大倉鉱山の鉱床は正岩漿~深,中熱水性鉱床であるが,蒼鉛鉱物は2, 3
の鉱床にのみ認められ,輝蒼鉛鉱,自然蒼鉛,硫蒼鉛銅鉱の三者が共生するのは第7鉱床3号坑のみである。
第7鉱床3号坑鉱体は磁硫鉄鉱を主とし,少量の黄銅鉱,閃亜鉛鉱,方鉛鉱を含む。超塩基性岩と千枚岩質粘板岩の境界に発達する石英脈で,蒼鉛鉱物は鉱体の上盤側の一部に濃集して産出する。
蒼鉛鉱物の生成順序は,自然蒼鉛-輝蒼鉛鉱-硫蒼鉛銅鉱とみることができ,硫蒼鉛銅鉱は黄銅鉱と自然蒼鉛の境界に産し,両者の反応によつて生成したもので,最もウイチエン鉱(wittichenite)に類似する。
反応縁生成物は足尾鉱山産硫蒼鉛銅鉱にも類似し,竹内常彦,南部松夫
1)が示した輝蒼鉛鉱の反応縁生成がさらに進捗すれば硫蒼鉛銅鉱も生成可能と考えられる。
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