硫酸溶液の添加により酸性化させた褐色森林土で育成したアカマツ苗の成長と植物体内元素含量に及ぼす土壌酸性化の影響を調べた。土壌酸性化処理は, 塩基溶脱を伴わない場合と溶脱を伴う場合について行った。塩基溶脱を伴わない場合の処理は, 土壌1
l当たり, 10, 30, 60または90meq H
+イオンを硫酸溶液で添加した。また, 硫酸溶液を添加しない土壌を対照区とした。他方, 塩基溶脱を伴う土壌酸性化処理は, 上記の方法で土壌に硫酸添加処理を行った10日後に, 酸性化させた土壌または対照土壌をコンテナに入れ, 土壌体積の3倍量の脱イオン水を入れた後, 3日間静置し, コンテナの底から徐々に水を抜き, 土壌の塩基を溶脱させた。各処理区の土壌を詰めた1/10000aポットに, アカマツ (
Pinus densifloraSieb. et Zucc.) の2年生苗を移植し, 1995年6月2日から9月29日までの120日間にわたって温室内で育成した。
このような処理によって酸性化させた褐色森林土で育成したアカマツ苗の生長阻害には, 土壌溶液のpHの低下とそれに伴う土壌溶液へのAlの溶出, およびアカマツ苗の地下部におけるAl濃度の増加に伴う地上部のCaなどの植物必須元素の減少などが関与することが示唆された。
土壌酸性化に伴うアカマツ苗の成長低下の程度は, 土壌におけるAl濃度のみならず, Alとカチオンの存在バランスによってほぼ定まり, 土壌溶液の (Ca+Mg+K)/Alモル比が7.0以下になると明らかに乾物成長が低下し, その比が1.0の場合は乾物成長が対照区の値より約40%低下した。
以上の結果より, アカマツ苗の成長に対する影響を考察する際には, 土壌における植物有害金属Alの濃度と共に, Ca, Mg, Kなどの植物必須元素の濃度も考慮する必要があると考えられる。
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