哺乳類科学
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45 巻, 1 号
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総説
原著論文
  • 永田 幸志
    2005 年 45 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究は, 丹沢山地におけるニホンジカ (Cervus nippon) の行動圏特性について明らかにし, 林床植生の衰退との関係を考察することを目的として行った. 調査地は神奈川県清川村札掛地区で, 1991年~1994年にかけて成獣オス3頭, 成獣メス2頭に電波発信機を装着し, ラジオテレメトリー法により行動圏を調査した. なお, 調査地内では, 2000年までの調査期間中, 冬期に人工給餌が行われた.
    行動圏調査の結果, 給餌場を利用しなかった個体は季節的行動圏に大きな変化は見られなかったが, 冬期に給餌場を利用した個体は, 冬期の行動圏を給餌場周辺に形成した. また, 調査期間中, 調査個体の年間行動圏は, 小規模な変化は見られたものの, 大きな移動は見られなかった.
    調査地は, 狩猟の影響が無く, 積雪が少ない地域であり, なおかつ, 食物環境に顕著な地域差がないため, 定住型の行動圏を形成したと考えられた. 冬期に給餌場を利用した個体は, 給餌物の誘引により定住型の行動圏を小規模に変化させたものと考えられた. また, 全調査個体の年間行動圏が大きく移動しなかったことから, 札掛地区のシカは同じ地域に対する執着性が強く, 冬期に良好な採食場が継続的に存在する場合は, ほとんど移動しないと考えられた. これらのことから, 丹沢山地で生じている林床植生の劣化は, 同一地域の食物資源を執着的に利用するシカの生態的特性により, 採食圧が累積したことを一つの要因として進行している可能性が考えられた.
  • 大谷 新太郎, 川井 裕史, 石塚 譲, 石井 亘, 八丈 幸太郎, 片山 敦司, 松下 美郎
    2005 年 45 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    温帯林で覆われた大阪北部のニホンジカ (Cervus nippon) 生息地において, 首輪型GPS (Global Positioning System) 受信装置による測位成功率を検討した. 調査対象地において典型的な植生 (若齢ヒノキ林, アカマツ林, 落葉広葉樹林, 水田) を対象に16地点で測位を試みた結果, 開空度が10%を超えた若齢ヒノキ林, アカマツ林, 落葉広葉樹林および水田では測位に成功し, 精度低下率 (dilution of precision) はいずれの地点においても5以下であった. 開空度が平均6.3%のヒノキ林および常緑広葉樹下では測位できなかった. ニホンジカ雌2頭に, 3時間ごとに測位するように設定した首輪型GPS受信装置を装着し, それぞれ392日後と372日後に装置を回収した. 測位成功率はそれぞれ26.9% (846/3141回, 測位成功数/総測位実施数) および20.7% (618/2989回) であった. 測位成功率は夏期に低下したが, 精度低下率に季節差は認められなかった. 測位できた地点の植生は, ヒノキ林 (若齢), アカマツ跡広葉樹林, 落葉広葉樹林および水田で, 植生による精度低下率の差は認められなかった.
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