赤山鑛山産斑銅-黄銅鑛固溶体の生成及び分裂兩実驗の結果を要約〓れば,次の様である.
1) 斑銅鑛中の黄銅鑛格子は460°C1hrs., 430°C 3hrs., 400°C 350°C60hrsで完全に, 300°C 175hrs.で9分通り消滅し,斑銅鑛と固溶体を形成する.
2) 470°C lhrs.加熱で生成した固溶体は150°~4°C間の温度で6hrs.以上保温すれば,分裂を耒たし格子状,レンズ及楔状,滴状樹枝及骸晶状,文象状,滴状,半空胞及び空胞状,懸滴状,微粒状〓の構造を呈する.
3) 格子構造は200°C前後6~24hrs.で最も著しく現われ,屡々レンズ及ひ楔状,滴状を伴うが,普通樹枝状,文象状,半空胞及び空〓状等とは共存しない.
4) 樹枝状,文象状,空胞状及び一部の滴状等の生成には適当な温度と充分なる保温時間とが必要である.
5) 微粒状,滴状等の微細状構造は,普通固溶体分裂の初期に現われて耒る.
6) 以上の結果赤山鑛山産斑銅鑛-黄銅鑛の格子状共生は固溶体の分裂によつて生じた構造で,特に1)及び3)よりその生成の温度は200°C前後と推定される.この温度は本鑛山の地質及び鑛床学的條件に適合する.
200°C以下の温度でも格子生成の可能性が考えられる.この點は今後實の進行と共に明かにされることゝ思う.
擱筆するに当り,本研究中種々御懇篤なる御指導を賜つた渡邊萬次郎教授に感謝の意を表する.尚本研究に要した費用の一部は支部省科学研究費に據る.こゝに明記して謝意を表する.
(東北大学理学部岩石教室にて)
抄録全体を表示