3次元大気シミュレーションを用い, 汚染物質濃度に対する各種発生源や越境輸送の感度を求めた。O
3に対しては, 越境輸送の感度が圧倒的に大きく算出された。年や月平均値で見ると, 人為発生源の感度は年を通して負であった。NO
2に対しては, 自動車と自動車以外の人為発生源の感度が同等であったが越境輸送の感度も年平均値に対して+32%と高かった。これは, NO
2が直接越境輸送されるのではなく, 都市部ではNOの濃度が高いため, 越境輸送されるO
3との反応によるNO
2の生成がNOではなくO
3に規定されるためである。SPMに対しては, 越境輸送の感度が+50%前後で, 続いて自動車以外の人為発生源, 自動車の感度が高く, 植物VOCや海塩粒子の感度は小さかった。SPMに対する感度を成分に分けると, 発生源や越境輸送の直接的な影響だけではなく, O
3やVOCが絡む大気中での光化学反応による二次粒子生成や, ガス・粒子問の相平衡などによる, 非線形な影響が見られた。
本研究により, 汚染物質濃度の低減策を検討するためには, 発生源からの直接排出だけではなく, 越境輸送, 更には光化学反応や相平衡など大気中での非線形的な諸現象を考慮する必要があることが示唆された。
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