秩父山地雲取山南北両面の標高 1,000~2,018m の森林内(区域I:標高約 1,000~1,400m,区域II:標高約 1,400~1,750m,区域III:標高約 1,750~2,018~1,700m)で捕獲されたヒメネズミの繁殖活動について検討した.雄では精巣および精嚢長径がともに 8.5mm 以上の全個体において,精巣上体尾部に精子が観察された.これらの個体は大部分体重 14.0g より重かったことから,この体重を越えた雄を成体とみなした.雌では膣開口,妊娠および哺乳が認められた個体は大部分体重 12.0g より重かったことから,この体重を越えた雌を成体とみなした.いずれの区域においても春から秋にかけて繁殖が行われたが,標高のより低い区域(IおよびII)では夏に繁殖が低下する傾向がみられた.年間を通じての平均胎仔数は4.00であり,標高の違いにより胎仔数に有意差は認められず,北海道から九州まで1腹胎仔数における地域的な変動は少なかった.1繁殖期中に2回出産する雌が存在することは確実であった.
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