哺乳類科学
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52 巻 , 1 号
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原著論文
  • 大井 徹, 中下 留美子, 藤田 昌弘, 菅井 強司, 藤井 猛
    2012 年 52 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー
    これまで明らかではなかった西中国山地のツキノワグマの食性について,山中で採取した糞と人里周辺で有害捕獲された個体の胃内容物を基に,食物品目毎に出現率,偏在度指数,相対重要度を算出し,季節変化と年変化を分析した.その結果,春には植物の栄養器官中心,夏にはしょう果中心,秋には堅果中心へと季節変化するという本州中部以北のツキノワグマの食性と類似の傾向がみられた.ツキノワグマが越冬するために重要な秋の食物においては,コナラ属果実,ミズキ属果実が,相対重要度が他のものより顕著に高く,かつその年変動の程度が小さいため,通常,ツキノワグマが安定的に依存している食物と考えられた.一方,ツキノワグマの大量出没時には,この二種類の果実の相対重要度が顕著に低くなるという特徴が見られ,これらの樹種の結実程度がクマの人里への出没に大きく影響している可能性が示唆された.また,人里に出没したクマの食物では,これまで指摘されてきたカキ,クリの果実,農畜産物以外に,草本の葉など植物の栄養器官の相対重要度が高いことが特徴的であった.
  • 玉木 恵理香, 杉山 昌典, 門脇 正史
    2012 年 52 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,耐久性があると考えられる塩化ビニル樹脂性パイプと木材を組合せた塩化ビニル樹脂製のヤマネGlirulus japonicus用の巣箱(以下,塩ビ管巣箱と略する)を考案した.本巣箱は市販の鳥類用木製巣箱キット(以下,木製巣箱と略する)よりも短時間で製作が可能であった(塩ビ7分/個, 木製20分/個).この巣箱の有効性を検証するため,2009年に長野県にある筑波大学八ケ岳演習林と川上演習林の2箇所に塩ビ管巣箱と木製巣箱を各100個設置して,ヤマネと他の動物による巣箱利用を比較した.2010年には鳥類のみ補足調査した.ヤマネによる平均巣箱利用率は塩ビ管巣箱(1.85±2.91%,平均値±SD)と木製巣箱(1.56±3.45%)間で差がなかったが,ヒメネズミによる平均巣箱利用率は塩ビ管巣箱(0.12±0.85%)の方が木製巣箱(1.84±5.03%)より小さかった(川上演習林のデータのみ示す).鳥類による巣箱利用率も塩ビ管巣箱(3%)の方が木製巣箱(19%)より小さかった.塩ビ管巣箱は製作時間が短いだけでなく,ヤマネ以外の動物の利用が少ない点で森林生態系に与える影響が少ないので,ヤマネの調査に有効と考えられる.
総説
  • 佐藤 淳, Wolsan Mieczyslaw
    2012 年 52 巻 1 号 p. 23-40
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー
    レッサーパンダAilurus fulgensはジャイアントパンダと共に食肉目Carnivoraの中で高度な草食適応を果たした種である.1825年の分類学的記載以来,約190年もの間,他の食肉類との進化的類縁関係は謎であった.本総説ではレッサーパンダの進化的由来に関するこれまでの分子系統学的研究を振り返り最新の知見を提供する.近年の主に核遺伝子を利用した分子系統学的研究においては,レッサーパンダはイタチ上科Musteloideaの主要な系統であり,イタチ科Mustelidaeとアライグマ科Procyonidaeから構成される系統に近縁であることが強く支持されている.また,分岐年代推定によりレッサーパンダの系統の起源は約3,000万年前にあると推定された.さらに生物地理学的解析により,その起源はアジアにあることが示唆された.レッサーパンダの系統分化は始新世から漸新世にかけての大規模な地球環境変動の影響を受けたと考えられる.
短報
  • 安田 雅俊, 栗原 智昭, 緒方 俊輔
    2012 年 52 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー
    九州において絶滅のおそれのある国の特別天然記念物カモシカCapricornis crispusの生息記録を宮崎県北部の高千穂町において収集し,1996–2011年にかけての目撃,自動撮影,死体,個体保護からなる生息記録13件を得た.それらの生息記録と地形との関係をみたところ,カモシカは標高400 m以上に分布し,最大傾斜角32度以上の急峻な地形を好むことが示唆された.カモシカ九州個体群の保全のためには,さらに広域に生息記録を収集するとともに,植生等のその他の重要な環境要素を加えた,九州における本種の潜在的なハビタットをより正確に判定するモデルを開発することが望まれる.
  • 山﨑 晃司, 佐伯 緑
    2012 年 52 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー
    GPS機能付き携帯電話(FOMA)端末に増設バッテリーパックを接続した上で首輪ベルトに包埋を行い,定置試験と共に,アライグマ野生個体への装着を行った.首輪システムの総重量は215 gで,VHF発信器を加えた場合のシステム総重量は300 gであった.定置試験(n=3)での測位データ送信のための通信成功率は99.5~100%で,測位誤差は12.0~16.5 mであった.野生個体への装着例(n=7)では,電池充電が適正に行われた場合の平均稼働日数で25.3日間であったが,計算上より短かった.通信成功率は夜間(59.9%)と日中(38.0%)で有意に差があった.夜行性のアライグマは,昼間は遮蔽物(樹洞,土穴,人家屋根裏)で休むため,通信圏外の状態になる割合が高くなることが考えられた.ただし夜間でも,通信成功率は定置試験に比較して低かった.アライグマ首高の地表付近では,携帯通信網の電波状態が安定しない可能性が考えられた.
報告
  • 阿部 永
    2012 年 52 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー
    新潟県越後平野に分布域をもつエチゴモグラMogera etigoについて次の3つの地域個体群がもつ分布の現状をトンネル計測によって調べ,過去(1995–2005年)の調査結果と比較した.1.見附市及び長岡市栃尾地区にある孤立分布地,2.越後平野の主要分布域周辺の一部,五泉市市街周辺から北西部の新潟市秋葉区新津市街東側にかけての,阿賀野川,小阿賀野川,能代川に囲まれた水田地帯,3.主要分布域内中心部に位置する場所の一つ,新潟市江南区駒込・藤山南部水田(約600×850 m).調査の結果,No. 1の孤立個体群では,一部の水田中央の分布消失などを除き,全体として分布に大きな変化はなかった.No. 2の分布地では広い水田中央などにおいてエチゴモグラの分布消失が見られ,またアズマモグラM. imaizumiiの分布拡大による分布の置換があった.No. 3の調査地でもエチゴモグラの分布縮小が見られ,モグラの生息しない地帯が拡大した.No. 1,2地区は耕地環境改変に伴う生息環境悪化とアズマモグラとの種間競争により,また,No. 3地区では耕地環境改変の影響によりエチゴモグラの分布が縮小したものと考えられた.
  • 近藤 憲久, 福井 大, 倉野 翔史, 黒澤 春樹
    2012 年 52 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/18
    ジャーナル フリー
    北海道網走郡大空町にある旧大成小学校体育館で,コウモリの出産哺育コロニーが発見された.本コロニーを形成する個体の捕獲を行い,外部形態を精査したところ,乳頭が2対あることからヒメヒナコウモリと同定した.また,8月以降にコロニー周辺で拾得された2個体のコウモリについても,外部並びに頭骨計測値からヒメヒナコウモリと同定した.5回にわたる捕獲調査の結果,本種は6月下旬~7月上旬に出産し,8月上旬には幼獣が飛翔を始めていた.本コロニーを形成する雌成獣は約60頭であった.8月以降は,成獣はほとんどいなくなり,幼獣が大部分(96%)を占めていた.飛翔時の音声構造は,FM-QCF型であり,ピーク周波数の平均値は26.1 kHzであったが,FM成分とQCF成分の比率は飛翔環境によって大きく変化していた.ヒメヒナコウモリのねぐらおよび出産哺育個体群は国内初記録であり,今回の発見により,本種の国内における繁殖・定着が明らかになった.
国際会議報告
2011年度大会シンポジウム記録1「哺乳類の社会進化」
2011年度大会シンポジウム記録2「やすむとはしる―躍動と静謐に生命を探る―」
2011年度大会自由集会記録
書評
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