農業情報研究
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20 巻, 2 号
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原著論文
  • 吉田 勝二, 川上 浩司
    2011 年 20 巻 2 号 p. 26-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    ベイジアンネットワークを用いて,環境に配慮した環境保全型農業を害虫防除技術としてモデル化した.ネットワークのノードは,事前害虫密度,事後害虫密度,天敵,環境負荷,農作物および持続性を表現する.また,各ノードに割り当てられるCPT(conditional probability table)には,農業技術(農薬散布)から導かれる半順序関係に違反しないという制約の下で設定した値が与えられる.事前害虫密度が農薬散布によって事後害虫密度となり,この事後害虫密度をベイズ更新して次の事前害虫密度に設定するという繰り返し計算を行った.その結果,各ノードの確率値は各一定の値に収束した.このシミュレーション結果から,より望ましい技術体系の構築や技術判断の支援ツールとして活用できる知見を見出すことができる.この知見は,判断基準を半順序構造におき,ある事象の状態のいずれを採択するかという比較に基づく.そこに含まれ得る恣意性や偏りは,新たな情報や実際のデータによる適合性の向上や改善を果たすことで,逐次的な適合化が可能である.CPTは主観性に基づいて作成されるが,こうした繰り返しにより,ベイジアンネットワークモデルは適切な支援ツールに形成されることが期待される.
  • 井口 信和, 横前 拓磨, 溝渕 昭二, 向井 苑生
    2011 年 20 巻 2 号 p. 39-52
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    多くの組織において,環境計測などを目的にセンサデータの活用が進められている.計測サイト間でセンサデータを交換するためには,Webサーバ等によって,センサデータがインターネット上に公開されている必要がある.しかし,Webサーバやデータベースの運用上の問題やセキュリティ上の問題があるため,すべての計測サイトがWebサーバ等を運用できるとは限らない.さらに,NAT問題への対応や多くの種類のセンサへの対応も必要となる.そこで本研究では,センサデータの容易な交換を可能とするシステムを開発した.本システムによって,センサデータの効率的な検索と取得が可能となる.また,開発したノード用機能を導入することで,NAT環境においてもセンサデータの公開が可能なため,Webサーバ等の運用は必要ない.さらに,センサの種類の追加が簡単に行える機能を実装した.このシステムをハイブリッドP2P技術に基づいて開発した.本システムの基本的な能力を確認する実験を行ったので,本論文でその結果について報告する.
  • 佐藤 正衛, 南石 晃明
    2011 年 20 巻 2 号 p. 53-65
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,農薬使用の環境影響に配慮しうる営農計画支援システムを開発し,本システムを経営意思決定に活用する方法を提示することである.こうしたシステムの機能では,経済性,環境管理指標の営農指標群を同時算出する経営シミュレーションが実施できること,経営シミュレーションに利用する環境情報と財務情報等を整理・蓄積し,利用者独自のデータを組織内で共有利用する仕組みの実現が課題であった.そこで,以下のシステム機能を開発し,FAPS-DBとの統合化を行った.主な開発機能は,(1)農薬環境リスク指標算出,(2)温室効果ガス排出量推計,(3)独自データベースの管理とそのデータを利用した経営シミュレーションサービスの提供,(4)農業技術体系Excelデータブックの拡張である.開発システムとFAPS-DBとを統合化して経営シミュレーションを実施することにより,作付体系変更や価格変動等の経営内部・外部環境の変化による環境管理指標,経済性指標等の経営指標への影響を数量的,グラフィカルに把握可能であることを確認した.さらに,当システムによる営農シミュレーション分析を営農計画の意思決定場面でどのように活用するかを,組織内の各主体の役割との関係において考察し,環境配慮を支援する営農計画システムとしての利用可能性を明らかにした.
  • Winston E. Marte, Teruaki Nanseki, Fernando Bienvenido
    2011 年 20 巻 2 号 p. 66-73
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    This paper describes the role of educational programs, institutional settings, and information and communication technology (ICT) tools on the development of integrated production in Almeria, Spain. To consider the necessity of integrated production and the role of above factors, the transfer of integrated production system to other countries is also discussed. Integrated Production (IP) is an agricultural production system that uses natural methods and natural mechanisms of production to manage pests and diseases, taking into account the protection of the environment and the farm economy, with social responsibility. IP not only takes into consideration operations at the farm level but also at packaging, processing, and labeling. IP regulations not only are in line with other certified quality norms such as Naturane, AENOR, and Global-GAP but also include more demanding regulations and provide users tools to assure product quality and production requirements. The availability of ICT tools such as administrative, technical support, and private management and traceability have significantly contributed to control and secure the accrue application of IP rules by the regional government and certification entities. They also facilitate the adoption of IP by farmers through the groups of integrated production (APIs), and to translate huge amounts of information in a comprehensive manner so that consumers are able to verify product quality and production requirements. IP has not only been provided of the normative framework but also of educational programs and institutional settings. Farmers are trained on pest, pesticides, and labor risk management while technicians are capacitated on a wider range including product quality certification norms at both farm and processing center levels. The development of ICT tools, the provision of educational programs along with the cooperation and coordinated work of all the stakeholders and organizations involved in IP is bringing about the successful application and development of this agricultural system.
  • 滝沢 寿一, 小林 一樹, 斉藤 保典
    2011 年 20 巻 2 号 p. 74-85
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
    果樹などの栽培管理においては,樹木形態の特徴や色彩などの生育情報を管理作業に活かしている.圃場の空撮画像が容易に取得できれば,生育状態や周辺の状態などが大局的に把握できるため管理作業に有用となる.本報告では,容易に空撮画像を取得する方法として,手投げ空撮システムを提案する.ワイヤレスカメラに3軸加速度センサを備えた画像取得デバイスを上空に投げ上げることで,複雑な機材準備や難しい操作方法の習得が不要で行える圃場の空撮を行う低高度リモートセンシングシステムの開発について述べる.取得した複数の空撮画像から目的とする圃場の画像を自動的に選別する手法として,加速度特徴空間をサポートベクターマシンで識別させる手法を実験的に検討した.その結果,適合率57.4%,再現率53.7%を得た.
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