果菜類の生育データを記録するための新システムを開発した.本システムは作物の節ごとにQRコードタグをつけ,その節でおこった生育管理イベントを日時とともにタブレットPC内のデータベースに記録するものである.本手法の実施例として,CO2・細霧施用の有無によるキュウリの生育の違いをデータ化した.その結果,株あたりの収穫果実数だけでなく,収穫された果実の節位,開花から収穫までの日数,さらに開花しても結実に至らなかった果実の数等,これまで取得が困難であった詳細なデータが得られ,これに基づく解析が可能になった.また,各株の生育を模式図にあらわし,定植日から栽培終了日までの生育をアニメーションで表現することができた.
日本における水稲の重要害虫であるイネウンカ類3種(トビイロウンカ,セジロウンカ,ヒメトビウンカ)の発生量調査では,ウンカの種や発育ステージ等による分類と計数が都道府県の病害虫防除所等で行われている.粘着板に捕獲したものを調査員が目視確認する作業であるが,調査には熟練が求められ,さらにウンカの多発生時には多大な労力を伴う.そこで本研究では深層学習による物体検出技術を用いてこの分類および計数作業を自動化することを目的とした.まず,実際の野外の水田で捕獲された個体と,室内飼育個体を,調査用粘着板に付着させ,フラットベッドスキャナで画像化することで高精細画像を得た.これらの画像について,18クラスのアノテーションを行い,学習データセットを用意した.物体検出の深層学習アルゴリズムとしてYOLOを採用し,データセットごとの分類精度のほか,クラスごとの分類精度を,画像入力サイズ等の学習条件と合わせて検証した.最終的に未学習のテストデータに対して,mAPが最高で0.79,F1-scoreが0.88であった.