農業情報研究
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31 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著論文
  • 野中 章久, 濱田 拓
    2023 年 31 巻 4 号 p. 95-110
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー

    本稿は,これまでに筆者らが市販キットを応用して開発した農家自作型IoTシステムを,施設型の作物における実用的なシステムとすることを目的に,新たに接続したCO2センサが実用に耐える機能を有するか,および費用に対して効果が上回ると経営者が判断できるかを確認することを第一の課題とした.また,第二の課題として,測定誤差やセンサの劣化の影響,季節的な変化を含む計測値に対して,計算能力の低い同システムを前提としながら状態空間モデルを用い,温度やCO2の値の分散により異常値を検出できることを明らかにする.この課題解明のため,キクラゲ施設とイチゴハウスにおいて実用試験に供した.試験の結果,キクラゲ施設,イチゴハウスとも,実用的と認められるCO2濃度の計測および値の送信ができた.また効果は費用を上回ると経営者に評価された.計測値にセンサの劣化や季節的変化の影響を含むイチゴハウスにおける異常値検出の方法として,Pythonの機械学習ライブラリを用いたパラメータの推定を作業用PCで実施し,計測した値をもとにした簡単な計算のみをIoTシステムに計算させる二段階の計算方法を開発した.これにより,効果的に異常値を検出できることを明らかにした.

  • Md. Shajidur Rahman, Nobuyoshi Yasunaga, Norikazu Inoue
    2023 年 31 巻 4 号 p. 111-119
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー

    We examined the factors affecting the potential of jute products and the supportive mindset toward the revival of jute entrepreneurship in Bangladesh. By using data obtained from an online questionnaire survey, we quantitatively investigated the relationship between the respondents’ mindset and their attributes. First, we found that the employment status as self-employed, the attitudes of Bangladeshi society, and jute product design were the most crucial variables influencing the potential of jute products. Secondly, the employment status as self-employed, the use of jute goods in daily life, and constraints on jute entrepreneurship had the most marked positive effects on supportive mindsets toward the need for jute entrepreneurship. Thirdly, the factors regarding inclination toward agri-entrepreneurs and conditions under which money could be saved had a significant negative effect on supportive mindsets toward jute entrepreneurship. This suggests that there is a trade-off between fostering entrepreneurship in agriculture and reviving a declining industry. Therefore, it is important to enhance further actions that will support the jute industry to revitalize.

  • 永井 孝志
    2023 年 31 巻 4 号 p. 120-130
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー

    年次的な収量変動に関するリスクマネジメントの手法の一つとして,複数作物の栽培や気候条件の異なる土地での栽培によるリスクの分散がある.しかしながら,作物や地域の網羅的な収量変動リスクの解析事例は報告がない.本研究では,農林水産省による作物統計の長期的な収量データを解析し,47都道府県における160作物の収量変動リスクをそれぞれ定量化した.各年の平年収量と実際の収量の差(平年を100とした場合の作況指数として示す)は,ある確率分布の下でランダムに発生すると仮定し,その分布の平均値と変動の大きさ(標準偏差)をリスク指標とした.また,作況指数の変動パターンとして,気温などの気象要因との関係や,都道府県別の水平分布,水稲の年次変動パターンとの類似性,ハイリスク・ハイリターン度合いなどの観点から整理した.さらに,収量の年次変動パターンに差がある作物や地域を複数組み合わせて栽培することによるリスク分散効果のシミュレーションを行った.その結果,2作物もしくは2地域での作況指数の相関係数が低い場合にリスク分散効果が得られる事例を示すことができた.

事例研究
  • 吉野 章
    2023 年 31 巻 4 号 p. 131-148
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    コロナ禍期間にあった2020–2021年における野菜の需給動向を,2019年以前の過去10年間と比較しながら確認した.東京都中央卸売市場に出荷されている144品目を月ごとに分析し,1657月別品目の需要と供給,並びに価格の動向を確認した.その結果,野菜の需給動向は,月別品目によって異なり多様であることが再認識されたが,あえて全体的な傾向を指摘すれば,需要と供給が減退している月別品目が多く,その傾向が直近の変動においてより強まっている.コロナ禍との関連では,家庭内需要が多い指定野菜で需要が増加した月別品目が見られた.これに対して業務需要が多い輸入野菜と香辛つま物類で需要が減退した月別品目が多かった.季節的には春から夏にかけて需要が減退した月別品目が多かった.こうした需要の減退に比べて価格が低下した月別品目が少なかったが,これは供給が減らされたためで,出荷者の損失は大きかったと推測される.

  • 樽本 祐助, 大久保 めぐみ, 梅田 周
    2023 年 31 巻 4 号 p. 149-154
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2023/01/01
    ジャーナル フリー

    サトウキビ育種では,毎年大量のデータが収集されている.これらのデータを利活用し,育種を高度化することが求められている.本稿では,育種試験において設定される試験区と,各試験区においてサトウキビが栽培される場所を栽培区画とする.そのうえで,栽培区画が持つ位置情報と試験データを統合させるためにGISを活用する.またこの位置情報は,RTK-GNSSを用いてGIS上に高い精度で配置する.こうした育種試験情報は,日常的に持ち歩けるモバイル端末での利用が有効なため,(1)Android端末で稼働するQFieldを利用する方法と,(2)QGISのデータをWebで利用可能なファイルに変換する方法を紹介する.

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