ベンゾ[
a]ピレン(BaP)は発癌性を有することから、環境省によって優先取組物質に指定された有害大気汚染物質であり、微小粒子中に存在している。本研究では、2000~2013年度に測定されたBaP濃度データをもとに、日本におけるBaP濃度の属性別 (一般環境 (180–211地点,
N=25387)、固定発生源周辺 (46–61地点、
N=7351)、沿道 (46–61地点、
N=11841)) 及び地域別 (日本全国 (JPN,
N=44579)、阪神 (HAN,
N=7598)、関東(KAN,
N=12766)、九州 (KYU,
N=2280)、瀬戸内 (SET,
N=6228)、東海 (TOK,
N=3268)、本州日本海沿岸 (SOJ,
N=8923))にBaP濃度のトレンド解析を行った。JPNにおける[BaP] (解析値)は、固定発生源周辺で高く、次いで沿道、一般環境の順に低くなっていた。[BaP]は、明瞭な季節変動をしつつ、減少する傾向が認められ、2002~2012年の減少率は一般環境で49% (年間減少率:6.0%/yr)、固定発生源周辺で40% (4.6%/yr)、沿道で53% (6.6%/yr)であった。地域別にみると、[BaP]はKYUやSETの固定発生源で高かった。これは固定発生源からの排出に加えて、大気循環場の季節変動も夏季の高[BaP]をもたらす要因であることが示唆された。HAN及びKANでは、高[BaP]は2000年代前半には沿道であったが、2000年代半ば以降には固定発生源になっていた。SOJにおける[BaP]は日本国内で最小値であった。2005~2012年の期間、JPNの一般環境における減少率 (6.8%/yr) は日本海沿岸の遠隔地である能登における減少率 (2.9%/yr) の約3倍であった。SOJ及びKYUにおける越境輸送寄与率はそれぞれ約11–34%、4–44%と見積もられ、KYUでは越境輸送寄与率が年々増加傾向にあることが示唆された。
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