大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
32 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 香川 順
    1997 年 32 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    我が国では1970年に光化学スモッグ事件が発生し, 光化学大気汚染との関係が問題になった。この問題を解決するためには, 観察された健康影響は, そのときに発生している光化学大気汚染に因果的に関係しているのか, しているとすれば, どのような汚染物質が主に関係しているのか, その量・影響 (反応) 関係や発生率などに関する情報が必要で, これらの情報を得て光化学大気汚染と健康影響の関係を評価することをヘルス・リスク・アセスメントという。このような情報は, 疫学研究, 人への実験的負荷研究, 動物暴露研究や臨床医学的研究等から得られる。本稿では, この研究を疫学調査と人への実験的負荷研究から調べ, 光化学スモッグ事件で観察された気道刺激症状は, 主にオゾンで引き起こされる事を明らかにした経緯を要約した。
  • 大原 利眞, 若松 伸司, 鵜野 伊津志, 安藤 保, 泉川 碩雄, 神成 陽容, 外岡 豊
    1997 年 32 巻 1 号 p. 6-28
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    局地気象数値モデル (メソスケール気象モデル) と光化学反応を含む大気汚染物質の輸送モデル (光化学グリッドモデル) を組み合わせて, 夏季における光化学オキシダント高濃度現象の3次元数値シミュレーションモデルを構築し, 関東地域に適用して検証した。構築したシミュレーションモデルの特徴は, 4次元データ同化手法を用いた局地気象数値モデルと詳細な光化学反応を含む汚染質の輸送モデルを組み合わせた3次元モデルであること, 最新の光化学反応モデルと乾性沈着モデルを使用していること, 生物起源炭化水素の影響を考慮していること, 推計精度が比較的高い発生源データを使用していること等である。夏季の光化学オキシダント高濃度期間として, 立体的な特別観測が実施された1981年7月16日4時から42時間を対象に, 本モデルを用いてシミュレーション計算した。その結果, 光化学オキシダント及びNOx, NO2濃度の地域分布や時間変動パターン等について良好な現況再現性が得られた。また, 米国EPAによって示されているモデルの目標水準と比較した結果, その水準を上回っていた。更に, 航空機観測によって得られた上空濃度分布も定性的には再現することができた。
  • 河野 吉久, 松村 秀幸, 小林 卓也
    1997 年 32 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    樹木衰退に関与する土壌酸性度の影響を検討するため, 2年生の実生苗のスギとヒノキを対象にして, 水耕培養液のpHを調節することにより生育におよぼす根圏pHの影響について検討した。供試した培養液は1/5Hoagland's培養液で, 検討したpHレベルは, 3.5~4.0, 4.0~4.5, 4.5~5.0, 5.0~5.5, および5.5~6.0の5段階, 培養期間は15週間であった。
    スギとヒノキは, 培養液のpHが3.5~4.0の場合に最も生長が良好で, pHが高くなると両樹種とも生長は低下することが明らかとなった。また, 葉や根の単位重量あたりの総塩基含有量も, pHが3.5~4.0の場合に多かった。これらの結果から, 両樹種は, 酸性条件に対して適応可能な特性を有した植物であると考えられた。
  • 肥料の影響
    村瀬 憲昭, 近藤 矩朗, 清水 英幸, 中嶋 信美, 伊豆田 猛, 戸塚 績
    1997 年 32 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    UV-Bによる植物の生長阻害のメカニズムを明らかにすることを目的として, 肥料を与えたキュウリと与えないキュウりにUV-B照射したときに第一本葉が受ける影響を比較した。肥料添加を行うと, 肥料を与えない場合と比べて第一本葉の生長は促進されたが, UV-B照射により生長が顕著に低下した。一方, 肥料を与えない場合にはUV-B照射によってほとんど生長は阻寄されなかった。また, 肥料の成分である窒素, リン, カリウムをそれぞれ添加し, UV-B照射が第一本葉の生長に及ぼす影響を調べた。どの成分も生長を促進し, UV-B照射による生長阻害の程度を増大したが, 特に窒素の場合に影響が大きかった。
    UV-B照射により第一本葉の光合成活性が低下した。したがって, 第一本葉の乾物生長低下は光合成活性の低下に依っていると考えられる。活性酸素の解毒酵素の一つであるアスコルビン酸ペルオキシダーゼの活性がUV-B照射により増加した。したがって, UV-B照射を受けた第一本葉において活性酸素が発生している可能性があり, 光合成活性低下に活性酸素が関与していると思われる。サイトカイニンの一種であるベンジルアデニン (BA) 処理により第一本葉の生長は促進された。BAの効果は肥料を与えたキュウリの第一本葉で特に顕著であったが, UV-B照射したものでは生長促進が見られなかった。この結果は, UV-B照射により第一本葉のサイトカイニンに対する感受性が低下したことを示唆している。また, 各処理区第一本葉のエタノール抽出物中の生長促進活性を測定したところ, 肥料添加のみを行った処理区の抽出物の生長促進活性が特異的に高いことが明らかになった。したがって, 肥料添加により生長促進物質が増加し, UV-B照射によりそれらが分解あるいは酸化した可能性がある。これらの結果より, 肥料添加を行ってUV-B照射したときの第一本葉の生長低下は, サイトカイニンなどの植物ホルモンに対する感受性の低下や, ホルモン活性の低下によって引き起こされたと考えられる。
  • 李 忠和, 伊豆田 猛, 青木 正敏, 戸塚 績
    1997 年 32 巻 1 号 p. 46-57
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    硫酸溶液の添加により酸性化させた褐色森林土で育成したアカマツ苗の成長と植物体内元素含量に及ぼす土壌酸性化の影響を調べた。土壌酸性化処理は, 塩基溶脱を伴わない場合と溶脱を伴う場合について行った。塩基溶脱を伴わない場合の処理は, 土壌1l当たり, 10, 30, 60または90meq H+イオンを硫酸溶液で添加した。また, 硫酸溶液を添加しない土壌を対照区とした。他方, 塩基溶脱を伴う土壌酸性化処理は, 上記の方法で土壌に硫酸添加処理を行った10日後に, 酸性化させた土壌または対照土壌をコンテナに入れ, 土壌体積の3倍量の脱イオン水を入れた後, 3日間静置し, コンテナの底から徐々に水を抜き, 土壌の塩基を溶脱させた。各処理区の土壌を詰めた1/10000aポットに, アカマツ (Pinus densifloraSieb. et Zucc.) の2年生苗を移植し, 1995年6月2日から9月29日までの120日間にわたって温室内で育成した。
    このような処理によって酸性化させた褐色森林土で育成したアカマツ苗の生長阻害には, 土壌溶液のpHの低下とそれに伴う土壌溶液へのAlの溶出, およびアカマツ苗の地下部におけるAl濃度の増加に伴う地上部のCaなどの植物必須元素の減少などが関与することが示唆された。
    土壌酸性化に伴うアカマツ苗の成長低下の程度は, 土壌におけるAl濃度のみならず, Alとカチオンの存在バランスによってほぼ定まり, 土壌溶液の (Ca+Mg+K)/Alモル比が7.0以下になると明らかに乾物成長が低下し, その比が1.0の場合は乾物成長が対照区の値より約40%低下した。
    以上の結果より, アカマツ苗の成長に対する影響を考察する際には, 土壌における植物有害金属Alの濃度と共に, Ca, Mg, Kなどの植物必須元素の濃度も考慮する必要があると考えられる。
  • 金 元植, 青木 正敏, 伊豆田 猛, 戸塚 績
    1997 年 32 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    植物群落によるオゾンの吸収量を植物生産量から評価する方法を検討するため, 熱収支ボーエン比法を利用して, コムギ群落のCO2フラックスおよびO3フラックスの観測を行った。測定結果から求めたCO2およびO3のフラックスを大気中のCO2と03濃度で除算して, ガスの沈着速度 (Kco2およびKo3) を計算した。求められたKco2Ko3から観測期間中の沈着比例定数 (RK;ここでRK=KO3/KCO2) を求めた結果, 測定期間中の平均値は8.5であった。RKの日平均値は日によって変化したが, 日によるRKの差異は主に日射量の日による差異が関与し, 日射量がKco2を変化させた結果と推察された。
  • 杉田 和俊, 後藤 純雄, 遠藤 治, 町井 研士, 石井 忠浩, 松下 秀鶴, Joellen LEWTAS
    1997 年 32 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    空気浮遊粒子中の発がん関連物質の経気道曝露実態を把握するために, 大気浮遊粒子中多環芳香族炭化水素 (PAH) 類の呼吸器への沈着率と呼吸の深さとの関係について検討した。屋外において, 呼気試料はHans Rudolphマスクを用いて, 吸気試料に相当する大気浮遊粒子は低騒音型ローボリュームエアサンプラーを用いてテフロンコーテッドガラス繊維ろ紙にそれぞれ採取した。採取された呼気および吸気試料中のPAH含有量を前段濃縮型HPLC/蛍光分光検出法にて測定し, 両者の濃度から沈着率を求めた。その結果, 意識的に深い呼吸をした時のBaPの沈着率は58.5±12.7%(平均±標準偏差) で, 安静時の47.2±12.6%と比較すると約10%も高く, 深い呼吸ではBaP等を含む空気浮遊粒子の取り込み量が増加することが認められた。また, 安静時の沈着率はディーゼル排出粒子やタバコ副流煙に汚染された室内空気中粒子のそれと同程度であった。
  • 山形 定, 西尾 明子, 太田 幸雄, 原 宏
    1997 年 32 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    土壌の存在が, 水溶液中での4価の硫黄の光酸化反応に与える影響を, 7種類の土壌を用いて検討した。土壌3mgを1mmoll-1の亜硫酸水素ナトリウム水溶液20mlに分散させた時, すべての土壌は光照射しなくとも4価の硫黄の酸化を促進し, その速度は0.3-1.5×10-5moll-1min-1であった。光照射すると酸化速度は0.5~2.3×10-5moll-1min-1になった。反応促進と土壌の組成の間に明瞭な関連は見出されなかった。4価の硫黄の酸化反応が進行するとともに土壌粒子から鉄の溶出が見られた。
  • 鵜野 伊津志, 大原 利眞
    1997 年 32 巻 1 号 p. A1-A13
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
feedback
Top