本研究では, 哺乳類食虫目トガリネズミ科のスンクス (ジャコウネズミ,
Suncus murinus) の出生後5日齢から30日齢までの成長発育過程における下顎頭 (背関節面) を組織学的ならびに組織形態計測学的に検索した。
組織学的には, 5日齢では, 表層, 増殖層, 分化層, 肥大層, 侵蝕線, 骨梁部が認められた。10日齢では, 各層は5日齢とほぼ同様であった。15日齢では, 軟骨層 (分化層+肥大層) では層の厚さと軟骨細胞数は10日齢と比較して減少していた。20日齢では, 増殖層は15日齢と比べてほぼ同様であったが, 軟骨層では層の厚さと軟骨細胞数は著しく減少していた。また, 侵蝕線はさらに上方に移動し, 骨梁はさらに増加していた。25日齢では, 増殖層では20日齢と比較して間葉系細胞数は減少し, 軟骨層では層の厚さと軟骨細胞数は著しく減少していた。侵蝕線はさらに著しく上方に位置し, 骨梁は増加していた。30日齢では, 増殖層と分化層は25日齢と違って認められなかった。軟骨層は肥大層だけからなり, 骨梁間のところどころで連続して下方に不規則に伸展していた。侵蝕線はほとんどみられなくなり, 骨髄腔は著明に減少していた。
組織形態計測学的には, 表層+増殖層の厚さは5日齢から10日齢は大きく減少したが, その後は25日齢まで徐々に減少した。軟骨層 (分化層+肥大層) の厚さは5日齢から15日齢まで徐々に減少したが, 15日齢から25日齢までは急激に減少し, 25日齢から30日齢までは徐々に減少していた。
以上, 本研究の結果から, 哺乳類食虫目のスンクスの下顎頭の成長発育は短期間に急速に進行することが推測された。
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