本州と四国に生息するハクビシンPaguma larvataは,先行研究のDNA分析の結果から,台湾から持ち込まれた外来種と考えられているが,日本国内における分布拡大の経緯は未だ不明瞭な点もある.2016年以降に生息が確認されるようになった島根県のハクビシンを対象に,ミトコンドリアDNAのチトクロムb遺伝子領域と制御領域を合わせた1,663 bpを解析したところ,すべての個体から同一のハプロタイプが検出され,既報の四国のハプロタイプと一塩基違いである新規のハプロタイプであった.現時点で,島根県のハクビシンの分布拡大経路特定は難しいものの,今後関西地方以西の本州に生息する個体の遺伝情報を蓄積することで,本種の当該地域における分布拡大経路を解明することが期待される.
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