北部北上山地の東縁部(いわゆる北上外縁帯)の中生代後期の火成活動の概要を述べた.
田野畑花崗岩体はこの地域の主要な岩体で,乙茂型(トロニエム岩~花崗閃緑岩)と茂市型(花崗閃緑岩~石英モンゾニ岩,石英閃緑岩)に二分される.
田野畑花崗岩体周辺の熱変成岩の原岩は,古生層および下部白堊紀の堆積岩で,接触変成域は外側から,黒雲母粘板岩帯,菫青石点紋粘板岩帯,高変成度帯に分帯される.前の二帯はそれぞれ黒雲母,菫青石によつて特微ずけられる.高変成度帯は菫青石,紅柱石(あるいは珪線石)とカリ長石の共存で特徴ずけられる.高変成度帯のホルンフェルスは,上述の鉱物共存だけでなく,外観も領家帯の変成岩に類似している.珪線石は西側の変成域では,黒雲母(あるは紅柱石)のまわりに毛状に生じているが,ルーフペンダントの一部のホルンフェルスでは,紅柱石から明らかに転移している関係(第1珪線石アイソグラド)が認められる.その上,同じ岩石では珪線石とカリ長石の共生関係第2珪線石アイソグラド)が認められる.すなわち,この変成域では領家帯などとちがつて,第1,第2珪線石アイソグラドが一致しているが,これは岩圧のちがいを示しているものと考えられる.
つぎに北上山地の主要な接触変成域である遠野,千廐花崗岩体周辺の熱変成岩と比較した.それらとの著しい違いは,この変成域のホルンフェルスには珪線石,紅柱石,柘榴石が少ないことであるが,これはおもに原岩の化学成分のちがいによるものであろう.
カリ長石,黒雲母については群しく記載し,変成条件を考察した.さいごに,化学成分の変化から高変成度帯のホルンフェルスには若干のカリウム附加があつたことを述べ
た.
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