伴わず,NSAIDs投与での経過観察を行った.しかしその後も炎症が軽快せず痛みが持続するため,硬結部の摘出手術を施行.病理組織検査で血管内にglueを確認し,異物反応に伴う炎症所見を認めた.GSV本幹を含め炎症の再燃は認めないが,長期の経過観察が必要であると考える.

  • 緑川 博文, 太田 和寛, 植野 恭平, 滝浪 学, 堀田 明敬, 菅野 恵
    2023 年32 巻1 号 p. 69-72
    発行日: 2023/02/23
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル オープンアクセス

    腹部大動脈瘤(AAA)に対するステントグラフト内挿術(EVAR)は,その低侵襲性および有効性から広く普及し,本領域の不可欠な治療となっている.しかし,遠隔期におけるendoleakに関連する瘤径拡大は,その臨床成績向上には重要な問題である.今回初回EVAR 14年後に原因不明の著明な瘤径拡大に対し開腹瘤縫術施行後,再度の瘤径拡大を認め,type IVないしV endoleakと考え,人工血管置換も考慮したが,手術リスクを考慮し,ステントグラフトによるrelining techniqueを行い,瘤径縮小を認めた症例を経験したので報告する.

  • 三輪 駿太, 神谷 賢一, 松林 優児, 森 陽太郎, 髙島 範之, 鈴木 友彰
    2023 年32 巻1 号 p. 73-77
    発行日: 2023/02/23
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は80歳男性.胸痛精査のCTで弓部大動脈に囊状瘤を認め,待機的に弓部大動脈全置換術を施行した.術後の覚醒は問題なく,翌日に抜管した.しかし術後3日目に血痰と右肺のconsolidationを認め,さらに術後15日目には突然の右大量血胸をきたしショック状態に陥った.その後,術中に切除した大動脈瘤壁の病理組織から多数のIgG4陽性形質細胞を認め,IgG4血管炎と判明した.水溶性プレドニゾロンを投与開始すると,速やかに肺野CT所見の改善が得られた.IgG4と肺病変の関連が示唆されたが,肺生検には至らず不明であった.IgG4関連疾患ではCRPの上昇が認められないことが多く,赤血球沈降速度(赤沈値)が鋭敏な指標とされている.本症例でも赤沈値を治療指標にステロイド容量を調節し,良好な治療結果を得た.

  • 伊波 孝路, 仲村 輝也, 王 云驄, 星田 義彦, 大郷 恵子, 畠山 金太
    2023 年32 巻1 号 p. 79-82
    発行日: 2023/02/23
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は41歳,女性.2年以上遷延した原因不明の左鼠径部痛を主訴に当院を受診した.超音波検査および造影CTにて左大腿静脈に接する腫瘤を指摘された.確定診断と治療目的に摘出術を施行した.左総大腿静脈の一部を腫瘍と一塊に切除し,大伏在静脈in situ transposition法(May-Husni変法)により再建した.病理組織学的に腫瘍は大腿静脈より発生し,上皮様形態を示す腫瘍細胞の増殖が認められた.免疫染色にてCD31, CD34, ERGなどの血管内皮マーカーが陽性であり,さらに類上皮血管内皮腫に特徴的なWWTR1-CAMTA1融合遺伝子の存在を示唆するCAMTA1が陽性であった.以上より非常に稀な大腿静脈由来の類上皮血管内皮腫と診断した.

ガイドライン解説
feedback
Top