西南日本産花崗岩類中,それぞれ起源を共通する2時期のものについて全岩および含有黒雲母の化学組成を検討した結果,次のとおりいちじるしい差異が見いだされた。
(1) 後期中生代-初期第三紀花崗岩類:岩石の固化指数 (ST) の減少に伴って全岩・黒雲母ともにFe/Mg比が増加し,しかもその値の差が小さい。含有磁鉄鉱量も小さく通常1.5%以下である。
(2) 古第三紀田万川深成岩類:全岩・黒雲母のFe/Mg比は岩石が斑糲岩から花崗閃緑岩に進化する過程では増加する。しかし,花崗閃緑岩から花崗岩への進化過程では黒雲母のFe/Mg比はいちじるしく減少し,全岩の同比と逆の傾向を示す。含有磁鉄鉱量はいちじるしく多く(通常1~4%,ときに以上),この磁鉄鉱は黒雲母を交代し,さらに間隙充?を示すものが普通的に存在する。
以上の諸性状をもとにて考察した結果,(1) の花崗岩類は酸素分圧のやや減少する条件下で形成されたもので,(2) の深成岩類は酸素分圧がほとんど一定か,やや増加する条件下の性成と推定される。(2) のような深成岩類は一般に鍋状陥没地の深成岩類に特有で,酸素の少なくとも一部は大気中より何等かの経路を経て供給されたものであろう。このような深成岩類では黒雲母の分解に伴ってアルカリ長石の組成も急変し,いわゆる逆ラバキビ組織の形成をみる。したがって田万川深成岩類中の含有鉱物の反応系列(Fig. 17)は一般の花崗岩類におけるものと可成り異なっている。
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