島根県におけるニホンイノシシ(
Sus scrofa leucomystax)に対する効果的な捕獲数増加策を検討するため,狩猟活動と環境要因が狩猟者のイノシシの捕獲数に与える影響を分析した.狩猟活動は出猟カレンダーから抽出し,銃猟・罠猟に共通して狩猟者の狩猟歴,捕獲数の2要因,銃猟では出猟日数,大区画出猟メッシュ数,小区画出猟メッシュ数,平均出猟人数の4要因,罠猟では罠設置延べ数,大区画罠設置メッシュ数,小区画罠設置メッシュ数,罠設置密度の4要因とし,銃猟では1グループ,罠猟では狩猟者1人の1狩猟期間あたりの狩猟活動として集計した.環境要因は,平均最深積雪量と堅果類の豊凶の2要因とし,堅果類の豊凶にはそれと強い相関関係があるツキノワグマ(
Ursus thibetanus)の出没情報件数を用いた.狩猟者1グループあるいは1人あたりの捕獲数と狩猟活動および環境要因との因果関係について,銃猟,くくり罠猟,餌付け罠猟,くくり罠と餌付け罠の併用に4分類した狩猟方法ごとに,共分散構造分析を用いて分析した.
捕獲数への直接効果が最も強かったのは,銃猟では出猟日数で,出猟日数と小区画出猟メッシュ数の誤差共分散が強く,小区画出猟メッシュ数が増加すれば出猟日数も増加する関係性が見られた.くくり罠猟と餌付け罠猟ではともに小区画罠設置メッシュ数,くくり罠と餌付け罠の併用では小区画罠設置メッシュ数(くくり罠)と罠設置延べ数(餌付け罠)が,捕獲数への直接効果が最も強かった.以上の結果から,狩猟方法を問わず,猟場の拡大につながる対策が,イノシシの捕獲数の増加に最も有効であると考えられた.
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