園芸学研究
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5 巻, 4 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 鈴木 洋, 江頭 宏昌, 山田 拓, 藤田 真弓, 小笠原 宣好
    2006 年 5 巻 4 号 p. 343-349
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    オウトウ7品種と観賞用サクラ‘ソメイヨシノ’との間の種間交雑を試みることで,生食可能な果実と観賞価値のある花を兼ね備えた雑種を獲得することを目的とした.‘ソメイヨシノ’×オウトウの交雑ではほぼ0%の結実率であった.一方,オウトウבソメイヨシノ’の交雑の組み合せではほぼ全ての組み合せで結実が認められ種子が得られた.
    得られた456果の果実のうち,192果(42.1%)を胚培養した結果,1年後には計42個体の実生が順化できた.これら実生と,その後健全に生育し開花結実した個体の形態的観察の結果,葉や果実形質の一部は交配に用いた両親それぞれの特徴を示した.
    雑種と思われた‘テンコウニシキ’בソメイヨシノ’の交雑実生4個体とその両親からDNAを抽出してRAPD分析を行った結果,両親それぞれに特有のバンドが検出され,得られた開花結実4個体は雑種であることが確認された.
  • 住友 克彦, 西島 隆明, 小野崎 隆, 柴田 道夫
    2006 年 5 巻 4 号 p. 351-356
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    キク属野生種10種および栽培ギク20品種において,葉の毛じの密度と長さを観察した.キク属野生種では,葉裏面の毛じ密度に大きな種間差が認められた.また,葉表面より裏面で毛じ密度が高く,毛じの長さは長かった.栽培ギク品種においても同様の傾向がみられたが,野生種より変異の幅は小さかった.ピレオギク系統8913の毛じは他の種よりも長く,形状にも特徴がみられた.ピレオギク系統8913および‘苹果香’では,葉表裏面の毛じ密度は0.3本・mm−2以下であった.スプレーギクと毛じ密度が極めて高いイソギクとの種間雑種である‘沖の白波’および‘キクつくば1号’では,他の品種に比べて葉裏面の毛じ密度が高く,毛じの多少の形質は遺伝することが示唆された.
    ‘神馬’の毛じの発達を観察した.葉の発生のごく初期に1個の表皮細胞が,細胞分裂を行いながら外側に向かって伸長し,毛じの発達が始まった.未展開葉の毛じは先端部が紡錘状になり,密生していたが,展開葉では先端部は扁平な楕円形で,密度が疎になることが観察された.
  • 徳弘 晃二, 棚瀬 幸司, 市村 一雄, 天野 正之
    2006 年 5 巻 4 号 p. 357-361
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    デルフィニウムの種間交雑による品種育成を行う中で,STSによる前処理をしなくてもがく片が脱離しない個体を見出した.
    D.elatum系品種の‘マジックフォンテンホワイト’を種子親,D.grandiflorum系品種の‘ブルーミラー’(‘BM’)を花粉親として交配を行い,胚珠培養によって植物体を育成した.開花に至った18個体中17個体は,ベラドンナ系に似た草姿,花形であったが,1個体のみ‘BM’と同様のわい性の個体(‘M8-16’)が見出された.フローサイトメトリーによる調査の結果,ベラドンナ系に似た個体は3倍体,‘M8-16’は4倍体であると推定された.
    ‘M8-16’に‘BM’を戻し交雑して得られた3個体の内,花持ちが極めて長く,がく片の脱離が見られない個体が1個体見出され,‘B10’と名づけた.‘B10’の小花を収穫し,花持ち性を調査したところ,‘B10’はがく片が脱離せず,その花持ち性は‘ベラモーサム’に比べ有意に長いことが明らかとなった.
  • 小野崎 隆, 吉成 強, 吉村 正久, 八木 雅史, 能岡 智, 種谷 光泰, 柴田 道夫
    2006 年 5 巻 4 号 p. 363-367
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    一重咲き,八重咲きの花型はカーネーションの重要形質の一つである.カーネーション連鎖地図作成に用いた集団を材料に,バルク法により一重咲き,八重咲きの形質に関与するRAPDマーカーを探索した.その結果,野生種Dianthus capitatus ssp. andrzejowskianus由来の劣性一重咲き遺伝子と連鎖する4つのRAPDマーカーが見いだされた.特に,同一のバンドパターンを示したOM19-800,AT90-1000,DT52-700は,一重の45個体で存在し八重の82個体で存在せず,一重八重の形質とマーカーバンドの有無が完全に一致し,一重咲き遺伝子に密に連鎖することが示された.これらのうちAT90-1000のSTS化に成功した.連鎖解析の結果,この一重咲き遺伝子は作成したカーネーション連鎖地図において第16連鎖群に座上することがわかった.得られたSTSマーカーの汎用性を検証するため,一重のカーネーション4品種からDNAを抽出してマーカーの有無を調べたが,4品種ともマーカーは存在せず,本分離集団以外への汎用性は認められなかった.
繁殖・育種
  • 嬉野 健次, 市川 寛子, 金澤 俊成
    2006 年 5 巻 4 号 p. 369-374
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    コシアブラにおける種子繁殖法の確立のための発芽促進を目的として,成熟果実中から種子を採種し,GA3処理(200 mg・L1)と層積法を用いた20℃湿潤処理および5℃の湿潤低温処理を行った.パラフィン切片法による種子の組織学的観察により胚の生育ステージを調査した結果,採種直後の種子の内部は,ほとんどが胚乳で占められており,球状胚から心臓形胚までの未熟胚であった.胚の生育に対するGA3前処理および20℃湿潤処理の効果を検討したところ,GA3前処理 + 20℃ 4か月処理で胚の生育が促進された.20℃湿潤処理後,GA3後処理および湿潤低温処理を行ったところ,GA3前処理 + 20℃ 3か月処理した種子で湿潤低温処理により胚の生育が促進され,種子は発芽がみられたが,20℃ 4か月処理した種子では,腐敗が多く観察された.以上の結果より,GA3前処理は20℃湿潤処理による胚の生育を促進すること,また,その後の湿潤低温処理により胚の生育はさらに進むことが明らかとなった.また,早期に実生を得るための処理としては,GA3 前後処理 + 20℃湿潤3か月処理 + 湿潤低温4か月処理が効果的であると考えられた.
  • 柴山 勝利, 赤阪 信二
    2006 年 5 巻 4 号 p. 375-379
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    モモの大苗育成を目的とし,育苗容器および土壌水分管理の違いが1年生苗木の生育ならびに定植後の収量に及ぼす影響について検討した.
    1) 土壌水分管理が同一であれば苗木の生育は,不織布ポット(側面:透水性遮根型不織布,底面:貫根型不織布)がプラスチックポットより優れた.
    2) 不織布ポットを使用すれば,無かん水条件でもプラスチックポットのかん水条件(pF 2.6に達した時点で20 mmの自動かん水)と同等の苗木育成が可能であった.
    3) 不織布ポットのかん水条件で育成した苗木の1樹当たり収量は,定植当年に約5 kg,定植2年目には約9 kgであったのに対し,プラスチックポットのかん水条件では,定植当年に約2 kg,定植2年目には約3 kgであった.
    以上の結果から,不織布ポットの使用により,定植当年から収穫可能な苗木を省力的に育成できることが明らかとなった.
土壌管理・施肥・灌水
  • 峯 洋子, 秦野 茂, 手島 英敏, 白井 深雪, 久保田 浩史, 角谷 架織, 杉山 信男
    2006 年 5 巻 4 号 p. 381-388
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    砂栽培システムによるトマト生産において,砂培地に混和する資材が培地特性や果実生産に及ぼす影響を調査した.ゼオライトを混和すると,培地が乾燥しやすくなり,ナトリウム含量が高まった.また培地のECおよび硝酸態窒素含量は栽培期間中低く抑えられた.ゼオライト混和培地で植物の生育や収量は低下したが,果実糖度は上昇した.活性炭を砂培地に混和すると,植物の初期生育が抑制され果実品質が低下したが,一果重は上昇した.土壌を混和した培地では,果実収量は低下せず,果実糖度が上昇した.ヤシ殻繊維を混和することで,砂培地の軽量化,保水性の向上など培地特性の改善が見られ,植物の初期生育および果実の初期収量が上昇したが,茎葉部との水分競合により可販果率は低下した.このことから砂栽培の混和資材として,ヤシ殻繊維の有用性については,今後,灌水方法を変えてさらに検討する必要があると思われた.
  • 小田島 ルミ子, 高橋 正樹, 平賀 昌晃, 小野 剛志, 阿江 教治, 松本 真悟
    2006 年 5 巻 4 号 p. 389-395
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    岩手県の主要品目であるホウレンソウを対象に1998年から2001年まで,県内で産出するオガクズ牛ふんたい肥の連用試験を行い,年間2~4作のホウレンソウを作付けして,生育,窒素吸収反応に及ぼす影響について調査した.
    化学肥料区には,年間で窒素を硝安で16-20 g・m−2,リン酸を重過石で20-24 g・m2,カリを塩加カリで16-20 g・m2,施肥した.たい肥区では,1作目播種の2週間前にオガクズ牛ふんたい肥を45 gN・m2施用し,2作目以降は無施用とした.
    その結果,たい肥区の草丈,葉幅,葉数は化学肥料区のそれを上回った.また,乾物収量,窒素吸収量もたい肥区が化学肥料区より多かった.各作付後の跡地土壌の無機態窒素含量はたい肥区が化学肥料区より低かった.さらに,ホウレンソウ中の全窒素に占める硝酸態窒素の比率は,化学肥料区に比べてたい肥区は極めて低い値を示した.これらの結果は,たい肥を施用した場合,ホウレンソウの生育および窒素吸収量が栽培期間中の土壌中の無機態窒素の存在量に対応していないことを示唆するものであった.一方,中性リン酸緩衝液によって抽出される土壌中の易分解性有機態窒素は,化学肥料区で実験開始前よりも減少し,たい肥区では増加した.
  • 村松 昇, 平岡 潔志
    2006 年 5 巻 4 号 p. 397-402
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    赤外カメラを使った樹体の水分ストレス程度を診断する手法の開発を試みた.ブドウは水分ストレスにより,枝の基部に近い葉の一部が壊死し,壊死した部分の面積は,水分ストレスが生じる時間が長くなるにつれて拡大した.壊死した部分は,赤外カメラで撮影した画像により明確に区別できた.一方,ウンシュウミカンでは,葉柄基部に離層が生じた後,落葉した.したがって,落葉する前の葉の水分含量を正確に測定する必要があると考えられた.そこで,水分含量の異なる濾紙を赤外カメラで撮影し,キャリブレーションを行った後,ウンシュウミカン葉の撮影画像を画像処理ソフト(Image Pro-plus)を使って背景処理することにより,水分ストレスの有無による画像の輝度の違いが認められた.赤外カメラの画像から推定した水分指数と実際に熱風乾燥した水分含量との間に有意に高い相関が認められた.これらの結果から,赤外カメラによる葉の水分含量の推定は,可能であると考えられた.
  • 市橋 正一, 福井 博一, 金 勲
    2006 年 5 巻 4 号 p. 403-407
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    ミズゴケで栽培したドリテノプシスの乾物重と成分含有率に及ぼす培養液のイオン組成の影響について検討した.茎葉,根,花序などの乾物重と乾物割合は,処理区間での差は比較的少なかった.しかし,K+濃度の増加は茎葉の乾物重の増加に,Ca2+濃度の増加は減少につながった.乾物率は器官間での違いが大きく,茎葉部では6.4~7.4%であったのに対し,根部は8.5~10.4%,花序部では7.0~8.4%となった.各成分の含有率は培養液中の特定のイオン比率が上昇すれば同種元素含有率は増加したが,陽イオンあるいは陰イオン群内の他種のイオンの吸収は抑制された.本実験の陽イオン処理区では茎葉のCa含有率,花序のP含有率に違いが見られた.また,陰イオン処理区では根のP,Ca含有率,花序のN,Ca含有率に違いが見られた.これは,各イオンの吸収と移動が,培養液組成によって影響を受けたことによるものと考えられた.K+はH2PO4の吸収・転流を阻害し,NO3はCa2+の吸収を促進したが,その機作については不明であった.
栽培管理・作型
  • 渡辺 功
    2006 年 5 巻 4 号 p. 409-413
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    トルコギキョウ覆輪品種の花弁の着色割合の変動と気温の関係を明らかにするために,有色覆輪品種‘キャンディマリン’および‘ネイルピーチネオ’を定植時期を変えて栽培し,各採花日の花弁の着色割合の平均値と採花日から60日遡り,その間を10日おきに分割し,採花日から遡った積算期間を設けて求めた15℃,20℃,25℃および30℃未満の各積算遭遇時間との関係について検討した.
    1. 供試した覆輪2品種における5~11月の花弁の着色割合の平均値は,7~20%前後と正常で,冬から春にかけて着色面積が拡大して,1・2月採花では着色割合の平均値が花弁の約80%に達した.
    2. 花弁の着色割合は,15℃および20℃未満の積算遭遇時間と高い正の相関が認められた.
    3. 両品種とも,採花日から60日遡った20℃未満の積算遭遇時間が800時間を上回ると花弁の着色割合が急速に高まった.
  • 斎藤 岳士, 福田 直也, 西村 繁夫
    2006 年 5 巻 4 号 p. 415-419
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    NFTにおける2段摘心トマト栽培において,塩ストレス処理時期,栽植密度および果房直下の側枝利用を総合的に組み合わせた実験を行い,収量ならびに品質に及ぼす影響について評価した.塩ストレス処理は,開花期から行なうと,果実糖度は増加するものの平均果実重量が40%程度減少した.一方,第1花房開花20日後の果実肥大中後期から行うことにより,果実糖度は9.0前後に増加するが,果実肥大抑制は30%程度に抑えられた.高栽植密度条件下(約950株・a−1)では,低栽植密度(約670株・a1)と比較して,果実品質に大きな影響を及ぼさずに果実収量が34%増加した.果房直下の側枝利用によって,塩ストレス処理下においても,栽植密度にかかわらず糖度を向上させる効果があることが示された.以上の結果から,NFTにおける2段摘心トマトでこれらの栽培技術を総合的に組み合わせることが高糖度トマト生産に有効であることが示された.
  • 黒田 治之, 千葉 和彦
    2006 年 5 巻 4 号 p. 421-430
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    純生産量(t乾重/ha/年)とその樹体内分配に及ぼす栽植密度の影響を無剪定状態のわい性および半わい性台木利用リンゴ‘スターキング・デリシャス’樹を供試して検討した.個体年間生産量(⊿pn)と果実,葉,枝,幹および根の1樹当たり年間生産量(fd,ld,⊿pb,⊿ptおよび⊿pr)は,各台木樹とも栽植密度(ρ)の増加に伴って減少した.⊿pn,z(ld,⊿pb,⊿ptあるいは⊿pr)およびfdに関する密度効果は,それぞれ1/ ⊿pn = A1ρ + B1,1/z = A2ρ + B2およびfd = K' exp (−k'ρ)という関係式で表された.純生産量(⊿Pn)と葉,枝,幹および根の純生産量(Ld,⊿Pb,⊿Ptおよび⊿Pr)は,各台木樹とも栽植密度(ρ)の増加に伴って増加した.しかし,果実生産量(Fd)はM.26台木樹以外の台木樹では,それを最大にする最適栽植密度(ρopt)が存在した.⊿Pn,Z(Ld,⊿Pb,⊿Ptあるいは⊿Pr)およびFdに関する密度効果は,それぞれ1/ ⊿Pn = A3 + B3/ρ,1/Z = A4 + B4/ρおよびFd = H'ρ/(A1ρ + B1)h'という式で表された.葉,枝,幹および根への分配率(Ld/ ⊿Pn,⊿Pb/ ⊿Pn,⊿Pt/ ⊿Pnおよび⊿Pr/ ⊿Pn)は,各台木樹とも栽植密度(ρ)の増加に伴って増加したが,果実への分配率(Fd/ ⊿Pn)は減少した.Z/⊿Pn(Ld/ ⊿Pn,⊿Pb/ ⊿Pn,⊿Pt/ ⊿Pnあるいは⊿Pr/ ⊿Pn)とFd/ ⊿Pnに関する密度効果は,それぞれ1/(Z/ ⊿Pn) = A5 + B5/ρとFd/ ⊿Pn = K' exp (−k'ρ)という式で表された.果実生産量(Fd)と純生産量(⊿Pn)の関係は,式Fd = −a1(⊿Pn)2 + b1(⊿Pn) + c1で表され,果実生産量(Fd)と果実への分配率(Fd/ ⊿Pn)の関係は,式Fd = −a2(Fd/ ⊿Pn)2 + b2(Fd/ ⊿Pn) + c2で表された.純生産量(⊿Pn)と果実への分配率(Fd/ ⊿Pn)の相対的関係を⊿Pn/(Fd/ ⊿Pn)と定義して,果実生産量(Fd)と⊿Pn/(Fd/ ⊿Pn)をlog~log座標に図示すると,両者の関係は(第6図)はlog Fd~logρ曲線(第2図)と同様のパターンを示した.以上の結果から,果実生産量に関する密度効果は,栽植密度によって⊿Pn/(Fd/ ⊿Pn)が変化し,それによって果実生産量が変化する現象と考えられる.
  • 元木 悟, 西原 英治, 北澤 裕明, 平舘 俊太郎, 篠原 温
    2006 年 5 巻 4 号 p. 431-436
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    アスパラガスでは改植後,新植圃場に比べて減収し,若年株から欠株が発生するなどの原因不明の生育障害が多く見受けられる.本研究では,アスパラガスの連作障害における要因の一つであると考えられるアレロパシーの関与について検討した.アスパラガスの根圏土壌では,アスパラガスおよびレタスに対して強い生育阻害活性が認められた.その活性は,根圏土壌の塩類の集積やpHの変動,無機養分の異常によるものではなかった.また,アスパラガスの茎葉の生育阻害活性を検討したところ,茎葉をそのまま土壌中にすき込んでもアスパラガスの生育阻害や減収の大きな原因にはならないと考えられた.一方,アスパラガスの貯蔵根には強い生育阻害活性が認められ,その貯蔵根から滲出するアレロパシー物質がアスパラガスの連作障害の一つの要因であると推察された.
  • 元木 悟, 西原 英治, 北澤 裕明, 平舘 俊太郎, 藤井 義晴, 篠原 温
    2006 年 5 巻 4 号 p. 437-442
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    アスパラガス生育阻害へのアレロパシー物質の関与をプラントボックス法を用いて評価した結果,アスパラガスには強いアレロパシー活性があることを明らかにした.続いて,改良プラントボックス法を開発し,アスパラガスのアレロパシー活性と吸着資材の評価をした結果,ある種の活性炭はアスパラガスのアレロパシー物質を吸着し,検定植物であるレタスの生育阻害を回避できることが明らかとなった.また,アスパラガスの圃場試験においても,改植時の活性炭の処理によって,無処理区に比べて地下部重,貯蔵根数,株養成量,GI´が改善された.
  • 元木 悟, 西原 英治, 平舘 俊太郎, 藤井 義晴, 篠原 温
    2006 年 5 巻 4 号 p. 443-446
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    アスパラガスの根から根圏土壌中に放出される物質による作用を検定する新たな手法の開発を試みた.開発した根圏土壌アッセイ法では,土壌に催芽移植するバイオアッセイ法と類似した結果が得られ,従来のバイオアッセイ法より土壌供試量が少ない場合に有効な検定法であった.根圏土壌アッセイ法により,アレロパシーによる生育阻害の効率的な評価が可能になった.また,現地で普及している活性炭資材を利用したアレロパシーの回避技術を実験室レベルで評価することも可能になった.この検定法により,活性炭資材の効率的な利用が図れるとともに,適切な作付けを指導できる可能性が示唆された.
  • 神尾 真司, 宮本 善秋, 川部 満紀, 浅野 雄二
    2006 年 5 巻 4 号 p. 447-452
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    数種のモモ台木品種と岐阜県飛騨地域在来のハナモモに‘白鳳’,‘昭和白桃’を接ぎ木して凍害による主幹部障害,枯死樹発生に及ぼす影響を検討した.‘おはつもも’台は3年生時から穂木部を中心に障害が発生し,4年生時にはすべて枯死した.これに対し‘モモ台木筑波1号’台,‘ハローブラッド’台および‘国府HM-1’台は3~4年生時に穂木部,台木・接ぎ木部ともに障害が発生したが,枯死には至らなかった.中でも‘国府HM-1’台は,障害程度が最も軽症であり,障害発生抑制に有効な台木であると考えられた.一方,台木品種による穂木品種の発芽期,開花始期,展葉期に差は認められなかった.また,樹体生育量には差は認められたが,障害発生との関係は明らかでなかった.
発育制御
収穫後の貯蔵・流通
  • 乘越 亮, 今西 英雄, 市村 一雄
    2006 年 5 巻 4 号 p. 459-464
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    花弁の糖質をモル濃度で表示するための試料の簡易迅速抽出法の開発を試みた.バラ‘ソニア’の花弁を遠心フィルターユニットに入れ,液体窒素で凍結後,遠心したところ,細胞液が抽出できることが確認された.抽出量は遠心時間が長くなるほど多くなったが,30分間の抽出でほぼ一定となった.この方法で抽出した試料の糖質組成を熱エタノールで抽出した場合(常法)と比較したところ,著しい差はみられなかった.抽出した試料を常温で保持したところ,時間の経過にともないスクロース濃度は低下した.しかし,4℃での保持によりこの低下は抑制された.したがって,抽出した試料は低温で保持し,できる限り短時間で分析することが必要であることが示された.バラ‘マドレーヌ’,‘ニューブライダル’,‘サターン’,‘ローテローゼ’,カーネーション,トルコギキョウおよびオキシペタルム花弁の糖質組成に簡易迅速法と常法との間で大きな差はみられなかった.以上の結果から,花弁を液体窒素で凍結後,ただちに遠心することにより糖質を含む細胞液を採取する方法は糖質をモル濃度として定量するための迅速かつ簡易な方法であると考えられた.
  • 深井 誠一, 上原 廣大
    2006 年 5 巻 4 号 p. 465-471
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    キンギョソウ切り花をSTSまたは塩化カルシウムで前処理し,生け水の種類を変えて品質保持期間を比較した.水に生けた場合,前処理なしの切り花では花穂の折れが発生したが,1%CaCl2で16時間前処理すると発生しなかった.STS前処理は小花の萎凋を遅らせたが,カルシウム処理のみでは小花の萎凋は防げなかった.カルシウム処理により花穂が伸長し上部の小花まで開花した.カルシウムSTS処理した切り花を5%グルコースと殺菌剤を含んだ溶液に生けると,小花および花穂がよく発達し,切り花の品質保持効果が著しく高まった.
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