日本地球化学会年会要旨集
2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
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口頭発表(第一日目)
G02 古気候・古環境解析の地球化学
  • 斎藤 誠史, 黒澤 耕介, 臼井 洋一, 奥村 知世, 尾上 哲治, 佐藤 峰南, 石田 湧也, 渋谷 岳造, 西澤 学, 松井 洋平, 澤 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 1-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    天体衝突は地球史において、生物の大量絶滅をふくむ表層環境の変動を引き起こしてきた。最近黒澤(2016, 地球化学)は、高速度(>30 km/s)で天体衝突が起きた場合、岩石惑星の主要構成要素である珪酸塩が分解され、分子酸素が発生する可能性があることを指摘した。もし実際に、過去の天体衝突に伴って大気・海洋の酸化がおきたことが明らかにされれば、地球の酸化史の描像が刷新される可能性がある。しかしこの新しい仮説について、地質記録に基づく検証は試みられていない。西オーストラリア・ピルバラ地塊には後期太古代の堆積岩が厚く累重するが、その中には天体衝突を示すスフェリュール層が複数挟まれている。発表者らは、その内の一つを含むピルバラ地塊東部のCarawine Dolomiteについて、上述の仮説の検証を目的として層序学的研究を行ってきた。本発表では、この結果について報告する。

  • 後藤 孝介, ハイン ジェームズ, 関根 康人, 下田 玄, 青木 翔吾, 石川 晃, 鈴木 勝彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 2-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    近年,鉄やマンガンに富む堆積物のモリブデン (Mo) 同位体に基づき,太古代や原生代前期の地球表層酸化還元環境が議論されるようになってきた。その結果、約30億年前より、局所的には酸化的な環境が存在していた可能性が明らかとなってきた。しかし,先行研究では,鉄マンガン堆積物のMo同位体変動とグローバルな酸化還元環境の関係を議論できていない.そこで本研究では、鉄マンガン酸化物におけるMo同位体変動の古環境学的意義を理解するために,現世海底の熱水性鉄マンガン酸化物を対象に系統的なMo同位体分析を行った.

  • 安川 和孝, 中村 謙太郎, 藤永 公一郎, 池原 実, 加藤 泰浩
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 3-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    暁新世末から前期始新世にかけて繰り返し発生した短期的地球温暖化イベント (hyperthermals) について,インド洋における記録はほとんど報告されていない.本研究では,インド洋のODPコアを用いて,複数かつ高時間解像度のhyperthermalsの地球化学データを取得した.さらに,それらの多元素組成データセットを独立成分分析を用いて統計的に解析した.その結果,hyperthermal期に海洋の輸送生産が増大して大気−海洋系から余剰な炭素を除去する負のフィードバックが機能し,温暖化状態からの回復に寄与したことが示唆された.

  • 外山 浩太郎, 中瀬 千遥, 後藤(桜井) 晶子, 沢田 健, Adina Paytan, 長谷川 卓
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 4-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    海洋における130 myr.間の硫黄同位体比変動は、バライト(BaSO4)の値が採用されている(Paytan et al., 2004)。しかし、バライトは、生物生産の盛んな地域の堆積物からしか抽出できないという問題点がある。そこで近年、炭酸塩に含まれる硫酸イオン(CAS)の硫黄同位体比が注目されている。本研究では、同一堆積物から抽出されたバライトとCASの硫黄同位体比を比較し、古海洋の復元にCASが利用可能であるかを検討した。CASとバライトの硫黄同位体比について、CASの値は、バライトのものよりも約1‰高い値を示した。この違いが生じた原因について、バルク試料中の炭酸塩部分は、石灰質ナンノとともに少量の再結晶方解石から構成されていた。再結晶方解石中の硫黄同位体比は、硫酸還元により高くなった間隙水中の値を反映すると考えられる。それに伴ってCASの硫黄同位体比は、海水の値よりも高い値を示したと考えられる。

  • 賞雅 朝子, 鈴木 勝彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 5-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    海水のOs同位体比は,隕石衝突,大規模火成活動,大陸風化の促進,酸素濃度の上昇などの地質イベントを記録し,それらとグローバルな環境変動とのリンクを探る非常に有効なツールである(例えば,黒田ら( 2010)のレビュー)。海水のOs同位体比は,これまで鉄に富んだ遠洋性堆積物,黒色頁岩,チャートなどの堆積物の分析によって復元されてきた。ところが,堆積年代が制約され,かつ,保存状態のいい上記のタイプの堆積物試料が得られない時代もある。ここで,炭酸塩がOs同位体比の復元に有効であることが証明されれば,炭酸塩貸先物を使うことで,海水のOs同位体変動による環境変動を探る時代が大きく広がる。そこで,炭酸塩を主成分とする標準岩石JLs-1と現世のサンゴのOs同位体比を分析し,炭酸塩によって海水のOs同位体比が復元できるかどうかを確かめることを計画した。

  • 丸岡 照幸
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 6-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    地下水帯水層内でのバクテリアによる硫酸還元によって硫化水素が生成される。このような硫化水素を含んだ地下水が鍾乳洞内で湧出すると、硫化水素は洞窟大気に放出される。そこで硫化水素は酸化されて、硫酸が生成される。この硫酸は炭酸カルシウムと反応して石膏が形成される。本研究ではこのような過程で生成された石膏の硫黄・酸素同位体比がどのような環境指標を反映しているのか議論する。

  • 吉村 寿紘, 若木 重行, 黒田 潤一郎, 石川 剛志, 大河内 直彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 7-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    第四紀は寒冷-温暖な時期を繰り返したことが知られている。Sr安定同位体比(δ88Sr、88Sr/86Srの標準物質に対する千分率偏差)は新指標で、海水のδ88Srは主に陸域のケイ酸塩岩/炭酸塩岩風化による供給と、海洋の炭酸塩沈殿による除去を反映する。本研究では浮遊性有孔虫から約300万年間のδ88Srの記録を得た。第四紀のδ88Srは60万年以後に0.011‰の低下が認められた。これは海洋における正味の炭酸塩流入が最大1.6–2.1 × 1015 mol/105 yrまで増加したことを示し、氷床量の拡大に伴う大陸棚域の露出増加とその風化量の増大などが原因と考えられる。

  • 川畑 拓海, 蓮井 翔太, 堀 真子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 8-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    本研究では、様々な国産二枚貝の殻のNa/Caに着目し、結晶系や生育環境(緯度・塩濃度)との関係を調査した。また、異なる溶媒条件で合成した炭酸カルシウム結晶を分析し、Naの分配係数の決定を試みた。この結果、二枚貝のNa/Caは方解石に比べてアラレ石の殻で、有意に高い値を示した。これに対し、20℃で合成した方解石の結果は、方解石の飽和度に依存してNaの分配係数が0.0002から0.02まで上昇した。特にCa濃度が0.05 Mのときには0.001となり、実際のホタテガイにおける概算値とオーダーで一致した。貝殻の石灰化母液でCaの濃縮が起きていることを考慮すれば、実験の結果は実際の殻形成時のNa取り込み過程をよく表している可能性が高い。

  • 青野 智哉, 大内 翔, 尾田 昌紀, 安田 十也, 南條 暢聡, 高橋 素光, 西田 梢, 坂井 三郎, 石村 豊穂
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 9-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    2015年に鳥取沖(隠岐周辺,2/25)・長崎(地先,3/17)・富山湾(4/23)の3海域で採取されたマイワシ(Sardinops melanostictus)の耳石を成長履歴に沿って同位体比分析おこなった。高精度マイクロドリルシステム(Geomill326)を用い、最大で約3-7日毎の高解像度(従来の数倍から数十倍)での切削に成功した。回収した粉末試料(0.2-2.6μg)は微量炭酸塩安定同位体比分析システム(MICAL3c)で同位体組成を定量し、得られたδ18Oから生息当時の周辺水温の変化を概算し、複数個体の回遊経路復元を試行した。

  • 安 彩伽, 西田 梢, 南條 暢聡, 高橋 素光, 石村 豊穂
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 10-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    発育初期のイワシ類は、生後30 -50日程度のシラス(仔魚)の間プランクトン生活を行い、その後カエリ(稚魚)に変態してから徐々に回遊を行う。イワシ類の水産資源の安定的な確保のためには、発育初期の生態や生育環境の情報を蓄積することが重要である。本研究では、シラスの生息環境履歴を調べるため、炭酸カルシウム(アラゴナイト)からなる耳石の酸素同位体比(δ18O)の分析を行った。耳石は体成長とともに付加成長し再吸収されないため、そのδ18Oは水温と海水のδ18O履歴を反映する。そこで、富山湾沿岸で採取されたシラス2種(マイワシ・カタクチイワシ)から微小な耳石を取り出し、耳石のδ18Oから生息環境の推定を行った。本研究ではシラスを外部形態から5つの発育段階に区分し、発育段階による酸素・炭素同位体比(δ18O・δ13C)の変化を明らかにしつつ仔稚魚期の生態解明を目指した。

  • 山崎 敦子, 渡邊 剛
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 11-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    低緯度の貧栄養海域における窒素の動態を捉えるため、近年、生物源炭酸塩骨格中の有機物に含まれる窒素同位体比の測定がおこなわれるようになった。造礁サンゴは共生する渦鞭毛藻により、独立栄養型の窒素代謝をおこなっており、溶存無機態窒素の同位体比が骨格中の有機物の窒素同位体比に保存されている。造礁サンゴの年輪はその早い炭酸塩沈着速度から生息期間の海洋環境を季節〜年単位で記録しており,造礁サンゴは貧栄養海域における高時間解像度の窒素動態を捉えるのに適している。本講演では造礁サンゴの窒素同位体比指標の変動がどのように海洋の栄養塩の動態を記録しているかを紹介する。

  • 吉川 知里, 近本 めぐみ, Johan Etourneau, Xavier Crosta, 小川 奈々子, 大河内 直彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 12-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    南極海は、海氷生産を通して海洋熱塩循環を駆動することから、全球の気候システムにおいて重要な役割を果たしている。東南極ウィルキス・ランド沖のアデリー海において、2010年に詳細な年縞をもつ貴重な海底堆積物が採取されたことを機に、この海域における完新世の海洋環境の高解像度な復元と解析が実施されてきた。この一環として、海氷プロキシーであるChaetoceros属珪藻の休眠胞子やF. CurtaやF. cylindrusの過去2000年間の変動が復元された(Campagne et al. in prep.)。一方、海洋表層水中の栄養塩環境の指標となるクロロフィルの化合物レベル窒素同位体比は、上述のパラメーターとほぼ同期する形で-8から0‰の範囲で変動することが示された(Etournea et al. in prep.)。本研究では、窒素同位体モデルを用いて、アデリー海における過去2000年間の表層窒素循環変動を復元し、堆積物中のクロロフィル窒素同位体比に見られた変動のメカニズムを考察した。

  • 小川 奈々子, 吉川 知里, 菅 寿美, 眞壁 明子, 松井 洋平, 川口 慎介, 藤木 徹一, 原田 尚美, 大河内 直彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 13-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    光合成アンテナ色素であるクロロフィルは堆積物中で長期に保存される含窒素有機化合物であり、堆積物中のクロロフィルの化合物レベルの安定同位体比測定は湖沼や海洋の光合成物質循環に関する古環境変動研究への応用がすすんでいる。本研究では堆積物古環境解析研究の基盤となる知見の獲得することを目的として実施してきた、海洋表層域の光合成色素クロロフィルと栄養塩窒素の同位体比測定と、その数値モデルによる物質循環の定量的解析結果について報告する。

  • 若木 重行, 椋本 ひかり, 南 雅代
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 14-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    本研究では、考古遺物の火葬人骨から抽出した結晶性の異なる炭酸ヒドロキシアパタイトに対して、放射起源Sr同位体に加えて安定Sr同位体の分析を行うことで、埋没後の続成作用で生じたSr同位体組成の二次的変化を定量的に評価することを試みた。持聖院五輪塔下より出土した貞慶(AD1155−1213)のものと伝わる火葬骨および敏満寺石仏谷墓跡より出土した火葬骨は、ともに黒色を呈している骨片が白色を呈している骨片より高いδ88Sr値を示し、続成作用の影響を強く受けていることが示唆された。白色骨片はアパタイトの結晶性が高いが、黒色骨片はアパタイトの結晶性が低く有機物の残留が見られるこの違いが、変質耐性に大きく影響したと考えられ、続成作用時にSrの溶脱と同時に無視できない規模でSrの同位体交換が生じうることが示された。

  • 中塚 武, 佐野 雅規, 李 貞, 對馬 あかね, 重岡 優希
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 15-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    本州の中部及び近畿地方の多数の地点から得られた、様々な時代の約70個体の長樹齢(百~九百年)の木材年輪試料から、年層毎にセルロースを抽出して酸素同位体比を測定し、過去2600年間に及ぶ高精度の酸素同位体比クロノロジーを完成させると共に、同時に測定した水素同位体比と組み合わせることで、酸素同位体比に含まれる樹齢効果を理論的に削除し、純粋に気候(降水量)変動の成分のみを計算することに成功した。その方法の詳細、及び得られた成果の気候学的、歴史学的、考古学的意義について紹介する。

  • 入野 智久, 丸山 亜伊莉, 池原 研, 山本 正伸, 加 三千宣, 竹村 恵二
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 16-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    別府湾奥部には堆積速度の速い完新世堆積物がほとんど生物擾乱を受けずに堆積しており、その鉱物組成は多様に変化する。別府湾は3方を陸に囲まれ、流入する主な河川は南岸に河口を持つ大野川と大分川である。大野川の流域の地質は主に酸性および中性火山岩類からなり、南部の支流域には中古生代の堆積岩が分布する。一方の大分川の流域地質は主に酸性ー塩基性火山岩類からなるため、集水域内の主な砕屑物供給地の変化が別府湾堆積物の鉱物組成に反映されることが期待される。本研究では全岩粉末X線回折プロファイルの数値的端成分分離の結果と現世河川懸濁物の鉱物組成を比較することによって、完新世における別府湾への砕屑物供給源変動を復元する。

  • 長島 佳菜, Ben Fitzhugh, Nicole Misarti, 原田 尚美
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 17-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    完新世の気候変動は、近年熱心に研究が行われているものの、その総合的な理解には及んでいない。その原因の一つとして、氷床量が比較的安定しており、気候の変動幅が氷期に比べて小さく、様々な地点・プロキシーをもとに復元された気候変動のシグナルが、リジョナル~グローバルな現象を切り取ったものか、それともローカルな現象によるものなのか、変動メカニズムの解釈が難しいことが挙げられる。そのため完新世に関しては、異なる地点のデータからリジョナルーグローバルな現象を抽出し、それを原因と結びつける研究が未だ不十分である。そこで本発表では、広域に及ぶ気候変動をとらえる指標―南北両半球の偏西風の指標―を用いて、完新世における大気場の千年規模の変動トレンドを抽出し、その原因を考察すると共に、こうした千年規模の大気場の変動が海洋環境に与える影響を議論する。

  • 古川 崚仁, 植村 立, 藤田 耕史, Jesper Sjolte, 芳村 圭, 的場 澄人, 飯塚 芳徳
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 18-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    アイスコアから過去の環境変化を研究するためには、正確な年代を与えることが不可欠である。一般的には、グリーンランドアイスコアの高精度年代は年層を数えることで正確に求めることができる。しかし、年層同定に用いられる酸素同位体(δ18O)や化学成分の濃度は不規則な変動を示すことがあり、1年以下(数か月レベル)での年代決定は困難であった。本研究では、アイスコア記録と気候モデルによってシミュレートされたδ18Oの変動をパターンの対比に基づいて高精度年代決定を試みた。年代推定法は、グリーンランド南東部のドームから得られた新しいアイスコア(SE-Domeコア)に適用した。SE-Domeにおけるアイスコアのδ18O変動パターンと同位体大気大循環モデルの降雪のδ18O変動パターンの間には、過去54年間に渡って高い相関があった。不規則な数か月レベルの変動にも特徴的な一致が見られたため、±数ヶ月の精度で年代を決定することができた。

  • 鶴田 明日香, 服部 祥平, 飯塚 芳徳, 藤田 耕史, 植村 立, 的場 澄人, 吉田 尚弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 19-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    大気中に放出された窒素酸化物(NOx = NO、NO2)は大気酸化剤との反応によって硝酸(NO3-)に変換される。産業革命以降の人間活動の増大に伴い大気中に放出されるNOx濃度は上昇したが、1970年以降に北米やヨーロッパでNOxの排出は抑制され、大気NOxの濃度は減少した。しかし、アイスコア中のNO3-濃度の変動とNOx放出量の増減は必ずしも一致していない。 NO3-の安定同位体組成はNOxの窒素起源情報を保存しているため、過去のNOx動態の復元に有効であると期待されてきた。しかし、NO3-は紫外線による光分解の影響を受けやすいため、涵養量の低い地点では沈着後に光分解に伴う同位体分別によってその同位体組成が変化してしまうことが指摘されている。そこで本研究では、涵養量の高いグリーンランド南東ドームにおいて掘削されたアイスコア試料を用い、沈着後の光分解の影響を受けていないNO3-の窒素同位体組成を分析し、過去60年間のNOx動態の復元を試みた。

  • 安藤 卓人, 飯塚 芳徳, 大野 浩, 杉山 慎
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 20-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    過去60年間で大気エアロゾル組成は激変している。21世紀になってからは,SOxとNOxの排出規制にともない,アンモニウム塩の形成が妨げられ,北半球農業地域の大気アンモニア濃度が上昇している。本研究では,南東グリーンランドSE-Domeのアイスコア試料中に含まれるエアロゾルの化学形態に着目し、ラマン分光分析を行なうことでアイスコア中の塩微粒子の化学組成を同定した。春の試料に比べて夏の試料で(NH4)2SO4が多く,CaSO4とNaNO3が少なかった。夏季におけるアンモニウムイオン濃度の増加が関係していると推測される。また,1968年,2000年,2008年の春試料で組成を比較した結果,1968年試料では(NH4)2SO4が検出されたのに対して,2008年と2000年試料では硫酸塩に比べて硝酸塩の割合が大きく, (NH4)2SO4が検出されなかった。これは,北米農業地域などのエアロゾルの供給源において,21世紀以降に(NH4)2SO4が形成されづらかったことが原因であると考えられる。

  • 堀川 恵司, 西田 絵里奈, 小平 智弘, 張 勁
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 21-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    1973年~1974年の南半球の夏期に,熱帯太平洋から南極海にかけて実施されたGEOSECS航海では,南太平洋広域で表層海水が採取され,海水の酸素同位体比が報告されている(Ostlund et al.1987)。本研究では,2014年~2015年の南半球の夏期に,GEOSECS航海と同じ観測点で表層海水試料を採取し,海水の酸素同位体比を分析した。1973-74年と2014-15 年の酸素同位体比組成の比較を通して,(1)過去40年間について温暖化の影響の有無を考察することと,(2)1973-74年はラニーニャ年に相当し,2014-15年はエルニーニョ年にあたるため,酸素同位体比組成の比較から大気海洋循環の影響について考察することも目的とした。

G13 固体地球化学(全般)
S01 地殻内流体の地球化学
  • 井上 源喜
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 地殻内流体の地球化学
    p. 30-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    日本地球化学会と日本温泉科学会の最初の共催のための基調講演で,温泉の地球化学的研究の歴史,火山性温泉,非火山性温泉,大深度温泉とこれらの泉質の特徴を述べる.非火山性温泉にはラジウムやラドンを含む放射能泉もある.δダイアグラムより温泉水は,地下水が地質学的要因により加熱されたものか,あるいは火山ガスや海水,化石海水や超臨界水の影響を受けたマグマ水などの混入によると考えられる.地下深部の流体は超臨界状態になっていると考えられる.熱水環境や源泉は,太古の地球環境に類似していると考えられ,生命の起源や進化と関連して興味がもたれる.全球凍結時(730-700 Ma, 665-635 Ma)には熱水環境や温泉が,光合成生物などの生命生存の継承の場となっていたであろう.今後の課題としては,黒湯を含む様々な温泉環境におけるバイオマーカーの分子レベル同位体比などの有機地球化学的研究が望まれる.

  • 谷口 無我, 大場 武, 高木 朗充, 小窪 則夫, 滿永 大輔, 稻葉 博明, 山部 美則, 池亀 孝光, 河野 太亮, 小枝 智幸, 林 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 地殻内流体の地球化学
    p. 31-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    霧島山硫黄山周辺では2007年以降噴気活動が消失していたが、2013年12月頃から微小地震、2014年8月には火山性微動が観測され(船崎ほか, 2017)、2015年12月には山頂付近で噴気活動が再開した。硫黄山周辺ではその後も噴気量の増大や噴湯孔の出現、新たな噴気孔の形成に伴う土砂噴出が発生するなど(東京大学地震研究所, 2017)、活発な状態が続いている.本研究では、霧島山硫黄山周辺に湧出する温泉水の化学組成および水素・酸素安定同位体比を分析し、その起源や火山活動に伴う水質変化等を調査している。温泉水の多くは、火山性流体と天水起源の浅部地下水との混合から成る酸性硫酸泉であり、山頂噴気域近傍の噴湯孔では気液分離による重水素・重酸素の濃縮を受けたとみられる高いδD, δ18O値の酸性塩化物泉も認められた。定点観測を実施している温泉水では、火山活動に伴う水質や安定同位体比の変化が観察されている。

  • 堀 真子, 三島 綸太郎, 五島 佳奈, 松崎 琢也, 西尾 嘉朗, 村山 雅史, 樋口 富彦, 白井 厚太朗
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 地殻内流体の地球化学
    p. 32-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    奈良県川上村の入之波温泉にて、堆積物と温泉水試料を採集し、酸素・水素同位体ダイアグラムと微量元素の特徴を調査した。温泉水の酸素・水素同位体ダイアグラムは、天水曲線にほぼ一致した。堆積物および温泉水の希土類元素パターンは、正のユウロピウム異常(Eu/Eu* = 6.7~31)を示した。温泉水と堆積物の希土類元素濃度から分配係数(Kd)を見積もると、ユウロピウムは残りの元素に比べて1桁小さい値をとった。高温・高圧下で塩化物イオンが存在する場合、Eu(II)と塩化物イオンが選択的に錯生成し、安定化することが知られている。本研究で得られたユウロピウムの正の異常と小さな分配係数は、Eu(II)の塩化物錯体の存在に依るものである可能性がある。

  • 柴田 智郎, 高畑 直人, 佐野 有司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 地殻内流体の地球化学
    p. 33-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    2016年熊本地震では、2016年4月16日に発生した最大マグニチュード7.3の地震を含め、九州中央部を東西に横断する別府から島原にかけた地域で多数の地震が発生した。この地震活動に伴う地殻歪変化で地殻岩石中のヘリウムが周囲の温泉水に入り、温泉水中のヘリウム同位体比が低下したことが報告されている。そこで、別府温泉にある温泉井にて、気体半透膜を使った受動拡散サンプラーを用いて温泉水中に溶存しているヘリウムの採気を試み、ヘリウム同位体比の変化を調べた。

  • 田中 剛
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 地殻内流体の地球化学
    p. 34-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    演者は、南海/東南海地震時の飲料水対策として、大都市圏の都市温泉水の活用、エンジンポンプの設置、駐車場脇への蛇口の設置、飲用水として日常的な水質・衛生管理などが、津波防潮堤などと同じ全国レベルでの防災事業の一環として進められる事を提案する。

  • 風早 康平, 高橋 浩, 森川 徳敏, 高橋 正明, 東郷 洋子, 安原 正也, 佐藤 努, 岩森 光, 田中 秀実
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 地殻内流体の地球化学
    p. 35-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    スラブに含まれる水は,間隙水(H2O)と鉱物水(OH)の2種類があり,前者は沈み込みに伴う圧密によりスラブから絞り出され,比較的低圧側で放出される.また,後者は温度・圧力の上昇とともに含水鉱物の分解により放出される.Jarrard (2003)やHacker (2008)により世界の沈み込み帯における水収支の見積もりが行われている.本講演では,まず,西南日本弧(フィリピン海プレート:南海トラフ)と東北日本弧(太平洋プレート:日本海溝)について,沈み込み帯における水収支について示す.そして,これらの地域の掘削井や温泉に含まれるスラブ起源水の化学的指標(Li-Cl-Br)を用いて,スラブ起源水の空間分布の特徴と沈み込み帯の構造の関係について議論したい.

  • 角野 浩史, ウォリス サイモン, 纐纈 佑衣, 遠藤 俊祐, 水上 知行, 吉田 健太, 小林 真大, 平島 崇男, バージェス レイ, ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 地殻内流体の地球化学
    p. 36-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    四国中央部・三波川変成帯に産する変泥質岩、エクロジャイト、蛇紋岩、かんらん岩のハロゲン・希ガス組成は一様に、深海底堆積物中の間隙水と非常によく似た組成を示す。同様の組成は島弧火山岩中のマントルかんらん岩捕獲岩や深海底蛇紋岩でも見られることから、沈み込み前に屈曲したプレートの断層沿いにプレート深部に侵入した間隙水がスラブマントルを蛇紋岩化する際に、ハロゲンと希ガスが組成を保ったまま蛇紋岩に捕獲されて沈み込み、水とともにウェッジマントルへと放出されている過程が示唆される。

  • 谷水 雅治, 杉本 直人, 仲井 涼, 小林 裕基, ウマム ロフィクル, 森 康則
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 地殻内流体の地球化学
    p. 37-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    三重県内に湧出する温泉に注目し、試料採取と化学分析を行った。当該地域は非火山性地域であるが、多様な泉質の温泉水の湧出が認められる。これら温泉の成分の多様性と、フィリピン海プレートからのスラブ流体の寄与や、中央構造線の断層に沿った地殻深部流体の上昇などとの関連性について、B・Li濃度と同位体比から検討を行った。2015-2017年の調査結果を統合し、従来の同位体指標との整合性について議論する予定である。

  • 吉田 健太, 中村 仁美, 桑谷 立, 原口 悟, 風早 康平, 高橋 正明, 岩森 光
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 地殻内流体の地球化学
    p. 38-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    多変量解析により日本列島の深層地下水の特徴抽出を試みた.深層地下水データベースの約3万点のデータから,欠けの無いデータ6232点・14元素(Na, K, Mg, Ca, Li, Cl, SO4, HCO3, F, NO3, PO4, Br, δD, δ18O)を選び出し,白色化KCAと独立成分分析を併用した解析を行った.結果,日本列島に産する深層地下水の化学組成バリエーションを上手く説明できる8つのクラスタを得た:O-H同位体組成が天水線に沿うもの(2種:日本列島の天水線トレンド,南北/低地高地に分かれている),天水線と浅く斜交するトレンドを描くもの(3種),天水線から大きく離れるもの(3種).また,白色化KCAの結果は独立成分分析の結果とも対応しているため,典型的な有馬型塩水のクラスタと対応する独立成分を用いて,深部塩水の化学組成を推定したところ,先行研究で得られているものと近い傾向のものが得られた.

  • 森川 徳敏, 風早 康平, 高橋 正明, 高橋 浩, 大和田 道子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S01 地殻内流体の地球化学
    p. 39-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    西南日本前弧域(紀伊半島、四国)に胚胎する特異な深層地下水の起源については、今まで主に溶存化学組成、水の同位体から議論されてきた。また、深層地下水に付随するヘリウム同位体などの気体成分について、その特異性のためにヘリウムの起源に関する研究が行われてきた。しかし、それらは別々に研究が行われており、ヘリウム同位体と溶存化学成分の関連性についてはよくわかっていなかった。本講演では、溶存化学組成・水の同位体組成および希ガス同位体組成の特徴と、地質構造をもとに、これらの深層地下水の起源、上昇過程、上昇経路について紹介する。

G05 海洋における微量元素・同位体
  • 角皆 潤, 伊藤 昌稚, 鋤柄 千穂, 小松 大祐, 中川 書子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 40-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    筆者らは、自然の安定同位体比を指標に用いて、培養に依存しない物質循環速度の新しい定量化手法の開発に挑戦してきた。本講演では、その成果の一部をご紹介しつつ、海洋学における軽元素安定同位体地球化学の今後の展開の可能性について論じる。

  • 宗林 由樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 41-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    海洋の微量元素は,海洋生物の微量栄養素,現代海洋のトレーサー,古海洋のプロクシとして,現代の海洋学にとって欠くことのできない手段・対象となった.2000年代に始動した国際共同観測計画GEOTRACESは,本年8月に二つめのIntermediate Data Product (IDP2017)を発表する.この計画で精確なデータを得るうえで,私たちの開発した多元素分析法は大きな貢献をなすことができた.本発表では,この分析法と私たちの観測結果の概要について述べる.

  • 丸山 魁, 則末 和宏, 小畑 元, 中口 譲, 南 秀樹, 田副 博文, 蒲生 俊敬
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 42-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    海洋における微量金属元素は、フィルターを用いたろ過操作によって溶存態と懸濁粒子態に分けられる。海水中の懸濁粒子状物質は溶存化学成分の吸脱着を通じて、溶存態微量金属のソースまたはシンクとして働き、海洋における微量金属の循環に影響を及ぼす。本研究では、懸濁粒子態微量金属元素について国際GEOTRACES計画のキーパラメーターを含む10元素(Al,Ti, Mn, Fe, Co, Cu, Zn, Cd, Pb, Bi)の一括分析法の開発を目的とし、基礎検討及び、海水サンプルへの適用を行った。

  • 荒井 翼, 則末 和宏, 小畑 元, 蒲生 俊敬
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 43-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    海洋における微量元素は様々な物質循環過程を鋭敏に反映した鉛直分布を示し,物質循環の解明に極めて有用である。超微量元素であるビスマス(Bi)は海洋における滞留時間が20年程度(Lee et al., 1985/1986)と短いため,比較的短い時間スケールで起こる海洋物質循環の重要なトレーサーとして期待できる。しかし,外洋海水中Bi濃度は極めて低く精確に定量することが困難であり,世界的に報告数が乏しい。そこで,本研究では,既に確立済みの分析手法(Norisuye & Sohrin, 2012)を用いて,白鳳丸KH-14-6次航海,KH-11-7次航海および新青丸KS-13-T3次航海で観測した西部太平洋における溶存態Biの濃度分布を解明することを目的とした。西部北太平洋の測点では北太平洋亜熱帯モード水(NPSTMW)の亜表層において顕著な濃度極大を示した。南半球の測点における各層のBi濃度は,北半球の測点と比べて低いことが分かった。南半球のデータは本研究が初である。

  • 鄭 臨潔, 南 知晴, 高野 祥太朗, 宗林 由樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 44-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    海水中の栄養塩であるリン酸イオン態のP,硝酸イオン態のN,ケイ酸態のSiの濃度は表層で低く,深層で高い,このような分布は栄養塩型分布と呼ばれる.Fe, Ni, Cu, Cd等の微量金属は栄養塩とよく似た分布を示し,栄養塩型分布微量金属に分類される.北太平洋は,偏西風により黄砂がもたらされる,周辺の大陸棚域から北太平洋中層水の流入がある,海洋大循環の終点であり最も古い深層水が存在するという特徴がある.私たちは,微量金属のオフライン濃縮-多元素同時分析法を開発した.この方法を用いて,白鳳丸KH-05-2航海で採取されたろ過および未ろ過海水試料を分析した.本発表では,溶存態(d)および置換活性粒子態(lp)栄養塩型微量金属(Fe, Ni, Cu, Cd)の西経160度に沿う鉛直断面分布を報告する.

  • 辻阪 誠, 高野 祥太朗, 平田 岳史, 申 基澈, 村山 雅史, 宗林 由樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 45-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    海底堆積物中の元素濃度や同位体比は,堆積物が堆積した時代の海洋組成を反映するため,古海洋復元の重要なプロクシとなる.本研究では,北海道岩内町沖で航洋丸にて1998年11月に採取された日本海中層海底堆積物IWANAI No.3(43°22’36.0N

  • 後藤 葵, 益田 晴恵
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 46-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    水銀は、生物濃縮する元素であり、毒性の高い元素であることから生物地球化学的な観点からの研究は進んでいる。一方で、地殻内での挙動についてはよく理解されていない。本研究では、生物濃縮された水銀のリザーバーと考えられる深海堆積物中に存在する水銀の挙動や動態の解明を目的として、国際深海科学掘削計画にて紀伊半島の東南に位置する熊野海盆C0002地点で採取された付加体堆積物を用いて分析を行った。本研究で分析した堆積物中の総水銀濃度は62.7‐114.6ppb(平均89.2ppb)であった。この結果は、これまでに報告された主な湾域の表層堆積物の水銀濃度とほぼ同程度であり、人為汚染による高濃度の水銀が疑われる水域の値より小さい。また、深度に伴う総水銀濃度の変動幅は大きいが、深度が増すにつれて濃度が低くなる傾向があるかもしれない。このことは、陸源性ないしは沿岸性の堆積物で、遠洋域の堆積物よりも水銀濃度が高いことを示唆している。

  • 金 泰辰, 武田 重信, 蒲生 俊敬, 小畑 元
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 47-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    海水中の微量金属は植物プランクトンやバクテリアの成長に影響を与えるため、その詳しい挙動を調べることが重要である。しかし、熱水環境での微量金属の挙動や存在状態に関してはまだ十分に解明されていない。本研究では沿岸熱水活動が報告されている長崎県橘湾において海水を採取し、海水中の微量金属(マンガン、鉄、銅、亜鉛)の分布や亜鉛の存在状態を調べた。

  • 真塩 麻彩実, 小畑 元
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 48-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    白金 (Pt) の地殻中での存在量は低いが、現在では自動車触媒や抗がん剤など様々な分野で利用されているため、都市域を中心に環境中への白金放出量の増加傾向が指摘されている。一方で陸起源物質である白金の海水への供給過程はよくわかっていない。本研究では長崎県の有明海で白金の分析を行い、その分布を報告するとともに、閉鎖的海域において海水中の白金がどのような挙動を示しているかを議論していく。観測海域における鉛直分布は、海底で濃度が高くなっており、海底堆積物から白金が供給されていると思われる。有明海は半閉鎖性海域であるため湾内で供給された白金が比較的長時間、そのまま湾内に留まっていると考えられる。

  • 趙 尊豪, 張 勁
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 49-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    In order to monitor the material transportation of East China Sea, various in-situ physics datasets were used for developing numerical simulation models in precedence research. But the results can hardly provide a systematical understanding, especially for the mixing condition of various origins. This study used multiple tracer analysis to catch the snapshot of material transportation in this area.

  • 天川 裕史, 鈴木 勝彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G05 海洋における微量元素・同位体
    p. 50-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    我々は南鳥島周辺の測点CTD01で採取した海水のNd同位体比の測定を行い、南鳥島近傍に位置する拓洋第5海山のマンガンクラスト表層のNd同位体比との比較を行った。その結果、以前と同様、マンガンクラスト表層のNd同位体比が、周辺の海水の値を保持、反映していることを確認した。一方、測点CTD01の表層および中層に注目すると、従来の北西太平洋亜熱帯域の測点とはいくつか異なる特徴を示すことが分かった。このことは、北西太平洋亜熱帯域の限られた海域内においても、表層から中層の水塊構造にはバリエーションがあることを示唆する。

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