日本顎関節学会雑誌
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22 巻, 2 号
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  • 金村 清孝, 田邉 憲昌, 藤澤 政紀, 東海林 理, 石橋 寛二
    2010 年 22 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    間欠性ロックを呈した症例に対して咬合の修正を行い,補綴終了時に認められなかった関節円板の整位が,経過観察後に認められた症例について報告する。
    初診時,自力でロック解除は可能であったが,頻回にロックを生じ,日常生活に支障をきたしていた(左側非復位性関節円板前方転位)。前方整位型スプリント装着中にはロックは生じなかったが,スプリント使用を中止すると食事の際には必ずロックを生じた。そこで,可逆的な方法として硬質レジン接着性スプリントを装着した。その際のMRIでは関節円板は非復位性転位のままであったが,ロックの再発はなく日常生活に支障のないスムーズな下顎運動が得られたことから,治療のエンドポイントと判断しクラウン処置へ移行した。補綴終了時に非復位性転位であった左側関節円板は,1年6か月経過後のMRIにおいて整位されていた。下顎左側臼歯部の補綴処置による咬合サポートが顎関節への負荷を軽減させたこと,疼痛の消失,外側翼突筋上頭の筋拘縮緩和,スムーズな下顎運動の獲得などによって円板整位がなされたと考えられた。
  • 後藤 基誉, 永田 和裕, 菅原 佳広
    2010 年 22 巻 2 号 p. 84-91
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    Manipulation technique(MAT)は非侵襲的でコストの低い方法として,開口制限を有する顎関節症患者の初期治療に用いられているが,臨床的な研究において本治療法の有効性は明らかにされていない。この研究ではMATの臨床的有効性を明らかにする目的で,自律運動療法を単独で適用した群と,自律運動療法とMATの療法を適用した群との間で,臨床的な効果に関して定量的な比較を行った。被験者は,35mm以下の開口制限を有する34名の顎関節症患者を選択し,ブロックランダム化に基づいて2群に分割した。MATは,本外来で考案したJog-manipulation technique(J-MAT)を使用した。本法は,種々の開口制限に合わせるため,ピボットを使用した閉口型と側方型,開口型の3種類の異なったMATを組み合わせたものである。また自律運動療法としては,両側の臼歯部に置いた二指で,顎運動に合わせて下顎を下方に牽引する,後方牽引型の自律運動療法を使用した。
    治療による症状の変化を評価するために,術前,術後,2,4,6週において,痛みのNumerical Rating Scale(NRS)と開口量を記録した。
    その結果,2群間の疼痛NRSには,統計学的な差を認めず,痛みの軽減においてMATの有効性は示されなかった。一方,開口量は自律運動療法単独群に対して,J-MATを併用した群では,二元配置による全体的な比較,および術後の比較において有意差を認め,J-MATが開口量の増加において有効なことが確認された。以上の結果より,Jog-manipulation techniqueは,顎関節症患者の開口制限を早期に改善する効果があると判断された。
  • 山口 徹太郎, 澁澤 龍之, 中島 還, 高橋 満理子, 藤川 泰成, 槇 宏太郎
    2010 年 22 巻 2 号 p. 92-97
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    非症候群性の両側下顎関節突起形成不全症例はきわめてまれである。本症例は13歳,女子,出っ歯と下顎の後退を主訴として来院した。最大開口量は40mm,オーバージェット12.5mm,オーバーバイト2mm,歯数の問題は認められなかった。パノラマX線像より両側下顎関節突起の重度な形成不全が認められた。側面頭部X線規格写真から顕著な下顎の後退が認められた。咽頭部形態の異常は認めず,嚥下機能については誤嚥や咽頭残留などの障害は認めなかった。下顎関節突起形成不全による不規則な下顎運動が観察された。咀嚼筋活動において著しい左右差は認められず,十分な咬筋活動,咬合力が観察された。前歯部における咬合接触は認められないものの下顎頭部の形態的特徴は機能的適応によって代償されている様相がうかがわれた。
  • 市來 剛, 井川 加織, 高森 晃一, 鹿嶋 光司, 迫田 隅男
    2010 年 22 巻 2 号 p. 98-101
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    80歳女性に発症した急性化膿性顎関節炎が疑われた1例について報告する。患者は右側顎関節部の自発痛を主訴に当科を受診した。初診時,右側顎関節部の圧痛と開口障害が認められた。CT検査にて右側関節包内に類円形のlow density部と右側下顎頭の下方偏位が認められたため,本疾患と診断した。治療として消炎療法や開口訓練を施行した。消炎後,感染源の候補と考えられた埋伏歯を抜歯した。その後,経過良好にて治癒した。
  • 渡邊 友希, 片岡 竜太, 阿部 有吾, 中川 潔, 馬谷原 光織, 船登 雅彦, 古屋 良一
    2010 年 22 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    日中クレンチングの為害性に関する患者教育と簡易スプリントの短期日中装着が,日中クレンチングの意識化に及ぼす効果を検討することを目的として本研究を行った。
    安静口唇閉鎖時において上下顎の歯が接触するか,日中クレンチングがあると疑われた顎関節症患者125名のうち,研究の条件を満たし,アンケートが回収できた49名を対象に日中クレンチングの自覚度と気づいた場面についてのアンケートを行った。同一患者の日中クレンチングの自覚度(1~5のカテゴリー)についての4回のアンケート結果と,日中クレンチングに気づいた場面数についての3回のアンケート結果をFriedman検定した。
    日中クレンチングの自覚度は初診と比較して再診時に上昇し,1回目と3回目あるいは4回目(p<0.01),2回目と4回目(p<0.05)で有意差を認めた。日中クレンチングに気づいた場面はパソコン,考え事,料理などが多く,場面数は初診から再診で増加し,2回目と4回目(p<0.01),2回目と3回目(p<0.05)で有意差を認めた。
    患者教育と簡易スプリントの短期日中装着を組み合わせた治療を行った結果,日中クレンチングの自覚度は高まり,自覚する場面も増加したことがアンケートより明らかになった。したがって,患者教育と簡易スプリントの短期日中装着は日中クレンチングの意識化に有効である可能性が示唆された。
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