哺乳類科学
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52 巻 , 2 号
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原著論文
  • 船越 公威, 新井 あいか, 永里 歩美, 山下 啓, 阿久根 太一, 川路 貴代, 岡田 滋, 玉井 勘次
    2012 年 52 巻 2 号 p. 157-165
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    鹿児島市で2009年に定着が確認されたフイリマングースHerpestes auropunctatusの食性と在来種への影響を把握するため,消化管内容物と糞を用いて食性分析を行った.分析した115頭のそれらから,哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,昆虫類,多足類,甲殻類,植物の果実の破片が検出された.周年にわたる絶対出現頻度は,動物質では昆虫類と土壌動物の割合が高く,次いで爬虫類の割合が高かった.特に,昆虫類の絶対出現頻度は95%と非常に高く,昆虫類に強く依存していることが分かった.また,季節別の相対出現頻度をみると,冬季から春季にかけては,哺乳類や鳥類が摂食される割合が高くなっていた.これは,昆虫類や両生・爬虫類に加えて,哺乳類や鳥類も重要な餌資源になっていることを示している.また,幼獣は哺乳類や鳥類を摂食していなかった.今後は,駆除後の在来種の回復を把握するため,本調査地における被食動物相の推移を調査する必要がある.
  • 高槻 成紀, 立脇 隆文
    2012 年 52 巻 2 号 p. 167-177
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    我が国における中型食肉目の食性分析は頻度法を用いてきたが,頻度法は食物の組成を評価する上で過大か過少になる問題がある.組成を表現する重量や容積の評価は非常に時間がかかるが,ポイント枠法は時間をかけずに組成の量的評価が可能であり,頻度も出せる利点がある.そこで中型食肉目の食性分析におけるポイント枠法の適用性を検討するために,タヌキとハクビシンの夏と冬の胃内容物4群54試料を分析し,方法上の特徴を検討した.各試料群全体では,200カウントで98カテゴリーが,300カウントで102カテゴリーが検出されたが,試料ごとの検出カテゴリー数は少なく,200カウントで6~10(最少1,最多19)であった.検出されたカテゴリー数はカウント数の増加とともに増加したがしだいに頭打ちになり,200カウント以上はほとんど増加しなくなった.また,300カウントでの検出数の90%に達した試料数は150カウントでは53試料中31(58.5%)であったが,200カウントでは52(98.1%)になった.さらに,各試料群において300カウントでの占有率(胃内容物組成に対する百分率組成)が最大であったカテゴリーがその占有率の±10%の範囲に入るのに要するカウント数は150~170カウント(ただしハクビシン夏のみ221カウント)であり,150カウントでは36試料中16試料(44.4%)が,200カウントでは28試料(77.8%)がこの範囲に入った.これらから,食物の検出と,その量的評価のためには200カウントするのが妥当であると判断した.ポイント枠法と乾燥重量測定法の分析所要時間の平均値(n=20)は,ポイント枠法が25.9分,重量法が70.6分で,前者が後者の36.7%であった.頻度百分率と「出現占有率」(その食物を含んでいた試料の平均占有率)の関係を見ることで,食物の供給状態や動物の採食について多面的な理解が可能であることを示した.ポイント枠法による各カテゴリーの頻度と占有率の相関は高くなかった.代表的な食物についてポイント数と乾燥重量の関係を調べたところ,ベリー(多肉果実)に比べて,肉(筋肉や内臓),種子などはポイント数の割に重く(ポイント枠法は過少評価),体毛,葉,花などは軽い(ポイント枠法は過大評価)ことがわかった.ポイント枠法をおこなう上での留意点などをまとめた.
短報
  • 船越 公威, 大沢 夕志, 大沢 啓子
    2012 年 52 巻 2 号 p. 179-184
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    これまで沖永良部島においてはオオコウモリの分布記載がなく,また生息についても断片的な情報しか得られておらず,生息の有無を確定することができなかった.しかし,住民への聞き取りおよび記録写真等で2003年3月にオリイオオコウモリPteropus dasymallus inopinatusの生息が判明した.また,2011年6月に本種の成獣雄個体が捕獲された.同年10月と12月,2012年1月に本種が目撃された.加えて,2012年2月における精査で,少なくとも4頭の生息を確認し,この時期の食物としてギョボクCrataeva religiosa,オオバイヌビワFicus septica,モモタマナTerminalia catappaおよびアコウFicus superbaの果実が利用されていた.以上の観察結果等から,オリイオオコウモリは沖永良部島において個体数は極めて少ないものの,1年を通じて他の島への季節的な移動もなく定住しうると考えられた.
  • 小寺 祐二, 竹田 努, 都丸 成示, 杉田 昭栄
    2012 年 52 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    野生鳥獣の個体群管理にあたっては,適切な個体数等の目標を設定したうえで保護管理計画を作成・実行し,継続的にモニタリングすることが求められている.しかし,イノシシに関しては,地方自治体が継続的・広域的に実施可能な個体数等の推定方法は確立されていない.その一方で,野生のイノシシ個体群では非発情期間の長短が個体群動態をコントロールする重要な機構になっていることが報告されている.そのため,非発情期間の長さを把握できれば,本種の個体群動態を評価する指標として利用できる可能性がある.しかし,胎子や卵巣の状態から繁殖状態を判断する既存の手法では,短期間に十分な試料数を収集することが難しく,単年ごとに非発情期間の長さを把握するのは困難である.一方,非発情期間の延長に起因する出産機会の低減がイノシシの個体群動態に影響を及ぼしていることを踏まえると,非発情期間は未知でも出生が確認されない時期または減少する時期を把握できれば個体群動態を評価する指標として利用できると考えられる.そこで本稿では,週齢査定によりイノシシの出生時期を推定することで,出生が確認されない時期または減少する時期を把握できるか検討した.調査では,2010年10月から2011年9月にかけて栃木県那珂川町のイノシシ肉加工施設に搬入された153個体の歯牙の萌出状態を確認して週齢査定し,捕殺年月日より出生時期を推定した.その結果,低頻度出生期間が2009年3月30日から4月28日および2009年10月23日から2010年4月12日,2010年10月22日から2011年4月29日の3回確認され,同期間中に6回の無出生期間が生じたことから,調査対象個体群の出生頻度が季節的に低下する可能性が示唆された.また,週齢査定による出生時期推定では,第27齢区分以上(生後週数88週以上)の個体を分析から除外し,単年の推定に対して少なくとも2年の調査を実施することで,より正確な結果を得られることが分かった.詳細な週齢査定では高い技術が求められるため,週齢査定技術者を育成する必要はあるが,週齢査定による出生時期推定は地方自治体が継続的・広域的に実施可能なモニタリング手法であると考えられた.
  • 高橋 聖生, 東出 大志, 藤田 昌弘, 米田 政明
    2012 年 52 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    岩手県北上高地の北部において,ニホンジカ(Cervus nippon,以下シカと記す)の日周活動を調査した.約336 km2の調査林内に80台の自動撮影カメラを設置した.設置期間は2011年6月25日から8月19日の56日間で,調査努力量は延べ3,206日・台だった.その間に撮影されたシカの動画は112本,連続撮影の影響を考慮して算出したイベント数は50件だった.最もイベント数の多かった時間帯は日没後の19時台で,日中と夜間の比較では夜間の撮影が多かった.このため,調査地のシカの捕獲には,夜間の罠猟や日没前の待ち伏せ式の銃猟,日中の追い出しによる銃猟が有効と考えられた.事前に活動時間帯を調査しておくことで,シカの捕獲作業を効率化できると思われる.
  • 土生 聡実, 島田 将喜
    2012 年 52 巻 2 号 p. 199-206
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    アカギツネ(Vulpes vulpes)は単独性の傾向が強いものの,野生アカギツネの同腹子間には直線的な順位が存在することが知られている.本研究は,高密度で飼育されているアカギツネの亜種キタキツネ(V. vulpes schrencki)の集団において順位が生じるかどうかを検討し,人為環境下における社会構造を明らかにすることを目的とした.
    対象集団には直線的な順位は存在しているとはいえなかった.集団内に親和的ネットワークは形成されていたものの,ダイアド間の親和性と敵対行動の頻度の間には負の相関関係は見いだされず,敵対行動を緩和する機構となっているとはいえなかった.
    キタキツネの成獣を,密度が高く個体の入れ替わりが頻繁な環境の中で人為的に集団にした場合,集団中に安定した順位は発生せず,順位に代わる敵対行動の緩和機構も発生しないため,集団の安定性は低くなることが示唆される.
  • 横山 卓志, 楠田 哲士, 曽根 啓子, 森部 絢嗣, 高橋 秀明, 橋川 央, 小林 弘志, 織田 銑一
    2012 年 52 巻 2 号 p. 207-214
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    飼育下キンシコウ(Rhinopithecus roxellana)の新生仔における行動発達を明らかにすることを目的とし,名古屋市東山動物園で2009年4月に生まれた雌の新生仔において,8ヶ月齢までの成長に伴って観察された行動の経日変化を記録した.また,それらの結果を,中国の国立陝西周至自然保護区の半野生集団および他の飼育下個体における報告と比較した.東山動物園の新生仔は,出生後約1ヶ月間は母親に依存していたが,1ヶ月齢から周辺環境や姉に興味を示し,積極的に接近や探索の行動を開始した.2~3ヶ月齢では姉と2頭で過ごしたりグルーミングに似た行動をしたりするなど社会行動が観察された.生後60日目以降,積極的に姉に近づくようになり,姉の存在がその後の新生仔の行動発達に影響を与えたと考えられた.自然保護区と比べ,木の登り降りや餌に興味を示す行動の発現が著しく早く,また5ヶ月齢以降,腹部接着や支持,近接,接近,離反およびグルーミング受容の行動スコアがほぼ一定となったことから,5ヶ月齢が行動発達の1つの区切りであったと考えられた.東山動物園におけるキンシコウ新生仔の行動発達過程は,群れの数や環境が大きく異なる中国の自然保護区の結果と一致していた.しかし,一部の行動の開始時期には大きな差が認められ,木の登り降りや餌への興味といった行動の発達は,成育環境に影響を受けているとも考えられた.
報告
  • 矢竹 一穂
    2012 年 52 巻 2 号 p. 215-222
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    千葉県内において環境省3次メッシュ(約1×1 km)を最小調査単位として,2001~2003年にニホンリス(Sciurus lis)の分布調査が実施された.その際に生息が確認されたメッシュについて,2009~2011年にその変遷を調査した.本報では千葉県南部の生息状況の変遷を報告する.生息の確認は主にマツ類球果の食痕によった.2001~2003年の調査で生息が確認された57メッシュのうち,36メッシュ(63%)で引き続き生息が確認された.これまで千葉県では,県北部におけるニホンリスの生息状況の衰退が強調されてきたが,本調査によって県南部でも新たに15メッシュで生息が確認されたものの,同様な衰退が起こっていることが明らかになった.千葉県北部におけるニホンリスの生息衰退については,マツ林面積の減少がその要因であることが示唆されてきた.千葉県南部では県北部に比べて森林面積が多いものの,マツ林の減少は県北部より早い年代から進行している.今後,マツ林が少なく常緑広葉樹林が優占する県南部におけるニホンリスの生態,およびより詳細な生息状況の解明が必要である.
  • 幸田 良介, 川村 貴志
    2012 年 52 巻 2 号 p. 223-227
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    ニホンジカ(Cervus nippon)の生息密度と空間分布の把握は被害管理や保全対策上非常に重要であるが,屋久島の高標高域に広がるヤクシマダケ(Pseudosasa owatarii)草原におけるヤクシカ(C. nippon yakushimae)の生息密度は不明である.2009年11月に行った糞塊調査から生息密度を試算したところ,平均で14.09頭/km2という密度が得られた.この推定密度の精度については注意が必要であるものの過小評価である可能性は低く,ヤクシマダケ草原周辺の森林域での密度に比べて低密度であると考えられた.生態や行動などの基礎情報が不明なままのヤクシマダケ草原におけるヤクシカに対して,今後はより精度の高い密度推定やその他の生態調査を進めていくことが求められる.
国際会議報告
学会賞受賞者
奨励賞受賞者による研究紹介
連載「アマチュア哺乳類研究者の系譜2」
  • 川田 伸一郎, 安田 雅俊
    2012 年 52 巻 2 号 p. 257-264
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    The Hainan mole, Mogera hainana Thomas, 1910, was recorded to be collected by “a native employed by Mr. Alan Owston” in the original description of the species. We noticed the specimen tag of the holotype was printed and handwritten in Japanese characters. The same tag was attached to another specimen of this species deposited at the Forestory and Forest Products Research Institute (Tsukuba, Ibaraki, Japan). Those specimens were both collected in November, 1906; therefore, the Hainan mole was collected by a Japanese person who visited Hainan Island in this period. We searched for the same form of specimen tags, and found many among bird specimens from Hainan Island at the Yamashina Ornithological Institute (Abiko, Chiba, Japan). In this period, Zensaku Katsumata collected the birds in Hainan Isl. and sent them to the Lord of Lionel Walter Rothschild in England. We estimated the type series of the Hainan mole was also collected by Z. Katsumata, who was a collector employed by a merchant A. Owston, and he sent it to L. W. Rothschild in UK. L. W. Rothschild communicated with the Natural History Museum and his name was dedicated to 18 mammalian species by researchers of this museum. It is possible to consider that Rothschild’s mammalian collection was presented to the Natural History Museum and examined by mammal researchers. Although Zensaku Katsumata was an obscure person in mammalogy, we discuss his contribution to the dawn of natural history in Japan.
フォーラム
  • 山田 文雄, 石井 信夫, 池田 透, 常田 邦彦, 深澤 圭太, 橋本 琢磨, 諸澤 崇裕, 阿部 愼太郎, 石川 拓哉, 阿部 豪, 村 ...
    2012 年 52 巻 2 号 p. 265-287
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
    政府の府省が進める各種事業の透明化と無駄遣いの防止をねらいとする「行政事業レビュー」において,2012年度に環境省の「特定外来生物防除等推進事業」が「抜本的改善」という厳しい評価を受けた.この事業レビューでは,おもにフイリマングースHerpestes auropunctatus(特定外来生物法ではジャワマングースH. javanicusの和名と学名を使用)やアライグマProcyon lotorの防除事業が取り上げられた.日本哺乳類学会はこの評価結果について,外来生物対策の基本的考え方や事業の成果についての誤解も含まれているとし,この判定の再考と外来生物対策の一層の推進を求める要望書を提出した.本稿では,環境省行政事業レビューの仕組みと今回の結果について報告し,根絶を目標とするマングース防除事業の考え方と実施状況,また,広域分布外来生物の代表としてアライグマを例に対策のあるべき姿を紹介した.さらに,学会が提出した要望書の作成経過と要点について説明し,最後に,行政事業レビューでの指摘事項に対して,効果的かつ効率的な外来哺乳類対策に関する7つの論点整理を行った.これらの要望書や日本哺乳類学会2012年度大会の自由集会における議論及び本報告によって,われわれの意見を表明し,今後の動向を注視するとともに,今後の外来種対策事業や研究のより一層の充実を期待したい.
  • 金子 之史
    2012 年 52 巻 2 号 p. 289-292
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/06
    ジャーナル フリー
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