園芸学研究
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22 巻, 3 号
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原著論文
育種・遺伝資源
栽培管理・作型
  • 島田 智人, 柴﨑 茜, 前島 秀明, 浅野 亘
    2023 年 22 巻 3 号 p. 207-215
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    ニホンナシ花粉の国内自給率向上のため,花粉採取効率を向上させる技術を検討した.腋花芽利用品種における樹形は,低樹高で主枝先端を隣接樹にジョイント接ぎ木する低樹高ジョイント仕立てが,直線的な樹形であることや,花蕾採取作業に脚立を要さないことなどから,立木仕立ておよび,棚仕立てより時間当たり花蕾採取量が多く,採取効率が向上した.また,低樹高ジョイント仕立ては,株仕立てや,低樹高でジョイント接ぎ木を行わない場合より,中庸な新梢の発生が多く,樹列当たりの花芽数が多くなることが明らかになった.採取方法は,選択採取より一斉採取が,3分咲きや7分咲きより5分咲きでの採取が,時間当たり純花粉採取量および花粉発芽率の点で効率的であることが明らかになった.また,‘新興’における5種の植物成長調節剤の効果を検討したところ,ジベレリン生合成阻害剤であるダミノジッド,パクロブトラゾール,およびエチレン活性剤であるエテホンの処理が,腋花芽着生率に有効であることが確認された.

  • 紺野 祥平, 杉浦 俊彦
    2023 年 22 巻 3 号 p. 217-224
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    カンキツグリーニング病細菌の媒介昆虫であるミカンキジラミの日本国内における現在および将来の定着可能地域の推定を行った.本研究では,ミカンキジラミの定着を決める上で重要となる冬季の日最低気温とゲッキツの植生分布に着目し,これらの要素のメッシュデータ(空間解像度1 km)をGISソフト上で重ね合わせることで,各地域における定着の可能性を詳細に分析した.現在の気候における定着可能地域は,九州および四国の沿岸部のほか,紀伊半島や伊豆半島の一部地域にも分布することが明らかとなった.また,現在の気候よりも気温が2°C上昇した将来(2040年代後半)における定着可能地域を予測したところ,九州や四国,本州のより多くの沿岸部地域に分布することが明らかとなり,その分布域はより内陸部へ拡大し,現在のカンキツ産地は沿岸部だけでなく,内陸部でも定着可能地域に含まれる地域が増加することが示唆された.

  • 竹岡 賢二, 松岡 真希, 柳本 裕子, 金好 純子
    2023 年 22 巻 3 号 p. 225-232
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    カンキツ新品種‘瑞季’に発生する果皮障害である黄斑の特徴と防止対策について検討した.‘瑞季’に発生する果皮障害で主に問題となるのは黄斑であり,黄斑は日焼けとは異なる症状を呈した.黄斑は,7月下旬に初発が確認され,8月下旬にかけて増加し,12月にも新たな発生を確認した.黄斑発生部位の果皮切片を観察すると,油胞組織の一部に褐変が確認された一方,未発生部位には褐変を認めなかった.黄斑発生部位における一切片当たりの油胞組織の褐変数は,80%以上が1個であった.樹冠の部位別の黄斑発生数は,内なりが,外なり上部および外なり下部と比較して少なかった.また,外なりでは,日陰面が陽光面と比較して1果実内での黄斑発生数は少なかった.着生位置により,果実形質には果皮色のL*を除き差がなく,いずれの位置でも4月中旬には糖度12°,酸度1.0%程度となった.黒色化繊布の果実への被覆により,黄斑の発生は抑制され,7月下旬までに被覆した場合に効果が高かったが,8月下旬以降に被覆した場合には効果がなかった.また,日射と黄斑発生の関係では,積算全天日射量が増加するほど,黄斑発生果率が高まる傾向にあり,高い正の相関が見られた.以上のことから,‘瑞季’における黄斑の発生には,果実の発育ステージや日射条件が影響しており,果実が受ける日射量をコントロールすることで黄斑発生を制御できる可能性が示唆された.

発育制御
  • Lai Yi-Chun, 尾形 凡生, 浜田 和俊
    2023 年 22 巻 3 号 p. 233-241
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    低温要求量の少ないサザンハイブッシュブルーベリー‘Kestrel’と‘Star’を対象に,異なる促成開始時期およびシアナミドの組み合わせ処理が休眠打破,栄養成長,生殖成長に及ぼす効果を検証した.ポット植え3年生樹を対象に,‘Kestrel’では低温蓄積量がCH. 50,CH. 100,CH. 150,‘Star’ではCH. 50,CH. 150,CH. 400時に無加温ビニールハウスに搬入し,0.5%シアナミド液散布区および無処理区を設けた.シアナミド処理は,促成開始時期にかかわらず処理から萌芽までに要した日数が短縮され,萌芽および展葉が促進された.つまり,低温要求量の少ない品種に対して早い段階でシアナミドによる低温補償が効果的であることを示唆している.その一方で,シアナミド処理は開花に要した日数に影響しなかった.しかし,収穫期は早まり果実成熟までの日数が短縮された.つまり,萌芽および展葉が早まったことで,成長期早期の光合成速度が向上し,樹冠形成に寄与する.従って果実発育期間の短縮につながる.以上のことから,低温要求量の少ないブルーベリー品種を対象に低温不足時の促成栽培においてはシアナミドが低温補償,萌芽促進に強力であることを示唆している.

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