日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
26 巻 , 5 号
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総説
  • 村上 厚文
    2017 年 26 巻 5 号 p. 275-283
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/10/18
    ジャーナル フリー

    本稿では,末梢動脈疾患(peripheral artery disease: PAD)に対するハイブリッド治療の現状について紹介する.ハイブリッドとは“異種のものを組み合わせたもの”と定義され,外科領域では外科手術:Open Surgery(OS)と血管内治療(手術):Endovascular Therapy(Surgery),以下EVT(S),本稿ではEVTと記す,を組み合わせた治療法を指すことが多い.具体的には,inflow病変がEVT, outflow病変がOSで腸骨動脈領域のEVTに総大腿動脈の血栓内膜摘除(Thromboendarterectomy: TEA)の組み合わせが代表例となる.逆にinflow OS, outflow EVTまたはこれらの色々な組み合わせがあり,具体例を提示した.現時点でハイブリッド治療を俯瞰するようなガイドラインは存在しないが,治療法の選択に当たってはその妥当性が厳しく問われる.しかしとくに血管内治療デバイスの進化により日々その選択肢も変化し,妥当性も変化していると言える.まずEVT, Open Surgeryそれぞれ現行のガイドラインに沿った選択肢を遵守することが肝要で,その上で患者の背景因子も考慮に入れた適正かつ最適な組み合わせを検討する使命が外科医には課せられている.

講座
  • 加藤 雅明
    2017 年 26 巻 5 号 p. 259-263
    発行日: 2017/10/06
    公開日: 2017/10/03
    ジャーナル フリー

    Frozen elephant trunk法は弓部大動脈瘤治療のために考案された,外科手術とステントグラフト治療を組み合わせた元祖ハイブリット治療である.その専用デバイスの開発・薬事承認とともに,日本のみならず全世界で普及している.本法の最も良い適応は,急性A型解離にてTotal arch repairが必要となる症例であるが,弓部瘤やB型大動脈解離等,ほぼ全ての弓部大動脈手術に応用できる.本法の利点は正中開胸では吻合の難しい下行大動脈まで,左開胸なく人工血管を移植でき,肺合併症が少ないことである.最大の欠点は脊髄神経合併症の発生頻度が通常の弓部置換に比し高いことであるが,この脊髄神経障害は複数の注意点を厳守することにより3%まで減少する.

原著
  • 江口 大彦, 本間 健一
    2017 年 26 巻 5 号 p. 235-239
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/09/16
    ジャーナル フリー

    【目的】バスキュラーアクセス手術における超音波ガイド下腋窩神経ブロック法(ultrasound-guided axillary nerve block: US-ANB)の表在静脈拡張効果とその意義を検討した.【方法】2016年7月から2017年4月までにUS-ANBを行ったバスキュラーアクセス手術78例を対象とし,ブロック前後の尺側皮静脈径・静脈拡張率などを検討した.【結果】ブロック前後で尺側皮静脈径は3.0±1.1 mmから4.1±1.2 mmへと有意に拡張し(p<0.001),静脈拡張率は143±34%であった.静脈拡張効果により人工血管内シャント作成症例の92%で尺側皮静脈への吻合が可能であった.【結論】US-ANBによって表在静脈は有意に拡張し,吻合静脈の選択と吻合手技が容易になることが示された.US-ANBはバスキュラーアクセス手術における麻酔法の有効なオプションであると考える.

    Editor’s picks

  • 神藤 由美, 西巻 博, 千葉 清, 小川 普久, ウッドハムス 玲子, 深田 睦, 寺田 仁
    2017 年 26 巻 5 号 p. 265-270
    発行日: 2017/10/06
    公開日: 2017/10/04
    ジャーナル フリー

    【目的】腹部大動脈瘤(AAA)などに対するendovascular aneurysm repair(EVAR)において,企業製分岐型ステントグラフト(SG)の使用が問題となる解剖学的不適合症例に対し考案した,Double D technique(DDT)の有用性を報告する.【方法】2012~2014年にDDTを行った6例を後方視的に調査.【結果】平均年齢73.5歳,男性4例.疾患はAAA破裂1例,両側総腸骨動脈瘤2例,Aortoiliac occulusive disease 2例,解離性大動脈瘤1例.DDT施行理由は大動脈分岐部狭小3例,両側内腸骨動脈塞栓に伴う下腸間膜動脈血流温存目的2例,解離性大動脈瘤真腔狭小化1例.手技的成功100%,一次脚閉塞率16.6%,二次脚閉塞率0%.endoleak 0%.【結論】企業製分岐型SG解剖学的不適合症例に対してDDTは有用な代替手段と考える.

症例
  • 山添 真治, 原田 裕久, 庄司 高裕, 関本 康人, 最上 拓児
    2017 年 26 巻 5 号 p. 241-245
    発行日: 2017/10/04
    公開日: 2017/09/29
    ジャーナル フリー

    腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術におけるtype Ibエンドリークは腹部大動脈瘤の破裂の原因となる合併症である.症例は74歳男性.両側総腸骨動脈瘤を合併した腹部大動脈瘤に対して,先行して両側内腸骨動脈をコイル塞栓した後に,ステントグラフト内挿術を施行した.術後13カ月の診察にて腹部正中部に拍動性の瘤を再触知し,造影CTにてステント右脚の右総腸骨動脈瘤内への中枢側逸脱およびtype Ibエンドリークを認めた.術後19カ月の造影CTにて逸脱の増悪およびtype Ibエンドリークの増大が見られたため,ステントグラフト再内挿術を施行した.右総大腿動脈からアプローチし,ステント右脚から右外腸骨動脈にかけてグラフト脚を再挿入した.術後4カ月の造影CTでエンドリークの消失が確認された.ステント脚の逸脱によるtype Ibエンドリークの報告は少ないため,文献学的考察を含めて報告する.

  • 岡留 淳, 奥 結華, 星野 祐二, 伊東 啓行
    2017 年 26 巻 5 号 p. 247-250
    発行日: 2017/10/04
    公開日: 2017/09/29
    ジャーナル フリー

    72歳男性.腹痛,吐き気を主訴に前医受診.入院時CTで腹部に囊状動脈瘤を認めた.入院3日後のCTで既存の動脈瘤に増大傾向を認め加療目的で当院に転院.炎症反応増悪と動脈瘤の著明な増大を認め,入院翌日,人工血管置換術を施行.入院時の血液培養,瘤壁培養にてKlebsiella pneumoniaeが陽性であった.術後5日のCTで中枢吻合部に仮性瘤を認めEVARを施行.初回手術11日後,人工血管周囲に膿瘍を認め人工血管部分除去,自家静脈置換術を施行,以後後腹膜持続洗浄を施行.初回手術30日後のCTで胸部下行大動脈に新規囊状瘤形成を認め,TEVARを施行.44病日に退院となり,現在に至るまで瘤の増大,新規形成は認めず.Klebsiella pneumoniaeによる感染性動脈瘤は稀である.感染性動脈瘤は,診断,起炎菌,治療法,とくに血管内治療の是非に関してまで未だに議論の多い疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 髙橋 悟朗, 小田 克彦, 鷹谷 紘樹, 寺尾 尚哉, 長嶺 進
    2017 年 26 巻 5 号 p. 251-254
    発行日: 2017/10/06
    公開日: 2017/10/03
    ジャーナル フリー

    異所性右鎖骨下動脈(ARSA)を伴った急性A型大動脈解離を経験したので報告する.症例は56歳男性.突然の背部痛を主訴に救急搬送され上行大動脈から両側総腸骨動脈に至る解離を認めた.ARSAを認め,解離のエントリーはARSA起始部に近接していた.緊急で施行した上行弓部大動脈置換術では,直視下に観察できた左鎖骨下動脈までを再建した.ARSA起始部周辺は脆弱化が危惧され,かつ正中創からのアプローチでは外科的処置が難しいためあえて残存した.術後2日目のCT評価で,ARSA起始部および近傍の大動脈の拡大が確認され,術後4日目に胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行し,ARSA起始部,エントリーは閉鎖され,偽腔は血栓化した.ARSAを伴う急性A型大動脈解離に対して,ARSA起始部を上行弓部大動脈置換術では処置せず,術後早期のTEVARで対応する方法は,救命のために有効であると考えられた.

  • 増田 貴彦, 畑 正樹, 山谷 一広, 鈴木 智之, 寺尾 尚哉
    2017 年 26 巻 5 号 p. 255-258
    発行日: 2017/10/06
    公開日: 2017/10/03
    ジャーナル フリー

    下行大動脈にエントリーを有する逆行性StanfordA型急性大動脈解離(RTAAD)に対しては,胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)によるエントリー閉鎖の有効性も報告されている.症例は胸背部痛で発症した52歳男性で,RTAADと診断されたが,上行大動脈の偽腔は血栓化しており保存的加療が選択された.徐々に抵抗性高血圧,腎不全,呼吸不全が進行し,造影CTで真腔狭小化の増悪あり,発症8日目にTEVARを行った.Gore Conformable TAG(CTAG)を左鎖骨下動脈からrapid pacing下に展開し,その末梢にCook Zenith Dissection stentを両側腎動脈下まで留置した.術後経過は良好で,術後24日目に独歩退院となった.上行大動脈の偽腔は遠隔期に退縮,消失した.臓器灌流障害を伴ったRTAADに対して,ベアステントを併用しTEVARを行い,良好な結果を得た.

  • 三浦 修平, 山田 陽, 伊庭 裕, 丸山 隆史, 瀧山 晃弘, 中西 克彦
    2017 年 26 巻 5 号 p. 271-274
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/10/18
    ジャーナル フリー

    炎症性腹部大動脈瘤破裂に対する緊急手術後に,対麻痺を合併した症例を経験したので報告する.症例は81歳,女性.腹痛を主訴に当院に救急搬送された.CTにて,腹部大動脈瘤の周囲にmantle signと思われる強い造影効果を認め,後腹膜腔に多量の血腫が貯留していた.炎症性腹部大動脈瘤破裂と診断し,緊急手術を施行.腎動脈下腹部大動脈で血行遮断し,人工血管置換術により救命しえたが,術後に下肢対麻痺を認めた.腎動脈下腹部大動脈瘤手術の脊髄虚血の発生は極めて稀である.脊髄虚血の予防には,大動脈遮断時間を短縮すること,脊髄根動脈やAdamkiewicz動脈への血流を維持するために周術期の低血圧の回避が重要である.ステントグラフト内挿術の治療選択も含め,文献的考察を加え検討した.

  • 呉 晟名, 髙橋 信也, 田口 隆浩, 片山 桂次郎, 黒崎 達也, 末田 泰二郎
    2017 年 26 巻 5 号 p. 285-288
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/10/31
    ジャーナル フリー

    感染性腕頭動脈瘤は破裂する危険性が高く,早期診断・早期治療が求められる.標準的治療は広範囲廓清および血管形成術であるが,近年血管内治療の報告が散見される.われわれは感染性腕頭動脈瘤に対し血管内治療を行った一例を経験した.患者は65歳男性,感染性腹部大動脈瘤破裂に対し人工血管置換術を施行した.同時に腕頭動脈瘤も合併した.フォローCTで瘤径が増大し,PET-CTで18F-FDGの集積亢進を認めた.感染性腕頭動脈瘤と診断し,弓部大動脈への操作を回避するために,腕頭動脈へのステントグラフト留置および右総頸動脈–鎖骨下動脈バイパスを施行し,瘤内へのtype 2エンドリークをコイル塞栓した.術後は瘤の拡大および感染の再燃なく良好に経過した.感染性腕頭動脈瘤に対する血管内治療は高リスク患者に対する治療法の1つであると考えるが,長期予後は不明であり,さらなるフォローアップが必要である.

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