哺乳類科学
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50 巻 , 2 号
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原著論文
  • 野元 加奈, 高橋 俊守, 小金澤 正昭, 福村 一成
    2010 年 50 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    近年,イノシシ(Sus scrofa)による農作物被害が被害面積,被害量共に増大して深刻な社会問題となっている.被害地における農作物や周辺の環境との関係を把握し,被害の発生に影響を及ぼす要因を解明することができれば,被害対策を効果的に行うことができると考えられる.そこで本研究では,イノシシ被害を受けた農地を水田と畑地に大別し,被害地点と周辺環境特性の関係を明らかにすることを目的とした.栃木県茂木町が2007年度に実施した被害作物,被害時期,被害地点等の情報を含む,2007年度イノシシ被害調査による491件のGISデータを使用して分析を行った.農地を水田と畑地に大別し,被害地点と同数のランダムデータを発生させ,林縁や河川からの距離,被害地点後背の森林面積等,被害地点の環境特性を示す変数を説明変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.この結果,水田における被害地点は林縁からの距離と一級河川からの距離,その一方で畑地における被害地点は耕作放棄地からの距離,住宅等の建物からの距離と後背森林面積がそれぞれ主要な環境要因として選択された.被害地点の周辺環境特性は水田と畑地によって異なることが明らかになり,イノシシによる被害対策には農地と周辺環境を同時に考慮した対策を見出す必要性があることを示した.
  • 小寺 祐二, 長妻 武宏, 澤田 誠吾, 藤原 悟, 金森 弘樹
    2010 年 50 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    イノシシ(Sus scrofa)による農作物被害に対して,島根県は有害鳥獣捕獲と進入防止柵設置を推進し,2001年度以降は被害金額を減少させた.しかし,山間部ではこれらの対策を効果的に実施できず,現在も農業被害が発生している.そのため,こうした地域でも実施できる効果的な被害対策が求められている.上記以外の対策としては,「イノシシを森林内に誘引するための給餌」が欧州で実施されているが,その効果については賛否両論がある.そこで本研究では,森林内での給餌が本種の活動に及ぼす影響を明らかにし,その被害軽減の可能性について検討した.
    調査は島根県羽須美村(現在は邑南町)で実施した.2005年3~5月にイノシシ8個体を捕獲し,発信機を装着後に放獣した.その内3個体について,2005年8月22~26日に無給餌条件下で,8月27日~9月2日に給餌条件下で追跡調査を実施した.餌は圧片トウモロコシを使用し,1個体は無給餌条件下の行動圏内,その他の個体は行動圏外に散布した.
    無給餌条件下での行動圏面積は81.4~132.4 haを示した.給餌条件下では,行動圏内に給餌された個体Aのみで給餌地点の利用が確認された.この個体については,給餌条件下で測位地点と給餌地点までの距離が短くなり(Mann-Whitney’s U-test,P<0.001),活動中心が耕作地から離れ,行動圏に耕作地が内包されなくなった.また,行動圏面積は無給餌条件下の44.2%に縮小し,給餌地点と休息場所を往復する単純な活動様式を示した.行動圏外に給餌した個体BおよびCでは,行動圏面積の縮小(無給餌条件下の72.0%)と拡大(同142.5%)が確認されたが,活動様式は変化しなかった.本調査により,行動圏内への給餌はイノシシの活動に影響し,被害対策として有効である可能性があるものの,本研究で行った行動圏外への給餌は本種の活動に影響しないことが明らかとなった.
  • 平川 浩文, 車田 利夫, 坂田 大輔, 浦口 宏二
    2010 年 50 巻 2 号 p. 145-155
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    北海道に生息するテン属2種(在来種のクロテンMartes zibellinaと外来種のニホンテンM. melampus)が写真で識別できるかを検討した.まず,ブラインドテストにより,熟練者の識別が信頼できるかを検討したところ,信頼性を支持する結果が得られた.これを受けて,熟練者の識別を元に北海道で得られた多数のテン属の写真を精査して両種の識別に有効な特徴を抽出し,識別ガイドを作成した.さらに,この識別ガイドの有効性を検討するために,初心者を対象にこのガイドに基づいた識別テストを行い,その結果を参考に表現の改善を図った.その結果,最終版の識別ガイドにより,初心者でもある程度の信頼性をもって写真で2種の識別が可能であると判断された.最終版の識別ガイドを付録に掲載した.
  • 車田 利夫, 浦口 宏二, 玉田 克巳, 宇野 裕之, 梶 光一
    2010 年 50 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    1992年から2006年にかけて実施したライトセンサスの結果を用いて,南部を除く北海道の広域的なアカギツネ(Vulpes vulpes)の個体数の動向を分析した.網走,十勝及び根釧の各調査地域では,1990年代にアカギツネの相対密度指標値が約1/3にまで減少した.この個体数減少に対する捕獲や主要な餌資源である野ネズミ類の密度などの影響は検出できず,この時期に北海道のアカギツネに流行していた疥癬が個体数減少に関与したことが強く疑われた.一方,同じ疥癬流行地域にも関わらず,道北,上川及び日高では明確な相対密度指標値の減少傾向は認められなかったが,この原因は定かではない.
  • 船越 公威
    2010 年 50 巻 2 号 p. 165-175
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    九州産食虫性コウモリ類13種(キクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinum,コキクガシラコウモリRhinolophus cornutus,モモジロコウモリMyotis macrodactylus,ノレンコウモリMyotis nattereri,クロホオヒゲコウモリMyotis pruinosus,アブラコウモリPipistrellus abramus,ヒナコウモリVespertilio sinensis,ヤマコウモリNyctalus aviator,テングコウモリMurina leucogaster,コテングコウモリMurina ussuriensis,リュウキュテングコウモリMurina ryukyuana,ユビナガコウモリMiniopterus fuliginosus,オヒキコウモリTadarida insignis)について,精査音と探索音を録音し,パルスの形状と計測項目:終部周波数(EF),ピーク周波数(PF),持続時間(D)を採用して,種の判別を試みた.その結果,主成分分析での比較的高い分離と判別分析での好成績を示すとともに,パルスの形状や測定項目の最大・最小値の組み合わせによって,音声による種の判別が可能であった.今回の方法の有用性について展望するとともに,九州産食虫性コウモリの音声未記録種を含めて音声同定のための検索表の確立を図りたい.
短報
  • 大西 尚樹, 安河内 彦輝
    2010 年 50 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    九州ではツキノワグマ(Ursus thibetanus)は,1987年に大分県で捕獲されたのを最後に捕獲および生息を示す確実な根拠はなく,現在では絶滅したと考えられている.1987年に捕獲された個体については,野生個体であるとされているが,他地域から移入された個体の可能性も指摘されている.今回,この個体の由来を明らかにすることを目的として,ミトコンドリアDNA解析を行った.調節領域704塩基の配列を決定し,すでに発表されている系統地理学的研究の結果と比較したところ,同個体のハプロタイプは福井県嶺北地方から岐阜県西部にかけて分布しているものと同一だった.このことから,同個体は琵琶湖以東から九州へ移入された個体,もしくは移入されたメス個体の子孫であると結論づけられた.
  • 永里 歩美, 船越 公威
    2010 年 50 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    ニホンテンMartes melampus の換毛を引き起こす要因および毛色の地理的変異を解明するため,毛色の季節的な変化について九州南部における自動撮影装置を用いた野外調査と飼育下での観察をあわせて行った.その結果,野外,飼育下ともに冬毛への換毛が11月から,夏毛への換毛が4月から始まっていた.飼育下での観察結果から,冬毛への換毛は,室温が28°Cから16°Cに下降し,昼時間が11.5時間から10.5時間と短縮する時期に起こった.夏毛への換毛は,室温が18°Cから25°Cに上昇し,昼時間が12.5時間から13.5時間と長くなる時期に起こった.換毛の進行過程は,夏毛への換毛と冬毛への換毛が逆向きに進んだ.冬毛の鮮やかさは低緯度のものほど薄れ,九州南部のものでは吻部や眼の周囲が周年を通じて黒かった.
報告
2009年度大会シンポジウム記録
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